第37話 カコピオス
ついにラストラドでの鍛練生活が始まった。
だが、一つ勘違いしていた事がある。
昨日は色々な人が俺に模擬戦を頼んできて、それも鍛錬の一環だと思っていたが、どうやら違うらしい。
ラストラドでは、ある程度のグループ分けがされていて、そのグループごとに一日あるいは一週間ほどの鍛錬メニューが決まっているそうだ。
つまり、俺との模擬戦は休憩時間に個人的に行った「戯れ」に過ぎないのだ。
いやはや、皆さんの溢れんばかりのエネルギーには頭が上がりません。
私も精進しなければ。
ちなみに、そのグループ分けについては、大まかに三つある。
一つは前線部隊。
剣や盾を用いた戦闘をする者のグループ。
次に遠距離部隊。
弓や投擲を主な攻撃手段とするグループ。
そして、特殊部隊。
全員が独自の戦闘スタイルを持っており、上記の二つの部隊に適さない者たちのグループ。
かなり人数が少なく、全体の一割にも満たないそうだ。
ゆえに、彼らは「カコピオス(ならず者)」と呼ばれている。
「紹介しよう。今日から仲間になるショウだ」
「よろしくお願いします」
良かった、ビッグマウスじゃなくて。
だが、問題もある。
この部隊は、特殊部隊なのだ。
なんか、雰囲気悪いな。
他の連中みたく野球部ノリはどこにいったのか。
これがカコピオスなのか。
これからが心配だ。
自己紹介をする俺を見る目は、まるで汚物を蔑んでいるかのようで、自分たちのテリトリーへの侵入を明らかに拒んでいた。
俺、なんか悪いことした?
この人たちと上手くやっていくには、かなり骨が折れそうだ。
複雑骨折だけはしないよう心掛けよう。
「それじゃあ、今日の鍛練だけど―」
さっきから話をしているのは、この部隊の部隊長マンガスさんだ。
見た目はかなり若い。
褐色の肌に、尖った耳をしている。髪は肩に触れるくらい長い。そして黒色だ。
もしかして、ゼファルドさんと同じ種族だろうか。
気になったので、質問しようと横を振り向くと、マンガスさんの瞳から涙がこぼれ落ちていた。
訳が分からず、俺は混乱した。
慰めるべきか?
気付いていないフリをするべきか?
そもそも、なぜ泣いているんだ?
すると、マンガスさんが鼻水をすすりながら、弱弱しい声で言った。
「皆・・・話を聞いてよぉ」
ああ、なるほど。
自分の部下が話を聞いてくれないから泣いていたのか。
・・・
部隊長に向いてなくね?
こんなに頼れなそうな上司、誰も付いていこうとは思わないだろう。
もっと堂々としていなければ。
「まぁまぁマンガスさん、落ち着いて・・・」
「新人に慰められた・・・。なんて情けない奴なんだ僕は!」
さらに状況が悪化してしまった。
マンガスさん、泣き虫なだけじゃなく、ネガティブ思考な人なんだな。
それに、誰もマンガスさんを助けようとしない。
というか、みんな無視している。
これが日常なのか?
まったく、前途多難である。
こうして、ラストラドでの鍛練生活が幕を開けた(?)。
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