第20話 肉担当の見学 4
確かに相手の腹に直撃した。
でも、何の感触もない。まるで霧の中に入ったように。
「残念!終わるのは君のほうだ」
男は俺から少し離れたところにいた。そして、矢の先端が俺の目の前にある。
ああ、終わった。
いけると思ったのに、このザマだ。
相手のほうが何枚も上手だった。
皆を助けられないのが悔しい。
助ける力のない自分が情けない。
皆を殺そうとする人間が憎い。
俺の中に、負の感情が渦巻いている。
でも、どうしようもない。
俺はもうすぐ、矢に貫かれて、
死ぬ。
「終わりだ」
矢が俺に向かって飛んだ。
もう避けられない。
死を覚悟した、そのときだった。
バシィーーンッ
「!?」
目の前に見えない何かが現れ、俺を矢から守った。
「こ、これは・・・!」
俺の中に希望ができた。
こんな芸当ができる人を、俺は知っている。
「大丈夫か、ショウ!」
「ヴェイルズ!」
魔王城から助けが来たようだ。
ヴェイルズ以外にも、たくさんの人が来た。
「何者だ、お前」
「今はまだ答えられないなぁ」
男のほうは、まだ余裕の表情だ。
「今ここで戦って、戦力を減らしておいてもいいんだけど・・・」
男は少し悩んだ顔をした。
「でも、今はいいかな。些細なことだし。それに、勇者が怒ったら面倒だ」
男の顔は、再び笑顔になった。
「さっきから何を言っている?」
男はヴェイルズの質問には答えず、クルリと回って、俺たちに背を向けた。
「逃がすと思うか、人間!」
「そんなに焦らなくても、またすぐに会えるよ」
そういうと、男は霧のように姿を消した。
全身の緊張が一気に抜け、俺は立っていられなくなった。
敵がいなくなったことを確認して、皆が怪我をしたワーウルフたちの治療をはじめた。
危険は去ったはずなのに、俺の心は晴れていない。
面白かったら、評価・ブックマークよろしくお願いします。




