第15話 侍女のお仕事 1
今日は魔王城で働く侍女の仕事見学をすることになった。
エリーナの話によると、この魔王城には約30人のエルフの侍女がいるらしい。
「はじめまして、シュンと申します。今日一日、よろしくお願いします!」
「あいよ、よろしくね!私はサニティア。ここの侍女たちの総括をしているよ」
サニティアさんは陽気な人で、まるで近所のおばちゃんだ。エルフなので、耳がとがっている。
「あんた、今私のことを「おばちゃん」って思ったでしょ?」
「い、いえ!一切思っていません!」
どうやら勘が鋭いようだ。気を付けよう。
侍女の仕事は早朝から始まる。
魔王城に暮らす人たちの朝食作りが最初の仕事だ。
厨房に行くと、何十人もの侍女たちが忙しそうに料理をしていた。
皿を置く音、油の跳ねる音、卵を割る音、野菜を切る音、様々な音が入り乱れていた。
「次の皿を早く持ってきてくれ!」
とりわけ厨房で大きな声を出している男がいた。
服装はシェフのようだ。
見た目は中年のおじさんで、無精ひげを生やしている。
しかし、顔つきがイケメンだ。
イケオジというやつか、羨ましい。
「あの男の人は誰ですか?侍女には見えないのですが」
「ああ、グルムね。あいつはここでシェフをしているよ」
魔王城には専属のシェフがいるのか、すごいな。
俺は少しの間、手際のよいプロの料理姿を見ていた。
ある程度、朝食が出来上がると、侍女たちは料理の盛られた皿を厨房の前にある大きな縦長のテーブルに運び始めた。
テーブルには真っ白な布が敷かれ、傍には何個もの椅子が並べられている。
エリーナが言っていた優秀な戦士たちが来るのだろうか。
少し楽しみだ。
そして、俺がボーっと眺めている間に朝食の準備が完了した。
侍女たちはテーブルの隣にきれいに整列をすると、部屋の扉が開くのを静かに待った。
さすがプロだ。無駄がなく、洗練されている。
俺に侍女は向いていない気がした。というか、蚊だから無理な気がする。
少しすると、扉が開いて一人の男が入ってきた。
「お、ショウじゃないか。今日は侍女の見学か?」
「ゼファルドさん、おはようございます」
まず最初に入ってきたのはゼファルドさんだった。
その後、続々と人がやってきた。
斧を背中に背負った大男や怪しそうな服装の女、ちいさな子供、色々な人がやってきた。中には人型の狼
までいた。
さすが異世界だな。
「やぁ、ショウ。侍女の仕事はどう?」
「俺には向いてないかも」
その中にはエリーナやヴェイルズもいた。
そして、少しすると全員が揃った。
魔王であるエリーナは全員の顔を見ながら言った。
「おはよう、みんな。今日も一日頑張ろう!」
エリーナの掛け声とともに、朝食が始まった。
各々が好きなように話をしており、楽しそうだ。
貴族の食事というよりは、冒険者の食事といったほうがいいかもしれない。
元の世界にいたときは、家で一人、孤独にを食事をしていた。
いや、食事というより栄養補給というべきか。楽しくはなかったし、早く済ませることばかり考えていた。
だから、目の前に広がる光景は、俺には輝いて見えた。
朝食が終わると、侍女たちは素早く片付けにかかった。
まだ朝だというのに、もう疲れを感じる(見ているだけだが)。
朝食の次は、魔王城の掃除だ。




