第13話 見学先
バシッ!
俺は頭を叩かれて、ビックリして跳ね起きた。
「いつまで寝ている?お客様気分か?魔王様の善意に甘えるようなら、私はお前に一切容赦しない」
ヴェイルズが鬼の剣幕で俺を見ている。
この世界にアラーム付き時計など存在しない。
日の出とともに一日が始まるのだ。
しかし、このときの俺にそんなことを知る由はない。
理不尽な暴力を受けたと思いながら、俺は準備を整えて(触角の寝ぐせ?を直すだけ)部屋を出た。
すると、部屋の前で待っていたヴェイルズに服を投げられた。
「これを着てから行くぞ。裸で城内を歩き回ったら、不審者と勘違いされて殺されるかもしれない。この
城で血なんぞ流してくれるなよ」
ヴェイルズの口調は強いが、俺のことを心配してくれているのだろう。優しいやつだ。もしかして、ツンデレか?
俺はニヤニヤしながらヴェイルズの顔を見た。
仕方ない、朝の暴力は許してやろう。
渡された服に着替え終わり、俺は部屋を出た。
「ふん、少しはまともになったな」
ヴェイルズが変わらず強い口調で言った。
俺が着ている服は、いわゆるタキシードだ。
腕を通すところが二か所しかないので、真ん中の足は服の中にしまった。残りの足二本にはズボンを履いた。
どうしてこのサイズ(俺の身長は約1メートルだ)の服があったのか不思議だ。
俺はヴェイルズに連れられ、エリーナのところへ向かった。
道中、何度かヴェイルズに話かけたが、すべて無視されてしまった。
ツンデレは難しいな、と心の中で思った。
「魔王様、ショウを連れてまいりました」
「わかった、入っていいよ」
そう言われると、ヴェイルズは扉を開けた。
他の部屋に比べ、ここの扉は大きく分厚かった。それに、両開きで特別感を感じた。
扉を開くと、目の前には巨大な空間が広がっていた。部屋の両サイドには柱が何本も奥に向かって並んでいる。
そして、入り口の反対側、部屋の奥には少しの階段があり、その上に立派な椅子があった。
エリーナはその椅子に座っている。
なんだか、緊張するな。
昨日と違い、エリーナには威厳のようなものを感じる。
「ヤッホー、二人とも!この部屋、無駄に広いから近くまで来てもらっていいかな?」
前言撤回。威厳のようなものは一瞬にして消え去ってしまった。
俺とヴェイルズは歩いてエリーナのところに行った。たしかに、歩くのが面倒だ。
「今日の見学なんだけど、嫌だったら断ってもいいからね?」
エリーナは少し、心配そうな顔をしている。
「大丈夫だよ。今日は見学だけでしょ?それに、俺はしっかり働いてエリーナや他の人に迷惑を掛けないようにしたいんだ」
俺の意思はしっかりと伝えたが、エリーナはまだ心配そうだ。
「急なお願いで、すぐに見学を受け入れてくれたのが一人しかいなくて・・・」
「どんな仕事でも、まずは見てみないと!」
俺は力強く言った。たとえキツい仕事であったとしても、俺にできることなら力になりたい。
恩を仇で返すのは嫌だ。
「実は、今日の見学はゼファルドのところなの。シュンを殺そうとした、あの人よ」
「え?」
まさか初っ端からあの老人のところとは。
上手くやれる自信がない。
さっきまでのやる気はどこかに行ってしまった。




