第11話 提案
俺は今までに起きたことをすべて話した。
元々いた世界で死んだこと、謎の空間で一人の女性に会ったこと、気づいたらこの世界に蚊として転生していたこと、そして、動物の血を吸うとスキルが手に入ること。
「なるほどね、興味深い話だわ・・・」
俺の話が終わると、魔王は少しの間、腕を組んで下を向いていた。
そして、顔を上げると後ろに立っていた男に話しかけた。
「今聞いた話に、何か知っていることはあった?」
「・・・いいえ、ありませんでした。このような現象は一度も聞いたことがないです」
「そうよね・・・」
二人の表情が深刻そうになっていた。
どうやら俺が経験したことは前代未聞だったらしい。
ということは、俺以外にこの世界に転生してきた人はいないということか。
「ねぇ、あなたは別の世界から来たばかりなのでしょう?」
「は、はい」
「だったら、ここに住まない?」
「!?」
俺は突然の提案に驚いた(後ろにいた男は俺以上に驚いていたが)。
俺が住む?魔王城に?
「あなたはこの世界に来たばかりで知識が無い。私たちは正体の分からない存在をこの地に放っておきたくない。だから、あなたを目の届く範囲に置いておきたい。悪い話ではないでしょ?」
確かに、俺にとっては好都合かもしれない。俺にはこの世界の知識がなにも無いし、頼れる味方もいない。
もし魔王が守ってくれるというなら、ここが一番安全だろう。
でも、
「私はよそ者です。まだ会ったばかりの信用できない者を懐に入れて大丈夫なのですか?」
魔王は一切動じず、真剣な眼差しで答えた。
「私にとっては、自分よりも他の者が傷つくほうが嫌なんだ。だから、あなたが牙を向けるなら、それは私であってほしいと思う。ゆえに、あなたは魔王城にいて大丈夫だ」
ああ、なるほど。この人は本当に優しい人なんだ。他人のために命をかけられる、バカみたいなお人好しなんだ。
でも、俺はそういう人が一番大好きだ。
苦しい世界にいるほど、優しさを持つ人は誰かの希望になると俺は思っている。
彼女の目には、覚悟と優しさが宿っているように見えた。
「それに、この城には優秀な戦士が何人もいる。彼らが太刀打ちできないような化け物はこの世界にいないだろう!」
魔王は自信満々にそう言った。
この世界で一人孤独に生きるよりは、この人の傍にいたいと俺は思った。
「分かりました、これからよろしくお願いします」
そして、俺は魔王城で暮らすことになった。




