表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

爪の痕


ひとりの少年がしゃがんでいた。

昔に崩壊した建物の、そのまま放置されていた瓦礫の山の傍ら、岩の角塊を集めていた。

少年は毎日、壁の欠片を集めた。


ある日どこからか、真新しい石材をたくさん集め持ってきた。

そしてそのいくつかを砕いた。四角い石材を地面に並べていき、その上に泥を塗り、

そこへ壁の欠片と真新しい石材の欠片を隙間なく並べた。

彼は何も言わなかった。


それからも毎日彼はやって来て、

毎日、彼は石材を砕き並べ、毎日、集めた壁の欠片とあわせて積んだ。

彼は毎日やって来た。

彼は何も言わなかった。


ある頃から町の子供たちが、彼とともに

石材を砕き並べ、壁の欠片とあわせて積み始めた。

彼と子供たちは何も言わなかった。


ある頃から町中の大人たちが、彼と子供たちとともに

石材を砕き並べ、壁の欠片とあわせて積み始めた。

彼と子供たちと大人たちは何も言わなかった。


ある頃から、国中の人々が、彼と子供たちと町中の大人たちとともに

石材を砕き並べ、壁の欠片とあわせて積み始めた。

誰も何も言わなかった


とある人が、立派な装飾をこしらえた。

それはようやく出来上がった建物の天辺に、そびえたつように飾られた。

その天辺の飾りは、この建物を壊した人の、息子がつくった。


天辺にその飾りがついて初めて、その建物は昔と同じ形になった。

その外壁は、真新しい石材と、古い壁の欠片で斑になった。

それは、この建物が壊れてから、60年後の話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ