4.冒険者ギルドと宿屋
門兵の男はRPGとかでよく聞きそうな台詞を口にしてくる。
歓迎の言葉を受けながら俺は門を抜ける。
男がラシャーナと言っていた町並みに俺は感動して立ち止まり思わず感想が口から漏れた。
「おぅふ…ファンタジーの田舎町って感じ」
道はある程度整理されているのか中央のレンガで出来た3メートル程の壁に囲われた屋敷がある場所まで真っ直ぐ道が伸びている。
町の建物は土台が低い石垣でその上に木造で建物が建てられ、それらが一本道を挟む様にずらりと並んでいる光景はかなりグッとくるものがある。
こう言ってはかなり失礼だが文明レベルの低さが滲み出ている感じがとてもポイントが高い。
少しの間再び異世界感を感じつつ冒険者ギルドがあるらしい中央の方へ歩き出す。
屋敷がある場所が町の中央なら多分町の広さは端から端まで歩いても10分も掛からない位だと思う。
建物は2階建てが多く、お店なんかは一階部分がお店で2階部分が住宅か事務所とかなのだろう。
と言っても俺が入って来た門側の一本道はそんなに出入りがないのかお店もほとんど無さそうだが。
中央にある屋敷の防壁周りはそれまで土の道だったのが変わり石畳になっていた。
中央は3階建ての背の高く石造りで出来た横幅もある建物がいくつかある。
多分どれかが冒険者ギルドなのだろうが悩む事なくすぐに分かった。
建物の造りはそこまで変わりは無いが付いている扉に違いがあり、冒険者ギルドではないと思われる建物は扉の板に細工が施されており所々鉄が使われているが冒険者ギルドらしき建物は板に取手が付けてあるだけでしっかりした建物の扉としては若干違和感がある。
近づいて見ると看板があり意外にも普通に読めたが予想通り冒険者ギルドとあるのでここで良かった様だ。
日没までは太陽の位置的に後2、3時間あるかどうかなので早速、手続きを済ませようと中にはいる。
中に入ると建物自体が大きいのでそれなりに広く少し奥に受付がある。
門兵の男が言っていた様に冒険者自体が少ないのか受付にはそれらしき人達はいない、それか単純に時間的に既に仕事に出ているとかだろう。
正直テンプレに身構えていたが嬉しい事に閑古鳥が鳴いている様なので今のうちに用事を終わらせよう。
受付には20代位の女性が1人いたのでその女性に話し掛ける。
「冒険者になりたいんだが冒険者登録はできるか?」
俺からは見えないがカウンター下で事務仕事をしていたのか声を掛けられてようやく俺の存在に気がつき、少し驚き混じりの様子だ。
「あら、冒険者登録?めずらしいわね。」
門兵の男も最初言っていたがこの町でわざわざ登録しに来るのは珍しいらしい。
「門にいる兵士にも言われたがそこまで珍しいのか?」
まさか2人同時に珍しいと言われては俺は気になるので女性に聞いてみる。
「まあそうね、ここらの冒険者は北の鉱山がある子爵領か魔の森がある辺境伯領、それか東にある公爵領に行くのがほとんどじゃないかな?」
女性は俺の疑問に答えてくれたが地理情報など皆無の俺では殆ど理解出来ないが魔の森、鉱山、公爵と名称だけで凄そうだし俺の思ってる冒険者ならここより仕事がありそうな事は分かった。
(んーどうせ仕事するなら稼げるに越した事はないから登録したら適当に宿で1泊して移動するのもありか?)
俺の気持ちが稼げそうな他領に気持ちが向き始めていることが分かったのか女性が考え込む俺に先程とは打って変わって、焦る様に話しかけて来る。
「君、さっき冒険者登録したいって言ってたわよね!お願い!暫くで良いから登録して仕事受けてくれない?!」
さっきまでは落ち着いたお姉さんって感じだったのが急変したので俺は面食らいつつも答える。
「仕事?まだ登録すらしてない俺がか?冒険者が少ないって聞いてたがそんなに居ないのか?」
未だ登録すらしてない奴に頼み込む程なのは流石にヤバくないかと女性に聞く。
「このギルド内を見れば分かると思うけど居ないわね…元々このギルド自体が近くの領に冒険者達に取って魅力的な場所が多いから殆ど立ち寄る人なんていないのよ、この町周辺も近くに森はあるけれど比較的弱い魔物しか居ない事もあるのかもしれないけどね」
どうやらやたらと閑古鳥が鳴いているとは思ったがこれが平常時らしい。
女性は哀愁を漂わせながら俺にギルドの現状を伝えて来る。
実際俺も他に移動しようとか考えたしこのギルドに人がいないのはある意味納得だな。
考えてもみるとある程度お金があるとは言えもう少し貯めてからの方が良いし暫くは此処で活動するのも悪くないか?
他に競合者がいないなら仕事を受けやすそうだし何よりこの女性が言うには周辺には弱い魔物しかいなのも俺に取っては都合が良いしな。
「そうなのか、なら登録したら暫くはここで活動する事にするよ、他に人がいないのも俺に取っては仕事しやすそうだし」
俺が了承の意思を伝え登録を願うと女性は一気に嬉しそうにする。
「ほんと‼︎?助かるわ!ちょっと待っててね!」
目をまんまるにしながら嬉しそうに喜び俺に待つよう言い受付の奥へ行ったが何か紙を持ってすぐに帰って来た。
「はいこれ、登録用紙よ。氏名、犯罪歴のがあるかどうかの有無を書いてちょうだい。それと登録料が銀貨一枚なのだけどあるかしら?」
奥から持って来たのは登録用紙だったらしい。
それにしても名前と年齢はわかるが犯罪歴の有無はこんな簡素な紙に書いて判断する事なのかと心配になる、それに書く項目がかなり必要最低限だ。
てっきりステータスにあった職業やスキルだとかを書かされる事を懸念していたので内心少し安心した。
俺は名前の欄はユウにしそれ以外はステータスに載っていた18歳という奇しくも若返った年齢に犯罪歴何てもちろんないので無しと書き背負い袋から銀貨一枚を取り出し用紙と共に渡した。
「ユウ君って言うのね、私はルシエラよろしくねユウ君。年齢は18。へえ〜成人はとっくに過ぎていたのね若く見えるからもう少し下かと思ってたわ。うん、問題無さそうねっ、」
受付の女性はルシエラさんという名前みたいだ、茶髪の髪にぱっちりした吊り目気味の瞳、人当たりも良さそうな雰囲気で美人で気の良いお姉さんと言う印象だ。
俺の名前を言いながら笑顔を浮かべよろしくと伝えて来る、これが恋多き人物なら一瞬で惚れるのだろうと思える程、美人の笑顔は絵になると他人事の様に思っている間にもルシエラさんは書かれた項目をチェックしていくと頷き問題ないとお墨付きを頂いた。
内心俺は仮にも身分証になる物の手続きなのに確認が雑すぎるのではとも思うが厳しくされて身分証を貰えなくなっても自分が困るだけなので余計な事は言わない。
とりあえず俺はルシエラさんに自らもよろしくとだけ伝えた。
ルシエラさんはそんな俺に再度「よろしくね」と笑顔で言い言葉を続けた。
「それじゃあギルドカードを発行する前にいくつか説明と確認をさせて貰うわね。
冒険者ギルドは国王様が最高責任者を務める国営の機関で王都にギルド本部があって、各領主が治める領地の都市や町、村にもギルドの支部があるの。
ここはラシャーナにある支部だから正式名称だと冒険者ギルドラシャーナ支部になるわ。
冒険者の仕事は主に討伐、護衛、納品、特殊の大きく分けてこの4つに分けられてて、討伐は魔物を討伐してギルドに討伐した魔物の魔石を渡せば討伐報酬と魔石の報酬もでるわ。
納品はギルドで買い取りをしている魔物の素材や森で取れる薬の材料になる物や食用の物を採取して来る事ね。
魔石の買い取りも討伐の証明と一緒に納品の部類に入るわよ。
残りの2つに関してはユウ君はまだ受けられないから初めて受けられる様になった際に私じゃなくても受付から説明されると思うからね。とりあえずここまでは大丈夫そうかな?」
ルシエラさんが説明をいったん切り理解できたかどうかの有無を聞いて来る。
俺としては幾つかアニメや小説とはやはり若干違うんだなという違いと、この世界ならではの物騒な話が普通に出て来る事に驚きながらも説明された内容自体は難しいことはなく理解はできていた、多少気持ちは追いついてないが。
よくある設定だとギルドは国を超えた独立機関的なのが多いが普通に考えれば国としては独立機関に国中をうろつかせるより、国営の方が単純に色々やり易いのだろう。
途中までの説明を聞きそんな事を考えつつもひとつ質問して聞きたい事が出来たので聞いてみようと思ったが
(……)
思いとどまり直接聞かず質問内容を少し変えてルシエラさんに質問した。
「魔物について詳しく知る方法はあるか?もし倒せた時の出来れば解体する参考になる奴とか」
俺はルシエラさんに魔物の解体書の様な物があるかを質問した。
本当に聞きたかった事は魔石が魔物のどの辺りになるかなのだが態々説明もしないと言う事はもしかしたらこの世界では常識なのかも知れないと思い少し遠回りな聞き方をしたが魔物についての情報もどのみち欲しいと思っていたので質問した物があるなら今後の為を思えばちょうどいいと思えて来ていた。
「お〜今の説明を聞いてして来る質問がそれとはね、ユウ君が真面目で勉強熱心で私、嬉しいよっ、、、、、っと質問に答えましょう、一応冒険者ギルドには資料室があって魔物の簡単な解説が載ってる資料や納品物の見本として絵なんかが載ってる資料とかはあるけどそれ以上詳しいのとか専門書何かは本屋に行って購入するしかないわね。
この町にも一軒だけだけどあるからユウ君の欲しがってる物くらいならある思うわよ。」
ルシエラさんが言うには俺が欲しい物はギルドに無く本屋にあるらしい。
日本だとそこまで高くなかった本だがこの世界だといくらするのだろうか見に行くのが少し怖いような気がするが後日行ってみよう。
とりあえずギルドにも簡単な資料はあるらしいのでそちらを見てから判断する事をルシエラさんに伝える。
「そうなんですね、ギルドの資料室で見て回ってから判断したいと思います。物足りなさそうなら本屋に行ってみますね。」
俺がそう言うとルシエラさんは嬉しそうに頷きながら言った。
「うんうん、ユウ君は慎重なんだねっ、良い事だよ。それじゃあ続きの説明良いかな?」
ルシエラさんは少しばかり機嫌良さ気に続きを話して良いか聞いて来たのでお願いしますと伝える。
「それじゃあ次は冒険者ギルドのルールとランクについて説明していくね。ルールからだけど、まず冒険者ギルド内での冒険者同士の諍いにはギルドは一切関与しないから気をつけてね、もしその時にギルド内を破損させる様な事があった又はギルド職員を負傷させたなどがあった場合は損害賠償と即刻衛兵の詰所行き最悪奴隷落ちだからね。あと、町中はもちろんギルド内で冒険者が暴力沙汰になった場合は法に基づいて処罰され奴隷落ちにされる場合があって更に武器を抜いた場合は即刻死刑されても文句言えないからくれぐれも注意してね。冒険者は危険な仕事が多い分街中での武装を許されているから基本的に罰則が出るような事があると比較的刑が重いから十分注意する様に!。
次に冒険者ランクについて説明するわ。
冒険者ランクは下からF、E、D、C、B、A、Sの順にランクが上がる様になっていてユウ君は最初のFランクになるわね。大体のランクの目安を言うとFは仮登録の状態になっていて依頼を何でも10件受ければ自動的にEランクに上がれる様になっているの。だからEランクでやっとルーキーになれて次のDランクで一人前、このランクが最も多いと思うわよ。次のCランクは所謂ベテラン勢ね、Bランクから上は何か人より秀でた物がないと行けないと言われているわね。
Cランクからは貴族からの指名依頼が来る様になったり、その他に非常事態時に出る緊急依頼の参加要請が来る様になるわ。これに関してはよっぽどの理由がない限り断る事は難しいから注意してね。
こんなところかしら。何かここまで分からないところはある?」
続きの説明を聞いた俺はすごく異世界感を感じていた。
まず事あるごとに問題を起こせば奴隷落ちまでしてしまうシビアな世界に内心驚き自分は気をつけよと固く決意をする。
物騒な世界だと思っていたが人の命が比較的軽いようでなかなかに慣れるのが大変そうだ。
説明の一部に驚きつつもその後のランクに関してはもし上がれたとしても面倒なのでDランクで止められるのなら止めようと思っている。
貴族に関しては最悪依頼ではなく粗相を犯して貴族の手により死ぬ可能性も捨てきれないので関わらないようにしようと今決めていた。
俺自身ランクは今のところ興味が無い、現状は貯蓄出来る程度の稼ぎと自分を鍛える事の2つに絞りたいのでギルドの買い取りに関して、ランクは関係ないらしいので俺は暫く稼ぎの部分では常設の討伐か採取を狙いつつ周辺の探索、把握を重点にしようと思っている。
なので説明のなかで特に今のうちに聞いた方がいい事は無さそうなので
「大丈夫かな…聞きたい事が出来たらまた聞きにきても良いのか?」
大丈夫と答え再度聞きたいことの質問は大丈夫かの確認してをとる。
「もちろん大丈夫よっ、いつでも来てね。それじゃあこの水晶に手を乗せてくれる?」
ルシエラさんはカウンターの下から水晶を出し俺の目の前に置いた。
よく分からないが待たせるのも良くないので言われるがまま10センチ程の丸い水晶の上に手を置くと淡く光りすぐに収まる。
「はい、手を離していいよ」
光が収まり離して良いと言われたので離す。
俺が手を離すとルシエラさんは右手に持った鉄製のカードを水晶の上に軽く触れさせると再び水晶と共にカードも若干ながら光を出していた。
終わったのかカードを水晶から離し満足げに俺にカードを渡しながら口を開く。
「はいっ、このカードがユウ君の身分証にもなる冒険者ギルドカードよ。今やっていたのはユウ君の魔力をカードに記録する為の手順なの、こうする事で冒険者ギルドの受付の人が逐一カードに情報を書き込む事が出来てここ以外の他支部に行った時に活動記録が読み取って共有し易い様になっているの。だから依頼を受ける際には受注時と完了時はギルドカードの提示をお願いね、常設依頼に関しては完了時だけでも大丈夫よ。それと無くさないよう気をつけるように、ギルドカードには犯罪の記録もされるから稀に犯罪を犯した後に態と再発行しようとする人もいるの。その場合冒険者ギルドでは審査が厳しくなって最悪衛兵に容疑者として事実確認や指名手配がないか調べられるから絶対、無くさない様にね。ここまでで登録作業は終わりだけど大丈夫かしら?」
先程のは無意味に光らせていたわけでは無く俺の魔力をカードに記録し他支部との情報交換ツールと化す手順らしい。
地球とは違ったハイテクさに驚き渡された鉄板をマジマジと見ていると鉄が削られた様に俺の名前と登録支部が書いてありその裏はギルドの紋章らしきものが大きく描かれている。
これを無くすと10万もかかり最悪犯罪者予備軍扱いをされるらしいので絶対に無くさない様にしようと決意する。
俺は背負い袋に入れるふりをしてアイテムボックスに入れた。
これなら無くす心配も無いし安心安全だ。
登録も終わりらしいので俺はルシエラさんにお礼を言う。
「どういたしまして、でもこれが私の仕事だからね。今日はこの後どうするの?」
ルシエラさんはこの後の予定聞いて来る。
「門の方まで一旦戻って作った身分証を忘れない内に見せに行こうと思ってる。その後は宿屋を探そうと思ってるが…何かいい場所はないか?後出来れば武器や雑貨なんかの店の場所も教えてほしいんだが。」
いつでも聞いてとの事だったので早速宿について聞いてみた。
「そうね、身分証を持たないで町に入ったのなら早めに言っておいた方がいいわね。宿屋はそんなに数は無いけど予算に余裕があるなら’憩いのそよ風’って所がおすすめね、ギルドを出て正面の北門に続く道沿いに3回建ての建物があるからすぐに分かると思うわよ、冒険者が買う様な物はギルドを出て左に行けば幾つかあると思うから目的の物がありそうなお店に行ってみてね。」
聞きたい事を聞けたので俺はルシエラさんにお礼を言いギルドを出ようとする。
「そうか、用事を済ませたら早速宿屋に行ってみるよ。色々ありがとな。」
そろそろ日も落ちそうなので早めに行こうと右手を挙げながら再びお礼を言い立ち去ろうと振り返りギルドの出口へと歩き出す。
「依頼ちゃんと受け機に来てねー。朝から夕方くらいの頃なら私受付にいるから、待ってるわよー!」
そんな言葉を背に受け俺は再び右手を挙げ返事をしながらギルドを出た。
「登録したてのルーキーに期待するってどんだけだよ」
外に出てさっきの門兵のとこに向かっている途中でルシエラさんの最後の言葉を思い出し思わず内心が口から漏れた。
この町に冒険者は少ないのは何と無くわかりそれにより冒険者ギルドは色々と経営的な部分で大変なのだろう。
逆に冒険者が少ないと言う事はそれだけ町周辺は魔物がいるにしても比較的安全で平和なのだと私見だがそう考え、俺は危険な場所の冒険者ギルドは勿論大変なのだろうが、平和な町の冒険者ギルドもある意味大変なんだなと思った。
考え事をしていると門にたどり着き門兵の男を見つけギルドカードを渡す。
「おーさっきのルーキーか、ギルドに登録早々持って来るとは関心関心。ちょっと待ってな……よし、これで正式に入場の手続きは完了だ。基本町の出入りには身分証を確認する決まりだからな出入りの際は用意しとけよ。身分証を見せれば入町税は免除されるからな。これから頑張れよルーキー!」
門兵の男は冒険者ギルドでみた水晶とは少し色味の青い水晶に受け取ったカードをかざし水晶が青く控えめに光ると俺に返して来る。
多分冒険者ギルドとは違う記録が残るようになっているのだろう、ハイテクだ。
出入りの際の注意事項を受け激励の言葉をもらう。
「まあ、ぼちぼちでやっていくよ」
俺は言いながらお礼に手を挙げ宿屋がある方向へ進む。
また来た道を往復する様に戻り北側の門の道を見るとすぐに目的の宿屋があった。
この町の規模にしては大きめで外観は木材で出来た建物を石材で補強してあるしっかりした造りだ。
屋根が他の建物は木材の色そのままの茶色だったりが多いが憩いのそよ風は赤に塗られていて一度見れば印象に残り易い。
俺は意匠の入ったしっかりした扉を開いた。
中に入るとすぐの所に受付がありその隣に食堂のスペースがあった。
俺のイメージではこういった世界にある宿屋の食堂はガヤガヤしているのを想像していたが意外にもそれ程ではなく家族連れや商人風の人達何組か居るが馬鹿騒ぎしないで普通に食事を楽しんでいる。
(ルシエラさんが予算があるならと言っていたからそこそこの宿屋なのか?料金が気になるが雰囲気は良さそうだし良いかもな)
既に内心はお薦めしてもらったこの宿を気にっており、後は値段を聞こうと受付にいなかった店員を探すと厨房と思われる場所からちょうど出てきた恰幅のいい女の人と目が合うとこちらにやってきた。
「あら、いらっしゃいお客さんかい?」
女性は俺に話しかけ客かどうかと聞いて来る。
「ああ、冒険者ギルドに今日登録してルシエラさんにここをお薦めされたから来たんだが、ここは憩いのそよ風であってるか?まだ部屋があれば泊まりたいんだが。」
俺は女性にお薦めされてきた事、泊まりたいことを伝えた。
「ええ、ここが憩いのそよ風で私が女将をしているわよろしくね。この町で登録したての冒険者なんて珍しいわね。へ〜ルシエラちゃんの勧めなのね。あの子良くここの食堂に食べに来るからうちを勧められるなんてあなた、気に入られてるわねっ。部屋は空きがあるから大丈夫だけどお金は大丈夫?うちは一泊大銅貨4枚.食事を朝と夕方付けるなら追加で大銅貨1枚だよ。体を拭く用のお湯は一回銅貨2枚よ。」
どうやらここの女将だった女性曰くこの町での冒険者登録者が珍しくルシエラさんがここを勧めるのも珍しいらしい、しかも良くここに来るみたいだ。
まあルシエラさんなりに俺には仕事を頑張ってもらおうと良い宿屋を勧めたのだろうな。
気になっていた料金だが大銅貨4枚らしいがそう言えば他の宿屋の料金を見ていないので高いのか安いのかイマイチよく分からない。
一応良さそうな宿屋なら10泊くらい一気に取っちゃおうと思っていたので合計すると銀貨4枚になるが、もうここにしようと決めた。
今日だけで長く歩いたり説明や手続きで体力的には意外にも大丈夫だが精神的に疲れたのでもうゆっくりゴロゴロしたい。
そうと決まれば女将に要望を伝える。
「金は大丈夫だから食事付きで10泊、泊まる事はできるか?」
俺は背負い袋から銀貨5枚はないので大銀貨1枚を出して女将に見せる様に金はあるので泊まりたい意志を伝える。
「あらま!そんなに泊まってくれるならこちらとしても大歓迎よ!食事付きなら全部で銀貨5枚ね。はいこれ、お釣りの銀貨5枚よ。それにしてもあなたってどこかのお坊ちゃん?」
10泊の連泊は女将としては本当に歓迎の様で、少し嬉し気に代金を受け取りお釣りを渡して来る。
流石に大銀貨は庶民でも大金なのか俺に何処かの坊ちゃんかと聞いて来たので普通に違うと答える。
「そう?まあ人の詮索は良くないわよねごめんなさい。それじゃあこれ部屋の鍵よあなたの部屋は2階の右の一番奥の部屋よ。鍵の施錠は自己管理だから荷物を置く際には気をつけてね。外出する時はこの受付に鍵を渡してちょうだいね、戻って来た時にまた受付の方で鍵を渡すわ。食事は原則朝はお昼までで夕食はよっぽど遅くなきゃ用意するけどあまりに遅いと無しになるから注意しちょうだいね。その場合でも料金は変わらないからなるべく早く食べに来る様に。それ以外でも普通に食事がしたい時は別料金で受け付けてるよ。」
違うと答えた俺にまだ疑っている様だが面倒なので好きに思わせる事にした。
幾つかの説明を受け終わりもう部屋に行っても言いみたいなので俺は女将に手を振りながら階段を上がり奥のへと向かう。
鍵を開け扉のを開くと中はセミダブルはありそうな広めのベッド、椅子と1人用の広めの机、クローゼットがある質素だが清潔感のある6畳くらいの部屋だ。
俺は背負い袋を机の上に置置いてベッドに思い切り寝転がる。
「ふう…何かこの世界に来てからやけに体の調子が良いんだよな〜。若返ったのもあるけど絶対俺のユニークスキルの影響がありそうなんだよな…」
ベッドに寝転んだが俺の体はそこまで疲れておらず、このまま寝ようと思えば寝れるが逆に徹夜しても大丈夫そうなくらいに体はまだ余裕がありそうだ。
俺の持っているユニークスキル《超健康体》、ユニークスキルはゲームやアニメだとどれもが強力だ効果はそのユニークと付く様に様々で唯一無二と言う言葉が相応しい。
俺のユニークスキルが常時発動型の所謂パッシブスキルなら字面通りの効果だとしたら俺は常に健康状態を維持できるというかなり恵まれた肉体を持つ事になるしこれは体を動かす分野ならかなりの長所になり得る。
実際今の俺はこの世界に来てから色々あり今に至るがそこまで体力の消耗も疲労感もあまり感じられない。
それにただの《健康体》ではなく《超健康体》なのが俺にはミソだと思っていて、更に何らかの強化が施されていての今の体の状態なのだろう。
明日からは少しの間、自身の能力の確認の為、自己訓練に費やす予定なので俺の予想が正しければ訓練がかなり捗りそうだ。
ゴロゴロとゆっくり考えていると流石に疲れのない状態でも寝転がっていれば眠気は来る様で俺は一旦ベッドから降り夕食を食べに行ってから眠り異世界初日が過ぎていった。