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3.目覚め

んっ…?

脳が覚醒し始めて先程まで無かった体の感覚と同時に五感も蘇り、情報量の少なかった先程の場所に比べ現在の情報過多な状況に一言言うとするならば


「ここ…どこだ?」


この一言に尽きる。

どうやら俺は程よく風の通るだだっ広い平原のど真ん中で突っ立っていたようだ。


「”アイツ”の言ってた事って本当だったんだ…」


正直、殆ど夢オチになるだろうと想っていたがまさか本当だったとは期待を裏切られるとはこう言う事を言うのだろう、、良い意味でだが。

少し興奮しながらも改めて周りの風景を見て行く。


「前も後ろも平原で奥の方に森がある感じか?というか風が気持ちいいな〜」


360度に広がる広大な平原に流れるそよ風を感じようと腕を大きく広げる。

少しの間、体全体で自然を満喫し終わると完全に目が覚めたように体をひと伸びする。


「んぅ〜…ッ!さてと。」


そんな一言に気持ちを切り替えひとまず優先順位を決める事にする。


「ここが本当に異世界だとか、そうだとしたらこれからどうするべきかとか考える事は山積みだけど、とりあえず人のいる街を探そうかな」


まず最初に村や街があるかを確認するために辺りを再度見渡す。


「んぅーめっちゃ草原」


呆れる程に自然が広がっている為、ここから村や街があっても見えないほどなので少し歩く必要がある事に面倒に想ったがもしここが異世界ならこんなとこに突っ立っているのは少々不安なので方角を決め歩き始めることにする。

(行くか)

異世界一歩めに何の考えも浮かばず景色を見渡しながら歩み始める。

向かっている方角は適当に決めている訳ではなく自分なりに判断して進んでいる。

歩み進んでいる前方右斜めの遠くに森らしき木々が見え、その更に奥にそこそこの標高のある岩山がそびえ立っている。

その山は滑り台のように片側が階段のように少しキツめの傾斜で、もう反対側が滑り台の様に少しゆるめの傾斜で横に広く広がって見える。

山があるという事は川が近くにある可能性が高いと考え今の方向に歩みを進めている。


10分程歩いたが意外にも至って平和で想ったよりも順調に歩みを進められている。

内心盗賊や魔物がいたらどうしようとかちょっとビビっていたがホッとしている。


「今のうちに確認できる事はしとくか…」


そう呟きながら試したひとつめの確認事項は失敗した。

キャラ設定時に見えていたステータスを再度みようとしたがアニメやラノベによくある『ステータス!』

と呟いたり心の中で念じたりと色々試したが現状確認するのは無理らしい。

おそらくステータスを見るにはスキル鑑定を持ってるか特別な道具が何か必要なのだろう。

まあ幸いにも記憶しずらいほどのスキル数はないので今すぐ見たいかと言われると実はそうでもない。


その他にステータスの確認方法で色々試していて分かったが所持しているスキルは基本的にスキルを意識していれば頭に直接どうすれば良いかが浮かんでくる。

正直気持ち悪いが便利っちゃ便利だ。

全然ステータスが見れなくて何故か所持しているスキル名を言っていたらアイテムボックスだけ反応があった。

他のスキルはうんともすんとも言わなかったが。。

アイテムボックスは物凄くシンプルで出したい、しまいたいと思うだけで良いので近くで無数に生えてる雑草で試して見ると簡単に出し入れが出来た。

意外に便利で中に何が入ってるか知りたいと思うと目の前にタブレットくらいの表示が現れる。

そこには防具(胴体)、服上下、下着一枚、革製背負い袋、短剣、水魔石、大銀貨2枚、銀貨3枚、大銅貨3枚、銅貨10枚が現時点で収納されている事を表示されていた。


「そういえば俺ってポイント使ってアイテム選んでたわ。」


確認をしようと思わなければ絶対忘れていたと思うし、今の服装が上下ともに麻製の荒めの生地の簡素な物でザ・モブの村人という感じだ。

意外にフィット感があり気が付かなかったが足の部分も藁か何かの干し草で編まれて作られているサンダルだった。

今更ながら気がついた俺はとりあえず歩みをいったん止めて呟いた。


「着替えよう…」


収納されている装備を出し装着する事にした。

せっかくポイントを使ったので使わなければ宝の持ち腐れだ。

防具は皮製で厚手の少し重量感があり装備していると無いとでは大分違うだろうなと安心感を多少なりとも持たせてくれる作りだ。

装着した時に少し大きいかなと思ったが魔法でも掛かっているのか体のサイズに急にぴったりとはまった時は思わず驚きと共に口から漏れた、


「おぅ…ファンタジーネ…」


若干片言になる程にはファンタジー感満載だった。

まあこれ以前にもアイテムボックスが普通に使える時点で異世界感を感じていたがまさに魔法という感じの防具を身に着けると嫌でも感じてしまった。

短剣を抜いて見ると刃渡20センチ程の片刃で少し刀身に厚さがあり頑丈そうだ。

ここが日本なら今の装備は完全に銃刀法違反だが異世界では大丈夫な事を願おう。

後は青い石とこの世界のお金だろうものが収納されている。

青い石は水魔石という名称らしく名前からすると水の魔力を含んだ魔石なのだろうと思う。

キャラ設定時のスキル一覧で俺には適性がなかったが属性魔法の項目がありそれぞれ、火、水、土、風の四つの属性魔法があったのでこの水の属性魔力を含んだ物なのだろうというあくまで予想だ。

恐らくこの水魔石はゲームやアニメ風に言うなら魔道具的な扱いで使用限界があるかは分からないが、自身の魔力的な物を流せば水が出てくるとかではないだろうか?

まあ魔力なんてどうやって流せば良いのか分からず手に持って握ったり、転がしたりして見るが全く反応が無いポンコツアイテムと化しているが。

“アイツ”に関しては俺は絶対説明が不足し過ぎてると思うんですけど、、と想いつつも今は分かりそうも無いので水魔石をとりあえずしまっておく。


お金に関しては俺の予想が正しければそこそこの額があるのではなかろうかと思う、俺の予想では銅貨を最小通貨とするなら銅貨1枚で100円としたら所持金は23万4千円だ。

何だか会社の初任給みたいな金額に若干の違和感を持ってしまうが貰える物、特にお金は現時点ではかなり安心材料になるので素直に嬉しい。

物価がどの程度かは分からないが日本だとしても少しの間なら生きていける金額だし大丈夫だろうと思う事にした。

保存食になる干し肉もあるし5pのポイント消費にしては俺的にはかなり内容が良くほくほくだ。


そんなこんなと途中着替えを挟みつつもある程度確認も捗りながら進む事体感1時間以上は歩いた(時計が無いので正確には分からない)頃やっと町らしき物が見えてきた。

お約束は裏切らないとばかりに町は周りが壁で覆われているようで壁の作りもしっかりしてそうなのでそこそこの規模なのではないかと思う。

町の存在が見えてからさらにしばらく歩きやっと入り口付近に辿り着いた。

近くで見てから分かったが町を囲っている壁は土で出来ておりその外側をさらに丸太などの木で補強しているみたいで、5メートルくらいはあるのでは無いだろうか?珍しい光景についじっと観察してしまうが今は辞めておこう。

町の入り口であろう門は木製で所々金属を使って補強してありかなり頑丈そうだ。

そんな見慣れない光景のオンパレードについ興味を持ってしまうが、門の前には長い槍に皮と節々に鉄を使った防具を身に付けている兵士らしき人物が1人がいるのであまりうろついて怪しい奴認定でブッ刺されても嫌なので平静を装えるよう(武装兵士が居るとか普通に怖い)努力しながら町に入りたいので兵士のいる門に近づく。

近づいて来る俺の存在に気が付いた様に男の兵士はこちらに視線を送りつつ目の前に着くと話しかけてきた。


「ん?ここに客とは珍しいな…冒険者か?」


どうやらこの町に来客は珍しいらしいがそこは気になるものの、流石に無視なんてして警戒されても最悪なので少し考えつつ質問に答える。


「まあ格好だけだな、冒険者志望なんだがここにギルドはあるか?」


俺は今まで見てきたアニメやラノベを総動員しつつあるのかも分からないが兵士が冒険者かと聞いてきたのでこれはっ、と思いギルドの存在を聞いてしまった。


「おいおい、流石にこんな田舎町でも冒険者ギルドくらいはあるぞ…。冒険者志望がこの町に来るとはますます珍しいな、平原から来たみたいだが道にでも迷ったか?」


兵士の男は俺の質問に多少テンションを下げつつも答えてくれる。

男曰くこの町に来客はどころか冒険者になる為に来る奴も珍しいらしい。

道に迷ったのかと聞かれそのままの通りなので素直に答える。


「村から冒険者になろうと出たは良いが適当に歩いてたらだだっ広い平原ついてしばらく歩いてたらこの町を見つけてな、正直早く町や村に辿り着きたかったからかなり助かった」


俺は男の質問にやれやれと言った感じで適当な嘘と本音を混ぜつつ答えた。


「お前無計画過ぎだろう、大丈夫か?それにしてもその装備はまあまあだが、よくその素人感丸出しなのに無傷でここまで辿りつけたもんだな…」


兵士の男は若干俺に呆れつつ心配してくれた様だ。

何だか俺の頭大丈夫か?のニュアンスに聞こえるのは気のせいだと思おう。

更に続いた言葉に少し不穏な物を感じたので兵士の男に質問する。


「ん?平原って何かいるのか?一応警戒はしてた俺は何も出会わなかったぞ?」


俺の言葉を聞いた男はさらに俺を憐れむ様な視線を送りため息を吐きながら俺の言葉に答える。


「はぁ〜…まあいい。だが運が良かったな平原には角兎がいる。駆け出しの冒険者なんかは不意に角にブッ刺さられて大怪我や下手したら死亡する事も珍しく無い、次からは気をつけろよ」


男はそう言い終わると俺の背中を思いっきり叩いてくる。

あの平原は実はそこまで安全では無いらしい。

正直ピクニックにちょうど良さそうだ何て思ったことは俺の残り少ない自尊心の為に口にしない事にしよう。

けど兵士の男曰く角兎は繁殖力も高くそこそこの数がいるらしく、もしかして出会わ無かったのは奇跡レベルなのではなかろうか?

軽く自分の幸運に安堵しつつもやっぱり異世界だわとも思っていた。

それに何だよ、角の生えた兎ってしかもその角を人間に向かって助走で勢いを付けながらブッ刺しにくるとかもうファンタジーすぎて寒気を覚えざるを得ない。

兵士の男の助言にこれからは気を引き締めようと決意を新たにする。

しかし何だかんだ呆れらてはいる物の助言や心配をしてくれるきっと普段から面倒見のいい人なんだろうと思う。

そんな男に俺は感謝の気持ちを伝える為口を開く、


「マジか…流石に次からは気をつける様にするよ」


俺の素直な言葉を聞いた兵士の男は薄く笑いながらも気の良さそうに、


「ははっ!気をつけるこったな、少し心配だが俺としてはこんな辺鄙な町に来る冒険者は少ないから歓迎するぜ?」


兵士の男に言われ気になったので俺は質問してみる。

「そんなに町に人の出入りが少ないのか?大丈夫なのかこの町は?」

率直に質問する俺に男は答えてくれる。


「流石に商人なんかは来る事もあるが冒険者として活動する為にこの町に来ることはほとんどいないな。ま、冒険者について聞きたい事があるならギルドに行ってみるんだな」


流石に人の出入り無しでこの規模の町だ、それなりに住人が居るのだろう、そんな町で商人の出入りが無くは無理だよなと男に言われそらそうだと納得する。

そう思っていると男が俺に町に入れるよう手続き的な事をしてくれるみたいだ。


「そんじゃ町に入れる手続きするがお前冒険者ギルドにこれから登録してするって事は身分証はあるか?」


どうやら町に入るには身分証が必要らしい。


「身分証?持ってないと中に入れないのか?」

そんな物は持って無いので動揺しつつ兵士の男に聞く。


「いや流石にそんな事は無いがその場合は中に入るには入町税の大銅貨1枚が必要になる。

それだけじゃ無く商人ギルドか冒険者ギルドで身分証を作り後日俺や他の門にいる兵士に確認の為見せに来る必要があるぞ。一応この場合は5日以内に身分を証明出来ない場合罰金が課せれられるし最悪奴隷落ちもある、気をつけろよと言うかお前どんな田舎の村から来たんだよ…」


俺の疑問はこの世界では常識的なものらしい。

もちろんそんな事は知る由も無かった俺には分からないので開き直る事にした。


「あはは…なんかすまん、これ大銅貨1枚、身分証はこれから作りに行って今日か明日にはまたここに来る事にするよ」


アイテムボックスのスキルがどんな扱いなのか分からないのでここに辿り着く前に干し肉と所持金の半分程は背負い袋に入れて肩に掛け背負っている。

そこから大銅貨1枚を兵士の男に渡し身分証の事を伝える。


「確かに受け取った、その様子じゃまだ分からなさそうな事がありそうだがこれからギルドに行くならそこで聞けるからちゃんと聞いておけよ。それと門が開くのは日没までだから身分証を持って来るならそれまでに持ってこい、それ以降は受け付けてないから気をつけろよ」


何だかんだとアドバイスをくれるこの男は中々いい奴だ。

今の日差しは太陽を見ると大体午後2〜3時位だろうか、正直適当だがそのくらいだと思う。

身分証の発行が早く終わるなら今日中に門兵の男に見せにこよう。

この世界じゃ最悪奴隷落ちするらしいからな、それだけは勘弁なので忘れないうちにさっさと終わらせよう。


「分かった、色々とアドバイスありがとな」

俺は男の言葉に了承し、感謝を伝える。


「良いってこった、これで手続きは以上だ、

ようこそラシャーナの町へ」


男の歓迎を受けながら門をくぐり俺はファンタジー溢れる異世界で初めての町にようやく辿り着いたのだった。

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