2.魔拳士?
『目覚めよ』
(!?)
重厚で威圧感を感じさせる声と共に強制的に意識が覚醒させられる。
意識の覚醒後に感じたのは強烈な違和感だった。
まず目は覚めてるはずなのに何も見えない〈声〉を聞いて起きたはずなのに周りからの音がその〈声〉以後は不自然に静かでまるで耳が聞こえない様だ。
そして最大の違和感は身体の感覚が全くない。
身体を動かす以前にじっとしているのに鼓動の脈動すら感じなく急死でもして幽霊にでもなったか?と思うが意識ははっきりしている奇妙な感覚に気持ち悪さと何かの病気なのかと考えたりしているとそいつは話し始めた。
『お前達にはこれから別の世界へ行ってもらう』
(別の…世界?)
二言目も威圧感を感じさせる声で言われた言葉に疑問を持つがそいつは言葉を続けた。
『選べ』
(??選べ…?何を?…と言うかいきなり過ぎだし言葉が少な過ぎだろう!?……!?)
思った事を言い終わる?頃に突然スクリーンの様なものが出たと言っていいのか頭の中に直接浮かびあがらせたと言うのか奇妙な感覚だがそれは目の前に出てきた。
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村田祐斗 18歳
人種:ヒューマン
職業:
スキル:
ユニークスキル
《超健康体》
Sp100
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(もう訳がわからなさ過ぎて処理しきれん)
浮かび上がった文字の羅列、その内容も分からない点が多すて一旦、思考停止をしクールダウンする事に努めた。
ここで気がつくが先ほどから立て続けに可笑しな状況になり続けているのに不思議と精神的には何故か不安を感じてパニックにを起こすまでにはならず、むしろ通常時より落ち着いていて思考もとてもクリアだ。
(俺ってもしかしてなんか操られてる?)
そんな人間の精神をいじる事が出来るなんてのは知らないが〈声〉の主が誰なのか、何者なのか分からないが少なくともまともな奴でないのは確かだと思えてきた。
加えてこれが寝ている間の夢ではない事を、心よりさらに深層部分の本能的な部分に直接理解させられる様な感覚を持ち更に〈声〉の主に疑問と疑心を持つが精神状況的には平常を保てている。
異常だと理解出来ていても精神的には波風ひとつ立たないギャップに違和感を感じつつも思考でも誘導されているのか言われた通り選択しなければならない衝動に駆られる。
(とりあえずは目の前の”これ”をどうにかするか)
自身が操られてる感覚を覚えながらも正直考えても分からないと言う結論に辿り着き、目の前のものを処理しないといけない謎の衝動に沿う事にした。
要は面倒臭くなり思考を諦めた。
〈声〉の主は文字の羅列を表示させて選べと声にした後は全く発言する事もなく存在も感じられない。
趣味として主にゲームやアニメを嗜んでいた俺としてはこの目の前に出てきた表示はステータス的なものである事は見た瞬間に薄々感じていた。
“選べ”とはつまりこのステータスを操作するなりして一番下の項目にあるspはスキルポイントか何かで、消費して職業、スキルの2つを完成させろと言う事だろう。
操作方法が分からないでいると職業の項目の様子が変わり一覧が表示されかなり数があるがさっと見ていく……
取り敢えず思考するだけで簡単に操作できる事に安堵しつつもこれだけは声は出ないが大きな声で言いたかった。
(何じゃこりゃ!??)
おそらく職業の一覧と思われるそれを見たが俺は内容というか選択しろと言う割に選択出来るものが偏りが激しい事に驚いた。
職業自体は先ほども思ったがかなり大量にある。
一部を例にすると剣士、騎士、魔法師、神官と代表的な物は大体ありその四つの中でも更に詳細に得意不得意が強化された様な職業から元のやつから上位に当たるであろう職業もある。
その中でも明らかにヤバそうな筆頭は勇者だろう。
ゲームやアニメなら絶対強い職業だが何でもかんでも選び放題と言うわけではなく取得するにはポイントspの消費が必要らしくノーマル級な職業でわ、そこまで消費しないが派生職や上位職になればそこそこの消費をするみたいで、勇者に関しては消費ポイントが150とそもそも選ばせる気が無いとしか思えない設定になっている。
とまぁ本来であれば吟味しつつ選択していくのであろうが俺には全く関係のない話だった。
何故かと言うとそもそも俺には”声”の主こと、これからは”アイツ”と雑に思う事にするが、選ばせる気は無いらしい。
明らかに一覧には大量に職業があるにも関わらず俺が選択出来る物はたった2つだけなのだ。
正直、これで選べとはどう言う事なのかと問いただしたいが残念ながら現在の俺は目も見えない、耳も聞こえない、身体の自由が効かないの最悪な三拍子が揃っている状態では抵抗のての字も出来ないので諦める。
その2つの選択肢が明らかに優良職であるなら喜んで選ぶが絶対にそれは無いと断言出来る自信がある。
職業の剣士ひとつでもその派生職は多くあり上位職であろうのも多くある。
それはその他の職業も同様であり、勇者に関しても魔法職と剣士系を合わせた様なものであると思うが俺が選べる2つの職は色々な意味でおかしい。
まず選べるのは『拳士』、『魔拳士』なのだがそもそもこの拳士系職業が何故かこの2職しか無く、なおかつ取得ポイントが他の職より少なめで嫌な予感しかしない。
その他の職は派生していくのに拳士には全く派生職が無い。
この2職なら実質の選択肢はひとつしかないも同然で、見た感じ明らかに拳士より上位であろう魔拳士を選ぶ他にない。
(魔拳士て…魔剣士の間違いじゃ無いのか?…)
こんなファンタジー感強めな職業欄を見た後で拳士を選ぶ奴はなかなかいないと思う。
(もしこれが本当に”アイツ”が最初言っていた、別の世界つまり異世界に飛ばされるのだとしたら)
ふと”アイツ”が最初言っていた言葉を思い出し考える。
(こんな明らかに物騒な世界ですよと言わんばかりの職業があるとこで俺は徒手空拳をしていく生き方をしなくちゃいけないのか!??)
絶望感が半端じゃない。
無意味だと分かっていても再度”アイツ”に向かって抗議しに行きたい。
職業欄で剣士や各種武器を得意とする職、魔法の様な遠距離攻撃方法がある世界で俺は素手で生きていけなければいけないらしい…
多分だが選択肢にも個人の適性の様なのがあるのだろう、それで選択出来る項目は文字が淡く光り選択できないものは暗い色の文字になっている。
だがその適性を判断したおそらく”アイツ”は俺に才能を感じなかったらしい。
流石に他に選ばれた奴がいるならそこそこの選択肢があるはずだ。
あまりの選択肢の少なさとその肝心の選べる2職が俺の思っていたものと違いすぎて更にテンションが下がった。
(というか、選択肢があるのは分かったが説明欄とか備考欄的なものが一切ないのはどうなの?)
ゲームやアニメならこう言ったキャラメイク時に選択出来る項目には大体ひとつひとつに説明欄の様なものがありスキルならその効果を把握して選択していくのが殆どだろう。
なのにも関わらずその様な説明は一切ない完全不親切設計だ。
選べとキャラメイクを強要する割にこの内容とは俺はこの時点で未だ声しか聞いていない”アイツ”に向かって心の中で中指を立てた。
(選択肢なんて無いし職業は魔拳士一択にするとしてスキルか)
職業の欄はとりあえず終わらせ次はスキルの選択に移る。
スキル一覧を見ると目が回りそうな程膨大な数があるがあまりに数があるからか思考である程度絞り込み検索が出来る事に安堵した。
(はぁー…もう”アイツ”嫌い…)
便利機能に安心して束の間にスキル一覧を見ていくとまたもテンションが下がっていくのを感じる。
また選択肢が少ない…恐らく拳士系だからか武器や魔法関係はほぼ全滅しており、選択肢が多いのはパッシブ系の常時自己強化が出来るタイプのスキル文字に淡い光りが灯っていた。
たがもう正直そこは何となく職業に適正判定がある時点でこのスキル欄の状態を予想していた俺は軽くテンションを下げるだけにとどまったが、
問題はスキルにも全く説明や備考欄がない事だ。
何となくスキル名で効果を予想は出来るがこんなのほぼ直感で選ぶのと一緒だと思った。
スキル一覧には鑑定のスキルがあるためこれを取れば予想だが職業やスキル、そして最も気になっているユニークスキルの説明や効果内容が見れるのだろう。
じゃあ取ったほうが効果を把握できて安全じゃない?
と思う奴もいるだろうが職業と同じでスキルにも適性が存在する為、残念ながら俺には習得できないらしい。
ここまで来ればもはや開き直りがしやすく直感でスキルを選んでいく。
(こうなったら絶対生き延びてやる……!)
あまりにひどい選択肢を前にすると何故か逆にムキになってしまい絶対に生き延びようと決意を新たにする。
生存を意識しつつの選択したスキルはこうなった。
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村田祐斗 18歳
性別:男
人種:ヒューマン
職業:魔拳士30p
職業スキル:魔拳闘術
スキル:
アイテムボックス20p
剛力10p
自己治癒15p
体幹強化5p
特殊スキル:魔拳15p
ユニークスキル
《超健康体》
アイテム:初級冒険者セット5p
Sp100→sp0
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取り敢えず取得しても腐らない異空間収納系スキルが取得可能状態だったので即選択した。
ちなみに収納系スキルで選べたのが
スキル名の頭にアイテムが共通で付くので略称
ポーチ10p、ボックス20p、ストレージ40p
となっており消費ポイントからして容量も上がって何かしらの性能も良くなって行くのかなと思う。
予想なのは一覧にはスキル名と消費ポイントは載っているが説明がない為取り敢えず感で中間の程々に性能が高ければ良いなと期待して選択した感じだ。
その他のスキルは全てパッシブ系の効果がありそうで戦いのある世界でも有用そうなものを変わらず感で選んだ。
正直かなり悩んだのが〈特殊スキル:魔拳〉だ。
多分だが派生職、上位職を選択すると特殊なスキルが習得可能な状態になり、俺が魔拳士を選択したから出てきたと思う。
そんな取得条件のあるスキルの時点でかなりレアな部類だと思うが悩んだ点が、魔拳士には職業スキル魔拳闘術というスキルがありこれと〈特殊スキル:魔拳〉には違いって何なの?と疑問になりかなり悩んだ挙句、同様に説明の類はないのでレアスキルの入手欲に負けて取得してしまった。
残りの5pが余り何にしようか悩みながら色々と見ているとアイテムの項目があったので低ポイントで有用そうな〈初級冒険者セット5p〉があったのでこれにした。
ちなみに有用そうとは思ったが相変わらず中身がわからない、説明もない為ただの勘だ。
だがアイテムの一覧の消費ポイントは他項目よりかなり少なめな設定になっている為初級でも最低限くらいは揃うと予想している。
聖武器なる物がそれぞれ武器別の種類ごとにあり、よくゲームやアニメ何かでも出そうな聖剣が消費ポイント100pだった、、
アイテムに関しては適性もクソもない様でどれでもポイントが払えるならば入手出来る。
適性値を数字に表せるならそこそこ低いと思う俺でも全ポイント注ぎ込んでまで入手しようとは流石に思わないな流石に。
と少し脱線したがキャラ設定は終わり待機する。
だが相変わらず周囲からの状況も目で見えず、耳も聞こえず、身体の感覚もない状況だが精神は安定していて少しは疑問に感じるが”アイツ”の指示の元、淡々と言われた通りにやりはした。
確実に洗脳か何かを受けていると感じるのにまあ良いかと昇ってくる疑心がある一定のを超えると急に男で言うと賢者タイムに入るような感覚があり、
あまり深く考えすぎるとそのループにハマって流石に病みそうで嫌なので自身の状態についてはとりあえず棚に上げて思考停止し、平常を保つ事に専念する。
まだ”アイツ”からは何もないためつい声の存在である"アイツ"の事を考えてしまう。
薄々と思ってはいたがこれは異世界転移の中でもある強制的に転移させられるパターンではないかと思っている。
そうなると"アイツ"は神か超常の得体の知れない何かであり何かしらの目的があり別の世界に俺をもしくは’俺達’を送ろうとしているのではないか?
‘俺達’と複数形だと思った理由が”アイツ”は最初
〔(お前達には別の世界へ行ってもらう)〕的な事を言っていたので少し引っかかりを覚えたのだ。
自身の状態で俺以外の他人がもしいるのだとしたら正直、いやかなり関わり合いになりたくないなと感じた。
何故なら俺のキャラ設定は適性の低さで殆ど選択肢が無かったが、もし適性の幅が広くかなり万能で選び放題の状態で戦闘職なんかやればRPGで言うなら序盤からいきなり高レベルくらいで始める様な物だ。
同じ場所に飛ばされる奴が同じ日本かはわからないがいきなり学生や会社員だった奴らがチカラを持って異世界に行ったりなんてしたら性格くらいは変わってもおかしく無いと思う。
(もし同郷がいたとしても知らないフリしとこ)
そんな決意をしつつも”アイツ”にどんな思惑があり俺らを別の世界へ行かせるのかについては分からないが俺自身は異世界に行く事に嫌は無い。
彼女もいない、親しい友人もいない、28歳の独身貴族だ。
人と喋るのなんて職場の上司や部下か、親からたまに来る電話くらいだ。
必要に駆られれば普通に接して会話もするが私生活ではそんな物全くないボッチそれが俺だ。
仕事以外で時間を削ってまで他人と接するとか面倒だし彼女とか良いなと思う時もあるがそもそも関係構築が面倒だし会話も面倒だ。
そんな社会不適合者が日本から減り、”アイツ”はそんな俺を選び別の世界に飛ばす、俺はそこそこ?の能力をもって異世界に行き人生やり直しの機会をもらえ、尚且つ10歳ほど若返るのかステータスらしきものには18歳と記載されている状態で向かえる。
親や姉はいるがもし俺がどうやってか分からないがいなくなった事を知ったとしたら悲しんでくれるだろうが親不孝で悪いが俺は俺の気持ちを優先させるよ。
少し色々な記憶を振り返っていると”アイツ”が言葉を発した。
『選択は成せたようだ。これからお前達を別世界へと飛ばす』
どうやらキャラ設定の時間は終わったようだ。
“アイツ”の事だどうせ問答無用でこれから飛ばされるのだろうと身構えていると急に抗えないほどの睡魔が襲い意識が薄れて行く中でこんな事を想った。
(人生をやり直せるんなら異世界にでも何でも喜んで言ってやる)
と奇しくも自宅の寝室で眠る寸前につぶやいた事と同じ事を想い意識を手放した。。。…