不倫相手と観覧車に乗っていたら後ろの観覧車に妻が乗っていました
「人がちっちゃくて可愛い!」
観覧車の中ではしゃぐ彼女を見ながら、俺は内心で可愛いなと思いながら微笑む。
今日は日曜日。友人らと遊んでくると妻に言って、俺は家を出た。けど──本当は違う。半年前にマッチングアプリで出会って付き合っているハルカちゃんと、遊園地デートをしに来たのだ。
「春斗さんと観覧車に乗れるなんて……夢みたい」
「俺もだよ」
そう言って俺は、ハルカちゃんと深くキスする。キスしながら、俺はハルカちゃんの胸に触れるが。
「やぁ、今はダーメ!後ろの人に見られちゃう」
「いいじゃん、ラブラブな俺たちの姿を見せつけようよ」
そう言いながら、俺は後ろの観覧車に乗っている人に見せつけるようにして、キスしたりハグしあったりして、ハルカちゃんと愛し合う。そこには、上下黒のパーカーとスボンを着て、黒い野球帽を深く被った人がいた。すると。
パシャッ!!
後ろの観覧車に乗っている人が、スマホで写真を撮っているのが見えた。しかも何枚も。
「チッ、何だ後ろのやつ」
「どうしたの?」
「何か、勝手に写真撮ってるんだ……よ」
と、後ろの観覧車に乗っているヤツに睨みながら言った時だった。そいつが帽子を取ると、全身に戦慄が走った。
妻だ。
「なん……で?」
「どうしたの?あ、もしかして知り合い?」
「え?いや、その……」
「私達がイチャイチャしてるところ見せつけるんでしょ?ほら……」
そう言ってハルカちゃんは、俺の体に絡みつきキスしてくる。けど、俺は体から彼女を引き離した。
「ごめん、ハルカちゃん。俺今イチャイチャできないていうか、もう無理かも」
「何で?奥さんが見てるから?でも、見てる相手が奥さんだからこそ興奮しない?浮気の証拠写真撮られながらエッチなことするなんて最高にサイテーじゃない?」
ニヤリと微笑みながら、ハルカちゃんはそう言った。
「なん……で?」
俺は、ハルカちゃんに結婚していることを教えていなかった。
「ちょっと前に奥さんが私のところに凸ってきたのよ。私の夫と何してるのよって。だから今日、あんたを遊園地デートに誘って、あんたを嵌めてやろうって奥さんと計画したのよ」
「は……え?」
俺は冷や汗をかきながら、立ったまま固まる。
「これであんたは離婚ね。奥さんとも私ともおさらばしてあんたは孤独になる。ざまぁないわね」
ゴウンゴウンと、観覧車が降りていく。
「そろそろ下に着くね」
ニヤニヤするハルカちゃん。
地獄への扉が開かれようとしていた──