第142話 バキバキのエルフさん!
「ムークさん、お客様がいらしていますよ」
「ファイ?」
ヘレナちゃんたちを上空5メートルくらいまでの無限高い高いして遊んでいると、イリュシム先生がやってきた。
あ、勿論安全面には最大限配慮しております。
んで……お客様?
この世界に極めて知り合いが……最近増えてるけど……少ないボクに?
ザヨイとかサジョンジの関係だろうか?
「ドナタデスカ?」
「ええと……スキアの戦士だと言うことしかわかりませんね」
すきあ……って、なんだっけ?
『物忘れ虫……前にテオファールさんに聞いたでしょう? むっくん流に言うとダークエルフの方ですよ?』
ああー! テオファールの同族と組んで奴隷解放的なことをしているエルフさんか!
わかったけど……なんでボク?
とにかく、行ってみようか。
ボクまで話が来るんだから、安全だって判断されてるんだろうし。
えーっと、念のためにアカは……ピーちゃんと一緒にピーちゃん像(誇張)の上で寝てるか。
起こすのかわいそうだな……あ、ヴァルが飛んでる。
『ごめんヴァル、暇なら一緒に来てくれない?』
『ぬ、何を他人行儀な。ワレとお主は一蓮托生だぞ?』
ちょっとついてきてくれるだけでいいのに……まあいいか。
飛んできて肩に乗ったヴァルは、どことなくドヤ顔である。
「ジャ、行キマスネ~」
「はい、食堂にお通ししていますから」
内部にまで入れるっていうなら、絶対安全な方なんだろうな~。
・・☆・・
食堂に行くと、椅子にお客さんが座っていた。
エ、エルフ……ほんとにエルフ!?
「む」
その人は、そう言って立ち上がった。
ハスキー気味だけど、女性の声だ。
「ドウモ、ムークデス」
立ち上がったその人は……ボクよりも、頭一つくらい背が高い。
そして……ムキムキ! ムキムキ!
ヴァルと同じような褐色の肌に、銀色の髪。
革鎧から大きく露出したお腹は……見事なシックスパック!
前に見たオーガさんに勝るとも劣らない筋肉っぷりだ……!!
『うひゃ~、久しぶりに見たけど乳も尻もでっけ~!』
前の世界だと、胸は脂肪だから筋肉モリモリのヒトっておっぱいないけど……この世界では両立するんよね……不思議!
そのお姉さんはボクの顔を見て……ニカっと笑った。
目が赤くって綺麗だな~。
「聞いとった通りのぶち男前じゃ。こがあに立派なら、おなごどもが放っておかんじゃろうね」
……トモさん、翻訳機能がバグってるんですけど!
見目麗しいエルフさんがバリバリの広島弁なんですけど!?
『そこに私は関知しておりませんので……共通語の訛りがそう表現されているのでしょうね』
いったいどうなってんの……主にボクの脳味噌。
『ヴァル、絶対大丈夫だろうけどこの人って……』
『うむ、実にカラッとした清浄な気配だ。そもそも、エルフの類はよほどのことがない限り黒化はせん』
やっぱりそうなのね……ま、いい人ならいいや。
「エエト……アリガトウゴザイマス? アー……ボクニ何カゴ用事トカ。座ッテ話シマショウ」
「そうじゃね」
エルフさんはドカッと腰を下ろした。
ボクも、テーブルを挟んだ席に着いた。
でっか……強そう……ダークエルフのイメージが狂う……なんか、弓じゃなくて素手で魔物を挽肉にできそう……
「遅くなったんじゃけど、うちはナラカ言うんよ」
どう見てもバリバリの外人系美人さんから流暢な広島弁!
ボクみたいな転生者にしかわかんない感覚!
「ほう、『闇を穿つ』か。良い名だな……ワレはヴァルナディーナ、ヴァルでよい。こやつの相棒よ」
かーっこい~! ムークも負けてないけど、むっくんは負けた! かわいさなら勝ってるけどね!
「よろしゅうに。うん……わかっとったけど、無理に連れ回しとるわけじゃないのう。聞いた通り、ムークさんはぶちええ人なんじゃね」
一瞬目が怖かった! この人も妖精絶対守るウーマンですか!
「当たり前だ。こやつがそのような男ならワレ直々に首を刎ねておるわ」
「気ぃ悪うせんといてね。妖精とヒトが一緒におるんは、本当に珍しいんじゃけえ」
そう言って、ナラカさんは申し訳なさそうに頭を下げた。
うーん、基本的にいい人しかいない世界。
「イインデスヨ。エット……サッキカラ気ニナッテルンデスケド、誰カラボクノコトヲ……?」
テオファールに聞いたにしては、距離が離れすぎてるしね。
あの念話って誰にもできるわけじゃなさそうだし。
「深紅の姐さんからじゃね」
「……?」
シンクの、アネさん……?
駄目だ、全く心当たりがない。
「言葉が足りんかったね。あんたもよお知っとる、白銀龍様の同族さんじゃ」
テオファールの!?
あー! 前に言ってたこと、そのまんまだ!
「アーゼリオンデ奴隷ヲ解放シテルッテイウ方デスカ?」
「ほうよ! やっぱり知っとったね! うちも姐さんから聞いとったんよ、『妖精連れて旅をしよる面白い虫人がおる』っちゅうてね!」
身を乗り出したナラカさんの目が輝いている。
おおお、距離が、近い! いい匂いがする!
「ほいじゃけえ、部族を代表してうちが来たんよ。うちらスキアは森とともに生きちょるけど、こがーに妖精に懐かれることは稀じゃけえ」
な、なるほど……
「ソデスカ」
「そがあよ! あと……実際に確かめられたけえ、もいっこ頼み事もあるんよ!」
頼み事……とな?
なんじゃろか? ボクにできることなんてたかが知れてるけど。
「森の民スキアの頼みとあらば、ワレとしても是非かなえてやりたい所だな」
うんうん、と頷くヴァル。
あの、まだ詳細聞いてないんだけど……有り金全部寄越せ~! とかだったらどうすんのさ。
絶対にありえないだろうけども。
「おやびん、お~やび~ん……いた! いたあ!」
『まあ、お客さんだわ! いらっしゃいませ~!』
おや、妖精たちがやってきた。
お昼寝は終わったんだねえ。
「んなっ!?」
ナラカさんはなんかビックリしてる!
そりゃあね、街中に妖精3人なんて普通はあり得ないらしいからね。
「まさか、妖精3人連れじゃったとは……ムークさんは凄いお人じゃね!」
「ド、ドウデショ……アハハ」
なんか、この感覚には覚えがあるぞ……!
そう! いつもロロンから感じる全幅の信頼感的なやーつだ!!
・・☆・・
「まうまうまう……」「むぐむぐ……」「チュチュピヨ……」
アカたちが、お皿に盛られたお菓子類と格闘している。
ふふふ、サジョンジから貰ったほんの一部だ……! まだまだあるぞい! ぞいぞい!
「ぶちかわええわぁ……こがーに近くで妖精見れるなんて、うちは幸せもんじゃあ……」
ナラカさんはそんな3人を眩しそうに見つめている。
本当に妖精が好きなんだな……
アカたちの登場でちょっと話の腰が折れたけど、さっきの話の続きといこうか。
「アノ、ソレデ頼ミ事ッテノハ……?」
そう聞くと、ナラカさんは一転して真面目な顔になった。
そして、キッチリと座り直して……ボクに深々と頭を下げた。
お、おお? なんですか?
「――マウナの森が狩人、『穿つ』ナラカの頼みをお聞きいただけるじゃろうか、ムークさん」
これは……かなり真剣なお願いだね。
ではボクも、しっかり座って……
「――無法ナ事デナケレバ、全力デオ手伝イヲ」
大丈夫だと思うけどね?
だってヴァルのお墨付きあるし。
「父祖と、森に誓ってそんなことはないんよ」
「……デハ、問題ナイデス」
この人はテオファールの友達の……友達!
てことは、ボクにとっても友達みたいなものだからねえ!
ナラカさんは、少し微笑んだ後……真剣な表情に戻ってこう言った。
「――囚われとる妖精と同族を、見つける手伝いをして欲しいんよ」
……と。
ふむ、なるほどね。
妖精と同族を見つける、か。
なるほどなるほど……
「――ナンジャトテ!? ソンナモン助ケマクリマスヨ! 大変! 大変~!!」
まさかこのトルゴーンでそんな無体なことが行われてるなんて!
頼まれなくたってやりますよボクは!!
「ナラカサン! 何デモ言ッテクダサイ! 何デモオ手伝イシマスノデ! ノーデ!!」
「アカも! アカも~!」「一大事だな、それは! ワレも同じくだ!」
『そうよ! そうよ! そんなの許されないわ! 私もお手伝いするわ~!!』
ボク、そして妖精たちは一斉に声を上げた。
ナラカさんは目を見開いて一瞬黙った後……目を潤ませて微笑んだ。
「……ありがとう、うちの目は確かじゃった……!!」
妖精とエルフさんの危機なんですよ! いい人は助けなくっちゃ!
え? 悪い人……? 叩いて叩いてハンバーグにしちゃるわ~!!
どうせそんなことするような奴は大悪人だからね! たとえ天が許してもボクが許しませんよ!!
『許しませんが?』
『右に同じだし』
『なんという唾棄すべき輩よ……!』
女神様たちも許さないって! やった~!!




