第141話 穏やかな日ってのは何日続いてもいい。
「おやびーん!」
「ゲフーッ!?」
なんですか!? 魔物の襲撃……あ、なんだアカか。
朝の気配……ってことは、帰ってきたんだね。
「オハイオ」
「おはいお! おはいお~!」
顔面に体当たりを繰り返すカワイイ子分をそのままに、起き上がる。
ありゃ、誰もいない……みんな早起きねえ。
『ザヨイのおうちは楽しかった?』
「あいっ! おみやげ、いっぱいいっぱ~い! おやびんの~!」
ああ、トモさんがなんか言ってたね……
「ボクモアルヨ~! オヤツニ一杯食ベヨウネ~!」
「わはーい! おやびんだいしゅき!」
「ボクモボクモ~!」
なーんてカワイイ子なんでしょ! 朝からホッコリホッコリで今日も一日頑張れますよ、ボクは!
「ふふ、朝から仲良し」
あ、マーヤだ。
「ボクトアカハ超仲良シダカラネエ」
キャッキャしているアカを抱えて起き上がる。
すると、マーヤが尻尾でサワサワしてきた……こしょばい!
「いいなあ、私は?」
は~? そんなもん……!
「超仲良シデショ~? 違ウノ~?」
「……みゃあ、うん、そう! 仲良し……ふふふ!」
マーヤの耳がグニグニ動いてる! 本当の猫さんみたい!
朝から可愛いね!
『はわわ、朝から末恐ろし虫……』
なにが~?
・・☆・・
「ザヨイ家の奥方様たち……色々と良くしてもらったが……名前が覚えきれんのナ……」
「じゃじゃじゃ、ワダスもでやんす~……!」
皆と合流した朝食後、アルデアに昨日はどうだったか聞いてみるとまさかの答えが返ってきた。
ロロンも頭を抱えている。
「ソンナニ難シイ名前ダッタン?」
「いや違う、むしろトルゴーン式の名前は短くてわかりやすいのナ……だが……」
だが?
「人数が……多すぎるのナ……! あの場にいた【大角】殿の奥方だけで30人はいたのナ……!」
「みぃい……しかも他の家の奥方や娘さんもいるから全然覚えられない……!」
ひぇえ……そ、それは大変だ……
「お頭は奥方様が多いですから……」
一緒に帰ってきたイセコさんも苦笑している。
それはそうだろうね……あ。
「チナミニ、全部デ何人イラッシャイマスカ……?」
そう聞くと、イセコさんは困ったように笑った。
「そうですね……今の時点では、全部で43人いらっしゃいます。これから増えるかもしれませんが……」
す、すご~……異世界チンギス・ハーンだ!
『補足です。チンギス・ハーンの正式な妻は4人ですが、妾は最低200人から300人という記録が残っていますよ』
それどころじゃなかった!? す、すごいなモンゴルの大英雄……!
『お、むっくんも目指す? とりまあーしが声掛けたらドスケベ神官は80人くらい集まるけど』
目指さない! シャフさんもそんな無理強いみたいなことやめてください!
女性がかわいそうでしょ!?
『んにゃ、たぶん気に入ると思うな~むっくんのこと。無理強いじゃなくて向こうからゴンゴン来ると思うし』
グイグイじゃなくてゴンゴン!?
ちょ、ちょっと遠慮しときます……!!
「さすがは大英雄【大角】閣下……!」
ロロンは目をキラキラさせている……憧れるポイントなんかな、それ。
「ムークも同じ虫人として憧れるのナ~?」
だからアルデア、今見ているそこはボクの肩でしてよ?
突っ込み待ちですか、もう……
「ゲニーチロサンハ凄イ人ダト思ウケド、奥サンガイッパイ欲シイトカソウイウコトハナイヨ」
「はーん、つまらん男ナ?」
つまらなくって結構です。
「英雄、色を好むというぞ?」
今日はそんな気分なのか、頭に乗っているヴァルがそんなことを言いながら兜をペチペチ。
「マズハ英雄ニナッテカラデショ? ナル気ハソンナニナイアデデデデ」
ペチペチがバチンバチンに!?
「はぁ~……先が思いやられるな。駄目な男よ」
「ヴァルおねーちゃ! おやびんだめじゃない! じゃなーい!」
アカがほっぺをぷくぷくにしながら体当たりを繰り返している。
頼もしき子分よ……
「そうですムーク様! お頭は……その! 少々特殊なので! そちら関係は……」
イセコさん、真っ赤になるなら言わなくてもいいのよ?
「今ハカワイイ子分ダケデ十分カナ~?」
「きゃーはは! あははぁ! んんう~!」
撫でるとお手々に体当たりしてくるアカがかわいいね~?
……おっと、第二の子分を忘れておった!
ロロンも撫で撫~で。
「はわわ……えへへ」
最近、ロロンの振動が落ち着いてきたような気がする虫です。
よきかな、よきかな……訴えられる危険性は減ってきたね!
『(刺される可能性は増してるし……お隣ちゃんはどう思う? うはあ、むっちゃ勢いのあるサムズアップ)』
『(今更ですがむっくんの行く末とお隣様の性癖が不安になってきましたね……)』
・・☆・・
「まうまうまう……」
「マウマウマウ……」
ベンチに座って、アカとお菓子を食べる。
「チュチュン」
あ、間違えたピーちゃんもおった。
「オイシイ?」
「おいし、おいし!」
『カラメルみたいな隠し味が素敵よ! 素敵だわ~!』
けぷう。
カルコさんが持たせてくれたお菓子、山みたいにあった。
ザヨイ家のお土産まではまだ手が回りませんね~。
あ、もちろん孤児院の子たちにもあげましたよ?
あげすぎな量にならないように、イリュシム先生にはあらかじめ聞いておきました!
栄養バランスとかも考えないとね! ボクや妖精は関係ないけども。
「おやびん、きょう、なにすゆ? なに~?」
「フムン……ナニシタイ?」
「おやびんといっしょ、いっしょがいい~!」
クッキーのかけらをほっぺにつけて、アカはにっこり微笑んだ。
「ハアアアアア! ナニコノイイ子!!」
「あははぁ! きゃーはは!」
発火するくらい撫でちゃろ~!
嬉しいからピーちゃんも撫でちゃろ~!
『仲良しね! みんな仲良し! 素敵だわ~!』
ピーちゃんもチュンチュン喜んでる。
仲良きことは美しき哉……だね!
「気が付くとアカを撫でているのナ?」
空からアルデアが降りてきた。
彼女、たまにこうして飛んでるんだよね。
「カワイイカラネ、仕方ナイネ」
「んへへぇ、えへへ~」
こんなにかわいい子が懐いてくれるんだもん、撫でない奴は悪魔ですよ。
「フムン……」
む、どうしたのアルデア。
そんなに頭を押し付けるくらい近付いてくるんですか。
『撫でろォアーッ!! 撫でるゥオ!! 虫ィイ!!』
ヒイ!? わ、わかりました!!
アルデアをナデナデ……おお、髪の毛フワフワ! サラサラ!
これはなんとも素敵な手触り……!
「ン~……ふむ、なるほど、なるほど……」
アルデアは何事か考え込んでいる。
「まあ、悪くはないが趣味でもないのナ」
かと思えばサッと離れた。
「気が向いたら撫でさせてやるのナ~……日課の運動も終わったし、タヴィアの店に行くのナ~♪」
そう言って、ふぁさっと上空へ飛び上がった。
ふむん……いつも通り捉えどころのない人ですなあ。
『むほほほ、トモちんトモちん、なんかある~?』
『そうですね……オムハヤシカレーでしょうか?』
『フェスティバルじゃーん! んほ~!!』
いいなー……みんな平和で最高ですね。
あ、ロロンだ。
手招きするととんでもない勢いで走ってきた。
……撫でとこ!
「はわわわ……な、なんでやんしょ?」
「ン~……? フム……労イ、カナ~?」
おおっと、割り込んできたアカも撫でとこ!




