第128話 牛丼が食べたい虫です。
「あの、貴方がムークさんですね」
「ア、ハイソウデギャン!?!?」
後ろから声をかけられたから振り向いたら後頭部に木刀!
「うあ、おいちゃんゴメン!」
「今ノハ油断シタボクガ悪イカラネ……ウゴゴゴ」
木刀を持ったけもんちゅの男の子が顔を青くしている……名前はタロベくん、ハスキーにちょっと似てるモフモフの子だ。
「も、申し訳ありません!」
んでんで……声をかけてきたのは、シスターさん。
デンダの街から来た、子供たちの引率のヒトだね。
「イエイエ……ナンデショウ? アア、ボクハムークデス」
「ああ、申し遅れました。セツコと申します」
ぺこ、と頭を下げるセツコさん。
ふむん……たぶんコガネムシ系! 緑色の光沢がある髪の毛が綺麗!
子供たちは着物っぽいのに、このヒトはシスター服っぽいのは不思議ですねえ。
「先日は子供たちと遊んでいただけたようで……ご挨拶が遅れて申し訳ございません」
ああ、昨日ね。
ミチコちゃんを始め、後から後から子供たちが参戦してきて大変だったなあ。
楽しかったし、みんな喜んでくれたけど。
アカやピーちゃんも大人気だったし、いい1日だったよ。
「イエイエ~、元気ガヨクッテ素直ナイイ子タチデスネエ。ボクデヨカッタライツデモオ相手シマスカラ」
未だにアレ以上の寄付は受け取ってもらえないけど、ボクは気付いた。
子供たちの遊び相手としてなら、この孤児院に貢献できるってね!
ふっふっふ……冴えてるねえ、ボク!
実は薪割りを頑張り過ぎてもう割る薪がないから助かりますよ! よ!
我ながらやり過ぎ虫……!
「そう言っていただけると……聞いていた通り、素晴らしいお人柄のようですね、ムークさんは!」
セツコさんはとっても嬉しそうに微笑んでいる。
誰から聞いたんだろう……たぶんイリュシムさんだな……絶対……!
ピーちゃんレスキューによる功績だけで、ミカーモ家のボクに対する信頼度はストップ高なのよね……まあ、考えたらそうだけどさ。
初代さんであるさっちゃんさんの縁者を助けたわけなんだからね……
「アハハ……ソ、ソレニデンダ寺院ト言エバメイヴェル様! 虫人ノ端クレトシテハ、ゴ協力デキルダケデ有難イデスヨ!」
「おいちゃん、ちっちゃいメイヴェルさまつくるのうまいもんね~」
そうでしょうタロベくん!
ふふふ、上達した腕前のお陰だからね……!
「まあ! それではあのかわいらしいメイヴェル様はムークさんがお作りに……!?」
おっと、この人にも見てもらおう。
バッグごそごそ……出でよママ!
「コウイウノモ作ッテマス、ハイ」
こっちはリアル頭身ママ!
6本の腕にそれぞれカターナを装備した攻撃特化型ですよ!
「わ~! かっこういい!」
タロベくん! さすが男の子……わかってるねえ!
「素晴らしいです! なんて細かい装飾……ムークさんは戦士でもあり、彫り師でもあるんですね!」
「ソンナイイモノデハ……エヘヘ」
見てくださいママ! 現職のシスターさんからも高評価ですよ!
これからもバンバン作るからね!
『まあ! 母はとても誇らしいです! なんという勤勉で優しい虫でしょう……ポイントをお出ししておきますね! ほほほ! ほほほほ!!』
うーん、セツコさんには悪いけどカジュアルにお話しできるゴッデスは最強ですわ。
「ナノデ、困ッタラナンデモ言ッテクダサイネ」
「ありがとうございます……素晴らしい方に会えて、とても嬉しいです! これもまた、メイヴェル様のお導きでしょう……」
そう言って腕を組んでお祈りするセツコさんからは、とっても清らかな雰囲気を感じた。
この人もいい人だねえ……
・・☆・・
「わうぅ、おいちゃあん。なにしてんの~?」
ベンチに座って木片をシャッシャしていると、ヘレナちゃんが歩いてきた。
この孤児院の子たちはみんな屈託がなくて人懐っこいけど、この子は特に懐いてくれてる。
見かけたら走って寄ってくるし、なんだかアカを彷彿とさせるねえ。
「ン~? 木像作ッテルノ」
「もくぞう~……わぁ、きれいなひと!」
手元を見て目を輝かせるヘレナちゃん。
「おいちゃん、これだあれ?」
「月ノ女神、シャンドラーパ様ダヨ。トッテモ綺麗デショ?」
タロベくんに言われたんよね、『獣人の神様も作って!』って。
なので……こうしてまずはリアル頭身の方を作っております。
なにせ実際に目の前で見たからね、いまだに目に焼き付いてるよ。
それに、カマラさんもいたしね……あの時はさ。
「わぁう! きれい、きれい~! はじめてみた!」
「ズットズット北ノ方デ有名ダカラネェ」
月の民は……今、どれくらい残ってるんだろうか。
あの時に見たのは50人くらいだけど……次の世代の方々には伝わってなかったようだし。
『私も詳しくは知りませんが、さほど多くはないでしょうね』
だよねえ……だから、これで少しでも知名度が上がればいいかな。
教義とかなんにも知らんけど、名前だけでも広まればいいよね。
「ヘレナチャン、何カシテ遊ボウカ?」
見てるだけってのも退屈だろうしね、子供はさ。
「ここでみてたい! いい? おいちゃん」
「イイニ決マッテルジャナイノ~? イイコイイコ」
フワフワな頭を撫でる、撫で~る。
「わぅう~、あはは! あはは~!」
なんといい顔で笑う子だろうか。
この子はきっと将来モッテモテのかわいい子になるぞ。
今ですらこんなにかわいいんだからねえ!
「ジャ、飴アゲル~」
「わぁい!」
恐らく柑橘系の飴を進呈して、ボクは作業に戻ることにす……アカがいつの間にか肩にいる!
「ホレホレ~」
「あむむぅ……おいし! おいし!」
さて、作業に戻るか!
おおっと、アカを撫でてからね!
・・☆・・
「お前はいったい何を目指す気なのナ……?」
横を歩くアルデアがジト目をしている。
「いいじゃない、ムークの木像って私好き」
マーヤはなんだか嬉しそうだ。
「まあ、私も興味がないわけじゃないからナ……付き合ってやるのナ」
時刻はたぶん、昼過ぎ。
ボクら3人は、二の街のええと……5番道を歩いている。
1人で出発したんだけど、出かけるのを見ていたアルデアがマーヤを掴んで飛んできたんだよね。
気配に気づいて上を見上げたら……うん、大変失礼いたしました。
マーヤは全然気にしてなかったけど……やっぱり紐だった……
けもんちゅってみんなああなのかな?
確認するわけにもいかんしねえ。
ともあれ……今回の目的は、教会!
5番から7番にかけての区域には、教会がいくつかあるそうなんだ。
イリュシムさんに聞いて知りました。
そこを見て……木像のバリエーションを増やそうかと思ったんだ!
でも、いきなりいっぱい見ても覚えきれなくてアレだから……まずは1つかな!
何をチョイスしたかと言いますと……
「【湿地の女神教】の教会は初めてなのナ。私も、里の近くにいた鱗人が持っていた紋章しか知らんのナ」
そう! エンシュでお世話になったゴウバインさんが信仰していた宗教!
ええっと、蛇の妖精から進化した神様の名前は……
『ヨトゥール様ですね』
そう! ある意味アカとかピーちゃんの大先輩!
どんなお姿なんじゃろうかね~?
「そういえば、パッと思い浮かぶのは女神様ばかりなのナ。男神はピンと来ないのナ」
「そうだね……やっぱりむさくるしい像より、綺麗な像の方がいいのかな?」
「ドウナンジャロ……?」
地球だとどうだったかな?
そもそも偶像崇拝自体が駄目~! ってのもあったし。
コッチの世界の方が神様との距離が近いのもあるんだろうけど……だって、ボクが経験しただけでも広域神託とか結構あったしね。
しかし、何度でも言うけどやっぱり首都は人が多い。
いろんな種族の人たちがごった返している……むしんちゅが多いけど、その次にけもんちゅが多い。
あと、他の街よりも明らかに人族も多い。
ほとんどロストラッドのヒトだろうけど……妖精がいないからわかんないや。
「やはり大地の上は面倒なのナ。さっきからジロジロと好色な視線を感じるのナ~? 美しさとは罪ナ~?」
アルデアはちょっと嫌そうにしている。
まあ、好きでもない人にジロジロ見られるのは嫌だよねえ。
「アルデアっていうか空の民は珍しいから。それにおっぱい大きいし……ねえムーク?」
なんでそこでボクに話を振るんですかね……でも。
「アルデアモソウダケドサ、マーヤダッテ見ラレテルト思ウヨ? 2人トモトッテモ綺麗ダモン」
マーヤの毛並みって黒くってツヤツヤで、太陽の光に当たるとキラキラして綺麗。
ボクの生体甲冑とはまた違った感じだもんねえ。
もちろん、お顔も美人だしさ。
スラっとした体もスタイルがいいし……よく考えたら、いやよく考えなくても身近に美人さんが多うございますねえ?
「ホホーウ……中身が木か石のムークにしてはよく言ったナ? お前の沢山ある目はどうやらただの光る石ではないらしいナ~?」
「ムーク、私って綺麗なの? 前にも言ってくれたけど、本当?」
アルデアが酷い! 酷いや!
『オラ虫何してんだ! マーヤちんの質問に答えルゥオ!?!?』
ひい! シャフさんが殺気立ってるゥ!
「ウン、綺麗ダヨ~? ボクハ虫人ダケド、トッテモソウ思イマスヨ~?」
そう答えると……あれ、マーヤがいないグゥエ~!?!?
なんで! なんで肩にいきなり飛び乗ってきたの!?
「みゃあ……んふふ、嬉しい。えへへ」
……こんなに嬉しそうだと何も言えないじゃんか!!
ンモー! このまま肩車虫になるゥ!!
『おっほ~! トモちんトモちん! ギュードン大盛り! 紅ショウガマシマシで~!!』
『へいお待ち、です』
今日のトモさんは牛丼屋さんですか……
『むっほほほ! 止まんね~! はもももも! はももももも!!』
シャフさん、元気だなあ……




