第126話 首都は平和、たぶん平和。
「ンゴゴゴゴ……」
頭が痛い、とても痛い。
ははーん……これはお酒じゃな?
トモさ~ん、トモさん、いるぅ?
『基本的にいつでもいる女神です、解毒しますか?』
ふぁい……お願いしますゥ……
おおお、楽になってきた……さよなら半日分の寿命くん……
やっと周囲を見回す余裕ができてきた。
え~っと……窓から差し込んでるのは夕日か。
んでんでんで……ここどこぉ?
「瞬時ニワカッタ」
こじんまりしたカウンターに、椅子。
この落ち着いた店内は……タヴィアさんのお店!
アカにお酒飲まされて酔っぱらったんだね……うお!?
マントの内ポッケにジャラジャラとお金が!?
……まーた歌って踊ったのか、ボクは。
「ヒイフウミイ……マサカノ1525ガル!」
今までの新記録ですよ……それなり以上のお宿に連泊できちゃう。
さすが首都、おひねりくれる人も多いねえ。
っていうかこの店内ボクしかおらんのだが? 不用心すぎませんかねぇ?
泥棒でも来たらどうすんのさ?
床で寝てたボクが言えることじゃないけど……
『皆さんは近所の露店まで晩御飯を買いに行ったようですね。モニタリング中ですが、特に危険はなさそうです』
あっふ~ん……やっぱり不用心じゃん!
『おっと、今更ですが扉には強力な結界が張ってあります。迂闊に触るとビリビリ虫ですよ、むっくん』
不用心じゃなかった!!
『防犯用の魔法具ですね、便利なものがあるものです』
ほえ~……それなら安心か。
じゃあ座って大人しくしてよっかな。
バッグから出した炭酸水でも飲んどこ~っと……んぐんぐ。
「おやび~ん!」
「ハイオカエリ~」
小一時間待っていると、扉が開いてアカが飛んできた。
「よかった、起きてた」
続いて入ってきたのはマーヤだ。
その後ろにはアルデアとタヴィアさんがいる。
「もう元気そうだね。覚えてないだろうけどすごかったよ、ムーク」
「ナントナクワカル……」
おひねりがね、おひねりが……
「ウフフ、ウチも儲かっちゃったわァ。今晩はお店閉めちゃうゥ!」
「飲み直しと食い直しなのナ~♪ あ、これ以上の客はいらんからムークは飲むんじゃないのナ」
言われなくても御免ですよ。
都合1日記憶なくなるじゃんか……もう半日記憶ないのに。
「歌って踊ってる途中にイセコさんが来てたよ。今日は『お仕事』はないからゆっくりしててって」
あ、そうなん……
「ふふ、一緒に踊ってたよ。楽しそうだから私も混ざっちゃった」
「エエエ……迷惑カケテナイカナ……」
前にもやってたよね、たしか。
「大丈夫、見物人ともどんどん踊ってたから。みんな喜んでたよ」
ボクはいったいどこまで行くのだ……もうこれ以上考えまい。
『いっそのことシラフの時もミュージカル虫をされては?』
『それいいし、モテモテよ~?』
モテモテというよりそれ吟遊詩人かなんかと勘違いされませんか?
「~♪ ~~~♪」
アカが甲子園で有名な栄冠がアレコレな曲を歌ってるゥ!?
「あ、アカちゃんすごい。あの歌もう覚えたんだ……ねえムーク、アレってどこの国の言葉?」
マーヤがこう言うってことは……酔った時にアレ歌ったんはボクか!?
ボクの前世は高校球児だった……?
「ヨクワカンニャイ……」
「あはは! またにゃいって言った! かわいい」
かわいさはゼロですのよ~?
ひょっとしてマーヤってちょっと変わってる……?
「おやびーん、おうた、もっとおうたおしえて~!」
「アカハ天才カモワカランネ……ヨシヨシ」
ドヤ顔で飛んできたアカを、とりあえずナデナデしておくことにした。
・・☆・・
「でもォ、ムークさん気を付けてねェ?」
ちょっと早目の夕食? 晩酌? が始まってしばらくして、タヴィアさんが話しかけてきた。
お夕飯のメニューは近所の店屋物盛り合わせです、どれもこれも美味しい!
「ンアイ、何ガデス?」
いかんいかん、このイカヤキに酷似したものに夢中になっていた。
これなんだろ? 近くに海はないはずだけど本当にイカの味がする!
『あ、それはリクオオマキガイというタニシみたいな魔物ですね。ちなみに2メートル前後です』
化け物!? でも美味しいからいいや!
「昼間の話よォ。アーゼリオンもオルクラディも、妖精ちゃん見たら目の色変えるからねェ? あいつらの国じゃ高値で取引されてるみたいよォ」
「アア……イロンナヒトニ聞キマスネェ……」
うんちヒューマンめが……めが……
「デモ大丈夫デス、前ニソウイウ連中ハボコボコニチテヤリマシタカラ……ソレニ、ウチノアカハ強インデスヨ、トッテモ」
今更だけど、アカも強くなったからねえ……
そこらへんの魔物はソロで完封可能なのですよ、えへん。
「あらまあ、素敵ィ! あんな連中は生きてるだけでもなァんにもいいことないからァ、どんどんやっちゃってェ~♪」
「そうナそうナ~♪」
「にゃぁ、やっちゃえ~♪」
主に人族国家へのヘイトが高すぎる! みんな!
気持ちは十二分にわかるけどネ!! ボクも嫌いだし!
「おやびん、おいし、これおいし!」
アカが持ってるのは……まさか! タコ焼き!?
この丸い形、上にかかったソース……それに、カツオブシ!?
「アリガトウ! イタダキマ熱ゥウイ!?!?」
アッツアツの! 中身! 中身が!!
んぐわああああ熱い! でも美味しい! 中身はさっきのクソデカタニシか!
ソースも微妙に違うけどこれはこれで!
「ホフホフ……ンマンマ」
「はふはふ、はふはふ」
アカと2人で仲良くタコ……タニシ? 焼きを頬張る。
フムン……タニシって美味しいんだあ……モフモフ。
「露店ッテ多インダナア……色ンナ料理アルネエ」
お酒のつまみになりそうなのを買ってきたんだろうから揚げ物が多いけど……それでも多種多様だ。
さっすが首都、お店もいっぱいあるんだねえ。
……ムム! これはケバブみたいなやーつ! どこにでもあるんだねえ。
「スパイシーナ香辛料ト酸味ノアルソースガナントモ……ハモモモ」
「しゅぱいし! やむやむ……まうまうまう……」
ボクの肩で真似しながら足をバタバタさせているアカがもうすごいかわいい、とても!
なんじゃこのカワイイ生き物……
「ふふ、いっつも仲がいい」
「あれは最早才能ナ。妖精に好かれるわけナ」
「神話の英雄も、実はあんな感じだったのかもねェ?」
女性3人はなにやら楽しそうに静かにお酒を飲んでいる。
あ、途中酔っぱらったけどお金ちゃんと払わんとね。
回すのじゃ……経済を回すのじゃぁ……
「また来てねェ♪ ウチはいつでも開いてるからァ♪」
「ハイ~」
「おねーちゃ! またきま~!」
タヴィアさんに見送られ、店を出る。
アカは肩じゃなくてマントにいる。
何故なら……
「ふみゃあ……みぃい……」
ボクが、酔いつぶれたマーヤを背負ってるから。
「マーヤはずうっと同じ感じで酔うタイプだったのナ。急に眠り始めるからビックリしたのナ」
横を歩くアルデアが言うように、ケラケラ笑ってたのに急にスヤァ……って眠るから驚いたよ。
「イイオ店ダッタ。マタ来ヨウネ」
「うむ、この調子で首都の酒屋をどんどん開拓するのナ!」
元気だねえ……ま、ボクもあんなお店なら大歓迎だけどさ。
お金も払えたし、ついでにSDヴェルママとSDシャフさんも置いてきたし……素敵な1日でしたなあ。
なお半日くらいの記憶はない模様。
タヴィアさんも『かわいい!』って喜んでたしね、SD木像。
これからも量産してお世話になった所には配って配って配りまくるぞ! 作れば作る程上達していくからね……!
『何百年か後に鑑定番組に出そうですね』
『『これはかの【粗忽種馬】ムーク仏師による初期の作に間違いない!』とか言われちゃう的な? 楽しみにしとくし!』
ちょっとシャフさん! なんすかその不名誉しかない二つ名は! もうそれ悪口じゃない!?
「マーヤふかふか、ふかふかぁ」
「みゃおう……んふふ……」
アカはほんとにけもんちゅの耳モフるの好きねえ……
背中があったか~い……毛皮の効果ですなこれは。
「ほれ、とっとと本道に復帰するのナ。いくらマントがあるとはいえ、女連れにはこの道は治安が悪いのナ」
「ホイホイ」
そろそろ酔っ払いが増えそうだしね……
孤児院まで帰ってお風呂を堪能して、グッスリ寝たいなあ。
「にゃむ……あったかぁい……」
「アヒャヒャ!?」
マーヤが首筋に頭を擦り付けてくるのがこしょばい!
「コッチハ平和ダケド、南ハドウナッテルノカナ……」
見え始めた星空を見上げる。
「まーた心配しているのナ? トルゴーンの精兵が集結していると聞くから大丈夫なのナ~」
アルデアが肩をぽんつく叩く。
まあ……そうだよねえ……
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