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第116話 孤児院は平和だけど、ボクはそうではない。

「いっくぞ~!」「ええ~い!」「かくご~!」


「ムッハハハハ! カカッテ来ルガヨイ冒険者ヨ~!」


 モコモコけもんちゅ、ツヤツヤむしんちゅ……の子供! 合わせて3名。

彼らは手に木剣を持って、ボクに突進。


「えりゃ~!」


 左から来る――隠形刃腕起動! 勿論刃は展開しておりません!

それで受け止めると、他の子達も飛び掛かってきた!


「て~い!」「とや~!」


「ムッハッハッハ! ヌルイワ~!」


 子供たちが振る木剣は、子供らしからぬ勢いでボクに迫る!

だけど……さすがに対処可能!


「えいえいえい!」「えいりゃ~!」「わうわうわう!」


 おおお……圧が強い!

これは将来名のある冒険者になるかもわからんねえ!


 勿論、ずっと受け止め続けることは楽勝なんだけど……

それではこの子たちがかわいそうだからね!

なので、ある程度チャンバラをしてから……あくまでさりげなく、さりげなーく……受ける!


「グワーッ!?!? ミ、見事ダ勇者タチヨ……グフーッ!?!?」


 まさかの3人とも脳天直撃とは恐れ入ったわ……げふう。

ああ、今日もトルゴーンの空は青いですなあ。



 ザヨイ家での歓待を受けた、翌日。

ボクは、勉強の休憩時間に殴りやすい虫と化しています。


 サラコさんからは正式に『お仕事』を受けましたよ。

妖精たちによる人物鑑定をネ!

なので……なんか、お家同士の話があったみたいで、ボクらはこのままミカーモ孤児院でお世話になることになりました。

『お仕事』が決まったら呼ぶから、それまでゆっくりしてて~って。

もちろん、ミカーモ家もOKとのこと。


 ああ、長期滞在になりそうだから追加の寄付を申し出ました。

残念ながら……イリュシムさんにも、たまたまそこにいたサチさんにも受け取ってもらえません……でしたァ!

ぐううぅ……善人しかいないのか、このお家には!!


 あ、ラクサコさんは今度は孤児院に遊びに行くって言ってました。

なんか今暇なんですって。


「おいちゃん、もっかいやろ! もっかい!」「はやく~! はやく~!」


 おっと、寝転び虫はもうおしまいですか。

もう一回だとォ~……???


「ムハハハ……魔王ハ死ナン! 何度デモ蘇メギャン!? 復活中ノ攻撃ニハ誉ガナーイ! クスグリ殺シテクレルワ~!!」


「きゃ~!」「にげろ~!」「あはは! あはは~!」


 起き上がり途中の顔面殴打は怒っておかんとね!

ボクならいいけど、遊びでお友達にやったら大変だからね~!



・・☆・・



「プヒ~……」


 子供たちが校舎に戻ってベンチで休憩。

いや~、男の子は元気ですなあ。

後半女の子も混じってたけども。

結論、子供は元気が一番。


「お疲れ様です、ムークさん。子供たちの相手をしてもらってありがとうございます」


「チュピピヨ……チュクチュム……」


 イリュシムさんがお茶を持ってきてくれた。

その肩では、ピーちゃんが半分溶けて眠っている。

久しぶりに会えたお友達だもんねえ、嬉しいよねピーちゃん。


「イエイエ、子供大好キデスカラ」


「お主は色々と足らぬ所があるか……そこだけは満点よな、うむ」


 いつの間にか横に座っているヴァルが笑った。

この子は思い思いの場所をウロウロしているんだよね、ここでは。

ヴァーティガは手元にあるのに……よくわからないホログラムさんですよ。


「まあ、ふふふ……どうぞ」


 テーブルの上に湯気の立つお茶のカップ。

うーん、いい匂い……ヴァルの分もちゃんとある!


「ピーちゃんとこうしてまた会えたのも、ムークさんのお陰ですね。私も精霊仲間に聞いて探してはいたんですが……まさかラーガリの、それも【戻らずの森】の近くにいたなんて。あの近辺は魔素が濃くて、同族のドライアドもいない場所でして……」


 ほほう、そうなんだ。

別の国だしねえ……色々あるんだろうね。


 あ、ピーちゃん云々はもう甘んじて受けることにしました。

そこ否定してるとお話が進まなくなるし……

ここへ来てから色んな人に同じようにお礼されたからねえ……

当時のことを知らない職員さんにしても、伝説的なインコさんなんだろうねえ。


「でも初めに聞いた時は驚きました、ピーちゃん以外にも妖精さんがいるなんて。ムークさんは物語の中から出て来たみたいですね」


「ハッハッハ……照レマスネエ、ソレハ」


 それはボクにもわからん!

アカだって初めは虫だったもんね~?

何度も言ってるような気がするけど、ボクの対人運は超絶に恵まれているらしい!

一部のクソヒューマン、以外!!

あ、でもサチさんに会えたからいいヒューマンも一人増えたよ!


「ソウイエバ……アノ、シバラクオ世話ニナルコト……認メテイタダイテ、アリガトウゴザイマス」


「まあ、何を言うのですか。むしろ他でご宿泊なさることの方が、私もミカーモ家も困ります。御恩を返さないといけないのに」


「うむ、ムーク。礼を断るはまさしく無礼なるぞ」


 ヴァルにも言われちゃった……

これはどう言っても聞いてもらえないし、そもそも別に泊まろうとすると総出で止められるパターンじゃ……

しゃーない、薪割ったり子供の遊び相手をしたり頑張るか……

簡単なお勉強の教師役もできそうだけど、どうやら専用の職員さんがおるし……森育ちのボクがそんなに詳しかったら怪しすぎるからね……


「オ世話ニナリマス……仕事ナンデモヤリマスノデ……」


「うふふ、はい。何年でもいらしてくださいね」


 イリュシムさんは、嬉しそうにニッコリと微笑んだ。

本当に女神像だって言われたら信じるくらい、綺麗な笑顔だった。

……寿命が長い人はこれだから困るんじゃよ! じゃよ~!!



・・☆・・



「おお! ムーク殿ではござらんか!」


「……ム?」


 美味しいお昼ご飯を食べて、さてお昼からは何するかな……なんて思っていたら、門から入ってきたむしんちゅさんがボクを見て声を上げた。


 そこにいたのは……ムキムキのアリっぽい人。

アアーッ! あの人はたしか……!


「ジューゾサン! 首都ニ戻ラレテタンデスカ!?」


 そう! ユーリ・ジューゾさん!

ルアンキに行く途中の村で会って、一緒に地底蜘蛛の大群をコロコロした……巡回騎士団の偉いヒト!


「貴公もか! これは奇遇にござるなあ!」


 生体甲冑をガチャガチャさせながら、こちらに歩いてくるジューゾさん。

そういえば首都に来たら寄ってって言われてたっけ……


「ジューゾおいちゃんだ~!」「いらっさーい!」「おみやげある? おみやげ~?」


 と、子供たちが校舎からワラワラ出てきた。

男の子が多いね……みんな木の槍持ってない!?

ナニ!? 迎撃かなにか!?


「おう、皆変わらず元気よな! それでは隊列を組んで行進! 土産は稽古の後じゃ!」


「「「はーいっ!!」」」


 子供たちは元気よくお返事をして、一斉に整列。


「「「いっちに! いっちに! いっちに!」」」


 あっという間に、小さい軍隊みたいになって……校庭の方へ歩き出した。

な、なんじゃこれは?


「うむ、稽古は欠かしておらぬようだ! 良きかな良きかな!」


 ジューゾさんは笑いながらその後へ続く……なんじゃこれは!?

あ、巡回騎士団の人たちがゾロゾロ門から入ってきた!

誰か説明しておくれよ~!



「突けいっ!」


「「「やーッ!!」」」


「まだまだ……突けいッ!!」


「「「たーッ!!」」」


「脇を締め! 前を向け! 全身で突くのだ! 突けいッ!!」


「「「りゃーッ!!」」」


 なんということでしょう。

いつもなら子供たちのキャッキャであふれかえる校庭が……今や練兵場に!!


 ジューゾさんの掛け声のもと、子供たちが元気よく、そして真剣に槍を突き出している。

みんな真面目なお顔をしている……


「腰ば中々に据わっておるのす! 熱心な子供らでがんす~!」


 声を聞きつけてやってきたロロンも、ボクの横で楽しそうにしている。


「巡回騎士団の方々には、こちらから請うて稽古をお願いしているのです。あの子たちが将来何をするにせよ、読み書きと武術は身に付けておいて損はありませんから」


 同じようにやってきたイリュシムさんがそう説明してくれた。

……なるほどなあ、殺伐異世界においては重要ですねえ。


「勿論、子供たちに無理強いはしていませんよ? 個人個人に向き不向きというものはありますので……これは、サチコ母さんが遺した厳命でもあります。『やりたいことを思い切りやらせるんや、大人はその道筋をつけるだけや』って、よく言っていました」


 そういえばさっちゃんさんは関西のご出身でしたね……なんてしっかりした人なのだ。

子供の時に転移してきたってのに……苦労されただろうに、素晴らしい考えだね。

親御さんの教育が良かったんだろうか。


「――そこまで! これより乱取りに移る! 防具を持ってこい!」


「「「はーい!」」」


 子供たちは手慣れたで校舎に走っていく。

出て来た時には、剣道の防具みたいなものを小脇に抱えている。

おお……結構しっかりしてる!


「息を整えよ! 汗をぬぐい、水もしっかり飲むのだ!」


「「「はーい!!」」」


 本当にしっかりしてる……!

昭和の部活よりしっかりしてる!!


「ムーク殿! いかがですかな?」


 休憩中の子供たちを横目に、ジューゾさんが歩いてきた。


「スゴイデスネ。子供タチノ将来ガ楽シミデス」


「はっはっは! 実を言えばここから巡回騎士団に入って欲しいのもあり申す! 『滋養のいい畑を先買いする』というものですよ! はっはっは!」


 青田買いとかそういうやつかな?

日本でも、剣道や柔道の大会に警察とか自衛官が来るって聞くもんね……知らんけど概念は知ってる!


「ムーク殿もいかがですかな? 僭越ながら拙者がお相手仕ろうぞ!」


「……ア、イエボクハ……ロロン!? ロロン!?」


 断ろうかと思ったらむっちゃグイグイ押すのやめてくれませんか子分よ!?

ウワーッ! お目目がキラキラしている!!



 結局、ボクもみんなとお稽古に参加することになった。

……結果ですか!? ボコボコのボッコボコにされましたよ!

『魔物相手の戦い方が沁みついている。スジはいいからこのまま精進すればいい』とのことです! チクショーッ!!

でもボコボコにされてるだけだったのに、子供たちは皆目をキラキラさせてボクを見ていた。

なんか……防御力がクソ高くて何度でも立ち上がるのが格好いいんだって! それはよかった!!

対人戦はクソ雑魚ナメクジ虫なので、また稽古をつけてもらおう! そうしよう!!


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― 新着の感想 ―
カチコチなむっくんアーマーを貫通するそらんちゅキックとホログラムパンチは何かスキルが乗ってるんでしょう。 《特殊技能:ノンデリ殺し》とかw
世間では上澄みに片足突っ込んでるはずのムークの装甲と火力でも、 自爆含めてかなりの頻度で破壊されるこの世界の魔物の強さよ… 子供よ、目指してはいいがそいつぁ特異個体だw
更新ありがとうございます!ムッくんは分かって無い。対人戦は妙技が光るが、ムッくんがやっているのは完全な殺し合い。身体の部位が消し飛ぼうが突っ込んでくる虫の恐ろしさよ。当たれば致命傷の技の数々。そりゃー…
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