第111話 いつでもどこでも子供は可愛いねえ! 可愛いねえ!
「よしよし、よーしよし~!」
「ギャッギャ、ギャウ」
飛竜くん、敵として出てきたことはあったけどこうして近くで見ると……お目目がくりくりでかわいいね。
今はアカにナデナデされてなんか嬉しそう。
地上にいる時は翼はコンパクトにたためるんだねえ……なんか、プテラノドンを思い出すなあ。
「飛空隊には情報を回しておきますので! これからは……そうですね、先程の半分ほどの高度を飛んでいただければよろしいかと!」
ボクの方は、飛空隊のトラコさんにめっちゃ頭を下げられている。
「アリガトウゴザイマス。アト、サッキハ知ラナイトハイエ本当ニ申シ訳アリマセンデシタ」
「いえいえ! おわかりいただけてよかったです!」
教えてもらったけど、やっぱりこの首都の上空には結界が展開しているので高度制限? があるらしい。
それ以外には特に注意事項はないらしいけど、事故は基本的に全部自己責任なので気を付けて! とも言われた。
ゆくゆくは法整備とかされるんでしょうね……
「それでは、業務に戻ります! ムークさん、空で会いましたらよろしくお願いいたします!」
「ハイ、トラコサン。オ世話ニナリマシタ!」
ボクが手を振ると、トラコさんは綺麗な敬礼を返して――
「ハイヤーッ!」「ギャウ!」
飛竜くんといっしょに、あっという間に空へ舞い上がった……格好いい!
子供たちに人気なわけですよ、ほんと。
「「「いってらっしゃーい!」」」
ほ~ら、大人気。
「おいちゃん、またやって! やって~!」「おれも~!」「ぼくも!」「わたしも! わたしも~!」
ボクも大人気!
「アノ、イリシュムサン……?」
「ええ、今は自由時間ですので。お嫌でなければ……お願いしてもよろしいでしょうか?」
あ! イリュシムさんの髪の毛、よく見るときめの細かい葉っぱなんだ! さすがは木の精霊さん。
よーし、改めて責任者の許可もとれたぞ~!
「ハーイ順番! 皆ヤッタゲルカラネ! 並ンデ並ンデ~! 小サイ子カラネ~?」
「「「はあーい!!」」」
いいお返事! やっぱりみんないい子~!!
・・☆・・
「チュピピ……ピヨヨ……」「すひゃあ……むにゃあ……」
柔らかそうな布団の上で、アカとピーちゃんが眠っている。
ああいや、2人だけじゃなくて……たくさんの子供たち。
さっきのヘレネちゃんを始め、遊んでいたみんながスヤスヤ眠っている。
うーん、なんて幸せな光景かしら。
孤児院の一階にある大きなお部屋。
ここはアレだね、お昼寝の場所なんだね。
本当に日本の保育園みたいだ。
「うむうむ。良い……良いぞ、子供はこうでなければな」
肩にいるヴァルも、とっても嬉しそう。
素敵な相棒さんも子供大好きだもんね~?
ボクは、ほっこりした気持ちでそっと扉を閉めるのだった。
子供を抱えて飛行型玩具と化して、数時間。
すっかり遊び疲れた子供たちを寝かしつけて、今は応接間みたいなところに案内されている。
「ムーク様、お疲れでしたでしょう……こちらをどうぞ」
むしんちゅの女性が、お茶を出してくれた。
ここって、当然だけど結構な数の職員さんが働いている。
「全然デス。子供ノ元気ヲ分ケテモライマシタカラ」
「まあ! ふふふ……噂の英雄殿は子供好きでらっしゃるんですね」
噂の英雄殿……もはや何も言うまい。
異世界噂システム、超怖い。
「んだなっす! ムーク様は大した英雄様でやんす!」
ドヤ顔のロロンである……頭、撫でておこう。
「キミモ大シタ子分デスノヨ~?」
「はわわ! も、もっだいね……もっだいね……」
いつものルーティンのような気がしてきた。
キミもそろそろ慣れていただきたい。
「英雄……英雄ナ? んまあ……やっていることは実際たいしたものではあるが……」
「英雄っぽさがね? ムーク、いつも嬉しそうだし、子供に優しいし……」
「よいのです! ムーク様はそれでよいのです!」
英雄っぽさ is 何?
まあ、別に英雄ムーブをしたいわけじゃないからいいか……
「ふふ、みなさん仲がいいのですね……ああ、お夕飯のご予定はおありですか?」
扉が開いて入ってきたのは……サチさん。
職員さんが頭を下げてるから、上司さんになるのかな?
「イエ特ニ……ア! イセコサン、宿ッテドウナッテマスカ?」
昨日の宿にまた戻るんかな?
「宿の件はご心配なさらず。既に払いを済ませておりますので」
ま、また経済を回せなかった!
「それでしたら丁度いいです。本日はこちらへお泊りください、ああ、勿論お嫌でなければですが……」
お嫌では絶対ないけど!
「ソレニツイテハ問題アリマセンガ……寄付ヲ! 寄付ヲサセテイタダキタイ!!」
この人たちも宿代とか受け取らない気配がする! すごくする!!
なのでせめてもの抵抗を――!!
「まあ! それは結構ですよ。イリュシム先生からもきつく言いつかっておりますので……何日でも遠慮なくお過ごしください。ピーちゃんの大恩人なのですから」
ムギーッ! 基本的にいい人しかいない! いなーい!
こうなれば最後の手段だ……!!
「ジャアコレヲ――ドウゾ!」
バッグから出てくる、SDヴェルママの嵐!
旅の間に作った総勢50体くらい! シークレットでシャフさんも混入しておいた!!
売れるクオリティだっていうのは、みんなも太鼓判押してしてくれたからね! ね!
「まあ、すごい!」
職員さんが目を輝かせている。
「なんとおかわいらしいメイヴェル様……! こ、こんなに素晴らしいものをいただくわけには!」
サチさんはそう言うけど……!
「元手ハゼロ! 全部ボクガ作リマシタ! 木片サエアレバ無限ニ作レマスノデ! ノーデ!!」
金銭的援助ができないならこれしかない虫!
「ソレニ! メイヴェル様ノ御威光ヲトルゴーンニ広メルノハボクモ、虫人ノ端クレトシテ至上ノ目的デスノデドウカ! ドウカーッ!!」
椅子から下りて――喰らえ! 神聖虫土下座!!
「さ、サチねえさん……」
「わかりました! わかりました! 有難く頂きます! ですのでどうかお顔を上げてください~!」
フッハハハ! 勝ったァ!!
『姿勢的には大負けですけども』
いいの! ヴェルママの木像も、売るよりこっちの方が喜んでもらえそうだからいいの!
『なんといじらしく、優しい虫か……! 母は誇らしいですよ! とってもとっても誇らしいですよ! ほほほほ! ほほほほ!!』
ホラめっちゃ喜んでる! やったね!!
「騒がしいですね、どうかしましたか――これは一体!?」
あ、イリシュムさんも来ちゃった!
説明が面倒な状況でござるなあ! ハーッハッハッハ!
結局、ボクらは孤児院に泊めてもらうことになった。
まあ、ピーちゃんは初めから滞在してもらおうとは思ってたけどね! っていうかピーちゃんはここに残るのかな……ちょっと寂しいけど、それが彼女にとっていいことだからねえ。
「おいちゃんのせなかでっけ~!」「それにピカピカ! いいな~!」
「ムッハッハ……コショバイ!」
そんなわけで、ボクは夕飯前にお風呂と洒落こんでいる。
飛び回って疲れただろう……って薦められてね!
「ンジャ、オカエシニゴシゴシ~」
大きな大きなお風呂場には、ボクといろんな種族の男の子たちがいる。
賑やかでとってもいいな~……ボク、こういうの大好き!
「ハーイ、オ湯カブッテ~?」
子供たちの汚れと泡を流し、一緒に湯船へ。
いやあ……広いお風呂! ピーちゃんに前聞いたけど、さっちゃんさんがめっちゃ頑張って作ったんだってね。
『お風呂は生活で一番大事!』という言葉が今も残っているとか。
それには全力で同意しますねぇ……
「ムークのおいちゃん、ぼうけんしゃなんだよね?」「ぼうけんのおはなしして! して~!」
「ムーン……ソウダナア、ジャア最近ノオ話デモシヨッカ。北ノ端ッコニイタ時ニ、ディナ・ロータスッテイウデッカイ亀サンガ出テネ~……」
この子たちがのぼせない程度に、お話ししたげよっかな!
もちろん、いい所ばっかりじゃなくて失敗とかもね! 将来の敏腕冒険者かもしれない、この子たちの為に!
・・☆・・
(三人称)
すっかり日も落ちた『ミカーモ孤児院』一階の奥。
そこは広い部屋になっていて、ここの子供たちが問題なく眠れるように二段ベッドが敷き詰められている。
柔らかく肌触りのいい布団の中で、子供たちが安らかな寝息を立てている。
今日はムーク達という来客もあり、遊び疲れて眠るのも早かったのだ。
そんな子供たちの中から、起き上がる影が一つ。
その小さな影は、周囲を見回した後に空中へ音もなく飛び上がった。
そして、半分開いていた窓から外へ飛び出る。
影……セキセイインコの妖精、ピーちゃん。
彼女は外へ出ると、真っ直ぐ校舎の入口にある銅像の方向へ向かった。
もちろん、巨大な不死鳥ではなく……『さっちゃん』の銅像である。
そこへ到達すると、銅像の肩……自分とそっくりなインコの隣へ飛び移る。
彼女はそこから、銅像の横顔を見上げてチチと小さく鳴いた。
『さっちゃん……遠回りしたけど、帰ってきたわよ。帰ってきたわよ』
ピーちゃんは銅像の頬に頭をこすりつけた。
『色んなことがあったのよ。今日一緒にここへ来たムークさんに助けてもらって……ラーガリから、ここまで。皆で一緒に旅をしてきたわ……ムークさん、アカちゃん、ロロンちゃんに、アルデアさん! ちょっと前に加わったイセコさんに、マーヤさん! それにヴァルさんと……今はもういない、カマラさん』
それから、ピーちゃんは今までの旅について長い長い話をした。
銅像に、いや『さっちゃん』に伝えるように、ずっと。
それが終わった後、一呼吸置いて……また、彼女は話し出す。
『カマラさんが死んじゃった時に、さっちゃんを思い出したわ……あの人、さっちゃんみたいに笑って、眠るみたいに亡くなったから……』
チチ、と鳴いたピーちゃんの目から一筋、涙がこぼれた。
『……私ねえ、長生きさんなのに、今までわかってなかったのね。死んじゃったら、そこで終わりじゃないってこと……その時に知ったのよ』
『ゴーサクちゃんのこともそう。ゴーサクちゃんはもういないけど……あの子の作った料理の味は、今でも皆に大人気だもの。お店だって、昔のままだったわ……ここだって、同じだわ』
『あの時の子たちも、もうほとんどいないけど……今日、お部屋や廊下を見たら、昨日のことみたいに思い出したわ……』
『エーコちゃんが転んで泣いた廊下。タロちゃんが登って降りられなくなった屋根。ムィダちゃんがお洗濯していた裏庭。サンジュロちゃんが居眠りしてた教室……みんな、みーんな……あの時のまま』
羽根を広げ、首を回すピーちゃん。
『いなくなっても、消えちゃうわけじゃないのね……いつだって、あの時のみんなは私の『ここ』にいるの……ふふ、ヴィラールさんって人に言われた通り! 私ったらそれにも気付いてなかったのね!』
彼女は、また銅像を見上げる。
潤んだ瞳に、星が光っていた。
『ねえ、さっちゃん……あなたがいなくって寂しいけど、あなたがいたから楽しかったわ、とっても! 今だってそうよ!』
そして、愛おしそうにまた頬を摺り寄せた。
『だからね、私はずうっと、ずーっとあなたのインコで……私がいつか、この世界からいなくなるまで……』
『……ううん、違うわね! また間違えちゃったわ!』
『私がいつか、この世界からいなくなっても……ずっと、ずーっと……』
『――あなたのことが大好きよ、さっちゃん』
月の光の加減か、銅像が微笑んだように見えた。
・・☆・・
『ううぐうおおおおお……なんなん……ごのびーじゃん……ええやつ……ええやつぅ……! 愛! 無償の愛! 燦然と輝く、不変の愛! あーしの、あーしたちの求めるものは、求め続けたものは、ここに! ここにあったんじゃ~!!!』
『ピーちゃん……シャフさんポインヨ500億点あげゆ……!!!! ああ!? 何止めてんだ殺すぞ木っ端神ども!! 脳天カチ割るぞてめえら~! ゴラ! 離せ! 離せって言ってんだろうがぁああああああ!!!!!』
『お隣様、巻き込まれるのでこちらへ! この神式燻製機の後ろなら安全ですから!』




