表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

473/510

第109話 『おかえりなさい』

『楽しみよ! とっても楽しみだわ! 心がウッキウキするわ~!!』


「よかた! よかたね~!」


 ピーちゃんが、アカと一緒に車内を飛び回っている。


広いねえ……広すぎるねえ……


 ミライ飯店の前に横付けされた竜車。

それは……完全に密封された綺麗な箱だった。

ボクが今まで見た中で、一番高級そうな竜車! しかも走竜二頭で引っ張るおっきいやーつ!


 中も広くて、ソファーもフカフカ!

フカフカすぎて、酔っ払いのマーヤとアルデアは即スヤスヤしております。


 初めは恐縮したけど……外から中が見えないようなスモーク? 窓がついていてよかった。

遺憾ながらボクと妖精たちはとっても目立つしね!


「アノ、アリガトウゴザイマス。後日コチラカラ出向クツモリデシタノニ……」


 この竜車には、ボクらの他にもう1人乗っている。


「いいえ、いいえ。私どもがお招きする立場でございますので」


 スーツっぽい服を着込んだ、真面目そうな……ヒューマンの女性!

そう! ヒューマン! 人族です! 綺麗な黒髪のメガネのお姉さん!

だぶん二十代中盤くらい!


「影衆の方々からお話をお聞きしておりまして……一日千秋の思いでお待ち申し上げておりました」


 彼女は『ミカーモ家』の縁者さんで、お名前は……


『素敵な竜車をありがとう! サチちゃん!』


 『ミカーモ・サチ』さん。

ピーちゃん曰くさっちゃんさんに雰囲気がよく似てるんだってさ!

ふーん……さっちゃんさんはやっぱり優しそうな方だったんだねえ。

この人は勿論いい人だと思うよ! だって妖精たちが逃げてないし!


「いいえ……私も、お話に聞いていたピーちゃんに会えて嬉しいです!」


「チュチュピヨ! チュチュン!」


 サチさんは嬉しそうに、肩に飛んできたピーちゃんを撫でている。

ここへ来て善人ウーマンに会えるなんて……! 初めにお姿を見た時に若干緊張してすみません!

人族に対する風評被害が酷い! おのれアーゼリオンとオルクラディ!!


「皆様、どうぞごゆっくりなさってください。門まではそうかからずに到着しますから」


 そしてこの竜車の行先は……ピーちゃんのいた孤児院!

商家として本拠地はこの二の街にあるらしいけど、ピーちゃんが行きたいのはそっちじゃないからね。

明日あたりに移動を開始しよう……って思ってたから、渡りに船! じゃなくて竜車!


「ヨカッタネエ、ロロン」


「んだなっす、んだなっす~♪」


 ボクの横に座ったロロンが、嬉しそうに左右に揺れている。

あ、ここは3列シートになってるんだ。

アルデアとマーヤが一番後ろで、ボクとロロン、それにイセコさんは真ん中。

そして最前列が妖精たちとサチさんになっております! ゴージャス!

ミカーモ家って儲かってらっしゃるんだなあ……


「ムーク様」


 あ、はいなんでしょサチさん。


「遅くなりましたが……ピーちゃんを助けて下さって、ありがとうございます」


 頭を下げてくるサチさん。

なんと綺麗なオジギ……!


「イイエ~。ボクモコンナ素敵ナ子ト知リ合エテヨカッタデスカラ!」


 これは本当! あの洞窟から色々あったけど……やっぱり人助けはしとくもんだねえ!

もっとも、あの場で見捨てる選択肢はナッシングですけども~!!


「ネ~? ピーチャン。 仲良シサンダカラネ~?」


『そうよ! とっても仲良し! ムークさんとはとってもとっても仲良しなのよ~!』


「アカも! アカも~!」


 アカも喜びの謎ダンスをしている。

竜車の空気がホッコリしている気がする!


「ふふふ、素敵ですね」


「ソウデショウ! ピーチャンモアカモ素敵デスヨ! 素敵!!」


 サチさんは、とっても優しそうに笑っている。

あ~……ヒューマンにもいい人はいるんだ! いるんだ!


「おいムーク、誰か忘れておらんか?」


 マントの内ポッケでスヤスヤしていたヴァルが首元まで出てきた。


「キミモネ! 素敵ナ相棒サン!」


「ふぅん……まあ、それでいい。それでな……ぬふふ」


 褒めると、彼女はニヤニヤしたまま内ポッケに帰って行った。

照れちゃってか~わい~い! 妖精は素敵な子しかおらんな~!!


「ア、勿論ロロンモイセコサンモ素敵ダカラネ!」


「じゃじゃじゃぁ!?」「あ、ありがとうございます……!」


 ウチのパーティは素敵な子しかいないんじゃよ~!


「うにゃあ、私も~?」「ムギー!?!?」


 マーヤ! マントを引っ張らないでください!

素敵だから! もちろん素敵だから~!!



・・☆・・



 ゆらゆらと竜車は行き、門をくぐった。

どうチェックするんかなって思ったけど、どうやらミカーモ家の竜車は顔パス対象らしい。

一瞬だけ停車して、またすぐに発車。


 そうして入った三の街は……二の街と同じ感じだった。

太い道路の脇に、細い道路。

綺麗で整地された空間に、家が建っている。

ふむ……二の街と比べて大きな家が若干多いかな? って感じ。

それに、強そうな衛兵さんが何人かのグループで巡回をしているのも見えた。

ここがトルゴーンの、本当の中心か……広さはどれくらいなんだろ。

三の街、二の街ときて面積的には小さくなってるはずなんだけど……むう、よくわかんない。


 ただ、正面遠くの方に見える大きなお城? みたいなのが『評定所』って場所なのはイセコさんが教えてくれた。

たぶん日本で言う所の国会チックな場所なんだろうねえ。


 ボクやアカが窓の外を興味津々で見ていると……竜車は停まった。

どうやらここが目的地らしい。

酔いがさめた様子のマーヤたちと一緒に、竜車から下りる。


「オー……」


 そこは……うん、こう言った方がいいかな。

学校だ、学校。

そこそこの規模の、二階建て木造校舎って感じ。

壁で囲まれた広い敷地には、校舎と、運動場と、それから体育館みたいな建物がある。

まさに小学校……そっか、これを建てたのはさっちゃんさんだもんね。

参考にしたのかもしれない。

校舎の入口の上には、『日本語』でこう書いてある……『みんな仲良く、楽しく』って! 絶対さっちゃんさんの書いた字だ!


『あの頃のまま! あの頃のままだわ~! 懐かしいわ! なつかしいわ~!』


 ミライ飯店からこっち、テンションが上昇し続けているピーちゃん。

彼女はボクの肩、頭、肩を高速でジャンプ移動しながらとっても嬉しそう。

触角に刺さりそうでとっても怖い虫です。


 校門っぽい門を潜って、サチさんの案内に従って先へ進む。

玉砂利? が敷き詰められた道の両脇には、綺麗な花の咲いている花壇がある。

そしてその先が校舎に……なんかある!?


 雄々しく翼を広げた、とっても格好のいい鳥の像! ボクの2倍くらいあるデカさ!

こ、これがマサカ……


「これは……今から300年ほど間に作られたピーちゃんの銅像です。その当時有名だった彫刻家が、イメージだけで作り上げました……出来がいいのでこのままにしておこう、という判断でこうなりました」


 サチさんが困ったように笑っている。

確かに……出来はムッチャいいもん、雄々しすぎる鳥さん。


『私じゃないわ!? 全然かわいくないわ! かわいくないわ~!!』


 本人、いや本インコは体を膨らませて抗議しております。

明らかに別の種族だもんね……むむ!


『まーっ!』


 ピーちゃんが飛び立って、先に行く。

そこに芝生が敷かれていて、ちょっとだけ盛り上がった場所に銅像があった。


『さっちゃん! さっちゃんだわ! そっくり、そっくりよ! そっくりだわ~!』


 何人かの子供たちの銅像の、中心。

その子達を笑って見ている、優しそうな笑顔の……割烹着を着た、初老のご婦人の銅像。

ああ、この人がさっちゃんさんか。

ピーちゃんの言ってた通りの……とっても優しそうな人だ。

その肩には、今度はピーちゃんそっくりのセキセイインコがちょこんと座っている。


『さっちゃん! さっちゃん! 帰ってきたわよ! 帰ってきたわよ~!』


 ピーちゃんはチュンチュン鳴きながら銅像の周辺を旋回し、自分そっくりの銅像の横に止まった。


『ごめんね! 長い間いなくなってごめんね~!』


 そして、頬を寄せてぽろりと涙をこぼした。


『あうぅうう……よがっだ……よがっだぁあ……!』


 シャフさんの方がもっと泣いてる!?

で、でもよかった! 本当によかった! ロロンも感動したみたいでお目目が真っ赤!

拭いてあげましょうね~?



「ピーちゃん!」


 銅像に止まったピーちゃんに感動していると、校舎の方から声がかかった。


『まーっ!?』


 その入り口にいたのは、褐色の肌に緑色の髪をした……違う!

褐色肌じゃない! 木目! 木の肌だ! 動く木像みたいな、とっても綺麗な女の人!

落ち着いた色合いの、着物によく似た服を着たその人は……そうか! あれがドライアドさん!

ってことは――


『いーちゃん! いーちゃーん!』


 ピーちゃんはその人の所に一目散で飛んでいき、周辺をギュンギュン回っている。


「あちらが当孤児院の理事長、ドライアドのイリュシム先生です」

 

 サチさんが教えてくれる。


 あ、前に聞いたことある名前!

さっちゃんさんが御存命の時からここにいる人なんだよね! 長生き!

ドライアドは木の精霊だから……アカやピーちゃんの遠い親戚みたいなものなんかな?


『いーちゃん! 綺麗になったわ! とっても綺麗になったわ! アルちゃんもそうだけど、元気でとっても嬉しいわ! 嬉しいわ~!!』


「ピーちゃんの方は変わりないわね。うふふ……まるであの日のまま、素敵ね」


 いーちゃんことイリュシムさんは、ピーちゃんを肩に乗せて微笑んでいる。

たしかに動く女神像みたい……この世界って綺麗な人多すぎじゃありません? 別に困らないけど。


「ねえピーちゃん、ちょっと待っててね……みんな!」


 イリュシムさんがそう声をかけると、校舎の中からわあっと声がした。

すぐに、わらわらと……子供たちが走って出てきた。

獣人、虫人、鱗人に他にも色々。

様々な種族の小さな子供たちが、手に手に何かを持って走ってくる。

彼らはピーちゃんを肩に乗せたイリュシムさんの周りをまわって――手を振り上げた。

ぱっと空中に散らばった何かが、風に乗って広がる。


「きれえ! きれえ~!」


 アカが声を上げた。


 それは……花びらの形をした紙吹雪だった。

色とりどりの花びらが、ピーちゃんの周囲を舞っている。


「おかえり! ピーちゃん!」「おっかえり~!」「おかえり! おかえり~!」


 子供たちが、口々に声を上げる。

ピーちゃんは、目をパチパチさせながら言葉もなくそれを見ていた。



『――おかえり、ピーちゃん』



 子供たちの声に、別の誰かの声が紛れていたような気がした。

ピーちゃんは、ただホロホロと静かに涙を流していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんでか知らんが、突然読みにくくなったな…なんでこんなに涙が…
くっ、今日は雨足が強いぜよ…
やっぱりモトノブ=サンの作品はイイゾォ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ