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第89話 クトウの街はとっても綺麗。

「まーち、まーち!」


「街ダネエ、圧倒的街」


 アカがはしゃぐ向こう側に、街道から繋がる街が見える。

ふむ……周囲の城壁、中に見張り台……それに門番のむしんちゅ!

これはオーソドックスな街ですな! 規模も中くらいって感じ!


「さあ宿ナ、宿。いい風呂があるといいのナ~、それと酒ナ!」


 ブレないそらんちゅことアルデア!


「門番に聞いてみましょう。あそこは街道筋の要所ですのでそれなりの設備は揃っているかと」


 頼りになりますなあ、イセコさんは。


「何事もながんしたが、それでも街ば見ると安心するのす~」


「うん、ホッとするね」


 ロロンとマーヤが楽しそうに話している。

けもんちゅ同士ってこともあるけど、そもそも性格が合うんだろうねえ。


「ムーク、ムーク」


 お? 起きてたのヴァル。


「あの街にはどんな美味い物があるのか楽しみだな!」


「ウン! トッテモ!」


 素敵な相棒ですよ! キミも!


『楽しみね! 楽しみだわ~!』


 ピーちゃんも肩でドリュンドリュンしてる!

みんな元気が一番! 一番! 



「おお! 貴方が第七巡回騎士団と共にディナ・ロータスを討ち果たしたムーク殿か!」


「アッハイ……ソウデス……」


「かの大亀の腹をかっ捌いたとか! なんとも凄まじき剛の者でありますな!」


「アアソノ……マア、部分的ニ……エエ」


「お待たせして申し訳ない! 影衆のお方もどうかお許しを! ささ、どうぞ! ようこそクトウへ!」


「ええ、ありがとうございます」


「オ邪魔シマス……」



 という、いつもながら異世界の噂システムに戦々恐々しながら街へ入場。

その先は、石畳が綺麗に敷かれた清潔な街だった。

うーん、トルゴーンの街ってどこに行ってもホント綺麗!

土木建築に秀でた国って、こういう所が素敵ねえ。


「ムーク様、いつもながら大人気だったのす~♪」


 嬉しそうだね、ロロン。

アルマジロスキップまでしちゃってさあ。


「ヨシヨシ」


 カワイイから撫でとこ。

ん~フワフワ!


「はわわ」


 そして、瞬間移動みたいなスピードで横に来たアカも撫でとこ!


「えへへぇ、えへぇ」


 ん~今日もスベスベ~!


「聞いてまいりました、このまま真っ直ぐ行った所の『サァコ亭』がいいようです。風呂も備え付けてあるとか」


 イセコさんの有能さがとどまる所を知らない。

そしてお風呂! お風呂ですってよ! よ!


『流石は推定元日本人……お風呂が好きですね、むっくん』


 嫌いな人はいないって思うな~?

さあ、行こう行こう~!



・・☆・・



「お部屋は1階の奥です、どうぞごゆるりと……ああ、お風呂は離れにありますのでご自由にお入りください」


 『サァコ亭』は二階建ての落ち着いた宿屋さんだった。

庭も広くって、別館みたいな建物がある……と思ったらアレがお風呂なんだね。


 応対してくれた女将さんは、キモノっぽいものを着た中年? くらいのとっても綺麗な人だった。

インセクト要素は……たぶんアレ、モフっとした蛾っぽい?

ラクサコさんが白基調だったのに対し、女将さんは黒貴重の落ち着いた感じだ。

ふむん……これは女将さん目当てのお客様も多そうですな。


「おじゃま、しまう!」


 アカが空中でペコリと頭を下げると、女将さんはニッコリ微笑んだ。


「まあ、ご丁寧に……こちらとしても妖精の方々にお泊りいただいて、身に余る光栄です」


 そうして、女将さんはアカをナデナデ。

あら、いい人!


「もしよろしければこちらをどうぞ、実家で作っている果物ですが」


「わはーい! ありあと、ありあと~!」


『美味しそうだわ! 美味しそうだわ~!』


「む! これはありがたい!」


 女将さん!? 滅茶苦茶でっかい袋にギチギチにオレンジっぽいものが詰まってるんですが!?

いい人どころじゃない! とってもとってもいい人だ!?


「ス、スミマセン……!」


「いいえ、お構いなく。エンシュをお守りくださった英雄様にでしたら、この程度なんということもございません」


 ……なんて?


「エ、ゴ存ジナンデスカ……?」


「ええ、あの街で衛兵をしている弟がおりまして……手紙が届いたのですよ。まさに鬼神の如きご活躍だったとか」


 世間が……狭い!


「ですので、どうかご自分の家と思って心安らかにお過ごしくださいませ。何かあれば何なりとお申し付けを……それでは、ごゆっくり」


 女将さんは、恭しく頭を下げて去って行った。

おお、すごい……上品! 格好いいなあ。


「ムーク様様なのナ~♪ さ、部屋を見に行くのナ! その後は風呂ナ~!」


 アルデアが小粋なそらんちゅステップで歩いていく。

ボクも気になるから行こっと!



「……最高ダ……」


 湯気が立ち込める浴場内で呟く。

離れにあったお風呂は、高級な感じの木造だった。

木のいい匂いもするし……異世界ヒノキ風呂って感じかな。

丁度いいことに誰もいなかったので、貸し切り虫。


「むぅ……甘露、甘露」


 お湯に浮かぶタライに腕を引っ掛け、ヴァルがちょっと優雅に浮かんでいる。

この子ナチュラルに男湯に来たよね……

まあ、今更か。

ドラム缶風呂ではしょっちゅう一緒に入ってたし。


「チュワワ……」


 そしてもう一人、ピーちゃんは仰向けになってあっちへゆらゆら、こっちへゆらゆら。

ビジュアルが小鳥の水死体なんだが?


 アカはロロンと一緒に入るって言って、今は別行動。

あの子も自立心が芽生えて来たね……いいこと、いいこと。


『本音は?』


 ちょっと寂しい! 


『ふふ、甘ったれ虫!』


 ……甘んじて受けよう、甘ったれだけに!

っていうかトモさんトモさん、今更だけどここの宿代なんだけどさ……

人数分のベッドがある綺麗な大部屋がさ、一泊50ガルなのって……


『英雄割り、とでも言いましょうかね。明らかに相場をぶっ壊してます』


 やっぱり……そうだったか……

エンシュで頑張った甲斐があった、とでも言えばいんのだろうか。

なーんか、心苦しい気がする。


『まあ、あの規模のスタンピードをほぼ無傷で生き残るのは奇跡に近い偉業ですので。むっくんがいなくてもなんとかなったとは思いますが、テオファールさんの援護もなく……さらにあの人間爆弾女が大暴れしていたでしょうから……被害はもっと増えたかと』


 うむむ……確かに。


『なのでご厚意に甘えておきましょうね。過ぎた謙遜は相手にも失礼ですから』


 慣れてないけど、わかったよ。

そこまで言われちゃうとねえ。

せめて、この体験を大いに楽しむとする!


『やっべ。あーしちょっと前半聞いてなかったけど酒池肉林の話とかした?』


 してないですわよ!


「肩を借りるぞ、ムーク」


 ヴァルが肩に座って疑似足湯を楽しんでいる。


「ふむ、お主の肩は肌触りもよいし……湯で温まって更に良し。アカが褒めるわけだな……」


 足場的な意味で大人気のボクでーす。

……あ! 気付いたらピーちゃんが沈んどる!?

サルベージ! サルベージ!!


『鳥白湯になるところだったわ……ムークさんの肩はやっぱり素敵ね……素敵だわ……』


 ヴァルとは反対側の肩にピーちゃんを安置すると、彼女はそのまま溶けた。

異世界のセキセイインコは液体で構成されてるのかな……?


「ヒトの世は見るものが多くて毎日楽しいな。知識としては知っておるが、やはり自分で経験すると違う」


「ボクモソウヨ、実質産マレタテミタイナモンダシ」


 お互いエピソード記憶がないと面倒よねえ。

どこかのテキストでも読んでるような気がするもの。

百聞は一見に……ええと、そんな感じ!


『さっちゃんはニホンのことをしっかり覚えてたけど、ムークさんは大変ね……事故でこっちに来たのかしら? かしら?』


『ソレはボクにもわからないのよ~。知ってる知識で、生きてた大体の年代は推測できるけどさあ』


「お主も難儀なことよな?」


 ヴァルがほっぺをナデナデ。

あったかこしょばい!


『いや別に? だってこの世界の方が大事じゃん? ボク1人なら別だけどアカもいるし……むしろ、記憶がないから特に未練もないまであるよ?』


 例の謎悪夢だけは気になるけどね!

映画をブツ切りで無作為に見せられてるようなもんだからね!

始めっから見せて! もしくはパンフレット頂戴!!


「ふふ、いい親分よな」


「エヘン、モット褒メテモエエノヨ?」


『偉いわ~! とっても偉いわ~!』


 ピーちゃんが翼でボクのほっぺを殴打。

あ、違うこれ撫でてくれてるんだ……フワフワ!


「……ソロソロ出ヨッカ、ノボセルシ」


「む、それもそうだな」


『ご飯よ! ご飯だわ~!』


 ボクらは3人とも体が丈夫だけど、他の人が心配するといけないからね!



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更新甘ったれ虫!ありがとうございます!女神様ぁ。ありがとうございましたー…。などと供述しており、引き続き捜査を行う方針です。セキセイインコの鳥白湯…ダメだ。見たら泣きそう。
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