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第88話 ようこそ! 同行者さん!

「あ、ムーク。おはよ」


「フワァア~……オハヨ~……」


「おっきな欠伸、ふふ」


 朝起きて目を開けると、そこにはしゃがんでボクを覗き込むマーヤがいた。

ちょこっとビックリした!


「顔だけ出て寝てるから面白くって、見てた」


「ソウナン?」


 どうやら寝袋虫のビジュアルが面白かったみたい。

天幕はマーヤに使ってもらったからねえ。

でも寝袋も結構好き。


「ロロンが朝ご飯作ってくれてるよ、いこ」


「アヒャヒャヒャ!」


 顔面を尻尾でくすぐらないでくださいませ!

こしょばい!!


「おふぁよ……おはーよ……むいむいむい」


 おっと、振動でアカが起きちゃったから丁度いいや。



「もももふぁも」


「ナンテ?」


 マーヤ、ご飯はちゃんと飲み込んでから喋ってよ。

お行儀が悪いですよ?

ちなみに朝ご飯は目玉焼きとディナ・ロータスのベーコン、そしてパンとゴロゴロ根菜スープ!

控えめに言って最高。

正直に言って最強。


「んく……ねえムーク。これから、私も一緒に行っていい?」


 一緒にって……首都に?

はー? そんなもん……


「当然! ドウゾドウゾ! 仲良シガ増エテイイネ!」


「いっしょ! いっしょ~!」『旅は道連れだわ~! 世は情けだわ~!!』


 ボクも妖精も大喜び!

気心の知れた旅仲間が増えるのって嬉しいね~!


『(これ、首都までしか一緒に行かないと思ってない? コイツ)』


『(さすがにアレだけでそこまで思い至るのは無理ですよ、むっくんなので)』


『(は~……やっぱ神託で超ドスケベ神官捻じ込むかな、ここに)』


『(一考の余地はありますね)』


 なんか最近寒気がする……風邪かな?


「ミンナモイイ?」


「んだなっす! 問題ねがんす~!」


「妖精が懐く相手だから問題ないのナ」


 ロロンとアルデアは快諾。


「ぬ、ワレか? 良いぞ、アカがあれほど懐くのだからな」


「お頭は元々招待なさっておいででしたし、人となりも良い方ですから」


 ヴァルとイセコさんもOKっと!

よしよし、何の問題もないねえ。


「ありがと、ここまでずっと1人だったから寂しかった」


「ソレソレハ……ジャアコレカラハ寂シクナイネエ!」


 妖精も仲間もいない旅……ぶるる! 考えただけで寂しい! かなしい!!

転生してずっとそうならまた違ったんだろうけど……今この状態からロンリー虫になるのはもう無理です、ハイ……!


「んにゃあ、なに? なあに~?」


 寒くなったのでアカを撫でると、彼女はニコニコ振り向いた。


「ン~、アカトズット一緒デボクハ幸セダナ~ッテ」


 偽らざる気持ちですよこれは……トモさんとアカがいなかったら謎芋虫に絶望して発狂してたかもしれんからねえ。


「アカも~! アカもしゃーわせ、しゃーわせぇ!」


「ムギュ~!」


 アカは顔を輝かせて頬にタックル、さらにチュッチュ!

はーなんじゃこのかわいい子! かわいい子~!!


「アカ、おやびんといっしょ! ずうっと、ずうっといっしょ~!」


「ハーッハッハ! 当タリ前ジャン! ボクラハ最強ノコンビダカラネ~!!」


「さいっきょ! さいきょ~!」


 ほんと……ボクにチートはなかったけど! 女神様と仲間はチートですよ! フフフン!


「あはは、ムークっていつも楽しそう……明るいね」


「明るすぎてたまに不安になるのナ~? コイツ実は何も考えてないんじゃないのナ~?」


 マーヤは優しいけどアルデアが酷い! 酷い!!


「ワレもたまにそう思う」


 ヴァルまで~!?


『まあおおむね、はい』


『んまあ、それはそうだし』


 女神様まで!?!?



・・☆・・



「ぽっぽっぽ~、はぁと、ぽっぽ~♪」


『まーめが欲しいか、そーらやーるぞ~♪』


「ミンナーデ仲良ク食ーベニコイ~♪」


 ぽかぽかのいい天気。

両肩に乗せた妖精たちと一緒に歌いながら歩く……のどか!

人通りもないし、魔物もいないし!

最高の道行きだ~!


「ムーク達は妙な歌をよく知っているのナ~?」


「でも、どれもいい歌でがんす~」


「ん、ムークの歌好き」


 お酒に酔った時も歌ってるらしいけど覚えてないからね!

遺憾ながらこの先もあるだろうと思うから、普段から練習しとかないと!


「いくつかはロストラッドで聞いたことがありますね」


 イセコさんは博識だなあ。 

歌についてはピーちゃんから教えてもらったってことにしてるんだよね。

彼女ってば長生きだからね! 妖精だし!

さっちゃんさんから聞いたって言ってもらえればいいし! 事実その通りだけど。

童謡とか民謡、何故かボクもいっぱい知ってるんよね。

失われた前世で幼稚園の先生でもしてたんかも。


「あ、イセコさん。そういうわけで招待してもらったのに、ターロたちはごめんなさい。たぶん族長から大角さんには連絡がいってると思うけど」


「ええ、恐らくそうでしょう。お頭は獣人士族の方々とも広く親しまれておりますし……一応、クトウに着いたら確認しておきますが」


 ゲニーチロさんの顔、広すぎ問題。

特に聞いてないけど、ラーガリどころか帝国まで名前が轟いてそう。

それにクソヒューマンの国にもね。

そっちは悪名だろうけども、悪の枢軸みたいな国はあっちだと思うの。


「おやびん、まえからくるま、くるま~」


「オット本当ダ」


 前の方から来るのは……竜、じゃなくて馬車!

大きなお馬さんが曳いているのが、3台。

いやー大きい馬車だなあ……パワーが違うんだなあ。

街道は広いけど、横に寄っておこうっと。


「あれはトリャマ商会の馬車ですね。特におかしな所もありませんので、本物でしょう」


 イセコさんのお墨付きなら安心!

しかし、北の端っことはいえ人通りがちょこちょこ増えて来たね。

やっぱりこっち方面もディナ・ロータスの影響で待機してた人も多かったのかな?

いやあ、歩く災害ですわよ……? 倒せたけどできればもう二度と会いたくない。


 どうやら馬車の方々は安全なようで、アカはマントに入らずに肩に座って手を振っている。

ピーちゃんもボクの周囲を旋回しながらチュンチュク。

御者さんたちは最初ビックリした様子だったけど、すぐに笑顔になって手を振ってくれた。


「いてら! いてら~!」


『ご安全に! ご安全に~!』


 最後の馬車に乗っていたモフモフの御者さんが、大きく手を振り返してきた。


「ありがとうよお嬢ちゃんたち! こりゃあきっといい道行きになるよ! ……兄ちゃん! これ、その子らにあげてくんな~!」


 そう言って、なんか袋が飛んできた……っと、キャッチ!

中身は……ムムム! これは炒った豆っぽい何か!


「アリガトウゴザイマス~!」


「あいがと! あいがとぉ!」『羽どうぞ~! お返しに羽どうぞ~!!』


 アカは上空で謎ダンス。

そしてピーちゃんは御者さん3人分の羽を引き抜いて渡しに行っていた。


「うぇええ!? ちょ、そんな、悪いよ小鳥の妖精さん!?」


『いいのいいの~! ホラ! もう生えたからいいの~!!』


 無茶苦茶驚いてる……そうだよね、ボクは麻痺してるけど超絶レアアイテムだもんね……


「情ケハ人ノ為ナラズ……カ」


 即お返しが帰ってきたわけですけども。


「む、出たのナ。ムークのたまに出るいい言葉が」


 たまにってなーにアルデア!?

そんな、ボクが常に変な事ばっかり言ってるとでも!?


『そうですが?』『それな~?』


 ひどいやーっ!!



 ポカポカ陽気をてってこ歩く。

すれ違う人たちはちょっとずつ増えて、でも妖精たちはマントに入ることもなかった。

やっぱりむしんちゅさんはいい人ばっかりなんだねえ。

油断はしないけども。


「チョット混ンデル」


 そうやって昼を超え、夕方まで歩き続けたボクらは休憩所に到着。

けっこう大きい広場には、ポツポツと寄り集まった一団が結構いる。

今しがた到着したような人たちもいれば、もう天幕を準備している人たちもいる。

こんなに混んでる休憩所、ひょっとして初めてかもしれない!


「むう……川はあるがこれでは風呂は我慢ナ」


 確かにちょっと近くに川はある。

でもこれだけ人がいるとねえ……目隠し布をしていても無理だね。

見たところ男性ばっかりみたいだし。


「このペースなら明日中にはクトウに到着します。それまでの辛抱ですよ」


 イセコさんが慰めるように言った。


「むしろ水があれば毎日お風呂に入れるムーク達がすごい。お風呂の魔法具なんて買ってるヒト初めて見た」


 マーヤの耳がクルクルしている。

それについては……とてもいい買い物をしたと思っています、ハイ!



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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!ムッくんは人に恵まれる人たらし!マーヤさん…嗚呼、嫁が増えていく定期。
御者さん達はこの後、すれ違った兄ちゃんが亀さんをアレしたりいろいろした英雄で、小鳥の妖精さんがどこぞの守護鳥だって知るのかなー?
何も考えてない・・・ うん、基本寿命の心配ぐらいだけどそれも普段は気にしてなさそうだしね。
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