表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

425/516

第63話 昼下がりの接敵。

「恐らく、ゼルグさんの言っていた隊商でしょう。一群となってこちらへ向かって来ます、かなり速足です……恐らく、何らかの身体強化魔法か魔法具を使用していると思われます」


 かなり疲れた様子のイセコさんが言った。

相手がかなり速いってことは、それを上回る速度で帰ってきてくれたんだろう。


「コレドウゾ」


「あ、ありがとうございますムーク様……んく、んく」


 とりあえず水を差し出すと、彼女はそれを一息で飲み干した。


「ソノ連中……ドレクライデ、ココニ来ソウデスカ?」


「そうですね……夕暮れまでには」


 あら、結構余裕があるな。


「まだその連中が敵と決まったわげではね、まずは守りの備えをするのす」


「んだなっす! ここは見晴らしがええのす! 我らはこごに残り、トーラスさん達は池の周囲で待機して欲しいのす!」


 ダルトンさんとロロンの言う通りだね。

怪しい連中ってだけで先制攻撃とかしてたら、ボクらも盗賊と変わりがないモン!

ええっと……選手宣誓! しなきゃね!


『まさかとは思いますが……専守防衛のことですか?』


 ……そうそれ!



・・☆・・



「ダルトンサン……ソレハ?」


 トーラスさん達を池のほとりに下がらせ、各々が武器の確認や食事の後片付けをしている。

そんな中で……ダルトンさんは虚空から、ソフトボールくらいの岩を取り出して地面に並べている。


「これは【クロブ岩】っちゅう石でがんす。塊で買い付けて、暇な時間に削っておりやんした……下手な魔法よりも、これをば投げる方が楽でがんす」


 投げる……なるほど。

見た感じとっても重そうな岩だ。

こんなのがダルトンさんの力でバンバン投げられたら……うひゃあ。

大砲と変わりないじゃん、これ……


「オラは遠間に使う魔法ば不得手なもんで。これが一番だなっす」


「頼モシイスギル……!」


 歴戦の傭兵さんで、二つ名持ち。

いやー……ロロン繋がりであまりにも有能な方が雇えてしまったなあ。


 ロロンも槍を手入れしているし、ボクも準備しとこ。

といってもヴァーティガを出しておくだけなんだけども。

あ! マントに魔石仕込んでおかなくっちゃ。


『アカ、ごめんけど起きて。ヴァルも』


「うにゅう~……あい~……」


「ふわぁ……なんだ、もう夜か?」


 2人の妖精がモソモソ出て来た。

申し訳ないけどマントにアレコレせんといけんからね~。


 ヴァーティガを出して……うん、今日もどこにも汚れ無し!

まあさっきお風呂のついでに磨いておいたからねえ。

異次元の頑丈さだけど、いつも綺麗にしておきたい。


「上空からはまだ何も見えんナ」


「ウグーッ!」


 アルデアが肩に着地してきた。

この子ったら音もなく! 音もなく!!


「……トーラスサンタチ、2人デ大丈夫カナ?」


「いざとなればデルフィネが飛べばいいのナ。トーラスのようなヒョロヒョロなら、あやつでもかなり高い所まで運べるのナ」


 ……相変わらず友人の恋人にひどいや。


「ソレナラ安心カ……デモ追ッ手ガ来タラ?」


 ちょっとね、正直忘れかけてたけど。


「ふん、追っ手はあの【狩り司】リーバンなのナ。近くで我々が戦っていれば、デルフィネを攫って帰るようなことはせんし……そうでなくとも、まずは話し合いで解決しようとするはずナ」


「ソウカナ」


「そうだとも。それに……奴らはムークに貸しがあるのナ?」


 おーん? 特にこれといったことはなさそうだけど……?


「前の嫁追い騒動を忘れたのナ? あの時『私は』賠償を受け取ったが……お前は受け取っていないのナ。お前は『私への賠償のみでいい』と言ったが……奴らはそれを借りと受け取っているハズなのナ」


 え、えええ……あの話ってアレで終わりじゃなかったの?


「連中は堅物ぞろいなのナ。今回の騒動にお前が加担していると知れば、まず確実に話し合いでケリをつけようとするのナ~? 私は素敵な相手と知り合えて僥倖ナ~♪」


「アヒャヒャ!」


 アルデアはボクの顔を羽で撫でて、ウキウキしながら槍の手入れに戻った。

くしゃみするかと思ったじゃんか! ンモ~!!


「おやびん、おやびーん」


 おっと、アカが飛んできた。

……そうだ!


「オイデオイデ」


「んゆ~?」


 目の前でホバリングしているアカのマントに……っと。

バッグから出した魔石の中でも小さいやーつを、裏側にポイポイ入れておく。

ロロンがちょいちょい縫ってくれて、魔石を引っ掛ける所があるんだよね。


「オ弁当。ボクト離レテル時ニ使イナサイネ~」


「おべんと、おべんと! ありあと~!」


「オウフ」


 アカが顔に抱き着いてくる。

ふはは、なんとカワイイ子分よ……!


『ピーちゃん、何個か大きい魔石を渡しておくよ。戦闘とかでアカが小さいのを使い切ったら渡してあげて』


『お任せよ! ついでにおやつを入れてくれてもいいわよ! いいわよ!』


 しょうがないなあ……


「デハコノ山盛リノクッキーモ、オ願イ」


 ふふん、経済を回すためにリーチミで買い込んだのだ。

妖精のおやつなんていくらあっても困りませんからね。


『まー! 素敵よ! 素敵だわ~!』


 ピーちゃんは空中で小躍りしながらクッキーの入ったクソデカ袋を収納した。

うーん、何度見てもバグる光景。

小鳥にデカ袋が吸い込まれていく……


「ア、コレハ今食ベトイテ」


 クソデカドーナツは今2人にあげておこう。

ボクも小腹空いたしね。


「勿論ワレの分もあるのだろうな?」


 いつのまにか背中に張り付いていたヴァルが言った。


「当然。ハイアーン」


「はもも……ふむ、素朴だがとても良い味だ。濃いケマが欲しくなるな」


 アカにも、ピーちゃんにもあげてっと……

ええと、確かバッグのここらへんに……あった、朝淹れたケマのポット。

地べたに座ってるけど、まあいいか。


「ハイハイ、欲シイ人ハ~?」


「あいっ!」「うむ」『もらうわ! ミルクも入れて欲しいわ! 欲しいわ!』


 はい了解~。

英気を養っておかないとネ!


「おい、私の分はあるのナ?」


「モチローン」


 アルデアの分も追加ね~。



・・☆・・



「……アレでやんすか」


「ダネ」


 ボクの横にいるロロンが呟いて、槍を握り直した。


「確かに速い……アレは身体強化呪法でやんしょう」


 ダルトンさんは最前列にいて、その周囲には例の岩がゴロゴロ。


「こちらに敵対行動をとり次第、結界を張ります。向こうの攻撃を防ぎ、こちらの攻撃は通すものを」


 イセコさんは有能ですなあ。

今現在どこにいるかわからんけども……声だけしてる!


 ボクの見つめる先には、土煙。

結構な数の集団が、小走りを超える速度で殺到してきている。

遠くてまだハッキリ見えないけど……アレが例の隊商モドキってやーつか。


「さて、どう出るか……いざとなったらムークを魔法避けにするのナ」


「別ニイイヨ、ボク頑丈ダカラ」


 寿命を墓場に送ればいいからねえ……トモさんボクの寿命どんくらーい?


『あと5年と3カ月と言った所ですか』


 結構増えた! この調子で10年を目指したい虫です。


「ホホーウ、これは見上げた英雄根性なのナ。ロロン、お前も危なくなったらムークに庇ってもらうのナ~」


「じゃじゃじゃ! ムーク様はワダスがお守りするのす~!」


 ロロンは好戦的だねえ、無理せんといてね。


 そんなことを話している間にも、一団は街道を走ってこちらへ向かってくる。

全然減速する気配がないってことは、ここで休憩するつもりはないのかな?

そのまま走り抜けてくれればいいんだけども……


「――隊列に変更あり! 前方が入れ替わります!」


 イセコさんが言うように、連中は走りながら順番を入れ替えてるっぽい。

ボクらは当然見えてるだろうから……攻撃の予備動作かな?


 後ろから最前列に進み出てきたのは、全身をマントに包んだ怪しすぎる人影だった。

横並びに……5人?

そいつらは、マントの中に何かを持っているように見える。


 魔石を口に含み、体内で魔力の循環を始める。

イメージ的には、血液みたいに体中の魔力をギュンギュン回す。

これやっとくと何をするにも早くできるのよね、ボクが編み出した裏技です!


『あ、それは魔術戦闘における初歩の初歩ですね。独学で開眼したのはとっても偉いのでポイント付与しておきます』


 そうなんだ……残念無念虫。

どっかで武術と魔術の勉強とかせんとなあ……


「先頭が――あれは!?」


 いかんいかん、先頭がなんだって!?


 ――ナニアレ!? 

先頭の5人はなんか、大きい筒みたいなものを持ってる!

アレって……アレ! アレだ!!


 ――『バズーカ砲』に似てる!


「こちらに向けて――結界を張ります! 反撃は攻撃を確認してからお願いします!」


 魔力が集中する気配――ソレと同じくらいに、連中は筒をこちらに確実に向けた!


「オーム! ダハーカ・ダハーカ・ロウ・ドルグ――スヴァーハ!!」


 イセコさんの詠唱が完了すると同時に――そのバズーカモドキは、一斉に火を噴いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!ムッくん何だか最近ヴェルママンに似てきたね。それは兎も角開戦じゃ!
あーそういや前に鉄砲あったもんな。 巨大化させれば威力は上がるからそれかー 弾丸を何にするかによるけど、 異世界だから魔力砲弾とかもできそう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ