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第61話 不穏カミングスーン。

「よお、虫人の兄さん」


「ア、オハヨウゴザイマス」


 街道脇の休憩所。

朝起きて、焚火を起こしてしばらくすると……誰かが近付いて声をかけてきた。


「すまねえが火を貸してくれねえかな。夜っぴいて歩いてきたもんでよ……」


 チャウチャウっぽい獣人のおじさんだ。

後ろには……おお、同じような獣人さんたちが3人。

全員男性で……そして犬系だ、たぶん。


 この人たちは【ガリル】方面から歩いてきたんだね。

一晩中歩いてたって……何かあったんだろうか?

気になるねえ。


「んゆ?」


 懐のアカは逃げる様子がない……いい人認定!

妖精って素敵で便利!


 続けて鍋をかき混ぜているロロンに視線を送ると……ニッコリ笑って頷いた。

はー! 以心伝心の子分!!


「アノ……ヨカッタラ火ダケジャナクテ、食事モドウデスカ? 多ク作ッテマスシ……【ガリル】方面ノ話ガ知リタインデスヨ」


「おお! いいのかい兄ちゃん?」


 ボクは大きく頷いた。

それと同時に、マントの隙間からアカが顔を出す。


「どーじょ、どーじょ!」


『ご飯は大勢で食べると美味しいのよ! 美味しいのよ~!』


 それに続けて、ピーちゃんも。

ヴァルはマントの最奥でまだ寝ている。


「ほおお、こいつはたまげた! 妖精が2人も!」


 チャウチャウのおじさんは、焚火の側に腰を下ろして目を丸くしている。

後ろの人たちも驚いてるけど、アカが手を振ると笑って振り返してきた。

あら~! いい人たち! わかってたけど!


「そいじゃ、お言葉に甘えるかい……あ~、あったけえ……」


「もちっとで朝餉ばできやんす! そのままお待ちなっせ」


「ありがとうよ、お嬢ちゃん!」「いい匂いだなあ……」「ウチの娘と同じくらいだってのに、できた娘さんだあ!」


 後ろの3人さんも次々座り、ほっとしたように息を吐いている。

うーん……随分疲れてるみたいだ。



・・☆・・



「まいったよ、本当によォ」


 スープを啜って、面倒くさそうにつぶやいているのはチャウチャウ……じゃなくて、ゼルグさん。

【ラーガリ】出身の傭兵さんで、【ロストラッド】で戦ってたんだって。

他の3人も同じ傭兵団所属で……幼馴染なんだってさ。

みんなで傭兵になって、激戦区でバンバン戦ってたとか。

歴戦の勇士さんたちですなあ……


「そりゃあ休憩所は早い者勝ちと言えばそうなんだが、いくらなんでもありゃあ……」


 んで、彼らは大きな戦いが一段落したとかで……休暇を取ることにしたんだって。

西方12国を北回りで旅して、ラーガリに戻るつもりなんだとか。

そんなに長い間離れてもいいなんて、自由な傭兵団だ。


「ソンナ大所帯ダッタンデスカ」


「そうさ、妙な隊商でなあ……」


 んでんで、彼らが夜通し歩き続けた理由。

それは……本来なら一昨日宿泊できるハズの休憩場所が、占拠されてたんだって。


「隊商っぽい格好をしちゃいるが、荷車を持ってねえんだ。そりゃあマジックバッグで代用できるだろうがな……あの人数でそれはな。護衛の連中も、獣人には見えねえしよ」


「ありゃあ人族だよなあ、たぶん」


 お仲間さんが補足した。

え、人族……ヒューマン!?


「ワカルンデス?」

 

 ちょっとドーベルマンっぽいおじさんが頷く。


「【ロストラッド】で散々戦ったからなあ。揃って顔を隠しちゃいたが、臭いが違うのよ」


 ほーん……流石は歴戦の妖精さん。


「人族に護衛された、様子のおかしい隊商……なんとはあ、怪しすぎだなっす」


 ダルトンさんもボクと同じ感想を抱いたようだ。

スープにひたしてない硬いパンをバキバキと齧っている。


「そう思うよなあ? ……っていうかアンタまさか【黒岩傭兵団】の【岩嵐】さんか?」


 おや、ダルトンさんを知ってるのかな?

なんとも硬そうな傭兵団に所属してたんだなあ……


「いかにも。そういうそちらは【轟雷傭兵団】の方々でやんしょう? いくつかの戦場でお見かけしやんした」


 そちらも強そうな傭兵団だった!

ロストラッド……いつでも戦争してるんだねえ……


「【岩嵐】殿に知られてるとは嬉しいやな。最前線で大暴れしてたもんなあ、お互いよ」


「【炎獄】殿が隠居して解散したって聞いてたが、元気そうじゃねえか」


「覚えてるかい? 【7番砦】でアーゼリオンの貴族が夜襲仕掛けて来た戦いをよ。あんときゃあアンタらがいなかったら死人が100は増えてたぜ!」


「じゃじゃじゃ、あん時はなんとも強兵でありやんしたな。オラも悪くすりゃあ死んでおりやんした」


 おお……昔話に花が咲き始めた!

ぶるぶる……ボクには無縁の世界でい続けてほしい! 


「ほぉおお……」


 ロロン! ロロン! スープがこぼれちゃうよ!?

あああ、もう! 目がキラキラして可愛いねえ!

キミってば本当にこういう話好きだねえ!



・・☆・・



「そんじゃあな~!」


「念のために妖精ちゃんたちは隠しとけよ~!」


「スープ、美味かったぜ~!」


「【岩嵐】よ! 身の振り方に悩んだらウチに来たらいいぜ~!!」


 ゼルグさんたちは、朝ご飯を食べて少し休憩して出発した。

寝なくていいの……? って思ったけど、ご飯食べて元気になったからすぐに出発したいんだってさ。

頑丈だなあ……


「さいなら! さいなら~あ!」


『気を付けてね! 気を付けてね~!』


 そんな彼らに、アカとピーちゃんが揃って手を振っている。


「イヤア、変ナ傭兵団ジャナクッテヨカッタ……」


 前に遭遇したなんちゃって傭兵団が頭にちらついてねえ……

いや、あれはもう盗賊団だったね。


「じゃじゃじゃ……恥ずかしながら、傭兵にゃあ変な連中も多がんす。半分は破落戸だと思った方がええのす」


 ダルトンさんが苦笑いしてる。


「そうナ。冒険者と同じくらいなるのが簡単だし……徒党を組みやすいのナ。まあ、ウチらには頼りになる妖精たちが付いているから変なのはすぐにわかるのナ~」


 アルデアに全面的に同意ですね。

善悪判断レーダーだからねえ。


「だども問題は……」


 手を振って見送っていたロロンが、暗い顔をしている。


「ウン、コノ先ニイル変ナ連中ダネ」


 ボクらが向かう先にいる、謎の集団。

推定人族に護衛されたそいつら……一体何者なんだろう。


「この先、街道と森はぐんと近くなります。もしもその道中で襲われますと……少々厄介ですね」


 いつの間にか後ろにいたイセコさん。

たしかに、それは大変だ。


「急ぐ旅ではねぇし、ここは腰を据えておく方がえがんすな。ここならば、攻められてもなんとでもなりやんす」


「そうですね……お頭から火急の連絡も来ておりませんし。不確定要素は排除しておく方がよいでしょう」


 うーん……その方がいいのかな?

とりあえず依頼主に聞こうか。


「トーラスサン、ドウシマショ?」


 デルフィネさんと一緒に座ってイチャイ……仲良くしていたトーラスさんに聞いてみる。

仲がいいですねえ~……


「ええ、問題ありません。むしろムークさんたちの拘束時間が長くなってしまうのが……」


「オ気ニナサラズ、ボクラハ大丈夫デスヨ」


 依頼主がいいんならそれで構わないよ。


「ふわぁあ……むぅ、朝か」


 マントがもぞもぞ動いて……半眼のヴァルが出て来た。

この子今までずっと寝てたんか? どうりで静かだと思った……


「ムーク、ムーク。腹が減ったぞ」


 ヴァルってばなんかどんどん幼くなってない?

初登場の時のカリスマ感はどこへ家出したのやら。

ま、親しみやすくていいけど。


「ハイハイ、チョット待ッテネ……ロロン、スープノ温メ、オ願イデキル?」


「お任せくなんせ~!」


 さて、じゃあボクは……


「ハイ、トリアエズ焼キ菓子。食ベル?」


 そう聞くと、ヴァルは黙って口を大きく開けた。

……でっかいアカだな、もう。


「ハイドウゾ~」


「はもも……んむ、悪くないな。んふふ、アカが気に入るわけだ……楽でいい」


「おねーちゃ、ずるーい! アカも! アカも~!」


 アカがヴァルの横に飛び込んで来た。

はいはい、可愛い妖精たちよ。


「アーン」


「あんぐ……おいし! おいし!」


 貼り合うように口を開けるアカにもクッキー!


「ドッセイ」


「チュンチュク」


 顔の前でホバリングしているピーちゃんにもクッキー!


「ほら、早くするのナ」


「ンモ~!」


 離れたところで口を開けているアルデアにも、スローイングクッキー!

大きい子は遠慮してくださあい!!


「サテ……ココニ腰ヲ据エルナラ、アレガ必要ダネ!」


 そう! 素敵なドラム缶風呂が!!



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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!ヴァルさん馴染んでいい感じですねぇ。ムッくんそのうち妖精だらけになるんじゃないかな?増える妖精、増える女神、増える嫁さん。
妖精善悪レーダーはいいねぇ・・・ 三匹もいるから偵察してても大丈夫だし。
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