第49話 孤軍奮闘虫、妖精を添えて。
「ッガ!? オォ!? ッグア!?!?」
ヴァーティガが直撃したオオムシクイドリは、目を限界まで見開いている。
よっしゃドンピシャぁ! だけどやっぱり防御力高い! この状態のヴァーティガで頭パーン! ってならないなんて!
でも、ブレスは完全に止めたし……漏れた余波はヴィラールさんのシールドが完全に防いでくれた!
無傷! 無傷虫!
「ヌゥウッ――!」
ヴァーティガから右手を放して――魔力オン!
「ダッシャア!!」「ギャアッ!?!?」
オオムシクイドリの首に全力パンチ!
更に――パイル、オン! 魔力マシマシのチェーンソーを、喰らえッ!!
甲高い回転音が、肉に埋まる湿った鈍い音に変わっていく! グロい!
「ギャバアアアアアアアアアアアアッ!?!?」
オオムシクイドリの首に埋まったチェーンソーが、血と肉片を盛大にばら撒き始める。
流石にこれは我慢できないだろう!?
ブレスも封じたし、このまま首をザックリとチョンパしてくれる~!!
「ォオゴ――!!」「ッグアァ!?」
こ、こいつ――ヴァーティガを、ちょっと飲み込んで腕を噛んできた!?
やめてください! そこには結界はないのでやめてください!!
「ッチィイ――!」
左腕全体に魔力を流して防御力を上げる――けど!?
「グゥウアアッ!?!?!?」
ブラックだから嚙む力まで強いのか、ジリジリと腕の装甲が破損していくのがわかる!
このままじゃバックリいかれちゃうから――左手パイル全弾発射!!
いっくら外が硬くても、中まではそうはいかんだろ~!!
「ギョババ!?!?」
か、らの――!
「『汝ガ怨敵ハ、眼前ニ在リ』!!」
ヴァーティガに追い魔力! オオムシクイドリの口から洩れる、頼もしい蒼い光!!
「『吠エヨ! ソノ名ノ如ク』!!」「~~~~~~~~~ッ!?!?!?!?」
オオムシクイドリの口から、魔力の奔流が溢れて――ヴァーティガが弾き出された!
ついでに折れた牙とか血も一緒に! オアーッ! 生臭い!!
ボクは、チェーンソーでオオムシクイドリに食らいついてるから大丈夫! 落ちない!
血飛沫で前がよく見えないけど、大丈夫!
『オオムシクイドリの高度、下がっていますよ! 魔力循環が狂って墜落を始めています!』
大丈夫じゃなかった! このままだと一緒に墜落しちゃう!
わわわ、気が付いたら地面が近いぞ!?
「シャーナイ!」
チェーンソーを引き抜いて、戦略的撤退!
『おいでアカ! ちょこっと浮かせて』『あいっ!』
アカが肩に帰還した! アフターバーナーはお亡くなりになったので、衝撃波で離脱!
若干浮遊しつつ、オオムシクイドリを視界から外さないように!
「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ! ギャッ! ギャッ!!」
口と首から血を撒き散らしつつ、オオムシクイドリがバランスを崩して墜落していく!
よかった! 戦ってる間に冒険者さんたちと離れてたから墜落予定地点には誰もいない!
向こうの方ではまだ黒いリククジラモドキとみんなが激闘を繰り広げてる!
ここから見た感じじゃ、誰も死んでないし……森からのお代わりもなさそうだ!
それじゃ、ボクはオオムシクイドリを――
『魔力反応! ブレス!』「ヌウウウッ!?」
衝撃波で下降! ブレスが通り過ぎた!
嘘でしょアレだけ内部にブチ込んでもまだブレス吐けるの!?
ブラック個体コワイ! コワすぎ!!
オオムシクイドリは飛行するよりもボクを撃ち落とすことに執念を燃やしているようで、落下しながらこっちに顔を向けてブレスを薙ぎ払っている。
くっそ、ヴァーティガのビームでも死なないなんてインチキだ! ダメージはないとは言わないけど、それにしたってとんでもない防御力だよもう!
トモさんアフターバーナーの再生まだァ!?
『急速再生――完了!』
よおおし!
『アカ! しっかり掴まってなよ~!!』『あーいっ!』
魔力全開! 急加速&急停止&急制動のコンボだ!
むっくん・ランダムマニューバが唸るぞ!
『撃てるならチクチク攻撃してもいいからね! 頼んだよアカ!』
「まかして、まかしてぇ!」
ボクはブレスを避けつつ、奴の注意を最大限コッチに惹き付けることに専念するよ!
冒険者さんたちの方に流れブレスが着弾したら大惨事だからね!
「ゴメン魔石チョウダ――アグアグ」
アカは首にしがみついて、的確にボクの口に魔石をポポポイ! なんてできた子分なんでしょ!
充電完了、いっくぞ~!!
オオムシクイドリを見つつ、ブレスが来たらアフターバーナー! それが止んだら衝撃波で姿勢制御!
次弾に備えるのだ!
「にゅ~ッ!」
アカが放つミサイルを追い越したり追い越されたりしながら、空中を縦横無尽に飛び回る、ボク!
遠くから見れば、ミサイルをバンバン発射しながら飛び回るカッコイイロボに見えることだろう!
ボクがむしんちゅなのかなんなのか、イマイチわからんくなってくるなあ!
「ギャアアアアッ! ガアアアアアアアアアッ!!」
ドズーン! って勢いでオオムシクイドリが墜落。
大きく地面を陥没させたけど、当然のごとくピンピンしている!
ボクは冒険者さん達がいるのとは逆方向に着陸!
脚パイルで強制的にブレーキをかけながら、ヴァーティガを構える!
『アカは上飛んでて! アイツにちょっかいをかけまくるんだ! もちろん無理はしちゃ駄目だよ!』
「あいっ! アカ、がんばゆ、がんばゆ~!」
ボクから飛び立ちつつ、アカがキャノンを斉射。
飛んでる間に魔石をいくつか持たせたから、燃料切れの心配はしなくてもいい!
「ガアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
アカキャノンに背中を削られたオオムシクイドリが、たぶんキレながら振り返った。
その横っ面にぃ! 魔力マシマシの左手パイル全弾発射ァ!!
「ギッギ!? ギャアアッ!?!?」
よおーし! あれだけ魔力を込めたら突き刺さりはするネ!
その代わりにボクの左腕の装甲が内側から吹き飛んだけども! どうにかして欲しいこのバグみたいな感じ!
「ヌウウアッ!」
この隙を逃さない! ダッシュダッシュダッシュッ!!
肉薄して――ヴァーティガで、ぶん殴るッ!!
魔石をガブリ! ごきごき、ぼきん!
「『我ガ剣ハ牙ナキモノノタメ』ッ!!」
吸い取られる魔力、輝くヴァーティガ!
……これまで使ってる中でわかってきた! ヴァーティガは詠唱で励起させた後、殴る分にはその状態は維持される!
最初は溜めた魔力が霧散してたけど、慣れてきた今は大丈夫!
んでんで、『汝が怨敵は~』の詠唱でビームを打つと魔力がなくなって、最初のフラットな状態に戻る!
殴る時に魔力を注ぎ込む感じでイメージした場合は、あの蒼いヒビが走るフィニッシュムーブになる!
さっきはならなかったけどね! そこらへんはまだ不明!
「オウリャアッ!!」「――ギャアッ!?」
そんなことを考えてる間に射程距離! 跳び上がってヴァーティガフルスイングッ!!
頬に刺さっていた棘をぶん殴って、内部に食い込ませてやる!!
「デリャアッ!!」「――ッギ!?!?」
往復ヴァーティガビンタァ! ちくしょうコイツ硬すぎ!
「デエエエリャアアアッ!!」
もいっちょォ!
顔の形を変えてやるうァ!!
「ガアアアアアッ!!」「ググッ!?!?」
ぶん殴られた! 頬にヒビ入ったァ!
おまけに空中だから吹き飛ばされちゃった!!
「グフーッ!?!?」
なんで落下地点に大岩があるのォ!? 背中が! 背中がミシッてなったじゃんか!!
「ガッ――!!」
やっ――ばい! ブレスが来る!
魔力――お代わり!!
「グヌウウウウウウウウウウウウウッ!!」
ヴァーティガで! 受け止める! ブレスを!!
頑張れいかした相棒ォ! このまま耐えるぞォ!!
「ギ、ギギ、グウウウ……!!」
魔石お代わり! 頭がクラクラするけど、これは――チャンスだ! 胸ハッチ、オープンッ!!
防御しながら、胸に魔力を集中! 集中ゥ!!
魔力が唸り、胸の宝玉が発光して――空間が、歪み始める!!
「この! この! こ~の~!!」「――!?!?!?」
オオムシクイドリの後頭部に、アカキャノンが続けざまに着弾!
鱗と血が飛び散った! ブレスの圧力が弱まるッ!
――今、だァ!!
魔力充填、目測100%ッ!!
「――喰ゥラエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!」
魔素凝縮電磁投射砲、発射ァ!!
胸の中心から放たれたごんぶとビームが、ブレスに衝突。
謎の火花を散らしながら――じりじりと、押し返す!
まだ、まだまだ、まだまだまだ!
魔力追加だ! むん、むん、むうううううううん!!
「――エァッ!?」
び、ビームがもっと太くなって――えええ、なにこれ!?
なんか、捩じり始めた!? 胸から竜巻が生えたみたいに!?
だ、だけどこれはいい! 押し返すスピードが段違いになったぞ!
ひょっとしてこれ、『過電流』ってやーつ!?
今悩んでも仕方ない! これでいく!
うおおおお唸れ魔力! ブチ抜け電磁投射砲!!
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
気を失うくらい魔力を注ぎ込んでやる! これで終わりだ害悪虫食いトカゲ野郎ォオ!!
ビームは視界を覆う程に太くなり、それに比例してとんでもない勢いで魔力が減っていく!
魔石を噛み砕きながら、必死でそれに耐える!
ぐ、ぐぐ、背中側の岩がなんか、なんか割れそう! 隠形刃腕と足パイルで耐えてるけど、そのまま吹き飛ばされそうだ!
「おやびん! おやびんがんばえ! がんばえ~!」
アカの声が聞こえる――頑張るよ! だってボクは素敵で格好よくて頼りがいのある――おやびんなので!!
カワイイ子分の応援には全力で! 全力で応えるんじゃーい!!
うおおおお! 魔力お代わりぃいいいいい!!
吹ぅきぃ飛ぉ……べぇええええええええええええええええええええッ!!
「ギャ――」
胸のビームがさらに勢いを増した頃、なんとなくわかった。
延長線上にあるであろうオオムシクイドリの口に、直撃したってことが。
「アニャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイ!?!?!?!?!?」
それとほぼ同時に、背後の岩が砕けた。
その瞬間に、ボクは地面ごと後方に吹き飛ぶのであった。
ちくしょう! またこれかちくちょう~!!




