第47話 モドキの上にブラック!
「……ヨシ!」
完全に死んだリククジラモドキを確認しつつ、パイルの再生を待つボク。
「アカモオチカレ~?」「きゃーはは! あははぁ!」
待ち時間にアカをナデナデすることで時間を有効活用するボク!
これは天才かもわからんね?
『はいはい、すごいすごい』
おざなりトモさんだ! たぶんジト目してる!
「ははは! なんとも、大した武者振りでがんす!」
「アギャイ!?」
肩が! 肩が爆発した!
……ああ、ダルトンさんか。
魔物にぶん殴られたのかと思った……
「恐縮デス……」
「なんもなんも、いい動きでありやんした! ロロンさは良き親分ば見つけられやんしたな!」
なんかやたらテンションが高いな……? 戦闘の雰囲気で興奮してるのかも……?
「んだなっす! ムーク様は最高のお方でやんす~!」
「ムギューッ!?」
ロロンもテンションが! テンションが高い! マント掴まないで! 首が締まる!!
「こげな武者働きば見せられては、オラもうかうかしてはいられねな!」
そう言って、ダルトンさんは武器の三節棍を両手にそれぞれ持った。
素手でもあんなに強いのに……もう無敵じゃない?
「やるなあ兄ちゃん!」「そっちの妖精ちゃんもな!」「働いたんだから今は休憩してな~」
「ド、ドウモ……」
そして、周囲の冒険者さんたちからは激励された。
和やかな雰囲気だけど、これには理由がある。
この依頼に関しては、報酬が全部平等に分配されるんだ。
あのモドキの死体はギルドが買い取って清算して……ボクらに後日報酬として支払われる。
なので、この戦いに限っては誰が倒しても恨みっこナシなんだそうな。
平等って素敵ね~。
ちなみにだけど、さすがに全く役に立たなかった人には全額支払いとはいかない。
この冒険者さんグループのどこかに、ギルドから依頼を受けた監視役が混じってるんだそうな。
これはここに来るまでに、ヴィクセンさんがこっそり教えてくれたんだよね。
……とりあえず、今回はタダ働きにはならなそうだ。
だってモドキコロコロしたし。
「ムーク様! お怪我はございませんか!?」
「オウワッ! ダ、大丈夫デス、ハイ」
考え事をしてたらイセコさんが正面にいて、ボクの肩とかを撫でていた。
こしょばい!!
「しからば、しばしお下がりを。他の冒険者たちがやる気ですので、次に備えて我らは休憩をしましょう」
「ハーイ」
ほんとだ、周りの冒険者さんたちのやる気がすっごい。
あ! さっき吹き飛ばされたドリルの狼さんも復帰してる! 頑張って!
「……ドレクライイルンデス? モドキ?」
肩にアカを乗せて、後方に下がる。
なんかまだいるって言ってたよね、イセコさん。
「はい、少なくとも2体が確認できました。それぞれの距離は離れていましたが、戦いの気配を感じ取ってすぐさま向かってくるでしょう」
うへえ、そんなに……
「ソデスカ……」
「ですが、この場にいる冒険者たちはいずれも経験豊富な強者揃い、問題はありますまい。不測の事態に備えて、リーチミに後詰もいますから」
ほへ~……みんな強そうだとは思ってたけど、イセコさんのお墨付きなら大丈夫そう。
「ムーク様! ワダスは少し腕ば試してきやんす~!」
そう言ってロロンは駆けだしていく。
うーん、全身からやる気が噴出している、とっても頼もしアルマジロ。
「イセコサンモ、休ンデクダサイネ。偵察頑張ッタンデスカラ」
「さほどのことでは……ですが、そうしましょう。後方からの目線も大事ですので」
休む気がゼロでござる、この人。
ま、まあいいけど……
「アカ、コレ食ベル?」
バッグから取り出した焼き菓子をアカに見せる。
休憩ついでにエナジー補給しとこっと。
「たべゆ! たべゆ~! もももも」
また指を食べられた、こしょばい!
ボクも食べとこ。
「イセコサンモドウゾ~」
「あ、い、いただきます!」
あ~、戦いの後のクッキーは最高じゃわい。
ばきばき、ぽりぽり。
・・☆・・
「ギギャアアアアアアアアッ!!」
「出たぞ! さっきのよりもデカイ!」「回り込め!」
森から新手が出てきた。
当然のようにリククジラモドキ!
「魔法行くぞ! 離れてろ!」
近接担当さんの後ろで、何人かの冒険者さんたちが一斉に杖とか短剣とか数珠を構えた!
……数珠?
「オーム・インドール・スヴァーハッ!」「『猛き風よ、声と共に在れ』!!」「光輪顕現・閃光円舞剣!!」
稲妻が飛び、突風が吹き、それから光り輝くチャクラムが飛んでいく。
すっご、魔法って言っても流派で色々あるんだなあ……
「さっきの轍は踏まねェ! オウラアアアアアアアアッ!!」
その魔法を追いかけるように、ドリルランスを構えた狼さんが走り出す。
地面が爆発するみたいに抉れてる! すごい!
「ギャアアッ! ギャッ!! ゴガアアアアアッ!!」
魔法が続々と着弾して、モドキが大きく仰け反った。
その体の下をくぐるように、狼さんがスライディングの姿勢で肉薄した!
「ぬううっあ!!」「――ギャアアアアアッ!?!?」
ドリルはモドキの胸のあたりに勢いよく突き刺さって――
「ルウウウウオオオオオッ!『穿て!抉れ!貫いて滅ぼせ!!』」
魔力の光を放って、残像が見えるくらいの勢いで回転を始めた!
あれよあれよという間にめり込んでいって――反対側から突き抜けた!
「ガア……ア……」
「ハッハー! 見たかモドキ野郎ォ! 俺の『ブルング』は無敵……あ、抜けね、やっば、オアーッ!?!?!?」
勝ち誇った狼さんは、悲鳴を上げながら倒れてくるモドキの下敷きになった!?
ウワーッ!? 大変!!
「――ぬんっ!!」
うわわ、ダルトンさんがモドキの頭を軽く蹴り上げたらひっくり返っちゃった!?
そんなに力を込めてるようには見えないのに!
「た、助かったぜ……ありがとよ」
「なんもなんも、素晴らしぎ武者振りでやんした」
狼さんの手を掴んで起こしたダルトンさんは、素早く森の方を振り向いた。
「ほう……来よる。あんたさんは下がっておりやんせ、体ば、休めねば」
ダルトンさんの後ろから、ヴィクセンさんが出てきた。
「そうだぜガロン。休んでな……大金星は貰うがな」
ダルトンさん、それにヴィクセンさんは森の方を睨みつけている。
『――反応、大! 先程までのモドキとは違いま……この魔力振動数は!?』
トモさんが言い終わる前に、森が爆発した。
いや、何かが森の奥から物凄い勢いで走ってくるんだ!
……ムムム、なんか、なんか違和感! これってまさか――
「――グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
木々を粉々にしながら走ってきたのは、さっきまでのモドキよりも2倍は大きい――真っ黒い、個体だった。
あれは! 龍脈からアレしたアレでアレになった魔物!?
『お爺ちゃんですか。先程冒険者たちが放った魔力が干渉して見えるようになったと推測します……まあ、見えずともあれほど派手に木をへし折っていれば場所は特定できますがね』
それはそう!
透明でもそればっかりは誤魔化せないもんね!
っていうかボクらも加勢した方がいいんじゃ!?
ロロンもいるし!
「ムーク様はここに! 私がロロン様の援護を!」
「エッ、チョ……イナイ!?」
イセコさんが消え――てない! もうあんなに遠くまで走ってる!?
足音がほとんどしないのがコワイ! タツジン!
「はやい、はやーい!」「ソダネエ」
むーん……ヤバくなったら援護に行けるように魔石かじっとこ、ぼきぼき。
「おやびん、アカも! アカも~!」
「ハイアーン」
「あんぐ……ばきばき、おいし、おいし~……」
石の歯応えに無味無臭なんだけどなあ……ま、いいか。
今日もなんでも食べられてえらーい!
『まあ、激甘虫』
そうですが~?
「一番槍、行ぎやんす! オーム! バザン! ヤグン――スヴァーハッ!!」
ロロンが低い姿勢で走り出す。
走りながら、彼女の体に土が纏わりついて……あっという間に鎧に!
相変わらず格好いい魔法ですこと!
さっきと同じように冒険者さんたちが魔法を撃ってるけど、あの黒いモドキには通用していない!
地竜と同じだ! テオファールが言ったように防御力も攻撃力も跳ね上がるんだ!
「オラは右を!」「しぇば、左!」
ロロンの横に追いついたダルトンさんがそう言って、右に折れる。
両手に持った三節棍が、ヘリコプターみたいに回ってる!
「グルウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
接近するロロンに、モドキが大きく前足を振り下ろす。
「っし!」
その振り下ろされた前足を避けて、ロロンが爪を蹴って跳ぶ。
あっという間に、彼女の小さい体は前足を駆け上って――
「ちぇいあッ!!」「ガギャアッ!?!?」
肩に槍を突き刺した! すごい! ウチの子分すっごーい!!
「ぬおうりゃあああああああああああああああああああっ!!」
それとほぼ同時に、右から駆け込んだダルトンさんの一撃が前足に直撃。
轟音で叩きつけられた三節棍が、強制的に肘を折らせてモドキの姿勢を崩した!
す、すごー!
パワーオブアルマジロ!!
『何言ってるんですか』
わかんない!




