第39話 美味しい反省会。
「おお! こいつはいい鮮度だな!」
「だろう? 血抜きも済んでるから余計に良いと思うぜ!」
「さっすが、慣れてるな……頭は?」
「……潰しちまった、へへへ」
「ヴィクセンはこれだもんなぁ……カリーナちゃん、ダンナのしつけはちゃんとしといてくれよ」
「言って聞くような男じゃないでしょ~?」
冒険者ギルドの裏手にある、魔物の解体や素材の買取をする所。
そこにボクらはいる……ダンナぁ!? ヴィクセンさんとカリーナさんってご夫婦でいらっしゃるの!?
……このムークの目をもってしても見抜けなんだ!
『基本的に節穴アイがなんですって?』
ぐうの音も出ないです、ハイ。
まあとにかく、ヴィクセンさんたちが手続きをする間……ボクは椅子に座ってそれを眺めている。
元気になったロロンと、それからポチくんも一緒。
アカとピーちゃんはマントの内ポッケでスヤスヤです。
「イヤー、濃イ一日ダッタネ」
「はいっ! とても勉強になりました! ムークさんもロロンさんも、ありがとうございます!」
ポチくんはそう言ってビシ! っと頭を下げてきた。
礼儀正しい……ひょっとしてこの子、どっかいい所のお家の子なんじゃないかな?
なんか、ご飯の食べ方とかも心なしか上品な気がしたし。
「な、なんもなーんも。ワダスは解体ばしただけでやんす~」
真正面からの誉め言葉に照れたのか、ロロンはワタワタしている。
謙遜アルマジロさんだ!
「虫人さんと組むのは初めてでしたけど、ムークさんってとってもお強いんですね! アカちゃんにも驚きましたけど!」
「鍛エテイマスノデ」
便利ワードですわ。
話せないことが多すぎるんじゃよ~。
「ポチさんも、綺麗な太刀筋でやんした! 何処かの流派で修業なさったんでやんすか?」
あ、なんかボクもそれ思った!
自己流には見えない感じだったもんね。
時々混乱してたけど、なんていうか『型』に沿ってる感じだった!
「あ、はい! 名付け親が『轟雷流』の師範でして、それで子供の時から鍛えてもらってるんです!」
強そうな名前の流派ですこと!
「じゃじゃじゃ、それは……ポチさんは帝国の出身でやすか?」
そう言うってことは、帝国で流行ってる流派なんかな?
「いえ、僕はラーガリ生まれです。名付け親はそうだって聞いてますけど……」
そういえば親じゃなくて名付け親ってさっきから言ってるね。
ふむん……なにやら複雑な事情があるご様子。
あんまり突っ込んで聞いちゃいけないよねえ。
「うーし! 飲み行くぞ飲み! 反省会だ!」
「美味しいもの食べに行きましょ! ホラ、オオムシクイドリの肉もどっさり! 持ち込めるいい店があるのよね~!」
ちょうどいい所に帰ってきてくれた!
持ち込み! そういうのもあるのか!
『脂の多いお肉はニンニクを入れたポン酢で食べると美味しいのよ……美味しいのよ……』
器用な寝言だなあ、ピーちゃんは。
・・☆・・
「ポチ! お前はい~い冒険者になる! 俺が保証してやるぞ~!」
「は、はいい……」
ここは『花のきらめき』というとってもカワイイ名前の……むさくるしい飲み屋さん。
いや、むさくるしいのはお店じゃなくって……
どっちを向いても強そうな冒険者さんしかいない空間だからです。
お店の方はむしろ掃除も行き届いていて綺麗です。
客層が完全に場違いです……いや、どうなのかな?
この街だからお花に関したお名前にしてるのかな?
まあ、それはそれとして……あの後ボクらはヴィクセンさんに連れられてここに来た。
あ、お給料は飲む前に貰いました。
素材代金の半分と手間賃? で……5000ガル!
オオムシクイドリがいい値段で売れたから、らしい。
頭以外は全部揃ってたからね~。
んでんでんで、今日の主役ことポチくんは……ヴィクセンさんに絡まれている。
カリーナさんは『しょうがないなあ』みたいな顔をしつつ……アカとピーちゃんにウッキウキで料理を食べさせている。
ボクはロロンと並んでお肉をもぐもぐ……名前は最悪だけどオオムシクイドリ美味しい!
「あ、そういやお前いくつだっけ?」
「こ、今年で16です」
へえ、そうなんだ。
若いとは思ってたけど……ケモ要素多めの獣人さんは分かりにくいなあ。
「ネエロロン、ソウイエバ……キミッテイクツ?」
ふと気になって、大きなお肉をもぐもぐしているロロンに聞く。
「はみゅぐ……んぐ。今年で15になりやんす」
「アーソウナンダ。ソッカソッカ……オ酒飲ンデ大丈夫?」
苦手っぽいし弱いけど今まで飲んでたもんね。
「じゃじゃじゃ……ウチの部族では、酒は10を超えれば飲んでもえがんす。ワダスは苦手だども……」
10歳!?
異世界飲酒事情凄いな……
『ちなみにだけど、ドワーフに飲酒制限はないんよ。マージで3歳くらいから飲むし、みんな』
シャフさんから恐ろしい追加情報が……!
さすが、お酒飲むと回復するヤベー種族!
……ところでシャフさんはなにしてんの?
『ともちん作のアヒージョでワインをがぶ飲みなう~!』
『自信作です』
トモさんからドヤ顔のオーラが伝わってくる……!
「それじゃあもう大人だなあ! よーし! 俺がこの後いい所に連れてってやる! いい冒険者は遊んででこそだ! がっはっは!」
「え、ええ……?」
「ちょっとォ! アンタなーに言ってんの! この子たちの教育に悪いからやめなさい!!」
カリーナさんがむっちゃ怒ってる……そしてすごい! アカの耳を素早く塞いだ!
アカは感触がくすぐったいのかキャッキャしている!
ピーちゃんは……ああ、何らかのパイにめり込んでるから聞こえてないのかな?
『ピーちゃん、それ美味しい?』
『とっても美味しいわ! むっくんにも分けてあげるわね!』
そしてピーちゃんはそのままの状態でこっちにダッシュ!
コワイ! 足の生えたパイの化け物! 機敏!!
「はわわ!?」
ロロンもこれには驚いたのか、思わずボクに抱き着くほどだ。
ビジュアルが怖すぎるもんね!
『まったくもう……誰も取らないからめり込まなくていいのに』
『全部食べるから大丈夫よ!』
微妙に大丈夫じゃないな……とりあえず救出せんと。
足を掴んで優しく引き抜いて……っと。
スポンと出てきたピーちゃん周囲のパイを切り分け、そしてお皿に盛る。
ほほう! 断面だけでも美味しそう! ミートパイだ!
……熱々トロトロのチーズでも無傷なピーちゃん凄いな。
「ホント美味シイ!」
「んめめな~……またこのソースがいいお味で……!」
『そうでしょそうでしょ! ロロンちゃん、お味を覚えて作って欲しいわ! 欲しいわ~!』
若干チーズまみれなピーちゃんが揺れようとしたので、ボクはまず拭いてあげることにした。
なんか香ばしい匂いになってる……!
「おやび~ん」
おやアカ、カリーナさんにかわいがってもらってたはずじゃ……おおう、そのカリーナさんはヴィクセンさんに詰め寄っていらっしゃる、なるほど。
「ハイア~ン」
小さく切ったパイをポポイ。
「まむぐ……おいし! おいし~!」
肩に飛んできたアカを撫でる。
いやー、素敵で平和な空間だねえ。
こちら側は。
「おごごごご」「ポチにかこつけて浮気でもすんの!? いい度胸ねえこのお馬鹿!」
カリーナさんの見事なチョークスリーパー!
完全に締まってるけど、ヴィクセンさんのふっとい首のお陰で落ちるまではいってない感じだ!
むしろ苦痛が長続きしてそうで見た目が地獄!
「ポチクン、コッチコッチ。巻キ込マレルヨ~」
「あわわ……はいっ」
ポチくんはジョッキをお皿を素早く持って避難してきた。
ほほう、素早い……これは将来有望でござるな?
「ちょうど聞きたかったんです……皆さんは今までにどんな冒険をされてきたんですか?」
「エ~ットネエ……」
仲良く喧嘩? しているご夫婦を見ながら、ボクはご飯のお供にちょうどいい思い出話を始めるのだった。
・・☆・・
「今日はありがとうございました!」
「ばいばい、ばいばーい!」『じゃあね、ポチくん! カリーナさんも!』
「また予定が合えば手伝ってね! 妖精ちゃんたちもまたね~!」
「お気をつけてお帰りを~!」
「オヤスミナサイ~!」
楽しい食事会が終わり、お店の前で解散になった。
ポチくんはあまり飲んでいないので、頭を下げて元気に帰っていく。
カリーナさんは……ベロベロに酔っぱらったヴィクセンさんを背負って歩いていく。
す、すごい力持ち……!
「今回ハボクモ色々勉強ニナッタヨ」
「なんとはあ、学びの心をお忘れにならねとは、流石はムーク様でやんす!」
いやいや、ロロン。
ボクってば冒険者としてのキャリアほぼゼロでしてよ?
『年齢的には赤ちゃんですしね』
そうでした……人間ならハイハイすらも怪しいかも。
「ア、ソウダ。ミンナオ酒飲ンデナイシ、オ風呂入ッテ帰ロウカ」
そんなに汚れてないけど、お風呂はいつ入っても素敵だしね!
「じゃじゃじゃ、そいならさっきカリーナさんに聞いた浴場がありやんす! いいところらしいでやんす!」
『まあ素敵! お風呂は最高の贅沢だわ! 贅沢だわ~!』
「おふろ、おふろしゅき!」
仲間たちの意見も一致したし、それならお風呂に行ってかーえろ!
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