第12話 護衛虫、再び。
「やーれ、着いた着いた。今回はすんなりだなあ」
「そりゃあそうだ、腕っこきの護衛がいるからな!」
「ムークさんよ、妖精ちゃんは疲れてねえかい?」
筋骨隆々だけど背の低いドワーフさんが、ボクに顔を向ける。
「大丈夫デス。ネーアカ」
肩に乗って足をぶらぶらさせているアカを見る。
「あいっ! げんき、げんきい!」
カワイイ子分は、元気よく肩から飛び立って謎ダンスを踊るのだった。
・・☆・・
今日は朝から暇だったので、冒険者ギルドに行くことにした。
休日を挟んだからね、リフレッシュは完了ってわーけ。
んで、お供はアカ。
ピーちゃんは朝から孤児院にお呼ばれし、ロロンは再びマシアさんの所。
2人なんて久しぶりだね~なんて言いながら宿を出ると……アルデアもついてきた。
今日はお酒飲まないで働くんだって、偉いねえ。
そんなわけで3人でギルドに行くと、職員さんに呼ばれた。
なんでも、ボクらが来たら依頼を紹介するように頼まれてたんだって。
それは、次のような依頼だった。
・鉱床までの護衛。
この街から西にある山に、ちょっとした鉱床があるそうだ。
そこまで、3人のドワーフさんを護衛してくれとのこと。
なんでぇ? って思ってたら職員さんが補足してくれた。
『ゴゴロンさんから評判を聞いて依頼したそうです』だって。
いやー、マジメに働いた甲斐があったねえ。
アルデアも納得したので、受領することにした。
職員さんが連絡してくれるというのでその場で待ち……ドワーフさん3人と合流したんだ。
そしてすぐに出発し、今に至るってわーけ。
「なんとものどかな道行きだったのナ。運動にならんのナ~」
上空から降りてきて背伸びするアルデア。
ああ、運動のつもりだからずっと飛んでたのね。
「ほいじゃ、ムークさん。こっからは俺達の仕事だから、ここで待っててくれよ。たぶん夕暮れまでには戻るぜ」
岩山の側面にいくつかある穴の前で、ドワーフさんのリーダー……名前はガガントさん……が言った。
ドワーフの男性って、なんか硬そうな名前が多いねえ。
「アレ、中デノ護衛ハイラナインデスカ?」
せっかく光り石も準備してきたのに……
「がっはっは、そこの妖精ちゃんはともかくアンタらじゃ体がつっかえちまう! 狭いから大した魔物は出ねえし、出ても岩と一緒に砕いちまうぜ!」
「そうそう、ゆっくりしてな! 帰りは俺達の脚が遅いからよ、本気で護衛してくれよ!」
「足が鈍る程掘りてえなあ……うーし、行くかい!」
ムッキムキの体を誇示し、ドワーフさんたちは悠々と小さな穴に入って行った。
あ、ほんとに狭いや……カブトムシ時代のボクなら入れるくらいね。
「いてら、いてら~!」
「「「おーう!!」」」
ドワーフさん達、見た目はちょっと迫力あるけどとっても優しいな。
アカを見る目がニコニコなんだもん。
『ドワーフは鍛冶に携わる関係上、精霊や妖精をとても大事にしているのです。火の精霊にそっぽを向かれると、鍛冶屋としては終わりですからね』
あ、そういうこともあるのか……火の精霊か~、熱そう!
「ジャ、休憩シテヨッカ」
ここは結構いろんな人が利用するらしく、簡単な小屋がある。
その周りも、街道の休憩所みたいなお寛ぎスペースみたいになってるね。
「ここは任せるのナ。昼飯までにもうひと飛びしてくるのナ~」
「アカも、アカもいきたい! いい? おやびん?」
自立心が芽生えて来たねえ、いいこといいこと。
「イッテラッシャイ~。魔物ニ気ヲ付ケルンダヨ~? 何カアッタラスグ念話、ネ~?」
「あいっ! いてきま~!」
「フフン、それでは競争なの、ナ!」
ぶわ、とアルデアが飛び上がった。
おお~、いつもながら綺麗な離陸! 相変わらずアフターバーナーを使いこなせないボクとは大違いですなあ。
「にゅ~! ずるい、ずる~い!」
アカがプンスコしながら追いかけていく。
ロロンはしっかりもののお姉さんで、アルデアは放っておけないお姉さんってカテゴリーかなあ。
さて……ボクは何しよう?
小屋の中にいたら咄嗟の状況に対応できないし、外のベンチに座って……木工のお時間かな!
さーて、彫るぞ彫るぞ~! SDヴェルママを量産するんだ! 持ってる武器で差別化! シークレットあり! 的な!!
ボクも気にするけどトモさん、レーダー監視よろよろでーす。
『しゃーなしだし』
……あれ? トモさんは?
『メイヴェル様んとこ。出前よ、出前』
トモさんが〇-バーイーツ扱いされとる!?
『冗談みたいにバカでっかいオムライス持ってったわ、ウケる。トモちんも頑張るね~、ありゃ出世するよ~』
具体的に神様ってなにしたら出世するんだろ。
ボクが長生きすれば~ってのは前に聞いたけどね。
『そそ、まあそんなもん。自動的にジワジワ権能が強くなる的な?』
試験とか受けなくてもいいのは羨ましいかも。
でもヴェルママみたいに忙しくなりすぎるのも考えものですねえ……あ。
配達してるってことはママ捕まったんだ?
『ふふん、変装したトモちんにラーメンの屋台開いてもらったらフラフラ~っと来たし』
……ノーコメント。
『お、メイヴェル様彫ってんの? い~な~……』
うん、そうだよ。
シャフさんの教会はどこにあるの?
『えっとね……こっから首都に行く途中の【リーチミ】って街にあんね! なになに、寄ってくれんの?』
首都に行く途中なら行くよ!
そっかあ、遂にシャフさんの姿が拝めるんだねえ。
『ちょっと今から神託して乳尻太腿盛らせとくわ』
やめたげて! やめたげて!!
信者さんがパニックになっちゃうでしょもう……
『ま、さすがに冗談だし。周辺警戒はあーしがしたげっから、作業しな』
はーい……今度はカタナを持たせようかな。
でっかいのを2本と~……ワキザシ? を4本……いや全部でっかいののほうが格好いいかな~?
『器用になっちゃってまあ……食うに困ったら木像売ったらいいし』
食うに困ってないというか、経済を回せてないというか……
あ、そうだ。
シャフさん、ボクと同時期に転生した人たちって何してるか知ってる?
なんかさ、自分が曲がりなりにもここで生きていけそうだから気になってきちゃって。
『お~……う~……あ~……』
ムッチャ唸ってる。
なに? ひょっとしてもう全員お亡くなりになったとか?
『あ~、アンタが知ってる相手ならいっか。あーしと知り合う前だけど、ラーガリで1人会ってるっしょ?』
えっと……イルゼか!
たしかそんな名前だった気がする!
『基本的に開示はダメなんだけどね。知ってる相手ならやろうと思えば調べられるから……あの子、今ロストラッドの激戦区で傭兵してるよ』
バレリアさんがそんなこと言ってた!
そっかそっか、本当に傭兵さんになっちゃったのか……大丈夫かな?
色々あったけど、あの人自体はいい人……ううむ、コメントに困る。
『むっちゃ生き生きしてるわ。毎日笑顔で人族コロコロしてるし、あの子今までの人生で相当嫌な事ばっかりだったみたいだね~?』
おおう……いいと言っていいのか、悪いのか。
無茶苦茶実家のこと怨んでた感じだもんねえ。
『傭兵仲間からは【黒髪の女神】なんて言われてるみたいよ~? いっつも最前線で突撃するから頼られてるみたいだし』
二つ名がついてる! そこだけはちょっとうらやましい!
ボクもいつか格好いい二つ名が欲しいな~?
『むう……【種馬】【好色】【絶倫王】【こまし虫】あたりかな?』
絶対嫌な上に種族も変わってるし! なにより半分悪口じゃないですか!!
嫌すぎる! 嫌すぎますぞ!!
『はーいはい、怒んない怒んない。ま、あの子は元気にやってるよ……やり過ぎて占領区域の地図が変わりまくってるしね~』
すっご……ラーガリで揉めなくてよかったなあ。
『ま、あーしはこっち側の女神だからさ。例の国が負ける分にはいいんだけど』
……前からちょいちょい思ってたけどさ、神様って一枚岩じゃないよね?
明らかに人族側と揉めてない? 前にトモさんが断絶してるって言ってたしさ。
『なーんも言えんわ。言っちゃったらあーし100年単位で牢屋にぶち込まれるし~』
もう言ってるようなもんじゃん……神様たちも大変ですねえ。
ま、ボクはボクにできることをやるだけだ、うん。
『あ、興味ない感じ?』
うんまあ……お話のついでって感じ。
こうやって話してる方が楽しいからね~、ボク。
『おーん、このタラシ虫~。こいつは将来が楽しみだし~?』
失敬な!
『あはは……むっくんさあ、もう吹っ切れたみたいだね。あのお婆さんのこと』
……うん、そうだよ。
いつまでもくよくよしてたら、カマラさんに怒られちゃうもん。
親分なんだし、他の皆まで落ち込んじゃうじゃん。
いつかは会えるって、そんな気がするんだよ。
だからさ、土産話をいっぱい、い~っぱい作れるように楽しく旅をしたいんだ、ボク。
『は~……なにこの偉い虫、略してエラ虫』
水中にいそうな名前やめてくれませんか?
『んふふ、はーい。和んだらお腹減って来たし、トモちんが作ったカレー食べよっと』
……前に聞いた時、神様ってお腹減らないって聞いたんだけど?
『気分』
気分かあ……ならいいか。
いいな~カレー! まだこっちの世界で見つけてないんだよねえ。
香辛料山盛り使うから難しいんかな?
『はぐはぐ……隠し味のニンニクがいい味出してるわ……トルゴーンではあんま流行ってないね、中華料理はピーちゃんの知り合いのお陰で結構ポピュラーなんだけどね~』
にゃるほろ……でもこの先の楽しみができたね。
この世界って色んな所から転生してる先輩方がいるみたいだし、それこそ色んな料理やなんかもありそう!
『確かに、謎虫してたむっくんがこうなったと考えると……トモちん感無量だろうなあ』
えへへ、そうかな?
『これで恋人が2ダースくらいいればもっといいんだけど~?』
ノウ! ノーウ!!
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