第11話 孤児院と、市場。
「あはは! あははは! こっち、こっち~!」
「まてまて~!」「まって~!」
『こけないように気を付けるのよ! 気を付けるのよ~!』
無限鬼ごっこ、無限鬼ごっこだ、あの伝説の……!
『何が伝説なんですか』
わかんない!
ヴェルママの教会でお祈りして、奥に招かれた。
そこは、ラーガリで見た教会みたいに生活スペースになっていた。
子供はええっと、ここにいるのは20人くらい、かな?
今はアカとピーちゃんと一緒に、教会の裏にあるお庭で追いかけっこの最中です。
何処を見てもカワイイものしかないな、無敵か?
「すみません、子供たちが……」
庭に置かれたテーブルにいるボクの前に、ことりとお茶が置かれる。
「イエイエ、子供ハ元気ガ一番デスヨ」
優しそうなむしんちゅのシスターさんだ。
見た感じは……甲虫っぽい感じ。
背が高いなあ……ボクと同じくらい!
他種族の女性と比べて、むしんちゅウーマンは異形度強めって感じなんかな。
あ、でもアルデアも腕は半分羽だった。
「そう言っていただけると……ああ、私はトマコと申します。ダンゴロの妻です」
「オー、ソレハソレハ……」
へえ、僧侶さんって結婚してもいいんだ。
『むっくんは覚えていないと思いますが、ニホンのお坊さんも妻帯が許されていますよ。宗派によって違いはありますが』
へへえ~、そうなんだ。
また一つ賢くなってしまった。
「アノ、ダンゴロサンッテオ外デ働イテルンデスヨネ?」
今回は姪っ子さんの結婚式の為に帰って来た。
ってことは、この孤児院は普段トマコさんが切り盛りしてるんだろうか?
「はい、そうです。夫は代々ザヨイ家に仕える僧侶の家系ですので」
「ホホ~……」
日本の戦国大名の部下みたいな感じか。
ダンゴロさん個人じゃなくて、家ごと家来なんだねえ。
今更ながらこのお国の政治体系ってどうなってるんじゃろ?
今度調べてみよっかな。
「ですが【大角】閣下はお優しく……頻繁に休みをくださるのですよ。『ててごがおらねば、子供らが寂しがろう』と仰って」
「サスガ」
ゲニーチロさんのとこ、社員にめっちゃいい会社だね、会社じゃないけど。
有給休暇をバンバン取らせてくれる感じ! 以前お世話になったキョジューロさんもそんな感じだったしなあ……
「ムーク様のことは、夫から聞いております。子供たちもですよ?」
あっあっ……子供たちがボクに尊敬の目線をチラチラ向けてた理由が今わかった……
どの程度言われてるんだろう。
「ささ、冷めないうちにお茶をどうぞ。実家から送られて来たものですが、味は保証しますよ」
「イタダキマス……オイシイ!」
玄米茶みたいな味がする!
お茶漬けにしたい! とってもしたい!!
「まあ、うふふ……よかったです。それであの、ムーク様」
「ハイ?」
「そちらの棍棒、とっても綺麗ですけど……何故光っているんですか?」
「ハイ!?」
テーブルに立てかけていたヴァーティガが、表面をじんわりと蒼く光らせている。
イルミネーションみたいになってる……けど。
「アア、コノ棍棒ハ子供ガ大好キナンデスヨ……健康ニハ何ノ問題モアリマセンシ、大丈夫デス」
「まあ、それは優しい棍棒さんなのですね。とても優しい光……」
うん、それは本当にそう。
エンシュでは無茶苦茶焦ってたし、マジギレしてたもんね。
また夢でお話したいなあ……
「これはお待たせいたした……ちょっと近所まで掃除をしておったもので」
どすんどすんとダンゴロさんがやって来た。
どこまで掃除してたんだろう……
「おお、子供らが喜んでおる。ご足労をかけて申し訳ありませぬな、ムーク殿」
「イエイエ、今日ハ休日ダッタノデオ気ニナサラズ」
クソデカムカデと喧嘩したしね、休める時には休むのだ。
「おとうさーん!」
小さい獣人の男の子が走って来た。
猫っぽい! ターロを思い出すなあ。
「おお、どうしたレンジュロ」
走り込んで来たレンジュロくんを、ひょいと抱き上げるダンゴロさん。
名前はトルゴーン風なんだね……
「みてみて、はね、はねもらった~」
その手にはピーちゃんの羽があった。
あの子、気軽にブチー! するからねえ。
「妖精の羽か、良いものをもらったな。お礼はしかとしたのだろうな?」
「うん! そしたらもういっこくれたの!」
大盤振る舞いしすぎでは?
ピーちゃんむしられた小鳥みたいにならんか?
「大事にするのだぞ、それはとても貴重なモノゆえな」
「まあまあ、よかったわねえ。後でペンダントにしてあげましょうね」
トマコさんも加わり、頭を撫でている。
「わーい!」
あったけえ……あったか家族だ。
そりゃ、ヴァーティガもじんわり光るよ。
悪徳孤児院とかならビカビカ大騒ぎだろうけども。
「おじちゃん、おじちゃん」
ムムム、誰ですかマントを引っ張るのは。
「ナンデショ」
あら~、ちっちゃいカブトムシくん!
ジローベくん、元気にしてるかなあ。
「ぼーけんしゃなの~?」
「ソダヨ~?」
ボクも立ち上がって抱っこしちゃう! かわいいので!
「おっき~! つのおっき~!」
先端は鋭利だから根元を触りなさ……あひゃひゃ!
「コショバイ!」
やっぱりむしんちゅの子供は角に憧れるんかな?
元推定人間のボクからしても、むっちゃ格好いいもんね!
「ぼくもこんなにおっきくなれるかな~?」
「ナレルナレル、ヒョットシタラボクヨリ立派ニナルカモネ~?」
目がキラキラしていてとってもかわいいので、高い高ーい!
「きゃーはは! あはは~!」
視界の隅のヴァーティガがまたじんわり光った。
ふふふ、平和っていいよねえ!
・・☆・・
「おいちゃん、またきてね~!」「アカちゃんも~!」「ピーちゃん、はねありがとう~!」
「ばいばい、ばいばーい!」『さっちゃんの孤児院を思い出すわ! みんなまた来るからね~!』
教会の前まで、ダンゴロさんと子供たちが見送ってくれた。
そんなに感謝されると毎日来たくなっちゃいますなあ。
いやー、結局お昼前になってしまった。
子供の体力って無尽蔵ね……だっこからの滑空を何回したことか……ま、いいけど!
アカの情操教育にもなるしね~!
お昼ご飯に誘われたけど、用事があるのでと断った。
さすがにね、孤児院にご馳走になるのはね……?
むしろバッグの中にある食料を放出したいけど、それは困っていないからと断られちゃった。
経済も回せないし寄付もできない……
あ、ヴェルママのおフィギュアは置いてきました。
無茶苦茶褒められたよ……子供たちも似てる似てるって喜んでくれたし。
ンフフ、いいことした!
「ジャ、市場イコッカ」
「あ~い!」『何があるか楽しみよ! とっても楽しみだわ~!』
まだ開いてるといいけどな~?
「盛況ダ」「おみせいっぱい、いっぱ~い!」『活気があるわ! ウオガシみたいだわ!』
教会を後にし、てってこ歩いてやってきました市場の区画。
時間が遅いからもうお店ないかな~って思ってたんだけど……凄い活気。
あれかな? お昼ご飯の買い物に来てる人が多いんだろうか。
『とりあえずマントに入って首から顔出してなさいね、人多いし。嫌な人がいたらすぐに隠れられるようにね~』
『あいっ! おやびんのここ、しゅき!』『ぽかぽかよ! ぽかぽかだわ~!』
2人は一瞬でマントに入り、首の所からスポンと顔を出した。
聞き分けがよくっていいねえ。
さてと、第一目標はリンゴだから……あっち! 明らかにお野菜とかがあるところ!
お肉ゾーンも気になるけど後回し!
「コンニチワ~」
お野菜ゾーンに行き、結構な人手のある周囲に気を付けつつ歩いて……果物がいっぱいある区画にたどり着いた。
20代くらいの獣人のお姉さんが、ゴザの上に色とりどりの果物を並べている。
「おやお兄さん、随分カワイイ飾りつけて……飾りじゃない?」
タヌキっぽいそのお姉さんは、アカたちを見て目を丸くした。
「こにちわ! こにちわ~!」『綺麗なおみかんがあるわ! あるわ~!』
どうやらいい人認定しているのか、アカはニコニコして手を振っている。
「まーかわいい! 妖精ちゃんなんて子供の時見て以来よ! なーに? なにが欲しいの?」
「りんご! りんご~!」『そこのオレンジ色のが欲しいわ~!』
お姉さんは嬉しそうに果物の山をかき回している。
ううむ……ボクは何を……あ! あそこにあるのは青いバナナ! 多分名前はノゴゴ!
「リンゴト、ソコノオレンジ色ノ、ソシテ向コウニアルノゴゴヲ……一山ズツ!」
食べちゃえばなくなるので! いけるやろ!
「はいはーい、オマケしておくからね~。ウチの果物はどれも美味しいからさ!」
あっという間に素敵な果物たちをお買い上げした。
ちなみにお値段は全部で50ガル。
高いのか安いのかわかんない! でも少しでも回せたぞ、経済を!
「しゃくしゃく、おいし、おいし!」『皮もほろ苦くて美味しいわ! 美味しいわ~!』
猛然と果物に挑む2人を見つつ、ボクはノゴゴを皮ごと丸かじりするのだった。
うーん! 何故かマンゴーのお味!!




