第7話 ドワーフさん大歓迎の巻。
「よし、これで全部だな……こっちの処理も大したもんだ。ロロンさんは大した腕を持ってるなあ」
「じゃじゃじゃ……里ではよぐ狩りばしておりやんした。解体は料理の次に得意でやんす!」
甲殻の山を見て、ゴゴロンさんは笑っている。
「そんで……これの代金なんだがよ、全部まとめて買い取るから1万ガルでいいか?」
い ち ま ん が る ! ?
えっえっ、ラドル石の代金よりもお高いんですが!?
ロロンを見ると、ニコニコしている。
あ、OKなわけね……そんな高いんだ、あのムカデ。
『元々安くはありませんが、恐らくロロンさんの手際が良かったので高くなったんでしょう。魔物の素材は鮮度と解体が命ですので』
つまりはロロン様様ってことか……無言で拝んでおこう。
「はひゃあ!? やめてくだんせ~っ!?」
むっちゃ嫌がるじゃん……ボクのことは超褒めるのに。
ボクも大概だと思い始めたけど、ロロンの自己評価も低すぎじゃあるまいか。
『思い始めた……はああああああ……まあ、まあ、いいでしょう、まあ』
トモさんの溜め息がでっかい!
な、なんかすいません……
『まあいいです、この前進は大いなる一歩ですから、うふふ』
『千里の道も一歩からだし。むっくんのこれからに期待だし』
シャフさんまで!?
「おいどうした? 気に入らねえのか?」
「大丈夫デス、トテモ大丈夫デス!」
「おお、そうかそうか。そいじゃ、これだ」
またも置かれる革袋。
腕は溶けたけど、15000ガルも儲けてしまった……今泊まってるお宿が1泊50ガルだったはずだから、300日も滞在できちゃう……
「んふふぅ、なに? なぁに?」
「精神安定、精神安定……」
アカを撫でて、ついでに口元を拭く。
猫みたいに頭を押し付けてくる子分がとってもかわいい、かわいい!
ああ~、癒される~!
「よーし、これで仕事の話は終わりだな! そいでよ、ムークさん……あんた、今日は何か他に予定でもあるかい?」
「エ? ナイデスケド」
残念ながらこの街の周辺にイイ感じの川はなぁい。
地下水脈はぶっといのがあるらしいけどね。
なので、釣りに行ける環境ではないのだ……残念無念虫。
「そうか、なら物は相談なんだがよ……あんたのその棍棒、じっくり見せちゃくれねえか?」
あ、やっぱりそうくる?
さっきの反応凄かったもんねえ、目がクワッ! ってなってたし。
「おおっと、くれなんて言う気はねえぞ? ただな、見てみてえんだよ……さらっと見ただけでも、ただの武器じゃねえのはすぐにわかるしな」
さすがドワーフさん。
金属の目利きは一級品だ。
……まあ、別にいいんじゃない?
無茶苦茶お金貰ったし、それにヴァーティガは盗めるようなものじゃないらしいし。
妖精2人が隠れてないから、この人は慈悲あり認定だろうしね。
『前にテオファールさんが持った時にビリビリしていたでしょう? 普通のヒトならアレで黒焦げですからね……盗もうなんてしたら、コゲコゲですよ』
こわぁい……ま、なら安心だね。
「イイデスヨ。タダ……無茶苦茶重イノデ気ヲ付ケテクダサイ、ナンナラ作業場マデ運ビマスヨ」
「ありがてえ……この商売してるとよ、武器の目利きにゃ目がねえんだ……! よーし、こっちへ来てくんな!」
ゴゴロンさんは破顔して立ち上がり、歩いていく。
「かあちゃん! すまねえが……」
「この人たちの分も作っとくよ、昼飯だろ?」
「ありがてえ! 愛してるぜ~!」
阿吽の呼吸ってやーつ!
いいご夫婦だな~! ヴァーティガもこのご夫婦ならニッコリだろうねえ!
「よし、ここへ置いてくんな!」
案内された場所は、明らかに鉄とかをガンガン叩く場所だった。
端っこには炉みたいなものが見える……今は火が入ってないけども。
「ヨッコイセ」
そこにある、鉄のテーブル? みたいな所にヴァーティガを安置。
ドラーフさんに合わせてか、低いテーブルだねえ。
さっきのお部屋のテーブルは普通の高さで、椅子だけ背が高かったけど。
作業するところはそりゃあそうだろうねえ。
「おお……コイツはやっぱりそこらの武器じゃねえな。いい金属を使ってやがるぜ……!」
静かに興奮しているゴゴロンさん。
「エト……前ニ調ベテモラッタラ【オルカ】ト【クロハガネ】ッテ金属ラシイデス」
ブンブクさんとポコさん、元気にしてるかなあ?
「やっぱりか! この表面は絶対そうだと思ってたぜ……!」
嬉しそうにそう言い、ゴゴロンさんはでっかいゴーグルをかけた。
「さっきも言ったが盗んだりは絶対しねえ。それに、これだけの武器ならそもそもできねえだろうよ……だからよ、さっきの部屋で待っててくれねえか? じっくり観察してえんだ、たぶん何も喋らなくなるぞ、儂」
「了解デース」
トモさんがモニタリングしてくれるし、安心安全だろうね。
……呪いもあるし。
なので、向こうで待たせてもらおうか。
……あ。
「オ昼ゴ飯ノ代金……」
「いらねえいらねえ! そんなもん気にすんな!」
おおん……また経済を回せなかった……
・・☆・・
「アカちゃん、ピーちゃん、おいしいかい?」
奥さん……名前はマシアさん……が、ニコニコしながら聞いている。
「おいし! おいし!」『こんな美味しいミートパイは初めてよ! 初めてだわ~!』
アカは口の端にソースを付けて、ピーちゃんは頭をパイに突っ込みながら答えた。
「そうかい、そいつはよかった! ガリルの実家に代々伝わる秘伝のミートパイだからねえ」
秘伝……! 確かに、この美味しさは奥義って感じ!
パリッパリのパイ生地の中は、トマトベースのジューシーな挽肉やお野菜の複雑で美味しいお味!
何のお肉か全くわからないけど、美味しいってことだけはしっかりわかる!
「もふぁも……んく、ポモッドに深みがありやんす! これはどげな調味料を……!」
「おや、ロロンちゃんは舌がいいねえ。ふふ、コイツはね……完熟したポモッドを潰す時にパリパリに干した【ヴェイス】の葉を一緒に砕くのさ。そうするとぐっと深みが出るんだよ」
「じゃじゃじゃ! ヴェイス……! 里では干し肉ば戻す時にしか使ってねがんした!」
何かの料理談議が始まっている。
ロロンの研究熱心さには頭が下がるねえ……
『奇しくもこちらはマルゲリータ……トマトとチーズは最高の組み合わせですね、ももも』
『テリヤキとかもガツーン! ってきていいケド、コレも最高だし……!』
『タバスコ! かけずにはいられません!』
女神様方はピザ食べてる! いいな~……そういえばこっちでも探せば見つかりそうだね、材料はあるし。
今度街ブラするときに探してみよっと。
「ウチの人はああなったら長いからねえ……いっくらでもあるから、いっぱい食べな! ムークちゃんも遠慮すんじゃないよ? そんだけ立派な体なんだからね!」
「アッハイ! アリガトウゴザイマス! トッテモオイシイデス!!」
そう答えると、マシアさんはにっこり笑った。
「はっはっは! アンタ、虫人の男にしちゃ明るいねえ! いいよいいよ、腹一杯食いな!」
厳密には違うからね、ボク。
むしんちゅの男性ってこう……武人! サムライ! って感じの人が多いからなあ。
ボクとしてはそっちも格好いいから憧れるけど……すぐに地が出ちゃうからねえ、トホホ。
「じゃじゃじゃ、そういえばマシアさんはガリルの方なのす? ワダスはてっきりここの出身だとばかり……」
「そうさ、16の時にあの人と一緒になって国を出て……冒険者しながら諸国を回ったんだよ。いやあ、懐かしいねえ!」
そうなん!?
てっきりボクもこの国で出会ったとばかり……なんてスケールの大きい新婚冒険者旅行なんだ!
「それは素敵なのす~! 憧れやんす!」
ロロンがパイ片手に目をキラキラさせている。
うーん、思春期って感じでとってもかわいくて微笑ましいねえ。
前世のボクにもこういう時期があったのかしら?
『実年齢乳児が吹きよるわ、あひゃひゃ』
シャフさん……! いいじゃんか~! 今は乳児だけど!
『あっ……メイヴェル様サーセン、全然馬鹿にとかしてないんで、ちょっとその神剣を下げてくだい、サーセン』
『また壁が……あっ、お隣様どうも。慰謝料替わりにこのペスカトーレピザをどうぞ、誠に申し訳ありません』
ママ! ママ~!
今新しいSDおフィギュア作ってるんだけどね、ボクの故郷の武器持たせていい?
カタナっていうんだけど、似合うと思うんだ! 絶対!
『まあ! まあまあ! 向上心の強い虫ですね! 母はとても楽しみです! ほほほほ!』
……ヨシ!
ヴェルママってばいつでも全力で可愛いねえ。
遥か目上の女神様に大変不敬ではあるのですけども……!
『むしろもっともっと気安く接してほしいのです、私は。ですが何故かそう神託すると皆断るので……』
……でしょうねえ。
トルゴーンにおいては唯一神クラスに敬われてるだろうし。
いきなりそんなこと言われたらビックリしちゃうよねえ……
ま、まあとにかく……美味しいもの食べてリフレッシュしてね、ママ!
『なんといじらしい虫か……! もももも、もももも!』
『ピザ4枚重ねて食う人初めて見たし……』
『健啖家で素晴らしいですね、トルゴーンの未来は明るいです』
今日も神界は多分平和である。
いいこと、いいこと。
「胃袋だよ、男ってのはそいつを握っちまえばイチコロさ! ま、他にはアタシの美貌も勿論重要だったけどねえ! これでも若い頃は男どもが放っておかなかったんだから!」
「胃袋……やはり胃袋でやんすか! 気張りやんす~!」
気が付いたら猟奇的なお話になってる?
なに、ストマックをぶん殴ると無力化てきるとかそういう感じ?
格闘技にも詳しいのか、マシアさん……! サツバツ!!
『むっくんのお陰で助かりましたので……亜空間女神ブレンバスターは勘弁してあげます……命拾いしましたねえ……?』
なぁんで!? ボクなんかした!?
ねえちょっと、トモさん!?
『はーい皆様、ディアボラピッツァができましたよ~。辛いので注意して召し上がってください』
『うっは、色が劇物!』
『なんと芳しい香りか……! 素晴らしいですね!』
ちくしょー! こっちでもピザを……ピッツァを探して食べるんだ~!




