第134話 中華料理はどこでも最高!
「ようこそいらっしゃいました! ムーク様御一行!!」
「ハ?」「ふえ?」「チュン?」「じゃじゃじゃ?」
アカと合流し、夜まで過ごして……この街にある中華料理屋さんに来た。
アルデアはまだ帰ってこないし、セーヴァさんは会合でお留守。
ヤタコさんを誘おうかと思ってロドリンド商会に行ったら、タイミングが悪く不在だった。
なので……ロロンとアカ、ピーちゃんでやってきたわけだ。
『ミライ飯店 ジェストマ支店』に。
……なんかファミレスみたいな名前だね?
まあとにかく、来たんだよ。
アスノ飯店によく似た店構えを見つけて寄って行ったら……まず、店の外にいたむしんちゅの店員さんがハッ!! って顔をした。
なんだろ? って思ってたら彼女はダッシュで店内へ消えていき……『お越しになりましたぁ!!』と絶叫。
相変わらずハテナ顔のボクらを尻目に……店内からさっきのお姉さんや料理人さんが走って出てきたんだ。
店内のお客さんまでビックリしている……!
で、そう言われたってワケ。
「アノ……何故ボクラヲ知ッテ……?」
とりあえず、代表してボクが質問。
すると、店の中からもう1人のむしんちゅさんが出てきた。
料理人の格好をした、緑色の甲殻を持つ男の人だ。
おー! 腕が4本ある! あんまり見ないタイプのむしんちゅさん!
『まーっ!?』
肩に乗っていたピーちゃんが、声を上げて飛び上がった。
相変わらず重力さんが泣いてそうな動きだね……
『ゴーサクちゃん!? ゴーサクちゃんにそっくりだわ~!?』
へえ、そうなんだ。
ゴーサクさんって多腕むしんちゅだったんだね……
「ああ、やはりあなたは……ピーちゃんですか!」
その、ゴーサクさんによく似ているという男の人は嬉しそうにそう言った。
「私はミライ・ヨーサクと申します。ゴーサク大師匠の……子孫ですよ」
おお、そういうことね。
ピーちゃんがビックリするくらいなんだ、よほど似てるんだろうねえ。
「ルアンキのルフトねえさんから手紙をいただいて、私共一同首を長くして待っておりました。 さあ、まずはお入りを」
ルフトさんがお手紙を?
「「「ラッシャーセーッ!!」」」
ひぃ! ビックリした!?
皆さん一糸乱れぬらっしゃせーだ!
・・☆・・
「じゃじゃじゃ、ルアンキのアスノ飯店に勝るとも劣らねえ綺麗な部屋なのす……」
ロロンが、その丸いお目目をぱちくりしながら室内を見回している。
ほんと、その通りだよね……
あれから、ボクらは明らかにデラックスな個室に通された。
アスノ飯店にもあった貴賓室ってやつかな?
「おやびん、ピーちゃ、いっぱいいる、いるぅ!」
「イルネエ……スゴイネエ……」
『恥ずかしいわ……恥ずかしいわ……』
部屋に置かれている置物、壁紙の模様、そしてテーブル。
それらは、全てピーちゃんだった。
高そうな石のピーちゃん像はあるし、壁紙やテーブルには模様としてピーちゃんらしきものが大量に。
「ピーチャン、好カレテタンダネエ。ゴーサクサンニ」
『そういえば、ゴーサクちゃんのお店にもインコ像がたくさんあったわ……でも、これは多すぎ……多すぎるわ~!』
自分よりも大きなピーちゃん像を見上げ、ピーちゃんは困ったように丸まっている。
ムムム、なんという精密な彫刻……ボクも負けておられんね!!
『謎の対抗心ですね、むっくん。私もちょうどいい時間ですし、むっくんをオカズに中華料理を貪りますか……よっこいせ』
『トモちんトモちん……なんこれ、鍋が真っ赤なんすけど……拷問?』
『本場中華の火鍋を再現しました、えへん』
無茶苦茶辛いやつじゃんそれ……シャフさんの喉が死なないことを祈るよ。
「失礼いたします」
ドアが開いて、カマキリ要素のある女性が入って来た。
手には本を持ってる……本というかパンフレット?
「本日は、ミライ飯店ジェストマ支店にようこそおいでくださいました。こちらお品書きとなっております、なんなりとお申し付けくださいませ」
一礼して、テーブルにメニューが置かれる。
「ご注文の際にはそちらの鈴をお使いください。それでは」
再び一礼して、おねえさんは去って行った。
所作が綺麗だ……熟練の店員さんかもしんないね。
ええっと、じゃあ代表してボクがメニューを開くか。
開いた瞬間にピーちゃんとアカが目の前に来たけども。
「オ~!」
今に至るまで、あまり見かけなかったメニュー表。
そこには……異世界言語でズラズラ―ッと料理名が並ぶ!
骨付き唐揚げ、麻婆豆腐、エビチリ、シュウマイ、焼き餃子に水餃子!
ここにはお米もあるらしくって、チャーハンの名前も!
店構えは高級中華料理? って感じだけど……中身は大衆料理屋さんみたい。
全然いいけどね! 本格中華料理のお店なんて多分行ったことないし、ボク!
『まーっ! なんでもあるわ、あるわ~! ニホンのさっちゃんのおうちと一緒だわ! 一緒だわ~!』
ピーちゃんが大喜びだ。
ボクとしてもテンションが上がるねこれは……!
「アカ、何食ベタイ?」
「なんでも、なんでも~!」
好き嫌いしないとってもいい子!
「ワダスもなんでも大丈夫でやんす! チューカリョーリはすっかり大好物になりやんした!」
子分その2もとってもいい子!
ピーちゃんは……おおう、『ユーリンチー』の所に穴が空くんじゃないかってくらい全力でつついている。
わかった、わかりました……!
それじゃ、適当に頼もうか!
……今気付いたんだけど、値段がどこにも書いてないな?
まあ、ご飯だからそんなに高くもないでしょ。
それじゃあ、鈴を鳴らすぞ~!
「お待たせいたしました」
ウヒョ~!
注文してしばらくしたら、さっきのおねえさんがワゴンに料理を満載して戻って来た!
その上には……中華料理の大行列!!
「おいしそ!」「チュチュン!」
アカとピーちゃんが躍り上がって喜んでいて……あ! おねえさんの目がとっても優しい!
この人も妖精好きか~! まあ、嫌いな人なんておらんでしょ、カワイイし!
「総料理長自ら腕を振るいました、ごゆっくりお楽しみください。追加の注文があれば、いつでもお気軽にどうぞ」
テーブルに料理を並べ、おねえさんはにっこり笑って去って行った。
「んん~! ええ匂いだなっす!」
ボクも同感!
じゃ、早速木像を並べて……
「イタダキマス!」「いたらき、ましゅ!」「いただきやんす~!」『いただきます!』
ぱぁん! と手を合わせて、ボクらは料理に戦いを挑むのだった。
まずは棒棒鶏にしよーっと!!
『がっら!? んごごご……喉、喉ォ……!』
『流石本場ですね、鮮烈な辛みの中にもうまみが……!』
『なんという辛味か……しかし、箸が止まりませんね! なんたる美味か!!』
脳内でも戦いが始まってた!
『このままじゃ夏みかんになっちゃうわ……なっちゃうわ……』
「けぷ、おにゃか……いっぱい……」
「んはあ~……うめめなっす……」
ちょっと、美味しすぎて食べ過ぎちゃった。
ピーちゃんは真円に近いし、アカのお腹はぽんぽこ。
ロロンも大満足の様子で、ちょっと苦しそう。
ううむ……アスノ飯店と甲乙つけがたい美味しさであった……もっと早く食べに来ればよかったね。
アカと一緒に麻婆豆腐を食べ過ぎた感がある。
チャーハンにぶっかけて食べたのが悪かったかな……美味しさが限界を超えて来たよ。
追加でラーメンを頼まなかったボクを褒めたい。
でも明日にもまた食べに来よう。
「デザートノ杏仁豆腐、食ベルヒト~?」
しかし、ボクがそう聞くと全員が手、もしくは翼を上げるのだった。
やはり女性陣、甘いものは別腹なんだね。
……性別不詳のボク? 勿論食べるともさ!
そんじゃ、この振っても音のしない鈴を振って……たぶんこれ魔法具よね。
振ってしばらくするとおねえさんがシャっと来るし。
「お呼びでしょうか」
もう来た! なんという早業!!
「杏仁豆腐ヲ4人前クダサイ」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
そしてもう行っちゃった! 急いでないのにとっても素早く見える!
ムムム、これが熟練の店員さんというやーつであるか……!!
『バニラアイスうますぎっしょ……これもう神宝っしょ……』
『抹茶アイスも乙なものですね、とても』
『嗚呼、爽やかなオレンジアイスが口中をさっぱりとさせて……また食欲が湧きますね! ほほほ!』
女神様たちもエンジョイしてるねえ。
いいこと、いいこと。
ボクもアイス食べたいや……いつかマデラインに行くんだ、絶対行くんだ~!
・・☆・・
「どうですか、ウチの料理はお口に合いましたか?」
杏仁豆腐を堪能し、お茶を楽しんでいると……ゴーサ、じゃないヨーサクさんがやって来た。
「美味シカッタデス、トッテモ!」「んだなっす~!」
ぽんぽこお腹のロロンも全力で同意してくれた。
『ゴーサクちゃんのお店を思い出したわ! とっても美味しかったわ!!』
「おいし、おいし……」
ピーちゃんは飛び上がって、アカはボクの膝で半分眠りながら答えた。
それらを聞いて、ヨーサクさんはとっても嬉しそうな雰囲気を出しつつ頷いている。
「それはようございました……私も、先達の味に迫れているようですね……これほどうれしいお言葉はございません」
むしんちゅの男性は表情が分かり辛いけど、本当に喜んでいる気がする。
だってピーちゃんは昔の生き証人だもんね。
嘘を付いてないってのは、今現在の真円ボディで丸わかりだろうし。
「それで……ピーちゃん。もしよろしければ初代様のお話などを聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
『いいわ! 何のお話が聞きたいのかしら? 初めてラーメンが完成した時のお話かしら? それとも屋台で商売してた時のお話かしら~?』
テーブルを転がりながら、ピーちゃんは嬉しそうに語り始めるのだった。
腹ごなしにちょうどいい、素敵な思い出話を。




