第116話 お墓参り?
「ど~ん!」
「ムグーッ!?!?」
顔に衝撃といい匂い!
当然ながらアカ!
「……オハヨ、アカ」
「おはよ、おはーよ! むいむいむい……」
「アハハハ!」
顔にダイブしたアカが、頬を擦り付けてくる。
うーん、とってもくすぐったいけど幸せ!
体を起こすと……案の定アルデアはまだ夢の中。
ロロンはいない……早起きさん!
そしてピーちゃんは枕に突き刺さっている。
ひょっとしてこの子はセキセイインコによく似たキツツキかもしんないねえ。
カマラさんの依頼の目的地に着いたボクらは、知り合いの娘さんだというセーヴァさんのお家……宿屋に厄介になっている。
お風呂も、夕食も最高だった……特に異世界チーズグラタンみたいなのが!
中に入ってる鶏肉がまた……最高の味わいでした、まる。
『つられて昨日の晩御飯はグラタンにしてしまいました。溶けたチーズは半分麻薬ですね、ええ』
グラタンは美味しいからねえ!
「アカ、朝ゴ飯食ベヨッカ」
それでも朝なのでお腹は減るのだ。
「たべゆ、たべゆ~!」
さあ、今日も素敵な一日の始まりだ!
・・☆・・
「皆、丁度いいから先に払っとくよ」
美味しい朝ご飯を食べ終えて、お茶を飲んで休憩していると……カマラさんが革袋をテーブルに置いた。
セーヴァさんは出かけて行って、今はいない。
「ここまで、本当に世話になったねえ……ちょいと色を付けておいたからね」
ああ、お給金ね……完全に忘れてた。
『迂闊虫、もしくはアホ虫……』
ぐうの音も出ない、甘んじて受けます。
「ちょっと待った、コレは何なのナ?」
革袋の数は、全部で2つ。
ボクの前と、アルデアの前に置いてある。
そっか、ボクらはパーティだから1つなのね。
「アルデアちゃんも途中から護衛みたいなもんだったじゃないのさ。何をするにも金はいるんだから、取っときな」
「さすがにそれは悪いのナ!」
アルデアは困った顔をしている。
「だーめ。働きには給金が付きものさね、アタシは頑固だからね……受け取るまで許さないよ、アルデアちゃん」
「むぐぐぐ……」
しばしためらった後、アルデアは革袋を手に取った。
「わかったのナ。ありがたくいただくのナ」
「ふふ、いい子だ。それでうまい酒でも飲んじまいな」
ボクも受け取ろう……重い!?
絶対無茶苦茶入ってるじゃん、金額……あ、3人分だから当たり前か。
「アリガトウゴザイマス、カマラサン。イタダキマス」
「はいよ。大事に使うんだよ……といっても、ロロンちゃんがいるから大丈夫か、ははは」
そうですね、ロロンに任せておけば問題ありませんもんね。
全面的に同意虫です、ハイ。
革袋を受け取って、バッグに入れる。
あとで金額確かめておこうっと。
「さて……こいつはオマケさ」
次にカマラさんは、ローブの中から……タリスマンを取り出して、テーブルに並べていく。
あら、色とりどりの糸を使っててとっても綺麗……!
いつもカマラさんが売ってるのも綺麗だけど、これはそれ以上の高級品に見える!
「皆の分がある。行く道を照らし、幸運を呼び込むタリスマンさ……受け取っとくれ」
「じゃじゃじゃ、給金までいただいたのにこの上は……」
ロロンが手をワタワタさせている。
ボクとしても、ちょっと貰いすぎのような気がするんだけども……
「ふふ、義理堅いアンタらだからそう言うと思ってたよ……だからね、もう一つ仕事を頼みたいんだ」
仕事?
「その仕事の給金さね、そいつは。どうだい? やってくれるかい?」
ロロンとアルデアを見ると、無言で頷いた。
それなら、ボクも同じ気持ちだ。
「ハイ、ヤリマス」
「そうかい、やってくれるかい……それじゃ、先払いさ。もう付けちまいな、知っての通り身につけないと効果はないからね」
はーい。
じゃあボクは……首にかけようっと。
マーヤに貰った首飾りに、イセコさんのお守り。
それに流体金属ネックレスに、このタリスマン。
ボクの首は現在とっても賑やかだ、賑やかすぎる。
イセコさんのお守りとマーヤのネックレスは一時バッグに避難させておこう。
これは2つともお守りだしね、問題ないでしょ。
「きれえ、きれえ! おばーちゃ、ありあと~!」
『素敵よ、素敵だわ~!』
カマラさんは手先がとっても器用なので、妖精用は妖精サイズだ。
アカもピーちゃんも、とっても気に入ったみたい。
もちろん、ボクもロロンも、アルデアもね。
「アリガトウゴザイマス。ソレデ仕事ッテイウノハ……?」
ここからまた別の街に行くのかな?
それとも、前みたいに鉱物を取ってくる系の仕事だろうか。
「なあに、簡単なことさね」
カマラさんは、手を組んでニッコリ笑った。
「この街の後ろに山があるのは見てるだろ? のっぺりした低い山さ」
ああ、あったあった。
あんまり木が生えてない、緑の山だよね。
「そこにね、今夜アタシが登るんだ」
今夜ァ?
なんだって夜に山登りを?
「何故夜に登るのナ?」
「うちらの故郷のしきたりさね。そんで目的は……墓参りさ」
お墓参り?
「じゃじゃじゃ、カマラさんのお里はここでやんしたか」
「いんや、もっともっと北の寒いところさ。ここに葬られているのは……セーヴァの父親で、アタシの古い知り合いなんだよ」
あ、そういうことなんだ。
は~……ってことはカマラさん、お墓参りの為にわざわざここまで来たのか……国を横断して。
すごいなあ、改めて。
「カマラサンモ十分義理堅イジャナイデスカ」
「ははは、よしとくれ。ただの旅のついでみたいなもんさね」
カマラさんは照れくさそうに手を振った。
仲良かったんだねえ、その人と。
「魔物はいない山だけど、それでも夜の一人歩きは危ないだろ? それで、アンタらに護衛を頼みたいのさ」
魔物いないんだ……でも! オオドブネズミモドキの事件があったから油断はしませんぞ! しませんぞ~!!
『良い心がけです、トモさんポイントを付与いたします』
わあい。
今に至るまで一切詳細不明のポイントだけど、嬉しいは嬉しい~。
「そうと決まれば、後は自由にしてな。日が暮れたら出発だからね、それまでにここに戻ってきとくれ」
「それはいいのナ、それじゃあ私は……」
「ああ、墓参りは一応神聖な儀式だからね。お酒は明日まで我慢しな」
「ウナァ~……」
アルデアが目に見えてションボリしてしまった。
分かりやすすぎる、この子……ボクといい勝負かもしんないねえ。
・・☆・・
「さ、行こうかね」
とっぷりと日が暮れた街。
そこの門を出た所に、ボクらはいる。
来るときに通ったのとは別の門だ。
結局旅の疲れもあって、ボクらはお部屋でゆっくりすることを選択した。
この最後の仕事が終われば、どうせ時間はいくらでもあるしね。
アルデアだけはつまんなそうにお茶をちびちび飲んでたけども。
ちょっとは我慢しなさい。
カマラさんは、いつもの杖の先端を淡く光らせている。
へえ、そんな魔法もあるんだ。
ランプいらないねえ。
「オネガイネ、アカ」
「あーい!」
もはや懐かしい光り石。
それを首から下げ、アカも淡く光っている。
久しぶりに使ったなあ、これ。
おひいさま様様ですよ。
ボクは暗視ができるけど、ボクしか使えない。
これが最適解だ。
「そんなに遠かないよ。足元にだけは気を付けてついて来な」
「合点でやんす」
「任せるのナ~……」
そうして、ボクらは出発した。
闇に慣れてきた目に映る山……なんだか、昼間と違って不気味チック!
「あそこの中腹に墓所がある。勾配はそんなでもないから、ゆっくり焦らずにね」
「ハーイ」「あーい!」
アカの元気のいい返事は、夜の闇に吸い込まれていくみたいだった。
誰かが踏み鳴らしたような道を歩き、しばらくすると勾配がついた。
言われた通り、魔物の気配はない。
そんな坂道をみんなで登っていき……しばらくすると、墓石っぽいのが見えてきた。
あんなところにポツンと一つ……セーヴァさんのパパ、孤独を愛するタイプだったのかな?
ボクにはとっても真似できませんですよ、ええ。
「着いた着いた。やれ、腰にこたえるねえ」
そんなことを言いながらも、カマラさんはさっさと歩いて墓石の近くへ。
そして、見慣れない動作で手を合わせている。
「アンタらもついでに手を合わせてくれないかい? クマラ……ここに眠ってる男は賑やかなのが好きだったからねえ」
そう言われて断れるわけがない。
断る気もサラサラないので、ボクらも墓石の前に移動。
ちょっと古いけど、掃除が行き届いてる……セーヴァさんがやってるのかな?
むーん、墓石には何かが刻んであるけどよく見えないな……近付いて、っと。
ええと、なになに……
『月の子、ここに眠る』?
月の子ってなんじゃろ、ツチノコの一種かな?
「にゃむむ~……」
『オンカカカビサンマエイソワカ~』
アカがそっと手を合わせ、かわいくむにゃむにゃ言っている。
ピーちゃんも器用に手を、いや羽を合わせている……はばたいてないのに浮いているので違和感が凄い。
――その時だった。
ボクラが身に着けているタリスマンが光り……半円状のバリア的な何かが展開されたのは。
えっ? なにこれ?
こんな機能もあるのねタリスマン……言っといてよカマラさん、びっくりしたじゃない……
……アレぇ? なんで一人だけあんなに遠くに?
「――ごめんよ、ムークちゃんたち」
そう言ったカマラさんは、少し申し訳なさそうで……そして、少し悲しそうだった。
・・✩・・
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