第103話 負ける気がしない、死闘。
『消失――真後ろ!』
「――ヌウウウアッ!!」
振り向きながら、ヴァーティガを薙ぐ。
頼れる相棒は――空中が歪んで出現した赤黒い大剣と、火花を散らして打ち合った!
「っちぃ!」
出てきた人間は、その勢いで後方に跳んで……消えた!
こっちには頼れる素敵で有能な最強の女神様がついてるんだぞ!
それに――
『右――えっ』
鋭く衝撃波で回転!
まだ歪んでいない空間に向けて――速射衝撃波! 拡散ッ!!
「――な、あっ!?」
出てきた人間は、咄嗟に大剣でそれを防御。
信じられない、って様子でまた消えた。
『左斜め――』
前、ここらへんでしょ!
パイル射出ッ!
空間が滲んで出現した人間、そのお腹に棘は食い込む!!
「かはっ!?!?」
そいつは、息を吐いて吹き飛んだ!
貫通してないけど、衝撃までは誤魔化しきれないでしょ!!
『成長しましたね、むっくん』
トモさんナビと、そして……ゲニーチロさんの配下のむしんちゅニンジャさんたち。
あの人たちと過ごしたことで、なんとなくわかるようになったんだよ!
彼女たちの気配は今でもわかんないだろうけど――コイツは、それよりも下だ!
これなら、なんとなくわかるんだ!
「虫、如きが……」
「人間風情ガ、ナンダッテ?」
宗教のせいか、選民教育のせいか知らないけどさ!
どんだけ偉いってのさ、人間が!
「勝手ニ攻メタリ、スタンピードヲ起コシタリ……随分性根ガ悪イジャナイカ、オ前ラハ?」
「……そうか、先遣隊から逃げたのは貴様か」
人間は、唾を吐きながら立ち上がった。
「貴様のせいで、我らの計画は台無しだよ……虫けら」
「ソリャア良カッタ。今晩ハヨク眠レソウ――」
台詞の途中で、人間が消える。
なんとかの一つ覚えってやーつ!!
気配は――
『真上!』
ヴァーティガを、振り上げる!
奴が出現し、振り下ろす大剣と――接触!
火花と、黒い魔力が散った!
……黒い魔力?
「ッグ、ウ!?」
散った魔力が、ボクの両腕に――!?
あっという間に燃え始めた、あっつ、熱い!?
なんだこれ、消えない――
「――っし!!」「ゴハ!?」
炎に気を取られて、蹴りに気付かなかった!
そのまま吹き飛ばされて、壁に激突しちゃった!
「グ、ムウ……!」
『その炎は――いけません! 前に戦った空の民が持っていた槍の炎と同じ性質です! いえ、それよりも悪い――!』
それって、斬り落とさないといけないってやつか!
「喰らっ……たな、虫けら! それは、我が崇高なる……神の炎!」
人間、無茶苦茶疲れてる!
必殺技みたいなもんか、これ!
「祝福なき貴様らを、骨まで焼き尽くす浄化の炎だ! はは、はははは!」
なぁにが!
ビジュアル的には悪魔の炎でしょ、こんなもん!!
『むっくん、今すぐ――』
カモーン!『隠形刃腕』ッ!!
「――グ、ウ!」
ヴァーティガを手放したボクの両腕、その肘から下を――斬り飛ばす!
「む、ムーク様、ムーク様ァ!?」「おじちゃん!?」
おおっと、心配無用だよカタコちゃん姉妹!
腕くらい――
「くは、その覚悟は、見事! だがそれでは何もできまい!」
人間が、飛び掛かって大剣を振り上げる!
勝ち誇っちゃってさァ――トモさん!!
『急速再生、実行』
「――ガアアアアアアアアッ!!」「なんっ――!?」
ぞるん、と両腕が生える。
すぐさまヴァーティガを握り、魔力を流す!
蒼白く放電する相棒を――振り下ろされた大剣に、叩きつけるッ!!
ばぎん、と轟音が響く。
空中で軋む、お互いの武器!
思った通り、あの炎は使う時に無茶苦茶疲れるみたいだ!
咄嗟には、出せないんだねぇ!!
「ヌ、ゥ!」
ヴァーティガを握る両手の角度を、調節!
左手が真っ直ぐアイツに向くようにして――喰らえぇッ! パイル、2連ッ!!
「グアッ!?」
発射した棘は、超近距離で回転しながら人間の腹に食い込む!
魔力が反発して光ってる――そうか、鎧の他に結界で守ってるんだ!
人間が、後方に吹き飛んだ。
そのまま、地面で何度かバウンドして転がる。
その隙に魔石を口に放り込んで、噛む。
うぐ……今日は急速回復が多くてしんどい……けど、だからなんだ!
「ば、けもの……め!」
よろり、と起き上がった人間は……腹に血痕が見える。
どうやら、至近距離パイルが食い込んだらしい。
貫通はしてないけど。
「悍ましい……やはり貴様らはまつろわぬ民よ! 哀れで醜い、最底辺の生き物め……!」
「アッソ。ソンナニ怖イナラ自分タチノ国ニ引キ籠ッテロ、屑」
立ち上がった人間のフードが捲れて……血走った眼と、顔が見えた。
やっぱり人間だったね……アレ? なんかどっかで見たような顔してる?
『以前ラーガリで会った人間さんによく似ていますね』
あ、あの人か!
確かによく似てる……この人間の方がちょい年上ぽいけど。
姉妹か、親戚かな?
でも、中身が転生者だった彼女と違って……こっちは選民思想に凝り固まった屑みたいだ。
美人が台無し!
「虫め……もう許さんッ!」
人間はそう叫んで、懐から試験管みたいなのを取り出す。
あれっていつぞやの金ぴか雑魚が持ってたやつだ!
ってことは……回復薬!
それの蓋を抜き、一息に飲み干す人間。
たぶんお腹の傷が塞がったね!
「穢れた体を残さず――消えろォ!!」
ごう、と大剣から炎が噴き出る。
さっきよりも炎が大きい! マトモに打ち合ったら腕どころか体が燃えそう!
「――死ねェ!!」
消える人間。
気配は――正面!
衝撃波で横スライド! 遠くに逃げる!
「『汝ガ怨敵ハ、眼前ニアリ』!!」
逃げながら――突き出す! ヴァーティガを!!
「『吠エヨ! ソノ名ノ如ク』ッ!!」
推定位置に向けて、ヴァーティガの先端から渦巻く蒼い奔流が発射された!
前よりも威力と魔力消費が凄い! キミもやっぱり怒ってるんだねえ!!
「――グ、ぬぅ、アアアアアアッ!?」
現れた人間は、奔流に大剣を打ち下ろして耐えている。
蒼い火花と、黒い炎がとてつもない勢いで空間に噴出している!
「ぐ、が、あぁあ!『聖なる哉、恩寵持ちし神よ』!!」
黒い炎が一層勢いを増し――ボクが放った奔流を、かき消し始めた!
――今の攻撃じゃ、殺しきれない……なら、ならッ!!
バッグから取り出した魔石を、飴玉みたいにザラザラ口に放り込む。
ちょっとは強くなったはずだ、今のボクなら――やれるはずだ!
こいつを! ここで! ぶち殺すために! やるんだ!!
――息を吸って、吐く。
精神を、統一する。
『むっくん――まさか! やめなさい! 未知数の状態でソレの行使は――』
魔石を残らず噛み砕く。
全身に満ちる魔力が、ボクの装甲を内側から破損した。
「――『我ガ剣ハ、牙ナキモノノタメ』――」
生成した魔力が、ごっそり消える。
だけど、まだ、まだある!
割れそうな頭痛を感じながら――ボクは、叫んだ。
「――『我ガ鎧ハ、寄ル辺ナキモノノタメ』――!!!!」
魔力が、消し飛ぶ。
さっきまで蒼いビームを放っていたヴァーティガ。
その全体に、細かい紋様が走る。
まるで、ヒビみたいに。
――一拍置いて、ヴァーティガは粉々になった。
正確に言えば、始めからこうなるって決まってたみたいに……分割された。
そして――
『剣……!』
弾けたヴァーティガの内部には――蒼く輝く、剣の刃があった。
いつか、夢で見た黒騎士さんが振り上げたのと同じ色の剣が。
「オ」
足を踏み出す。
「オオ、オ!」
踏み切って、跳ぶ。
今まさにヴァーティガのビームを完全にかき消した、人間に向かって。
「――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
ボクは、まるで流星みたいに飛んだ。
アッと今に距離は零になり、人間が血走った目でボクを見る。
黒炎を撒き散らす大剣を、構えて。
――脳裏に、言葉が浮かんだ。
ヴァーティガが教えてくれたみたいに。
それを、叫ぶ。
「『闇ヲ祓エ、黎明ノ刃ヨ』!!」
一層輝きを増したヴァーティガの刃が――黒炎を弾きながら大剣に『食い込む』
目を見開く人間を目の前で――大剣を『断ち切った』
――その、両腕ごと。
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