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第83話 狭い狭い! 世間が狭い!!

「ムーク様、巡回騎士団でやんす!」


「オー!」


 ヤタコさんと合流して、移動速度が飛躍的に上がった。

あの竜車には他にもいろんな機能があるらしくって、夜はそのまま結界? を展開してそこで眠れる。

無茶苦茶便利でデラックスな竜車だった。

まあ、お風呂には入れないけど流石に贅沢すぎるよね、この状況だとさ。

休憩所を目指して無理をすることもなく、ボクらはいいペースで歩き続け……そして今日。


 ロロンが指差した先には、街道をこちらへ向かって進軍してくる……虫人の集団。

全員が走竜のオスに騎乗した、生体甲冑でキラッキラの兵隊さんたちだ。


「皆さん、しばしお休みを! 報告しやす!」


 ヤタコさんが車を停め、御者席から赤い旗を取り出して振る。

それにどんな意味があるのかは知らないけど……向こうの先頭にいる人が蒼い旗を振り返してきた。

おお……速度は出てないけど迫力がすごいねえ。


「きしだんだ~!」「かっこいい~!」「ね~!」


 子供たちはキラキラしたお目目で見入っている。

わかるわかる、カッコいいもんね~?


「これで助かった……」


「ああ、騎士団が来たってことはエンシュまでの魔物は壊滅してるだろうしよ……」


「どこのお家の隊だろうねえ。ジュロック様のとこなら姪っ子がいるんだが……」


 大人勢も、どこか肩の力が抜けたようだ。

そっか、あの人たちは魔物をコロコロしながら来たのね……じゃあ、これからは楽ちんだね!


「ミンナカッコイイネエ……ムゴゴゴゴ」


「むぅ! おやびん、いちばんかっこよ! つおい! しゅてき!」


 むしんちゅを褒めると謎の対抗心を燃やすアカがかわいい。

でもほっぺに突撃してくるのは勘弁してほしい。

かわいいけど。


 そうこうしているうちに、騎士団の先頭はすぐ近くまで……あれぇ?

先頭のむしんちゅさん、鎧着てる?

へえ~……生体甲冑じゃない鎧の人もいるんだねえ!


「――ヤタコ殿! 村人の様子はどうか!?」


「へい! 1人も欠けておりやせん! 皆さまお元気でいらっしゃいます!」


 ……あ、違う。

先頭の人、たぶん女性だ!


「そうか、それは重畳!」


 先頭の人は、ひらりと走竜から飛び降りた。

おお、身のこなしが軽やか!

背中にデッカイ大剣背負ってるのに!


「トソバの村長殿はいずこにおられる!」


「ああ、騎士様……こちらでございます!」


 村長さんも荷車から降り、ボクの横まで来た。


「おお!そちらか!」


 全身鎧に加えて、兜もしっかり着込んだその人は足早にやってきた。

ボクよりちょっと背が低いくらいか……でも、とっても強そう!

鎧もとっても重そうだし……


「トソバの村長、ジュローザにございます」


「第7巡回騎士団、騎士団長のジーグンシ・ルツコだ。此度は災難であったな……」


 その人、ルツコさんは兜を脱いだ。

……むむむ、なんか……どっかで見たような?

そのフワッとした触角に、首元のフサフサ。

そして何よりも、真っ黒でキラキラの綺麗なお目目!


「おやびん、おねーちゃ、おねーちゃ! ひめさま、にてるぅ!」


 姫様……あ、ああそうだよ!

鎮魂の巫女の、ラクサコさんとよく似てるんだ!

よく考えれば、苗字も一緒じゃないか!

御親戚の方かな?


「――おお、こうしてお目にかかるのは初めてだな。従妹から話は聞いている……ムーク殿に、妖精のアカ殿!」


「従妹サンデスカ! ボクモラクサコサンニハ大変オ世話ニナリマシテ……」


 世間ってホントに狭いねえ。


「ソレニシテモ、ヨクワカリマシタネ?」


「ははは、人型の妖精を連れた黒角の偉丈夫なぞ、そうそうおるものでもないからな! しかし、聞いていたよりもその……大きいな? ラクサコよりも少し小さいと聞いていたが」


 あ~、それは……進化したからか。


「成長シマシタ、ハイ」


「成程! しかし爺様が言う通りの偉丈夫だな! そのような棍棒を軽々とよく持つ! はははは!」


 ルツコさんがボクの肩をバンバン叩く。

た、体育会系むしんちゅウーマン……!!


「ピヨヨヨヨ」


 ああ! 振動で寝てたピーちゃんがジリジリ出てきた! おはよう!


「おおっと、コレは失礼。またも妖精か! ムーク殿は英雄の器やもしれんな! はっはっは!!」


 ……そういえばなんでこの人は異世界京都弁ではないのだろう?

巫女言葉って言ってたし、巫女様しか喋っちゃダメなんかねえ。


「さて……うむ! 他の皆も元気そうだ!」


「ええ、騎士様。道中で大地竜やオオムシクイドリに襲われましたが……こちらのムーク殿の御尽力でなんとかなりまして」


 ちょっとォ?

村人さんたちも頑張って戦ってたじゃん?

ボクは大物をキャン! してただけですけども。


「ほう! ふむ……なるほど! これはラクサコの申す通りの御仁らしい! 重畳、重畳!」


 ラクサコさんはボクをどんだけ盛って説明しているのか。

今から首都に行くのが怖くなってきた。


「では、我々は乱れた龍脈を鎮めに参る! ここへの道中で魔物はあらかた片付けたが、油断はせぬようにな!」


 ルツコさんがサッと腕を上げた。

すると、乗っていた走竜が素早く寄ってくる。

躾けがすごいな……


「手短ですまんが、エンシュの者にはしかと申しつけをいたしておる! 到着次第風呂の用意もな! よう頑張った、皆の衆!」


 ひらり、と走竜に飛び乗ったルツコさんは、後方で待機している騎士さんたちに振り向く。


「出立するぞ、皆!」


「「「応ッ!!」」」


 一斉に返事をした部下?さんたちは、一糸乱れぬ動きで動き始めた。

すご……軍隊! って感じ!


「並足、二列縦隊!」


「「「応ッ!!」」」


 あっという間に、騎士さんたちは街道を駆けていった。

凄いっていう感想しか出てこないなあ……ボクにはとてもとても。

ラクサコさんもそうだけど、持って生まれたカリスマ的なアレがあるんでしょうね~……


「がんばって~!」「かっこい~!」「おねがいね~!」


 あ、でも声援を送る子供たちにみんな手を振り返してる!

絶対いい人たちだ!絶対!


「村長! 『焔姫』様が出て下さるんだな!」


「こいつはありがてえ! 村は救われたも同然だな!」


「この分だと思ったよりも早く帰れそうだなあ、がはは!」


 村人さんたち、ムッチャ喜んでる。

ほむらひめ……そんな異名があるくらい凄い人なんだねえ、ルツコさん。


「村長殿、寡聞にして存じ上げねけども……先程の姫君は有名なお方でやんすか? 巫女様の親族でらっしゃるのはわかりやんしたが」


 ロロンは気になるみたい。

キミ英雄とか好きだしねえ。


「ああ、異名の通り……炎の魔法を手足のように扱いなさるお強い方じゃよ。3年ほど前に、北に出た『リククジラモドキ』をお一人で討伐なさるほどのお方じゃ」


「じゃじゃじゃ!? そ、それはなんと、はあ……凄まじき武人でやんす~!」


 リククジラ……モドキ。

ここにもモドキが出たか。

もう慣れた、虫は慣れました。


『リククジラモドキ……草食で穏やかなリククジラという魔物に少し似た種類ですね。全長は10メーター弱、本来のリククジラと違って好戦的で肉食性、積極的に人をもぐもぐします』


 恐ろしすぎる……この世界恐ろしすぎる……

ちょっと強くなってもどんどん上には上がいるの恐ろしすぎる……


「ボク、頑張ッテモットモットモット強クナルネ……」


 お気楽に生きていくためにも、武力は大事なんだなあ……


「アカも!アカも~! おやびん、たすける、たすけるぅ!」


「ワダスもでやんす~!」


 頼れる子分たちの決意表明が、とっても嬉しい虫なのでした。

そうだね、ボクは1人ボッチじゃない……これは、とっても素敵なことだねえ。


「ンフフ」


『あら! ご機嫌ねむっくん! うっふふ! うふふ!』


 首元をちょろちょろしているピーちゃんを撫でながら、しみじみそう思うのだった……

アカも撫でるからね!そんな無理やり割り込んでこないで!

ピーちゃんがお餅みたいになってるから~!!



・・☆・・



 そこからボクらの進む速度は、さらに飛躍的に向上した。

騎士団がコロコロしたのか、魔物が全然出なかったんだもん。

最後の方なんか、ボクも子供たちと一緒にスヤスヤしちゃったし。

ヤタコさんが休め休めって言うもんだからさ……

そんなこんなで、5日ほど平和に移動して……


「皆様ァ! 【エンシュ】が見えてきやした!」


 今の時刻は多分昼前くらい。

ヤタコさんが言うように、街道の先に街が見える。


「オオ~……!」


「まるい!まるーい!」


『野球場みたいよ!懐かしいわ~!』


 ボクらが荷車に乗りながら見ているのは、森を円状に切り取ったような空間と……その中心にそびえるとっても頑丈そうな街だった。

黒い石を隙間なく、きっちりと組んで作られた外壁は……ローマのコロッセオ完全版って感じ。

アレが何かは知らないけど、かなり守備力が高そう!


「ヤタコサンノオ陰デスヨ、アリガトウゴザイマス」


「なっ!? 何を仰るんでいダンナぁ! アッシらが受けた大恩に比べりゃ、こんなもんは物の数にもならねえよ!」


 御者席のヤタコさんは、振り返って真っ赤な顔で言った。

いや~? それはどうかなって?

まあでも、この場では甘んじて受けとこうか。


「じゃじゃじゃ……なんとはあ、綺麗な外壁でやんす!」


「ホホーウ、噂に聞く『影石』とやらかアレは。ああも見事に加工するなぞ……さすが虫人の築城技術だナ!」


 アルデアは荷車の乗り心地が気に入ったのか、今日はずっと乗っている。

ボクの!膝を!横断する形で!!

重い……とは言わないけども。

虫だって命は惜しいのじゃ。


 しかし、物々しい街だなあ。

これだけの外壁で囲わないと駄目なんて……ぶるる、どんだけバケモンがいるのさ……この周辺。

どうか、何事も起こりませんように~!!


『ふむ、誘い受けというやつでしょうか?』


 そんなんじゃないやい!!

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― 新着の感想 ―
ムッくんは誘い受け名人。覚えました。かかって来い!虫GETダゾイ。しかしながら、今のムッくんならば10メートル級ぐらいなら消し飛ばせそうな気が…。自己評価低めなのかな?油断しなーいの女神様の躾なのか?…
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