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第69話 翻訳の加護、どれくらいバグってるのか気になる虫です。

「……先程は、見苦しい所をお見せいたしやした」


 モフっとした触角、首元にはファーみたいな毛。

髪の毛は灰色っぽい感じで、ところどころに朱色のシャギー?が入っている。

ボクよりも少しだけ低い身長のその人は……ベッドの上でそれはもう綺麗な正座を披露していた。


 毛布のオバケと化していた彼女は、しばらくそのままで……今しがた、赤い顔をしながら這い出てきたのだ。


「あっしはヤタコ。ロドリンド商会トルゴーン支部のヤタコと発します」


 その人、ヤタコさんは綺麗な青色の目をきらめかせてそう言った。


 おおう……やっぱり江戸っ子だ。

凄まじい違和感を覚えるけど、これはボクみたいな転生者にしかわかんないことだろうね~。

とにかく、お返事しなくちゃ。


「ボクハムークデス。ソレデコッチガ……」


「アカ、でしゅ!」


 ボクの前で滞空しつつ謎ダンスをするアカ。

うーん、元気に挨拶できて超えらい。

三千世界に響き渡るえらさ。


『この親バカ虫はもう……』


 甘んじて受けますよ!受けますとも!!


「アノ、ヤタコサン。モウオ体ハ大丈夫デスカ?」


 そう聞くと、ヤタコさんは――顔を一瞬で真っ赤にして、綺麗な土下座!?


「へ、へい! 貴方様のお陰様でさあ! 正直、あすこでくたばるかと思っておりやした!!」


 大げさ!大げさ……でもないか、これは。

たしかに、あのままの状態なら彼女は亡くなっていただろうねえ。

ゴブリンの毒以前に、お腹の傷で。


「こらこら、嬉しいのはわかるけど無理しなさんな。傷が開いちまうからね」


「あ、姉御……」


 ルフトさんがむっさニヤニヤしながら歩み寄り、土下座状態を強制解除。

熟れすぎたトマトみたいな顔色のヤタコさんは、目をそれはもうパシパシさせている。


「コノ子モアノ場所ニイタンデスヨ。一足先ニココヘ戻ッテ、色々人ヲ呼ンデモライマシタ」


「あいっ!アカ、がんばった、がんばった~!」


 それを聞くと、ヤタコさんは顔をほころばせて……寄って行ったアカを撫でた。


「夢うつつの時にアカちゃんの声が聞こえたような気がしやしたが……それは、誠にもっておありがとうございやす!」


「えへへぇ、えへぇ」


 うんうん、アカが逃げないってことは彼女も善人だね。

渡る世間は基本的に善人。

クソヒューマンを除く!!


「おやびん、ほめられた、ほめられたあ!」


「ソダネ~。アカハカシコイカシコイネェ~?」


「きゃーははは! あはぁ、あははは!」


 戻ってきたアカの頭を撫でて、それからほっぺをプニプニ!プニプニ~!

あ~、なんじゃこのカワイイ生き物。


「はうぅっ……!!」


 む?

なんかヤタコさんが仰け反っている。

これは……アカが可愛すぎて悶えてるに違いないねえ!

ラーガリのアリッサさん姉妹と同じような感じだしねえ!


『は~~~~~~~~~~~~~~~~~~~、昼間っからこの虫ってばもう……トモちん、スクリュードライバーちょうだ~い』


『はああああああああああああああああ……いっそのこと亜空間女神スクリュードライバーの出番ですかねこれは……亜空間女神シャイニングウィザードでもいいですけど』


 なんで!?なんでぇ!?

亜空間女神シリーズのバリエーションも多すぎ!多すぎ~!!


「と、ととととにかく!とにかく!!」


「ワワワ」


 仰け反りから復活したヤタコさんが、ボクの手をギュッと握った。


「此度は本当に……ほんっとうに!ありがとうございやす! このヤタコ、貴方様の雄姿! 善行は終生忘れませんッ! 忘れませんともッ!!」


「ハ、ハイ……ア、アハハ。元気ニナッテヨカッタデス、ハイ」


 圧が!凄い!!

これもう半分抱き着きというかベアハッグじゃない!?

っていうか! 病み上がりというか入院中なのでおとなしくしていてください!くださ~い!!



・・☆・・



「ギャルル!ギャウウウウ!!」


「ムワワワワワワ」「あははは!あはは~!!」


 元気を無茶苦茶取り戻したヤタコさんのお見舞いを終えて、現在。

返してもらったマントを羽織ったボクとアカが向かったのは……街の南にある『獣舎』という建物。

そこは、お金を払って騎獣とかお馬さんとかを預ける場所だ。

衛兵さんたちの所有している騎獣の預け先はまた別らしい。


 ともかくそこへ行って受付で事情を話し……シュテンちゃんに会いに来た。

こっちもお見舞いみたいなもんだしね。

ルフトさんはお店があるので療法院で別れました。


 んでんで、案内された場所でボクらはシュテンちゃんに再会して……舐め回されている。

んんんん~!!とっても青臭い!!

じゃあお腹いっぱい草を食べられたんだね!よかった、よかった!!


「ヨカッタネエ」「よかた!よかたね~!」


 だ液まみれのボクとアカは、シュテンちゃんを思う存分撫でた。

ヒヤっとしててスベスベで、とっても手触りがいい!


「たまげたねえ、昨日の今日でそこまで懐かれるたぁ……妖精は分かるがにいさん、あんた竜に好かれる匂いでもするんじゃねえのか?」


「ハハハ、ソウカモシレマセンネ……」


 ここを管理しているクワガタのお爺さんが、パイプをふかして笑っている。

むしんちゅさんも煙草喫うんだね~。

あーでも、ラーガリの煙草とはまた匂いが違うや。

種族で好みってのがあるのかな。


「それよりあんた、この子に中級ポーション使ったんだって? お大尽だねえ……」


「エエ?」


 みんなそれ言うね。

いいじゃんいいじゃん、手元にあったんだからさ。

アルデアもokしてくれたしね、事後承諾だけども。

ちなみに代金としてラーヤに貰った宝石をあげました。

滅茶苦茶喜んでた。

ポーションの代金には十分すぎるらしいけど、いっぱいあるからね~!


「コノ子ハ命懸ケデ主人ヲ守ッタンデスカラ。助ケラレルナラ助ケマスッテ、当然デスヨ」


「騎獣に優しいんだねえ……あんたやっぱり【大角】閣下の隠し子じゃねえのか? あのお方も似たようなことを仰っていたらしいしな」


「無関係!無関係デス!オ世話ニハナッテマスケド血縁ジャナイデス~!!」


 また出た!隠れてない隠し子疑惑!!

でも、ゲニーチロさんも動物は大事畑の出身か~……

首都で会えたら、そのこともお話ししたいなあ。


「モウ怪我ハ……?」


 顔を舐められながら聞く。


「おう、元々走竜ってのは丈夫な騎獣だからな。この子の主人が大変なことになったゴブリンの毒もほぼ効かねえしよ」


 へえ~、防御力高いんだねえ。


「キミッテバ丈夫ナノネ~……」


 羨ましいなあ。

ボクももうちょいカチカチ虫になりたいもんだ。

すぐに腕とか吹き飛ぶし……相手が悪すぎる場合ばっかりなんだけども。


「じょーぶ!じょーぶぅ!」「ギャウウゥウウ……」


 頭に乗って全身で撫でるアカ。

ふふふ、とっても微笑ましい。


「おっと、そういえばにいちゃんは……確かムークってんだよな?」


「アッハイ」


 あれ、ボク自己紹介したっけ?


『ふふふ、門にめり込んだ謎イケメン虫として知られているようですよ』


 ……ちくしょう。

返す返すも最後で詰めを誤ったのが憎い……!!


『それ以外でも、人型の妖精を連れた虫人の男という時点でほぼ唯一無二ですしね。レア虫ですよ、レア虫』


 なんか生焼け虫みたいでやだなあ、それ。


「漁師のヤジローベっておっさん覚えてるか?」


 おや、一緒にクソキモヤツメウナギから逃げた人じゃないですか。


「ハイ、オボエテマス」


「ありゃあ俺のダチなんだがよ。随分と儲けさせてもらったって自慢してたぜ? あやかりてえなあ、俺も」


「エヘヘ、タマタマデスヨ」


「どうやらアンタは天運に恵まれてるようだ。ここにいつまで滞在するのか知らねえが、手が空いてるなら漁の護衛依頼を引き受けてやっとくれよ……俺の息子も漁師でね、へへへ」


 天運なんかは絶対にないと断言できますけども。

転生してからこっち、死にかけてばっかりですもん。


「ハハハ、ワカリマシタ」

 

 シュテンちゃんの頭に乗っているアカを撫でる。


「んゆ? えへへ、へへへ」


 でも、天運はないけど……仲間運はストップ高ですよ、ボクは!

アカにロロンにピーちゃんに……頼りになる女神様方!

人脈だけはチート級虫です、えへん!


『今日は本当にヨイショ虫ですね、そんなに女神を口説いて何を考えているのやら……ふふふ』


『前にも言ったけど2メーター超えてから口説いてよね、むっくん』


『なんという愛おしい虫か……やはり、あなたに注目した私は間違ってはいなかったようですね。母はとても誇らしいですよ』


 口説いてないから!ないから~!

まったくもう!恐れ多すぎるんじゃよ!!


「おっと、そういえばもう一つあった。ムークさんよ、あんた大の釣り好きらしいな?」


「……ソウデスケド、何故?」


「その妖精ちゃんと仲良く外壁で釣りしてるって、街の娘たちの評判だぜ?」


 ……むーん、イケメン虫なのも結構問題なのかもしれない。

どこへ行っても注目されている……前世のアイドルさんたちもこんな気持ちだったんかな。

でもまあ、嫌われるよりかはいいか。


「西の門の近くに【サカグチキヨシ】って釣具屋がある。この先も旅しながら釣りをするんなら、覗いてみな」


「ヘ、ヘェ~? 珍シイ名前デスネ! 是非行ッテミマスヨ」


 あっぶな。

危うく叫ぶところだった。

何その名前、ドラッグストアかなにか?

明らかに日本人名じゃん!


「古い歴史のある名前らしいぜ? もう10代ばかり続いてる老舗さ。釣り好きなら一度見に行ってみな」


 ……どうやら、かなり昔にこっちへ来た同郷の人がいたみたいだね。


『ふむ、そのようですね。トルゴーンで営業できているのですから、変な方ではないでしょう』


 あれ、トモさん知らないの?


『転生者は無数にいます。データベースには登録してあるでしょうが……中々、検索するのも大変なのですよ』


 ほーん、まあいいか。

じゃあじゃあ、その釣具屋さんに行ってみるかな!

転生者はともかく、釣りは大好きなので!!

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― 新着の感想 ―
お気楽虫!さん気をつけて。油断は〜?禁物!後、天運ありますから。あなたの周りはゴッデスだらけ!愛子さん認定。釣り具イベントはいりますぅ。
おかえり毎日むっくん! 釣具アップグレードイベントキタ━(゜∀゜)━!
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