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第68話 元気になった江戸っ子さん……江戸っ子?

「なんだなんだ、私が飛び回っている間に随分面白いことがあったんだナ」


「面白クハナイデショ」


 アルデアめ……どこら辺に面白ポイントがあるのさ。


 ロドリンド商会のお2人が帰ってしばらくすると、お空から中庭にアルデアが帰ってきた。

お外で一泊するなんて随分遠くまで行ったんだな……って思ってたら、『とても高くて景色のいい木があったのナ。昼寝していて気付いたら夜になっていたのナ』だそうです。

マイペースそらんちゅ……


「『赤錆』に誘われるなんてムークも中々のものなのナ」


「リップサービスデショ。ソレニボク、集団行軍トカヤッタコトナイカラ無理無理カタツムリヨ」


「カタツ……ムリ? なんの魔物ナ?」


 アロンゾさんもいた『赤錆』ってむっちゃ大規模な傭兵団なんだねえ。

てっきり獣人さんばっかりいるもんだと思ってたよ。

そりゃ、ラーガリにトルゴーン、それに帝国まで手を広げられるワケですね~。

もうちょっとした国くらいの武力があるんじゃないの?


「ムークは上昇志向というものがないのナ?」


「偉クナッテモ忙シクナッテ自由ガナサソウダカラネエ」


「んゆ……んみゅ……」


 お手玉で活躍して疲れて寝ているアカを撫でる。

ピーちゃんはいないから、またお店で看板インコしてんのかな。


「アルデアハ、オ昼寝デキナイクライ偉クナリタイノ?」


「む、ムムム……確かにだナ!それは嫌だナ!」


 ピーちゃんの次くらいに寝ているアルデアとしては、やっぱり死活問題みたい。


「ナニゴトモ程々ガ大事、大事」


「やっぱりムークはボケボケだけどたまに深いことを言うのナ……」


 ボケボケとは何さ!?


『優しいですねアルデアさんは。ボケボケボケボケくらいでしょうに』


『略してボケ4ってやーつ』


 女神様が!女神様がいじめる~!



・・☆・・



「けぷり、おにゃか、いっぱい」『美味しすぎてビーチバレーボールになる所だったわ……』


 まあ、色々あったけど昼食終了。

妖精2人がお腹をぽんぽこにさせているのも納得の、美味しいご飯でした!

まさか異世界で生春巻きを食べられるなんて……この店の名物でもある中華風卵スープもとってもおいしい!


「ムークさんにはピーちゃんだけじゃなくって馴染みの業者まで助けてもらったからね、おかわりいるかい?」


「オ腹ガ爆発スルノデ結構デス。モウ十分美味シクイタダキマシタ」


 とっても美味しいけど、ボクのお腹は多次元ポケットじゃないので。


「ムーク様の雄姿ば、目に焼き付いておりやんす! だども、ワダスがお供できながったことが無念でやんす……」


 お昼からもお店の手伝いをするのでポンポコ形態になっていないロロンがちょっと悲しそう。

おっと、これはフォローしとかんと。


「ハッハッハ、コレカラモットモット冒険スルンダカラサ。ロロンニ助ケテモラウコトモキット多イヨ」


 この子がいつまでついてきてくれるかはわかんないけど、ボクは最近それについて考えるのをやめた!

ボクとしてはロロンがいることに対して助かってることばっかりだし!

彼女の愛想が尽きるまでというか……飽きるまで一緒にいてもらおうかなって。

だからボクは、立派な親分を目指すんだ!


「じゃじゃじゃ!? そ、そうでやんす!ワダスも戦働きば、もっともっとするのす~!!」


「皿を持ちすぎなのナ。倒れるのナ」


 お腹ぽんぽこそらんちゅのアルデアがちょっと心配する程の皿を持ったロロンは、小走りで厨房へと消えていった。

うん、まあ……元気でいいね!いいね!


「ふふふ、アタシの教育が活きているようだね。やるじゃないのさムークちゃん」


 カマラさんがお茶を飲みながら嬉しそう。


「ロロンちゃんは客にも弟子共にも評判がいいから、50年ばかり働いてもらってもいいかなって思ってたけどね……ありゃあ駄目だ。あの子に料理人は向いてないねえ、根っからの冒険者気質さ」


 ルフトさんが苦笑いしている。

やめてください!これだから長命種は気が長すぎて困りものじゃよ!!

50年なんて……ボクの寿命何回分ですか!!


『むっくんの寿命はこの前に城門激突で少し減ったので1年と11か月ですから……』


 計算しなくてもいい!いい~!!


「さて、昼からはアタシも見舞いに行くから……店は弟子共に任せるかい」


 ルフトさん、それってまさか……


「ア、ヒョットシテ昨日ノ虫人サンデスカ? モシイイナラボクモ行キタインデスケド……」


 峠は越えたみたいだし、今日ならマント回収してもいいかも!

五右衛門風呂の布でもいいけど、ちょっとゴワゴワするんだよね。


「おやまあ、律儀な冒険者だこと。ひょっとしてあの子に一目ぼれかい?」


「じゃじゃじゃァ!?!?」


 テーブルを拭こうと戻ってきたロロンがヘッドスライング!?

高校球児くらい滑ってる!!



・・☆・・



「おやびん、いいにおいしゅる、しゅる~」


「ソウダネエ、オ香カナア、コレ」


 お仏壇とかで匂ってきそうな感じ!

例によってお仏壇の記憶はなァい!


「珍しいのかい?トルゴーンの療法院じゃ当たり前だけどね」


 先に行くルフトさんが、荷物を持って振り向いた。

どうやら、異世界でもお見舞いには果物の詰め合わせがベストらしい。


「気分を落ち着かせる効能があんのさ。今日はちいと匂いが濃いね……空気が湿ってんのかね」


 すんすん、と鼻を鳴らすルフトさん。

へえ、そんな効果があるのか~。


 というわけで、やってきました昨日ぶりの療法院。

ルフトさん、ボク、それにアカ。

ピーちゃんは日向で転がりながら寝ていたのでお留守番だ。

カマラさんはお仕事、アルデアはまた飛んで行っちゃった。


「これはルフト様、ようこそいらっしゃいました」


 綺麗な門をくぐった先には、白塗りの建物。

その前には、白衣を着た門番っぽい虫人さんが1人。

雰囲気はとっても柔らかいけど……ヴァーティガぐらいあるクソデカ棍棒持ってる……!

無茶苦茶攻撃力が高そう!


 ふむ、建物は赤十字のマークを付ければ完全に前世の病院なんだけど……なんか、十字架にオプションを追加しました~みたいなマークが付いてるなあ。


『癒しと安寧の女神、クトレパスカ様の紋章ですね。いつも穏やかでお優しい方ですよ』


 ……近所のお姉さん感覚で紹介された!


『パスっちね!昨日会ったわ~、相変わらずボインボイン! 男神どもが目の色変えるのも頷けるね~!』


 ……ノーコメント!

でもなんか、そういう女神様って豊満なイメージは確かにある!


『私も中々のものですがあの子には負けますね……』


 たしかに、ヴェルママの女神像もスタイル抜群だったもんね。


『信者経由で女神像の乳尻太腿を盛る神託出しとこっかな~。むっくんを悩殺しないとだし』


 なんという神託の無駄遣い……悩殺はともかく、シャフさんはとってもいい女神様だから心配ないでしょ。

そんなことしなくてもきっと綺麗だよ。


『おーおー、ノーモーションでヨイショ虫しよるわ、ガハハ!』


『腕を上げましたね、むっくん……末恐ろしいですよ私は』


 ノーコメントでーす。


「ロドリンドのヤタコの見舞いでね。どうだい容体は?」


「ああ、彼女でしたら落ち着いておりますよ……おや、貴方はムーク様ですか?」


 白衣を着たダンゴムシっぽいムキムキさんが、ボクの方を見る。


「アッハイ、ボクモオ見舞イニ……」


「それはそれは、よいことです。お預かりしている外套も丁度乾いたころでございます。病室に届けさせましょう」


 洗濯までしてくれたんか!?

ゴブリンと狼のアレコレが付着してたのに……悪いなあ。


「アカも!アカも~!」


「おやおや、昨日はお疲れ様でございました。貴方のお陰で我々もいち早く動くことができましたよ」


「んへへ、えへへ」


 でっかいお手々で撫でられて、アカはどことなくドヤ顔だ。


「それでは、どうぞ中へ。突き当りを右に行けば彼女の病室ですよ」


「あいよ、ありがとうねヨーシュ坊主。しっかり働きなよ」


 ぼ、ボウズ……


「いい加減坊主は勘弁してくださいませぬか……」


「はっはっは、諦めな。アタシはアンタのひい爺さんのオシメだってかえてやったんだからね、はっはっは!」


 長命種が身近にいるのって、結構大変かもしれない。

そんな風に思いながら、ボクはルフトさんを追いかけた。



・・☆・・



「ヤタコ嬢ちゃん、具合はどうさね?」


「こ、こりゃあルフトの姉御!? あっしみてえな下っ端の為にわざわざご足労を……」


「その様子じゃ元気そうだねえ。2、3日もすりゃあ元通りになるだろうよ」


 先に部屋に入ったルフトさんと……なんか、特徴的な口調が聞こえてきた。

なんかイメージと違う……あの人、ラクサコさんみたいな種族だから勝手に京都弁だと思い込んでた……

完全に異世界江戸っ子じゃないか。

声はとっても綺麗だけどさ。


「ムークさん、入っても大丈夫だよ」


「は? ムーク? そちらのご縁者の方で?」


 おっと、お許しが出たね。

着替え中とかだとアレなので、先に入ってもらったんだよ。

さてさて、引き戸をガラガラ~。


「アンタの命の恩人さ。ウチに逗留してもらっててね」


「そ、そそそそれって、まさか……!!」


「――ドウモ、オジャマシマス」「おじゃましま~!しま~!」


 アカと一緒にお部屋に入る。

昨日ボクが入院してた部屋よりもなんというか……魔法陣が多い!

なんか効果があるんかな?


 ともかくそこには……苦笑いしているルフトさんと。

ベッドの上で毛布の化け物と化している人がいた。

……なんでぇ?


「エエト……」


「はっはっは! なんだい照れちまって……ムークさんはいい男だから仕方ないけどねぇ、はっはっは!」


 毛布の山を不思議そうに眺めて首を傾げるアカと一緒に、とりあえずボクも首を傾げたのだった。

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― 新着の感想 ―
ルフトさん。長生きだから大事な人との別れも何度も経験したのでしょうなぁ。よく歪まないで朗らかで優しいんでしょう。素晴らしい。勝手にポイント付与しまぁす。特典ないけど。
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