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第59話 アスノ飯店は大繁盛!

「たらいま、たらいま~!」


『戻ったわ!戻ったわ~!!』


「おや、お帰りピーちゃん。ムークさんたちも」


 良い時間なので釣りを一旦切り上げて、ボクらはアスノ飯店に帰還した。

表玄関ではなく、裏口からね。

そこには、なんかの野菜をザックンザックン刻んでいるルフトさんがいた。

下っ端みたいな仕事してる……他にも見習いみたいな人もいるし。

なんでも自分でやりたいタイプの人とか?


「おやびん、あれ、あれぇ!」


「ハイハイ、ドッコイセ」


 アカの声にバッグへ手を入れ、下半身がクラゲの謎魚こと【ユラギウオ】を出す。


「おやまあ!いいユラギウオじゃないのさ」


 やっぱり高級魚なんだこれ……他のサカナと違って買い取り額も桁が大分違ったし。

あ、これ以外のお魚はすべてギルドに売却しました。

しめて500ガルとちょっとになったよ。

金銭感覚がマヒしつつあるけど、これでも中々の儲けだ。

……現状、宝石とか金の延べ棒とか入ってるしね!バッグ!


 しかし、ユラギウオくんの買取価格が1匹で500ガルか……

これ1匹で狼くんの稼ぎを超えるのか……なんか、違和感!


「アカ、つった、つったぁ!」


『見事な1本釣りだったわ! ルーちゃん、コレでお昼ご飯ってできるかしら!?』


 ルフトさんが目元をほころばせる。


「勿論さ! トルゴーンで一番美味い魚料理をこしらえてやるよ!」


「わはーい!」『今から楽しみだわ!楽しみだわ~!』


 アカはボクの目の前で謎ダンスを踊り、ピーちゃんは肩の上でズンドコ縦揺れ。

妖精ってのはいつでもどこでも賑やかでかわいいねえ。


「総料理長、でしたら自分が――」


「やなこった、婆の楽しみを奪うんじゃないよ!」


「はっはい!!」


 鉢巻をしめた亀っぽいお兄さんが調理役に立候補してすぐに辞退した。

ルフトさん、凄い迫力だ……


「さあて、そいじゃあどうしようかねえ……」


 ボクから受けったユラギウオを見つつ、ルフトさんは包丁を取り出すのだった。



・・☆・・ 



「はいお待ち! ユラギウオの蒸しと……サシミさ!」


「サシミ!?アノ伝説ノ……!!」


 しばらくお家で待っていると、ルフトさんが大きなお盆を持ってやってきた!

その上には……ワオ!もう匂いが美味しそう!

そして刺身!刺身だって!?


「ムークさんは博識だねえ、サシミを知ってるなんて」


 あ、や、やば……ええっと、ええっと……そうだ!


「エルフサンニ教エテモライマシタ。トッテモオイシイッテ!」


「成程ねえ、エルフ連中は食道楽が多いからね。アタシはサチ姉さんに教わったんだ」


 困った時の!エルフ!


「サシミが何かは知らないが、美味そうなのナ!」


 なんか昼時まで眠っていたっぽいアルデアが目を輝かせている。

寝ぐせすごいですね。


「アカちゃんが釣ったんだって?ありがとうよ」


「んへへぇ、えへへぇ」


 カマラさんに撫でられてアカはご満悦だ。


「じゃじゃじゃ……初めて見る料理なのす!」


 調理場からそのまま来たロロンも目をキラキラさせている。

エプロンが似合うねえ、かわいいねえ。


「さて……ユラギウオの上半分は上品な白身だからね、こっちは蒸して柔らかくして、野菜とソースを添えたよ。それで……下半分は内臓を取って、少し熱湯をかけてそのままさ! 小皿のソースで食べとくれ!」


 あっ……クラゲ部分が生なんですね。

蒸した方は綺麗な白身に黒いソースが美味しそうだなあ。

添えてあるのは豆苗っぽい!あとニンニクのいい匂いがする~!


「……な、生と言ったナ?」「じゃじゃじゃ!?」


 アルデアとロロンがドン引きしてる!

ま、まあね……生で食べるのって抵抗あるもんね。


「普通は海の魚しか生で食っちゃいけないんだけどね、腹を壊すからさ。だけどユラギウオの下半分だけは大丈夫なのさ!」


 へえ、クラゲ部分には寄生虫とかいないんだ。


「話にゃあ聞いたことがあるけど、こいつがサシミってやつかい。【ロストラッド】じゃあみんな好きだったけどさ」


 山田さんの国!

さすがだあ……


「ムークは大丈夫なのナ?生なのナ?」


「森時代ニ、何モ食ベルモノガナクッテ毒走リ茸ヲソノママ食ベタボクニ! コワイモノナドナイヨ!!」


「お、お前は勇者だナ……!」


 アルデアが謎の尊敬をしている気がする!


「おやまあ、ムークさんも苦労したんだねえ……」


 ルフトさんが痛ましそうなお顔をしている!

もう慣れたので!今が最高なので!!


「サテ……イタダキマス!」


 おフィギュアたちにお祈りして箸を取り……まずはクラゲの方!

白くて透明で、なんかイカの刺身っぽい!

箸で掴んで、小皿の黒いソースを付けて……ぱくり。


 ――こりこり、ぷちん。


「ウッマ!ウマ!ウマーイ!!」


 キクラゲみたいな楽しい歯ざわりがして、噛み切った後にはほのかに甘い味!

そしてなにより……このソース!

お醤油だ!お醤油じゃないかコレ!!


「ふみゅ、こりこり、おいし!おいし!」


『懐かしいお醤油の味だわ~! クラゲもイカみたいでとっても美味しいわ~!!』


 妖精2人にはとっても好評だ!


「ああ、うん……成程、こいつは乙なもんだ。この黒いソースも懐かしいね……ロストラッドのヤマダ王が血眼になって作り上げたって噂のやつかい」


 カマラさんも問題ないらしい。

山田さんの所で食べたんだろうか。

しかし凄いねえ、醤油作っちゃうなんて。

ボクは大豆を腐らせる?ことしかわかんないや。


『それは納豆では?』


 ……そうかな……そうかも……?


「は、はむ……むむむ、んぐぐ……ム! う、うめめなっす!」


「嘘じゃないのナ? ええい、女は度胸ナ! ……んぐ、む……ムムム!」


 よかった、ロロンもアルデアも美味しく食べられているようだ。

衛生環境的に、生で食べるなんてボクじゃなきゃ難しいもんね。

冷凍庫とかもまだ一般的じゃないだろうし……


『はい、ムロシャフト様。こちら炙りサーモンになります』


『はーうっま!なにこれうっま!? さっちゃんの時代にはなかったスシネタうっま!!』


『ウナギとはこんなに美味しいものだったのですね……女神トモ!次はカンピョウ巻きをください!』


『へいお待ち、です』


 脳内で!脳内で寿司屋が開店してる!

いいな!いいな~!!



・・☆・・



「んだば、ワダスは店に戻りやんす!」

 

 お腹をぽんぽこに……していない!ロロンがエプロンを締め直して立ち上がった。


「ロロンちゃんは頑張ってるねえ、旅の途中じゃなきゃウチで50年くらい働いてほしいもんだよ」


「じゃじゃじゃ、ありがてえけどそれは長すぎでやんす~!」


 やっぱり寿命の長い人はこれだから……!


 最高のお魚料理を堪能して、休憩中。

あ、蒸した方も無茶苦茶美味しかったよ。

ニンニクと焦がしたネギっぽいのがよくあっててね……


『このままじゃペンギンになっちゃうわ……なっちゃうわ……』


「んにゃむ、すう、すう……」


 刺身と一緒に白米をモリモリ食べた結果、真円に近くなったピーちゃんが窓際に転がっている。

お腹ぽんぽこのアカも一緒だ。


「さて、また街に出るかねえ。ムークちゃんも遊んでおいでな、この街は阿漕な人はいないからアタシ1人で十分さね」


 遊びか……どうしよ。

まあ、釣りに行くんですけどね!釣りに!!


「釣りなら私も行くのナ」


 えっ、つまんなそうにしてたんじゃ……


「湖を見ながら寝たり飛んだりするのナ。ここの料理は最高だけど動かないと飛べなくなるのナ」


 なるほどねえ。

そいじゃ、そうしようか。


『ピーちゃん、アカをよろしく』


『任せておいてほしいわ……お夕飯まで一緒に寝てるわ……』


 それは任せるって言うのだろうか。

ま、まあいいや。

このお家は安全だしね。

では、朝とは違うポイントに出発じゃ~い!



・・☆・・



 到着したのは、朝とは逆方向の外壁。

ボクと同じように、のんびり釣りをしている人たちがちょいちょいいる。


 さーて、釣るぞ釣るぞ~。


「私の竿は任せるのナ~」


 そう言って、アルデアがばさりと飛び立った。

それってボクが竿2本使って釣りするだけじゃんよ?

まあいいけどさ。


 餌をちょちょいっとな……よし!

さてさて、どこら辺がいいポイントなのかな~?

わかんないから適当にやろう!やろう!


「待ツ時間モマタ最高……」


 仕掛けを投げ込み、ベンチに座って待つ。

炭酸水も作り始めたし、ゆっくりやろうね~。


「――失礼、貴方はムーク殿ではありませんか?」


 ……ほぇ?

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お魚クラゲおいし、おいし!アカさんカワイイ。ぴーちゃんはペンギンさんになるんですね。クラスチェンジ?ロロンさんは相変わらず働き者。良き嫁に。アルデアさんカマラさん、ムッくんに引っ付いてたら普段の食生活…
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