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第49話 異世界歌い手さん。

「ムークデス」


「コイツはご丁寧に……俺はサグンだよ、よろしくねムークさん」


 青肌さんたちがキャッキャしている空間を見ながら、自己紹介。

屋根に乗っていた護衛の方々は、思い思いの場所で休憩したりクロスボウの整備をしてたりする。

ちなみに彼らは獣人さんでした。

この集団、とっても多種多様!


「おおっと、もう一つ失礼した」


 御者……サグンさんはフードを取ってボクに頭を下げた。

その顔は……ワニ!ワニさんだ!牙が凄い!

おー!ラーガリで見かけたことのある種族さんだ!

ええっと、たしかリザードマンって言うんだっけ?


『ストップむっくん!ヘイト!ヘイト呼称ですそれは!』


 マージで!?


『リザードマンというのは湿地帯に住む二足歩行の魔物のことです!彼らは【鱗人】です!』


 うろこびと?

ふむん……たぶんコボルトと獣人さんくらい違うんだろうね。

いやあ……トモさんがいてくれてよかった。

期せずして戦争を回避できたよ。 

ありがとう!愛してるゥ!


『フフン、崇め奉りなさい』


 ははーっ!


『虫よ、私も崇めてもいいのですよ?』


 へへーっ!ママ大好き!


『ふふふ!うふふふ!おほほほ!!』


『何張り合ってんスかもう……いい笑顔しちゃってぇ……』


 しかし、鱗人さんね。

色んな種族がいるんだなあ、この異世界。


「ああなったらみんな長いよ……しかし、あの子はよく働くねえ」


「自慢ノ子分デス」


 どっこらせ、と椅子に腰かけるサグンさん。

その視線の先には、大鍋でお昼ご飯を作っているロロンの姿がある。

アルデアは焚火の熱をイイ感じに受けられる位置で、敷物を敷いてお昼寝モードです。

マイペースすぎる……


「【アルマードの嫁さんは竜を殴ってでも探せ】って言うしね」


「ヘェ~……ソンナコトワザガ」


 日本にも似たようなコトワザがあったような……ええっと、なんだっけ。

忘れちゃった。


「ふう……アンタもやるかい?」


「ア、結構デス」


 パイプをふかし始めたサガンさんに、そう断る。

まだ煙草は早いんじゃないかな、ボク。

生後1年未満虫ですし。


 かわりに……バッグから炭酸水メーカーを出してっと。

ふふふ、水は夜の間に作っておいたのだよ。

さて、今日は何味にしよっかな。

このリンゴみたいなやーつにしよっかな。


「おや珍しい、炭酸がお好きなんだね」


「モウ中毒デス、ハハハ」


 キャッキャと賑やかな女性陣を尻目に、男性陣?は落ち着いたもんだった。


「グロロロロ……」


 ごめんね!キミは女の子だったね!ごめんね!!



・・☆・・



「アタシ、リリィよぉ」


「ムークデス、ヨロシク」


 ロロンお手製の美味しいシチューと柔らかいパンの昼食を終えて、休憩中。

青肌のお姉さんたちは街道脇の広場で休んでいる。

あのバスみたいなの、しっかり椅子も付いてて快適そうだけど……やっぱり体は硬くなるみたいね。

無茶苦茶ストレッチしてるもん、みんな。


 サガンさんは鋼竜の背中の上で寝ている。

ポカポカで暖かそう……やっぱり鱗の人って変温動物?恒温動物?なんじゃろか。


 そんなお姉さんの中で、最初に窓から顔を出した人がボクの所に寄ってきた。

ふむふむ……肌は青いけど綺麗なお姉さんだな~!


「そんなに妖精が懐いてるヒト、初めて見たわぁ。ムークさんってとってもいいヒトなのねえ」


「イヤイヤ、ソレホドデモ……」


 ロロンに教えてもらった異世界コトワザに【妖精はよき人の膝で眠る】っていうのがある。

それもあって、妖精に懐かれているボクは基本的に初手で善人認定されるらしい。


「うにゃむ……えへぇ、おやびぃん……」『冷やし中華を始めて欲しいわ……欲しいわ……』


 ウチのアカはマントの内ポッケでピーちゃんと眠ってるけどね!

ボクも始めて欲しい!


「うふふぅ、かわいい~」


 リリィさんは眠るアカを見て目を細めている。

ほんっとに妖精がお好きなんだねえ。


『随分前に言ったと思いますが、マデラインを統治しているのはエルフのような長命種です。彼らは妖精に近い生き物なので、国を挙げて妖精を大事にしているのです』


 そういえばそんな話を聞いた気がす……ハッ!?

ひょ、ひょっとしてこの人も無理やり保護するタイプのヒトォ!?


『安心しなさい。彼らの考え方は【あるがままに】というものです……妖精は妖精らしく、野に生きている状態こそが最も好ましいというものですね』


 ……ホッ。


『邪な目的で誘拐や監禁などをしていると、普通に全力で皆殺しにされるでしょうが』


 ヒィイーッ!?

過激!過激うみんちゅ!!


 まあね!それだけはしてないって胸を張って言えるけどね!

むしろそんな奴がいたらボクとヴァーティガの出番でもありますよ!ドヤァ!!


『なんと雄々しき虫か……!ふふふ!ふふふふ!』


 今日のママってばテンション高いねえ。

若々しくて可愛らしいねえ。


『あべしっ!? むっくん、あんま褒めんなし!さっきからむしんちゅ流れ弾アームがガンガン飛んで来るんよ!!』


 それはごめんなさいシャフさん!ごめんなさい!!

ママってば喜び過ぎ!!


『(現在進行形で私の部屋の家具が粉々になっています。まあ、後で2段階ほど上のグレードのものになるはずですのでもう慣れましたが)』


 ボクの人生も結構キツいけど、トモさんの日常も大変だねぇ……

そしてママの部下?さんもなんか苦労してそう……


『まあ、我々はキツネウドンでも啜りましょう』


『なんそれ!?その茶色むっちゃおいしそ!』


『なんと美しいスープか……』


 でもトモさん、強い!

流石はボクの女神様だ!


「ねぇねぇ、ムークさんたちは何処まで行くのォ?」


 おおっと、現実?の会話を無視しちゃいけないね。


「護衛ノオ仕事ナンデ【ルアンキ】経由デ【ジェストマ】マデ行キマス。ソノ後ハ首都ニ」


「あらぁ、大移動ねえ。アタシらに比べたら短いけど」


 この世界、魔物的な意味で遠出するのって敷居高いもんね。

いつぞやのクソつよ老人獣人さんたちなら楽勝だろうけど。


「ソッチハ?」


「トルゴーンの南端街道に沿って巡業しながらマデラインに帰るわぁ。これからの時期は丁度避暑の旅行客が増えるから、とおっても実入りがいいのぉ♪」


 ぱちり、とウインクするリリィさん。

やっぱり楽団さんなんだ。


『ゾルゾル……補足説明です。この方々は歌がとってもお上手な種族ですので、楽団や吟遊詩人として活躍されることが多いのですよ』


 ほへぇ、なるほど。

それでカマラさんも気付いたんだねえ……あれ?

窓が曇ってて中が見えなかったよね……じゃあ、どこでわかったんだろ。

むーん、謎は深まるばかりですなあ。


「巡業ッテ……歌ノ、デスカ?」


「そうよぉ、歌と踊りと楽器! 結構有名だけど、あなた知らないのォ?」


「ボク、今マデズット森ノ中デ暮ラシテテ……旅ニ出タノッテ初メテナンデス」


 我ながら便利な設定ですこと!

これ言っておけばだいたい誤魔化せるからね!

真実なんですけどもね!!


「あらぁ……そうなのぉ? ごめんなさいねぇ」


 そんな申し訳なさそうな顔しなくってもいいのにぃ。


「イエイエ、ナニモ。コノ子トモ森デ会エマシタカラ」


 眠るアカをそっと撫でる。


「ふふふぅ……んふふぅ……」


 あーもう、三千世界に響き渡るくらいかーわいい!


「ほんと、良く懐いてるわぁ……最初に見た時は信じられなかったものぉ、ヒトと一緒に旅する妖精なんて、おとぎ話みたいなものよぉ」


 まあ、まず妖精自体が珍しいからねえ。

なんか、滅多に人に見つかんないらしいし。

ピーちゃんはともかく、アカは妖精というか虫というか……出発点が違うし。


「ねぇねぇ、それじゃあ……今までに私達の歌を聞いたことがないのねぇ?」


「アッハイ。トッテモオ上手ダッテ話ハ聞イタコトガアリマスケドモ」


 そう言うと、リリィさんはにっこり笑って少し距離を取った。

そして……手を胸の前で組んで目を閉じて、歌い始めたんだ。


「お眠りよ お眠りよ 愛しきあなた」


 フ……フワーッ!?

な、なんて綺麗な声!?

すっご……歌声はそんなに大きくないのに、体にバシバシ何かがぶつかってくるみたい!?


「明日がよき日でありますように とこしえによき日でありますように」


 魔力……そうか、魔力だ!

この人、歌に魔力が混じってるんだ!?


「何時の日か 何時の日か その瞼がとこしえに閉じるまで」


 な……んだろ、これ。

もっと、もっと聞いていたいけど……

ひどく……ひどくこう……


「あなたの日々が きっとよき日でありますように」


 眠いんじゃよ……じゃよォ……


『これは幼児向けの子守歌ですか。精神に安定をもたらすような効果があるようで――』


 トモさんペディア……たす、かる……

スヤァ……



・・☆・・



「おいおい、ムークさん寝ちまったよ。旅続きで疲れてたのかねえ?」


「きっとそうねぇ、だってこれ……とっても小さい子向けの子守歌だものぉ」

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― 新着の感想 ―
ケツネウドン食べたい。重要なのは、関西風か関東風かだ! 両方食べたい! ムッくんは状態変化に弱いかも? 後、酒呑ますんやームッくんに酒やー! 楽団しょうぶやー!
年齢的には乳幼児レベルだからしかた無いね!
むっくんボディは赤ちゃんですからねぇ(・∀・`) ゆっくりお休みー
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