第28話 さようなら!未来の冒険者くん!
「此度は誠にお世話になり申した!」
「なんだい、気にしなさんな。きちんとタリスマンの代金も回収してんだからねえ、ただの商売さね」
村の入口で、ジューゾさんたちに見送られている。
ザリガニ……否カニモドキパーティーの翌日、ボクらは旅を再開することになった。
その他の見送りは……
「おじちゃん、ありがと!ほんとに!」
「イイノイイノ」
ジローベくんとその父親、ジュニチさん。
それにシーロくん兄妹だ。
村長さんもいるよ。
「そんちょさ、どーじょ、どーじょ~!」
「おやまあ、妖精のタリスマンかい。まいったね……とんでもない品だよ、ありがとうね」
『羽は無限に生えてくるから大丈夫!大丈夫よ!』
アカたちはここでも可愛がられてたからねえ。
野菜もらったり、果物もらったり。
みんな妖精見ると餌付けするんだもん。
今回は行方不明の子供救出の件もあったから余計にね。
なので、いつものように妖精印のタリスマンをプレゼントしている。
ちなみに本体はボクが作ったなんちゃって将棋盤です。
表には『楽園』と掘りました。
いつまでもいい村でいるようにね!
「おじちゃん、おじちゃん」
「ハイハイ、ナンデショ」
ジローベくん、そんなに跳ねてどうしたの?
「おれね、おおきくなったおじちゃんみたいなぼうけんしゃになるよ!きっとなる!」
「ソッカァ……」
結構危険な仕事なのにな……と、思ってお父さんの方を見ると『流石は我が息子よ……』的な雰囲気で頷いている。
いいんだ……
「ソレジャアネ、一ツアドバイス。自分ト周リノ人ヲ大事ニスルンダヨ、ソレガ一番大事ナンダヨ」
「うん!わかった!!」
目をキラキラさせるジローベくんを撫でる。
この子が大きくなるまでざっと10年以上かあ……しっかり増やそう、寿命を。
「おれも!おれもなる!」
ほほう、シーロくんもか。
男の子って感じだね~。
「わたしは、ロロンお姉ちゃんみたいに美味しいお料理を作りたい!」
「じゃじゃじゃ!? そ、それは……なんとはあ、嬉しあんす!」
ほほほう、この村の将来は安泰ですなあ。
凄腕料理人が増えるっぽいし。
「おや残念、私に憧れる子はいなかったナ」
「おれたちはねはえてないし……」
「納得ナ」
意外と現実的な子供たちである。
「ムーク殿たちは首都に向かうと聞きもうした。その際には是非我が家にお立ち寄り下され、歓迎いたしますぞ」
「エエエ、悪イデスヨ……」
「はっはっは、もう文は送ってしまいもうした! 是非とも、是非とも!」
強引!
首都で寄るお家が増えていく~!
ええっと、ゲニーチロさんと、ラクサコさんと、それからジューゾさんっと。
ボクも覚えておくけどトモさんもお願いしますよ~!
『女神をメモ用紙扱いとは、やりますね……』
そんなんじゃないから!ないから~!!
「またきてね!またね~!!」
「ハーイ!元気デネ~!!」
ジローベくんたちに見送られて……ボクらは出発した!
さあ、頑張って歩くぞ~!
・・☆・・
「みち、みーち!きれー、きれぇ」
「綺麗ダネェ、整備サレテルネエ」
さすがは『首都街道』
きっちり道が整備されている。
歩きやすい事この上ないし、視界の端には必ず川がある!
最高の道でしょ、ここ……
「おやびん、あったか、あったか~!」
『ポカポカよ……最高のベッドよ……』
アカとピーちゃんはマントの首元に2人して潜り込んでいる。
ピーちゃんほんっとよく寝るねえ。
気分で眠るって設定はどこ行ったのさ。
もう溶けるくらい寛いでるし。
『1人でいる時は気を配ってシンケーシツになってたわ……だから今はいつでもどこでも寝れて天国よ……天国よ……』
あっ……そっか、そっかそっか。
なんて悲しい話……!
「ウウウ……ピーチャン!1日ノ8割方寝テテモイイカラネ!イイカラネ!!」
『ムークさんは優しいのね……でもそんなに寝てたら溶けちゃうわ……溶けちゃうわ……』
でもピーちゃんはすぐさま熟睡の体勢に入った。
うんうん、好きなだけ眠るがいいさ!
「とても魅力的な提案なのナ。私も将来はそうなりたいのナ」
人だと寝たきりってジャンルになるんですけど、それ……この人も本当に自由人だねえ。
「年寄り臭い事言いたかないけどね、流石に早すぎるよアルデアちゃん。あと50年は頑張りな」
「干からびるのナ……」
そんな大げさな……む。
「ドシタノ、ロロン?」
横を歩くロロンがニコニコしている。
「じゃじゃじゃ……大所帯になりやんした!毎日賑やかで楽しいのす! まるで里ば戻ったような心持ちなのす~!」
そう言えばこの子は大家族出身だった。
寂しかったのかな、今まで。
「ウン、楽シイネエ。トッテモ楽シイ」
「ほわわわ」
撫でちゃろ、撫でちゃろ~。
「イツデモオンブシタゲルカラネ、遠慮シナイデ言ッテネ!」
ロロンのお兄さん枠くらいにはなりたいねえ!とっても!
「はへぇ!?」
あれ、なんか間違ったかな。
『はああああああああああああああああああああああああああああああああ……』
『はあああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!』
なんですかこのサラウンドクソデカ溜息は!?
シャフさん!?シャフさんもいるの!?
・・☆・・
そうして歩いて、歩いて、歩き続けて……夕方くらいに道端の休憩所についた。
うーん、魔物の襲撃がないのでとっても健康的な1日でした!
「この先にちょいとした街があって、その次が【ルアンキ】さ。まあ20日くらいで到着するだろうねえ」
遠い!とっても遠い!
でも、基本的に歩きだから致し方なし!
「私が龍くらい大きかったら全員運ぶのにナ。それなら2日で着くナ」
龍……テオファール元気にしてるかな。
トルゴーンの北で異変ががが!とか言ってたけど大丈夫なんじゃろか。
今度ヴェルママに聞いてみようかな。
「さーて、夕餉の準備ばするのす!村でどっさり野菜もいただきやんした、腕を振るうでがんす~!」
ワーイ!やったね!
アカとピーちゃんのお陰だ、お陰!
「今日は何さね?」
「村で新鮮なポモッドばいただいたのす!これと刻んだ肉とマルモでごろっごろのスープば作りやんす!」
おー!トマトスープ!
ロロンのアレ、パンが無限に食べれちゃいそうで素敵なんだよねえ!
今日の晩御飯も楽しみだ!
で、ボクの仕事はまず創水の魔法具を起動させて水を集めて……以上!
嘘でしょ!おやびんのお仕事がないですよ!?
あ、それなら……
「ムークちゃん、薪はもう十分以上あるからね。今はいらないよ」
「ハァイ……」
釘刺され虫、むっくんでございますよ……
しょうがない、散歩でもしてこよ。
「カニモドキもいらないからね」
「ハァイ……」
釣りまで封じられた!
やりおる……やりおるわカマラさん!
『わかりやすすぎるむっくんの負けですね、ええ』
重々承知でございますだよ……
ピーちゃんは……ベンチで寝てるアルデアの胸で寝てるし。
じゃあアカは……脱いだ僕のマントにくるまって寝てるし……寝つきがよくていいねぇ!みんな!
「オサンポシテキマス……」
「はいよ、知らない人について行っちゃ駄目だよ」
ボクは……ボクは幼児か……
とまあ、色々あったけど川沿いをお散歩虫。
夕暮れの空気が気持ちいいね~、とっても!
ほんと、綺麗な世界だ。
この世界もやがては地球みたいに発展して行くのかな?
そりゃあ、今のままじゃ不便なことも多いけど……それも善し悪しだよねえ。
あ、でも魔法とか色々あるからそんな感じにもならんかな?
『魔法で動くエンジンのようなものは研究されていますね。今の段階では費用対効果が悪いので、道楽扱いですが』
あ、そうなんだ。
それなら何時の日にか、空飛ぶ巨大魔導戦艦!とかができるのかもしんないね~?
『なぜ戦艦を空に浮かべるのか、理解に苦しみます。そこは飛行機では?』
浪漫ですよトモさん、浪漫。
……む、なんかムズムズする!
これって、ヴェルママが遠隔神託とかしてくる感覚……?
『――ご機嫌いかが?ムーク』
テオファール!テオファールじゃないか!