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第23話 お前らーッ!ボクの仇~!!



「――森が見えてきたのナ!」


「ハヤイ!」


 両肩を優しく掴まれて運ばれること、ほんのちょっと。

流石は空の民って名前なだけあって、速いこと速いこと。

ボクならアカの助けがあってもこんなに連続して飛べないや。


『きゃーっ!うじゃうじゃよ!うじゃうじゃいるわっ!?』


 ボクの隣を飛んでいるピーちゃんが悲鳴を上げた。

ウジャウジャ?いや別に……森と、草しか見えないけ……ど……!


「マサカ、アレッテ――!?」


 緑色の森の、手前。

一瞬黒い絨毯に見えたそれは……太陽光を反射して、ギラギラ光っている!

というか、モッサモサ動いてる!

トモさん、トモさーん!アレってさ!アレだよね!!



『どれですかという冗談は置いておいて――そうですね、懐かしの【地底蜘蛛】です』



 やっぱり!!

クソデカ森林の地下で酷い目に遭った、あの地底蜘蛛!

あの時に見た蜘蛛が、大小ビッシリひしめいている!


「地底蜘蛛ダ!」


「話には聞いたことがあるナ……しかしアレは深い森にしか生息していないハズなのナ」


 焦ったように呟き、アルデアが降下。


『ピーちゃん!人がどこにいるか探そう!このまま降りても駄目だ!』


『わかったわ!』


 いきなり降りても蜘蛛に群がられるだけだしね!

まずは行方不明の人たちを探さないと!


「ムウウン……」


『半径200メートル圏内に虫人はいませんね』


 懐かしのトモさんレーダー!

進化したお陰で範囲が増えたね!やった!


「アルデア!ココニハイナイ!」『いないわ!いないわ!もっと北の方だと思うわ!』


 ピーちゃんそんなに詳しくわかるの!?


「ああ、北の風が騒がしいナ! しっかり掴まっているんだナ!ムーク!!」


 ぐん、とアルデアが加速。

この子も格好いい事言っちゃってさァ!

うわわわ、風圧!風圧が~!!



 翼を翻したアルデアが北に向かって、少しした時。


「……ム」


 何か、聞こえた気がする。

なんだろう、今の……これって……


「子供ノ、泣キ声……?」


「本当ナ!? 私は聞こえないナ!」『私もよ!ムークさんは耳がいいのね!』


 びゅうびゅうと鳴る風の中で、確かに……聞こえたような……


 ――どくん、と何かが震えた。

この振動は……まさか、ヴァーティガから?


「ン……チョット、左、ソノママ、マッスグ!」


 なんか!なんとも説明できないけど……そんな気がする!


「わかった!飛ばすナ!」


 更にアルデアが加速。

風の音が大きくなる。


 なる、けど……わかる!なんとなく!この先!

誰かが、泣いてる気がする!

誰かが、助けを求めている気がする!


「……ソウカ、キミハ……子供ガ泣クノガ、大嫌イナンダネ」


 視線を下に落とすと、持っているヴァーティガがぎらりと光った気がした。

そっか、そっかそっか。


「気ガ合ウネェ、ボクモソウナノ!」


「何をぶつぶつ言ってるのナ!? 高い所が怖いのなら後で抱いてやるから我慢するのナ!」


『私もぎゅーってしてあげるから!頑張ってムークさん!』


 とんでもない誤解が!?

違うから!違うから~!!



・・☆・・



「――アレハ!?」


「見えた!誰か戦っているナ!」『おっきい蜘蛛がいっぱいいるわ!怖いわ!』


 上空から見ると、森がポッカリ口を開けているような場所が見えた。

大きな木を中心に、広場状になっている。


 そこには、まるで黒い絨毯みたいな地底蜘蛛の群れと――木の周りで円陣を組んで戦っている、騎士さん達が見えた!

よかった!生きてる!!


 騎士さん達が背にしている木の前には、怪我をした感じの村人さんたち。

そして、そのさらに後ろには……ぐったりと倒れている、小柄な影が1つ。

その影に覆いかぶさるようにしている、もう1つの小さな影!


「――アルデア!ボクヲ離シテ! キミハアノ子タチヲスグ村ニ――!!」


「英雄的だナ!ムーク!……わかったのナ!」


 肩の爪が、離れる。

ふわ、と一瞬無重力を感じて――補助翼展開!

ボクが目指すのは、蜘蛛包囲網の!一番外側!!

謎虫、吶喊しまあああああああああああああああす!! 


 衝撃波発射で加速!魔力を両足に循環!

狙いは――お前だ!いっぱいいる成体蜘蛛ォ!!


「――フォックス・トゥ!!」


 時間差をつけて、両足から棘を撃つ!


『ちなみにフォックス・ツーとは赤外線追跡式ミサイルを発射する際のNATO軍事用語であり、ミサイルを発射することそのものを差すのではありませんよ』


 そうなのォ!?

ウワ恥ずかし!ミサイル2本撃つことだって勘違いしてた!


 でも、ボクの棘はそんなことは関係なしに包囲網の外側にいたデッカイ地底蜘蛛にそれぞれ着弾!

胴体を抉りながら突き抜けて、大層グロい死体を2つ作った!

よし!よしよし!あの時は手も足も出なかったけど――僕の攻撃は!奴らに通じる!!


 補助翼の角度を調整!両足を斜めに!

多段式衝撃波加速で、一気に急降下!!


 狙いはたった今ボクを見上げている個体!

魔力が集中して……コイツ!蜘蛛の癖に口から糸を吐いたぞ!?そこはお尻からでしょ!?

ま、まあいいや――加速!

キラキラ輝く魔力糸をかいくぐって!さらに、さらに加速!!


「喰ラエ!異世界節足動物ゥウウウウウウウウウウウウウ!!」


 自由落下式!むっくん・キックゥ!!


「ギ――」


 ボクの両足が、地底蜘蛛の顔面を捉える。

その立派な牙を根元からへし折り、体液を撒き散らしながら……貫通!?うわ、意外と柔らかいッ!?


 頭を貫き、胴体に足をうずめながら――斜めに着地!

蜘蛛バディをもみじおろしにしながら、地面を削って進む!

その過程で何体ものチビ蜘蛛を巻き込んで潰しながら――やっと止まった!

足がちょっと痺れたけど、蜘蛛クッションのお陰で両足は無事だ!


「ギチチチチ――!」


 牙を鳴らしながら、成体が迫る。

慌てず左手を向け――パイル!シングル発射!!


 今まさに飛び掛かろうとしてきた成体の口から胴体までを貫通し、棘は背後に突き抜けてまたチビ蜘蛛を何体か道連れにした!


「――ヌゥウッ!!」


 蜘蛛の死骸から足を引き抜き、しっかり大地を踏みしめる。

そのまま上半身を回し――腕を、振る!!


 反対側から飛び掛かってきた、新手目掛けて!


「――ヴァーティガッ!!」


 魔力をチューッ!したヴァーティガを、叩き付ける!!


「ッギ!!」


 蒼く輝く頼れる相棒が、空中の蜘蛛の胴体を捉えて――胴体を!へし折った!!

折れる手足!飛び散る肉片!ちょっと口に入った!意外と美味しい!!


「オウリャア!!」


 砕けた蜘蛛の体が、超高速の散弾めいて周囲へ拡散!

近くの蜘蛛たちに降り注ぎ、結構なダメージを与えてるみたい!これは儲けものだ!!


「サア!カカッテコイ!オ前ラノ敵ハココニイルゾォ!!」


 注意を惹くようにそう叫んで、ボクは手近な1体を殴り飛ばした。



・・☆・・



「おにーちゃん!しっかりして!おにーちゃん!!」


「うぐ……あ、ああ?な、なにあれ」


「――よかった。まだ生きているナ!」


「そ、空の民だと!?」


「助太刀に来た!説明は後ナ! ここで治療して、村まで子供たちを運ぶナ!」


「あ、ありがたい……! あそこで戦っているのはアンタの仲間か!?」


「そうナ!雄々しく強く……優しい戦士ナ!」



・・☆・・



『ムロシャフト様、これは……?』


『むーん、ラブかライクか微妙! これからに期待っしょ!』


 あのォ!何言ってるんです――おっとォ!!


「セイヤーッ!!」


 飛び掛かってきたチビ蜘蛛にハイキック!

空中で散らばる特にかわいそうでもない死体!


「ギギギギ!」「ギチチチ!」「ギチャチャチャ!」


 多い!わかってたけど蜘蛛が多い!

次から次へと、休む暇もない!

だけど――適当にブンブン丸しててもヴァーティガが当たるからお得ゥ!


「オッシャラー!」


 チビ蜘蛛の死体を押しのけて寄って来る成体!

その振り上げた脚を――ホームラン!

足をへし折り、胴体を砕く!

よし!成体蜘蛛も問題ない!ただ数が多いだけ!


 困るのは――そう!

今みたいに、一斉に魔力糸を吐かれることくらい!

こんなもんヴァーティガで薙ぎ払って――なにゅ!?


 破壊できない!ヴァーティガがあっという間に糸でグルグル巻きになっちゃった!?

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― 新着の感想 ―
ムッくんは平和的なバーサーカ。 無双虫!
むっくん強くなりましたねぇ。 それはそれとしてピーちゃんにギューってされたいです!
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