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第3話 ヴェルママのお姿、拝見!


「綺麗ナ街ダネエ」


「きれー!きれえ!」


 アカを肩に乗せて、【ガドラシャ】の街を歩いている。

この街って本当にシッカリと区画分けしてあるなあ……概念しか知らないけど、京都の碁盤の目?みたい。

建ってる家の規格も同じような感じだし、遠くから見ると未来都市みたいね。

近くに寄ってみたら、基本的に木造建築だからなんか不思議な感じ!

あと、下水道もしっかり完備してあるから街が綺麗!


 この街に滞在する予定は、大体一週間。

つまり今日はオフなので、アカと一緒に散歩なうなんだ。

時刻は昼過、とってもいいお天気だ。

ちなみにお昼ご飯のメインは春巻きでした!中に色々入ってて超美味しかった!

なんか別の名前だったけどね。


 ロロンは宿のお部屋で繕い物、カマラさんはタリスマンの制作。

そしてピーちゃんは……宿の旦那さんの味見係だ。

旦那さん曰く、初代ゴーサクさんの味をもっと知って近付きたいんだってさ。

始めはアカもそっちに行ってたんだけど、散歩に行こうとしたらついて来ちゃった。

バッチコイだけども。


『アカと2人だけなんて、なんか懐かしいねえ』


 クソデカ森林を思い出すなあ。

殆どがトラウマだけど、アカやおひいさま、それにロロンと出会えたのはよかったよねえ。

……食料に関しては思い出したくもないけど!けどォ!!


「アカ、おやびんといっしょ!ずうっといっしょ!」


「コショバイ」


 アカも懐かしくなったのか、肩に座ったまま首筋に頭を擦り付けてきた。

フヒヒ、くすぐったい!


「ウン、一緒ダヨ。一緒」


「んにゅふふ……えへぇ」


 はーなんじゃこのカワイイ物体。

撫でちゃろ撫でちゃろ~。


 ボクもアカも、謎虫形態からよくぞここまで立派になったもんだよね。

よくよく考えたら比率的に質量保存の法則とか諸々無視してるけど、今更だね。


『あの頃はこうして街中を歩くようになるなんて思えませんでした。頑張りましたね、2人とも』


『トモも!トモも!ありあと、ありあと~!』


『まあ、本当はグレーなんですけどアカちゃんにもトモさんポイントを付与したくなりますね』


『ぽいんよ?おいしい、それおいしい?』


『美味しいものはおやびんに頼みましょうね~』


『あいっ!』


 2人ともすっかり仲良くなっちゃってまあ。

なんか、ボクがいない所でもお話してるみたいだし。

いいこと、いいこと。


『アカにはいいお姉さんが2人もいるねえ、いいことだねえ』


 お婆ちゃん枠としてカマラさんもいるし!

情操教育としては満点ではなかろうか?


『――ここに母もいますが?』


 ……そういえばアカとはお話してないよね、ママ。


『そちらの虫はもう少し成長しないと、少し刺激が強すぎるので……涙を呑んで我慢しているのです。嗚呼、小さく愛おしい虫……』


 アカってジャンル的には妖精なんじゃないのかなあ?


『虫から始まったのですから、虫です』


 なるほどお……お?


「ナンジャロアレ、ヒトガイッパイ……」


 美味しそうな屋台とかないかな~と歩いてたんだけど、前方に人だかり発見。

なんだろな?いい匂いはしないからご飯系じゃないと思うけど……


「みにいこ!みにいこ~!」


「行コ行コ」


 気になったら即行動。

これが街歩きの醍醐味よ……!


『謎虫だったむっくんが、街ブラをできるまでに成長するとは……ズズズ』


『虫はどんな虫でも愛おしいものですが、成長とはよいものですね女神トモ……ゾゾゾ』


 またラーメン食べてる!油断したらすぐこれだ!!

別にいいけど!


『チュルル……んふふ、残念ですねむっくん』


『ゾルゾル……今回はザルウドンです、虫よ』


 いいな!いいな~!!

トモさんの部屋がすっかり定食屋さんになってるけど、いいな~!!



・・☆・・



「コレハ……」


 人だかりの後ろに近付くと、その先にある建物が見えてきた。

左右対称の、三角形の屋根。

その屋根には……なんだろ、英語の『Y』みたいな感じの飾りが付いてる。

そして、なんとも言えない匂い……アレだ、お香だこれ。


「ナルホド、教会カ」


 窓もステンドグラスみたいな感じだし、こんなに人がいるのに騒いでる感じじゃない。

厳かな雰囲気だ……


「なんだい兄さん、この街は初めてかい?」


 ボクの呟きが聞こえたのか、前にいた人が振り返った。

おお~、目がまん丸!

おばさんの虫人さんだ、なんとなーく、テントウムシっぽい!

やっぱり虫人の女性って、虫要素が男性よりも少なくて若干柔らかそうだねえ。

立派な触角はあるけども。


「はじめて!はじめて~!」


「あれまあ!妖精連れかい、こいつは縁起がいいねえ!」


 ボクの兜によじ登ったアカを見て、おばさんはニコニコしている。

うーん、渡る世間は基本いい人!


「ハイ、ボクハエラム砂漠カラ来マシテ……」


 違うけど、この説明が楽!


「あれあれ、遠くからわざわざ……巡礼かい?」


「じゅんれ~?」


 そんなに有名な教会なの、ここ?


「ああそうさ、ここは【メイヴェル教】の神殿だからね……女神メイヴェル様のお膝元だよ」


「ア、アア、ソウダッタンデスネ……イエ、人ダカリガ気ニナッテ」


 その女神様、さっきまでざるうどん啜ってました。

ボクは脳内で会話できるから身近に感じるけど、本当は凄い凄い神様なんだよねえ。


「そうなのかい、それなら是非礼拝していきな!メイヴェル様に旅の無事をね!」


「ハイ、ソウシマス、是非」


 じゃあ、並ぶぞ~。


『アカ、ここはねえ……ボクがとってもお世話になった神様の教会なんだよ。一緒にお祈りしよっか』


『しゅる!しゅるぅ!』


「それにしても、アンタいい男だねえ……どうだい、アタシのひ孫が今年で16なんだけど……年下の嫁さんも悪くないよ?」


 わーい!ここへ来てイケメン認定2人目!

やったあ!ボクってやっぱりむしんちゅ的にはイケメンだったんだ!

よかった、自分ではヒーローっぽくて格好いいと思ってたけど……勘違いじゃなくてよかった!


「シュ、修行中ノ身ナノデ……」


 でも断る。

そりゃそうでしょ、まあ冗談だろうしね。


 ……ひ孫さん、ボクよりも15歳年上なんですけど!!

ボクって外見年齢何歳くらいなんじゃろね!?



「アノ、初メテナンデス。オ祈リ大丈夫デスカ?」


 おばさんと話しながら列は進み、遂に教会内部まで入った。

左右にはいかにもって感じの長椅子が……なく!がらんとした場所だった。

そこに、ミチミチにむしんちゅさんが詰まっている。


「ご懸念なく、メイヴェル様は全ての虫人の母……そこに、貴賤はございませんよ。ただ、真摯な祈りがあればよいのです」


 そして、ボクの目の前には……黒い巫女服?みたいなのを着た女性。

たぶんシスター的なアレなんでしょね。

睫毛ながぁい……そして体がとってもとってもスレンダー!

あれだね?カゲロウっぽいね、なんか。

服から薄くて透き通った羽が出てるし。


「ありあと、ごじゃまう!」


「まあ、これは可愛らしい信徒の方……ふふ、メイヴェル様もきっとお喜びになりましょう」


 アカのお礼に、クスクスと上品に笑うシスターさん。

はい、さっきかわいいって言ってくれました。


「それでは、お好きな場所でお祈りくださいまし」


 シスターさんがスッと横にズレた。

それで、教会の奥が見えた。


 赤い絨毯が敷かれた最奥に、台座。

その上には……女神像があった。


「きれー、きれぇ」


 空気を読んだアカが小声で呟いたけど、本当にその通りだった。


 顔は、フードみたいな布に包まれて口元しか見えない。

それでも、その口元は慈愛の微笑み。

ボクの生体甲冑よりも……アカっぽい装甲に包まれた体は、無駄な部分が無いほどに引き締まっているけど、ちゃんと女神らしい豊かさもある。

下半身は、腰のあたりから翻るスカートが足元まで。

ちらっと覗いた足先は、なんか鎧でも着てるみたいに格好いい。


 そして、その女神像は……仏様みたいに合掌している。

前の手で。

それ以外に、脇の下から伸びた一対の腕は……左右で綺麗な双剣を握っている。

もう一対、ボクの【隠形刃腕】みたいな位置から生えている腕は、頭上で……なんだろ、巻物?みたいなものを広げて持ってる。


 天井から差し込む光に包まれて……ほんと、荘厳な女神像だった。


 うわ~……ヴェルママ、美人!すっごい美人!!

そして格好いいし、優しそうだし……これはむしんちゅのみなさんも信者になるわけだ!!


 おっとと、見とれてた……お祈りせんと。


「ナムナム」「にゃむむ~」


 お祈りの作法なんて知らないので、アカと揃って手を合わせて目を閉じた。


『む、むむ。おや、祈ってくれるのですか……いい虫ですね』


 ご本人からの神託が速攻きたけども。

ヴェルママ、とってもお美しゅうございますねえ。


『ほほほ!嬉しいことを言ってくれますね、虫よ。ですが本来の私はもっと胸も大きいですし腰回りも豊満で……嗚呼、実際に見せられないのが残念です』


 ……すいません、女神像にクレーム入れないでくださいますか。

コメントに困りますので。


『おお、愛らしい虫の祈りを感じますね……ふふ、なんと無垢で愛おしいものか。今日は良き日です!良き日ですよ!!』


「こ、これは……」「おい見てみろ!」「ああ……ありがてえ、ありがてえ……」


 あ、あの~……女神像がね、天井由来以外の光源で光ってるんですけども。

ていうか、発光してるんですけども!?


「メイヴェル様が、お喜びに……うう、なんたる光栄か……!」


 シスターさんが膝をついてホロホロ泣いてるんですけども!?


『おや、私としたことが嬉しさが逆流してしまったようです。ふむ、私もまだまだですね……』


『(私の部屋が眩しすぎて白一色になりました)』


 ……なんかなあ!ボクが一信者だったらこの光景に感動してると思うんだけどなあ!!


「きれい、おやびん!きれえ!」


「ホントダネエ、綺麗ダネエ……」


 ちくしょう!女神様との距離が近すぎるからちくしょう!!

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ヴェルママ、素敵ムシンチュ女神様! やっぱり、トモさんのお部屋は食堂と化しましたか!? ざるうどん最高!
ヴェルママ想像以上に素敵ビジュアルでした!
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