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第149話 ムムム……思った以上の!貴重品!!

 むううん……どこじゃここ。

なんか、天気のいい綺麗な草原にいる。

さっきまで宿屋にいたよね、ボク。

それで、黒棍棒くんの名前を呼んだら魔力をチューッ!されたんだっけ。

いつもながら急すぎるんじゃよ……不用意に発言したボクが悪いんだけどさ。


 ねえトモさん……トモさん?

あれ?聞こえないのかな。

ってことは……はっはーん、これが俗に言う明晰夢ってやーつか。

自由に改変できる夢だっけ?

それなら……お空でも飛んでみたいなあ。


『――これはまた、随分とお気楽な奴が来たもんだ』


 ……誰ェ!?

えっ誰、ど、どこに!?


『そして喧しい、と。魂の波長まで騒々しいな……しかも妙な色をしている』


 ボクの体は黒っぽくて格好いいでしょ!?

ちゃんと磨いてるからピッカピカですよ!?


『そういうことではない……ふむ、まあどう見ても悪しき者ではない、か』


 えっとえっと、あの、どちら様なんですか。

声しか聞こえないんですけど。


『気にするな』


 気にするよ!普通気にするでしょ!?


『はっはっは……ではまたな、励めよ』


 説明してください!

説明責任isどこ~!!



・・☆・・



「よかった、気がつかれましたか」


「……ダイジョブ、デス」


 目を開けると、エルフさんたちに見下ろされていた。

えっと……食堂の床に寝てる、のかな?


「急に魔力が消滅して昏倒なされたので……申し訳ありませんが魔力ポーションを無理やり飲んでいただきました。効いてなによりです」


「ソ、ソレッテトッテモオ高インジャ……」


 前にトモさんに聞いたことあるぞ!

高い上に需要に供給が追い付いてないって!

一見さんには売ってくれないって!


「いえ、これは自作ですので元手は無料です。お気になさらず」


 エルフさん、ポーションも作れるのか……すごいねえ。


「今、何ガ起コッタンデショウカ?」


 よっこいせ……頭が若干クラクラするけど、元気だ。

ああ、レファーノさんが手を掴んで立たせてくれた、やさしい。


「貴方がこの棍棒の真名を呼んだから、でしょうか。それによって真の持ち主として認められたのです」


『物凄く乱暴に言えば本契約です。今までは仮契約……無料お試し期間だったのですよ』


 いっつも魔力ギュンギュン吸われてたから無料ではなくない?

だけど、わかりやすい説明をありがとうございました。


「ナルホド……」


「呪いも発動した様子はありませんし……ご安心を。この先、ムークさんが悪逆非道の大悪人にでもならない限りは大丈夫ですよ」


 その心配だけは、ないね!断言できる!


『清く正しい虫になる、と……素晴らしい虫ですね、ほほほ』


 ……遠隔ヴェルママにも慣れてきたね!


「――ッ!?」


 うわ、レファーノさん含め3人くらいのエルフさんの表情が険しくなった!?


「……ド、ドウシマシタ?」


「いえ、今かなり強大な魔力、いえ神気を一瞬感じたような……白銀龍が近くまで来ているのでしょうか、珍しいですね」


 ……ひょっとして?


『おや、勘のいい耳長ですね。定命者にしては中々……虫でないのが残念です』


『ちなみに私の念話は感知されませんのでご安心を』


 ……エルフさんって凄いんだなあ。

ラーヤには速攻でバレたけど、彼女はまた段違いってことかね……


「ええと、そうだムークさん。この棍棒は励起呪法によって封印されていることはご存じですか?」


 お、前にトモさんが言ってたやーつ!

あの『我が剣は~……』ってのだよね!


「ハイ、変ナ話ナンデスケド……夢デ見タンデスヨ」


「夢、ですか……どう思う? ラーファルガ」


「一種の魔導交信では? 接触初期においては、よく見られることですが……」


「近いのだと【滝割り】のケースで同じようなことがありましたね。トルゴーンのコージロ閣下が……」


 あっ、また始まっちゃった、会議。


「ああなったら長いよ……アンタもよく付き合うねえ。ホラ、ピーちゃんもこっちきな」


『まーっ! 嬉しいわ、嬉しいわ!』


 バイアさんがクッキーを持ってきてくれた。

わーい!山盛りだ!


『アカ~!クッキーがいっぱいあるよ。ロロン連れていらっさ~い』


『あーいっ!』


 念話でアカを呼びつつ、新しいケマを注ぐのだった。



・・☆・・



「ムークさん、申し訳ありませんがこの紙に励起呪文と思われるものを書いていただけませんか? ああ、詠唱は結構です……暴走するかもしれませんので」


「ア、ハイハイ」


 小一時間くらい後、レファーノさんが綺麗な羊皮紙とペンを渡してきた。

平然としてる……あれかな、エルフさんって長生きだから時間感覚がおおらかなんだろうか。

ちなみにアカ、ロロン、そしてピーちゃんはお散歩に行きました。

腹ごなしだって……たぶん、お昼ご飯のためにだね。


 えっと……なんか高級そうな万年筆を手に取って、カリカリっと。

ボクとしては日本語を書いてるつもりなのに、共通語に変換できるのはありがたい。

呪文は……たしか……


『我が剣は、牙なきもののため』


『我が鎧は、寄る辺なきもののため』 


『我が魂は、儚く愛しき命のため』


『されば、こそ』


『全ての慈悲なき者に死を』


 ……こうして書き出してみると、黒棍棒の持ち主さんって優しいヒトだったのかな。

全部が全部、誰かのためって感じだし。

流石は騎士団ってことなんかな……


「ハイ、ドウゾ」


 書けたので渡す。


「ありがとうございます……ふ、む……これは……!」


 紙を見て、レファーノさんの表情が変わる。


「教授、五節の励起呪法ですよ!」


「そんなまさか、【逢魔断ち】に並ぶ五節ですか……!」


「【混迷期】とはいえ、エラム魔法帝国は一体何と戦って……」


 あーっ!また始まった!?



「ムークさん、少しお手を……」


 今度の会議はすぐに終わったね……手?

なんじゃろか。


「はい、少々そのままで……」


 レファーノさんがボクの手を両手で握り、じわっと魔力を流した。

お~、あったか……温泉みたいだ~……


『おっと、魔力診断ですか。念のため障壁を展開しておきましょうか』


 あ、そうなん?

ボク別にどこも悪くないけどな~。


「……はい、結構です」


 謎診断が終わった。


「ムークさん、あなたの保有魔力を調べました。その結果ですが……現状、励起呪法は初句までにしておくのが賢明かと思われます」


 トモさんとおんなじこと言うねえ。


「アッハイ、何故デスカ?」


「あなたは……一般的な虫人よりも保有魔力が多めですが、二節目以降に求められる魔力には足りません。最悪、唱えている途中で意識を失い……指向性を持たない魔力が暴走する恐れがありますので」


 これも、トモさんが言ってたのと同じだね。


「ワカリマシタ」


 っていうかボク、一般むしんちゅよりも魔力多いのか!

全然気付かなかったよ、トモさん。


『まあ、今まで周囲にいたむしんちゅの方々が規格外でしたので。ゲニーチロさん、トキーチロさんは元より……ナハコさんやイセコさん、黒子の皆様にラクサコさん本人や護衛の方々……彼らは全員、一般とは比べ物になりませんので』


 デスヨネ~……そりゃそうか。

あの人達に比べたらねえ、ボクなんかねえ。


『むっくんには無限の伸びしろがありますので、なんてったって生後一年未満ですから!』


 トモさん優しい……!


『――そうです、虫よ。歩みの速さは虫それぞれ……己を律して進みなさい』


 遠隔ヴェルママ優しい!優しい!


「またですか……今日の白銀龍は騒がしいですね……?」


 でも今はやめておいていただけると幸いというかなんというか~!?


「……まあ、いいでしょう。ありがとうございます、ムークさん。この写しはかなり貴重なものです!我々の研究の大いなる手助けとなるでしょう!」


 今度は純粋な握手だ、レファーノさん。


「ピーちゃんの件もそうですし、ムークさんには感謝しても仕切れません……!」


 アルレイノさんまで!

いいんですよ、そんなに気にしないで……


「ああ、わたくしとしたことが! 申し訳ありません、今回の報酬ですが……何分本国ではありませんので、これくらいで……」


「ウワーッ!? ナ、ナナナナニソレ!? イリマセン! イリマセンッテバ!!」


 レファーノさんが懐から取り出したのは、見間違うはずもない……金の!延べ棒!!

それも10本くらい!!


「何をおっしゃいますか! エラム魔法帝国の貴重なアーティファクトを鑑定させてもらい、あまつさえ碑文の写しまでいただいたのですよ!? 考古学的に考えてもこのくらいは……!!」


「じゃじゃじゃ、レファーノさん? そのような大声ば出されて、いかがいたしやん……きゅう」


 アーッ!?

今まさに帰って来たロロンが昏倒したァ!?


 結局、神聖虫土下座を披露して金の延べ棒を1個までにしてもらったのだった。

これ以下は絶対にダメ!って強硬なんだもん……頑張ったよ、ボク!!

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ヴェルママハカミ。 神聖虫土下座!? 新しい技でた!? 報酬の値切り交渉。貰う方が逆に値切るとか…。
ヴェルママ率が高くて……うれしい!
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