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第138話 到着!ラガランの街!!

「ソウイエバカマラサン、空ノ人ノ男女ヲドウヤッテ見分ケタンデス?」


「ああ、簡単さね。嘴が無くて、胸のデカいほうが女さ……あと、女の方が身長も低いしね」


「ハエ~……」


 結構簡単に見分けられるんだ、空の人。

おっぱいはともかく、クチバシでわかるのはありがたいね。

この先に会った時に失礼にならないように気を付けなきゃ。


 てな感じで、カマラさんとお話をしつつぽてぽて歩く。

話し相手がいるだけでも、旅って楽しいねえ。

カマラさん印のタリスマンのお陰で、滅多に魔物も出てこないし。


「おやびん、おやび~ん!」『ムークさん!ムークさん!』


 おや、上空で遊んでいたアカたちが帰って来た。

どうしたんだろ。


「やま!やま!おっきーやまぁ!」


 山?でもそんなの見えないけど……


『かなり空の高い所から見たから!もう少しで見えてくるわ!あれがミレドンサンミャクってやつね!』


 ピーちゃんも興奮している。


「空を飛べると偵察も楽でいいねえ。山脈が見えてきたってことは、今日中にラガランに到着するね……ジャンタナちゃんには感謝しないとね」


「んだなっす!晴れ続きで楽でやんした~!」


 ロロンも嬉しそうだ。

ジャンタナさんが教えてくれたように、ここに来るまでの1週間は晴れ続き。

途中の村で物資を補給したりはしたけど、ラガランまで早く着きたいから野宿しながらずうっと移動したんだよね~。

じゃあ、今日はベッドで眠れそうだね~!


「ラガランには浴場もあるし、山越え前に体を整えていこうかね」


「じゃじゃじゃ!それは嬉しいのす~!」


 おお、お風呂!

それはボクも楽しみ!


「おふろ!おふろしゅき~!」『私も!私も!』


 アカたちもテンションがマックスだ。

まあね、お風呂は最高だからね!


「おやびん!すぐいこ、いこぉ!」


「ウン、行コウ行コウ!!」


 ずっと楽しかった旅だけど、それ以上にウキウキな気持ちで歩き出した。



・・☆・・



「オオオ……スッゴ!」


 簡単なお昼ご飯を食べて歩き続けること、ボク基準で半日。


「しゅごい!やま!やま~!」


『おっきい街ね!ガラッドよりはちょっと小さいかしら、でも大きいわ!大きいわ!』


 昼食後しばらくして、視界には大きな壁のような山々が見えてきて……さらに、数時間歩くと目的の街が見えてきた。


「じゃじゃじゃ……思えば遠くまで来たもんでやんす……!」


 ボクは異世界出身だからはなから感動してるけど、ロロンも南の果ての砂漠から来たんだもんね……そりゃあ感動するか。


「さあさあ、感動はそこらへんにしてさっさと行くよ。あの街にゃあ馴染みの宿もあるからねえ」


 そんなボクたちを微笑ましそうに見て、カマラさんが歩き出す。

待って!置いてかないで~!


 切り立った山脈を塞ぐように、でーんと存在する城壁に囲まれた街。

これが、国境の街……ラガラン!

トモさん!トモさーん!ラーガリの端っこまで来たよ~!


『あの謎虫だったむっくんがここまで……ズズズ』


 泣いてくれるなんて……そんな!でも嬉しいよ!


『ああ、申し訳ありません。スープ春雨を啜っていました』


 ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

そんなОLのお昼ご飯みたいなもの食べて!

いいな!いいなっ!!



・・☆・・



「よし、では入れ……次!」


 ガラハリに来た時と比べると、そんなに混んでない城門に並ぶ。

どうやらこの街は、門が前後?に2つだけあるみたい。

ガラハリは大きかったもんね~……でも、ここだって負けないくらい立派な街だ。

魔物用なのか、街を囲う壁は高くて頑丈そうだし……てっぺんには抱えられないほど大きいボウガン……ええっと、バリスタだっけ?ともかくそれがズラ―ッと並んでいる。

警備の兵隊さんたちは皆揃いの鎧を着込んでとっても強そう。


「妙な一団だな……って、カマラ婆さんじゃないか!」


 順番が来たボクたちに目をやって、そのシェパードによく似た兵隊さんが声を上げた。


「アンタ、ひょっとしてトラ坊かい?あれまあ、しばらく見ない間に、あの洟垂れが立派になったもんだよ」


 どうやらカマラさんの知り合いだったみたい。


「立派だなんて……ヘヘヘ!で、どうしたんだい?商売かい?」


「それもあるけどね、今回は山越えしてトルゴーンまで行くんだ。この子たちはアタシの護衛さね、みいんな腕っこきの連中だよ」


 カマラさんがこっちを示したので、進み出て頭を下げる。


「ムークデス、冒険者モヤッテマス」


「【跳ね橋】のロロンと申しやんす!」


 もぞもぞ、とマントが動いて……


「アカ!でしゅ!」『よろしくね!私はピーちゃん!!』


 アカたちも顔を出した。


「おほ~!コイツはたまげた!妖精なんて10年ぶりに見るよ、それも2人!」


 ボクの肩に乗って愛想を振りまくアカと、兜に乗ってチュンと鳴くピーちゃん。

そんな2人を見て、トラさん?はニコニコしている。

うん、この人も優しそうだ……年齢はターロくらいかな。

獣人さんの年齢ってわかりにくいんだよね。


「カマラ婆さんの護衛なら問題ないだろうけど、その棍棒と槍は街の中で振り回さないでくれよな」


 なにが起こるかわからないので、黒棍棒は常に背負ってます。

……そんなシチュエーションはボクだって御免ですよ。


「大丈夫さ、この子たちは自分から暴れるような手合いじゃないからねえ……丁度いいやトラ坊、アンタんとこはまだ空きがあるかい?」


「あるある、トルゴーンからの巡礼客が引き上げて暇だ暇だって母ちゃんがぼやいてたよ」


 あ、馴染みのお宿ってこの人の実家なんだ。

だからこんなに仲が良さそうなんだね~。


「それじゃ、入っていいぞ!ラガランを楽しんでくれよな~!」


 顔パス的な速さで、ボクらはラガランへと入場できた。

持つべきものは顔の広い依頼主様ですな~!



「確かこの角を曲がって……ああ、あそこだ」


 カマラさんの案内に従って街を歩くことしばし。

ボクらはお目当ての宿にたどり着いた。

年季の入った看板には【冬山のぬくもり亭】と書いてある。

ガラハリの【妖精のまどろみ亭】と同じくらいの規模だね……


 ここへ来るまでに街の人たちを見たけど、ほとんどが獣人だった。

ガラハリと違うのは、モフモフな人が多かったってことだろうかな。

やっぱりここは寒いから、毛の量が多い人たちが住んでるんじゃろうか?


「あらいらっしゃい」


 宿に近付くと、玄関から箒を持った獣人さんが出てきた。

エプロン姿の……背の高いシェパードさんだ!

ふくよかなおばさんって感じの!

この人がトラさんのお母さんなのかな?


「って、カマラさんじゃない! まあまあ、ご無沙汰してるねえ」


「アンタも元気そうだね、ラファン。広い部屋を1部屋頼みたいんだが……空いてるかい?」


 カマラさんにそう言われたラファンさんは、後ろに控えたボクらを見る。


「アルマードに虫人、それに妖精2人ね……妖精!?」


『こんにちは!私はピーちゃん!』「アカ!よろしく、よろしくぅ!」


 アカたちが飛んで行って空中で自己紹介。

ちょっとびっくりしたラファンさんだけど、すぐに我に返ったようだ。


「あれまあ、カワイイ挨拶をありがとう。はい、よろしく! もちろん部屋は空いてるよ!」


「ヨカッタ……ボクハムークデス」


「【跳ね橋】のロロンでやんす!」


 ボクらの挨拶に、ラファンさんは目を細めた。


「はーい、よろしくねえ! 虫人さんはこの前までいっぱいいたんだけど、アルマードのお嬢ちゃんは初めて見るねえ! ささ、入って入って」


 カマラさんのお陰だろうけど、ここのお宿もいいお宿っぽい!

ボクの虫生、宿運は抜群だね~!!


『敵運は最悪ですけれども』


 それは言わない約束ですわよ~!



・・☆・・



「夕飯まではまだ間があるし、浴場に行って旅の垢を落とすかい」


 案内された広い部屋の中で、カマラさんがそう提案した。

たしかに、このままフカフカベッドに横になるのはちょっとねえ。

埃とか付いてるし。


「場所はアタシが知ってるから問題ないよ。ここの宿で割符を貰えば半額で入れるしね」


 ここにもそういうサービスあるんだ!


「行ぎやんす~!」


「おっふろ!おふ~ろ~♪」


『素敵ね!素敵だわ!』


 みんな異存はないようだし、お風呂行くぞ~!

おっと、タオルとかはしっかり準備しとかないとね!


「ムーク様ぁ、外套ばこごに残していきなっせ。宿に頼んで漬け置きばしておきまっす!」


「ア、ハイ」


 むーん、マントも結構汚れたしね。

対外的には大丈夫だけど、全裸で歩き回るのって本当に慣れないなあ。

これはボクが元々むしんちゅじゃないからだろうけども。



「おお、虫人かい。巡礼の帰りか?」


「イエ、ボク、エラム砂漠辺リ出身ナモンデ……」


「はあ~!そいつは随分遠くから来たもんだ!」


 浴場は、宿から歩いてすぐの所にあった。

受付や脱衣所は他の所とそう変わりはなかったけど……大浴場は凄い。

まるで岩盤をそのままくり抜いてお風呂にしたみたいな感じだった。

お湯は壁の穴からそのままドバドバ出てくる仕様。

ちょっと熱めだけど、これはこれで……


 あ、アカとピーちゃんは当然ながら女湯です。

宿のお風呂ならともかく、大浴場だしね……


「フィ~……イイ湯デスネエ」


 タオルも頭に乗せちゃう!

気を付けないと触角で真っ二つにしちゃうけど!


「だろう?ここの湯はミレドンから直接引っ張ってきてんだよ!なんでも1000年くれえ前にな……」


 話し好きのモフモフの羊さんっぽい人の話を聞きながら、ボクは源泉かけ流しを楽しんだ。

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