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第134話 どっこい生きてる!村のな~か~♪


 オーク将軍の部下っていうのがどれくらいの強さなのか、ボクは知らない。

でも、黒オークはよくやったと思う。

顔面にアカの魔法を全弾喰らったのに、ボクがいるであろう場所に向かって武器を振った。


 その武器。

今まで何度も、黒棍棒で打ち合っても壊せなかった武器。


 ――それを、今回の黒棍棒は『砕き散らした』

触れた瞬間にとてつもない量の雷が放出されて、何の抵抗も感じずに砕いたんだ。


「――ブガ、ギャg」


 何を言おうとしたのかはわからないけど。

その先はもう聞こえない。

青白い火花を放ちながら、黒棍棒がオークの頭頂部にめり込んだからだ。


「ヌウ、ウ、アアアアッ!!」


 駄目押しに力を込めると……オークの兜が、陥没した。

本来中に入っているであろう、頭の部分も半分近くぼっこりと。


 ――背筋に悪寒が走って、オークの胸を蹴りつける。


 空中に蒼い燐光を残しながら、ボクは距離を取った。

……変化は、すぐに訪れた。


 頭が半分潰れたオークの体が、出鱈目に痙攣し始めたんだ。

そして陥没した兜の部分から、体に向かって――一瞬で、ボクの腕に這ったような幾何学的な線が浮き出る。

な、なんかヤバいぞ!?


「――皆サン、逃ゲテ!!」


 咄嗟に叫んで、衝撃波を放ってバックステップ。

周囲のおじいさん達は、ボクが叫ぶ前にもう離脱していた……判断が早い!!



 何かが軋むような、そんな音が響く。



 数瞬後、体中を蒼い線に覆われたオークが……爆散した!

うわ、うわわ!?

まるで特撮の必殺技じゃないか!す、スゴ~!!


「お、おおい!にいちゃんよ!お前ソレ大丈夫か~!?」


 おん?

ローガンさん何言って……


 ……ボクの両腕、まだ線が残ってるんですけd


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?!?」


 ばぎゃん!!って感じでボクの両腕が……爆ぜたァ!?!?

肘から下の装甲が飛び散って――ひぎい!筋肉むき出しじゃんむっちゃグロい!!


「おやびん!おやびーん!!」


 焦った顔のアカが飛んで来るのを視界の隅に捉えつつ……ボクは気を失ったのだった。

……きゅう。



・・☆・・



『励起呪法、と呼ばれる魔法があります』


 はい。


『魔術的な封印が施された武具や魔法具などを、起動させるものだと思ってください』


 はい。


『また、そういったものは即座に起動!とはいかず……何段階かのステップを踏みつつ起動するわけです』


 はい。


『それが、あの時に言った『節』というものなのです』


 はい。


『むっくんを止めた理由はソレです。あの黒棍棒を段階的に『解放』していくのが励起呪法なのですよ』


 はい。


『……大丈夫ですか?』


 腕がむっちゃ痛いです。


『その傷は黒棍棒から逆流した魔力によるものですからね。それが原因なのか、治りが異様に遅いのですよ……我慢してください』


 はい……


『ええと、どこまで話しましたか……そう、そうです!あの黒棍棒さんは、励起呪法という段階を経て真の姿を発揮する魔法の武器なのです』


 前に何の魔術的効果もないって言ってませんでしたっけか。


『それは……私の権能が限定されていましたので。どうしようもありませんよ、あの時点では……でも、わかってよかったじゃないですか』


 ボクの両腕を犠牲にしてね……


『むっくんが慈悲ある認定だから、あの程度で済んだのかもしれませんよ?』


 ありがとう黒棍棒くん、もしくはちゃん。


『そもそも、励起呪法というモノは節が進むごとに要求される魔力が段違いに跳ねあがっていくのです。あそこで止めていなければ、今頃むっくんはカラカラ虫でしたよ?』


 一行目でもあれだもんね……魔石食べまくって溜めた魔力が一瞬で消えたし。

こりゃあ、黒棍棒くんの真の姿を拝めるのはまだまだ先の話でしょうなあ。


『そうですね、謎虫だったむっくんからここまで、かなり進化して強力になりましたが……まだまだまだまだまだですね、ええ』


 まだが多い!むっさ!!


 ……でもトモさんトモさん。

黒棍棒の元の持ち主ってさ、そのれーきじゅほー?っての全部言えてたんだよね。

それってすごいんじゃない?


『凄いなんてものではありません、記録が残っていれば伝説上の英雄クラスですよ。エラム魔法帝国は謎が多い国ですが……それほどの強力無比な武器を使いこなしていたとなると、とんでもない敵と戦っていたのでしょう、例の邪龍のような』


 ボクの虫生が綺麗に終わるまで、絶対に遭遇したくないなあ。

ボクどころか世界の危機じゃんか。


『まあ、現状はとても頑丈で切り札となりうる便利な棍棒という扱いでいいかと。あのような敵、そうそう出会うものではないですし……それにしたってむっくんの引きの強さはなんですか、悪い意味で』


 それはボクが知りたいんじゃよ……じゃよ……


『ふふ、本当におかしな虫ですね、むっくんは。退屈しませんよ、とっても』


 喜んでもらえて幸いだけどさ、ボクとしてはトモさんが暇で暇で日向のネコみたいにダラ~~~~~っとなるような日常が欲しいんじゃよね~。


「ムーク様ぁ、お加減ば、いかがでやんすか……?」


 シャっと布が引かれて、心配そうなロロンが顔を出す。


「超元気。ピンピンシテル、大丈夫」


 ホントはその対極にいるけど、子分を心配させるのは親分としては駄目だと思うの。


「それはえがんした!あの、薬草ば煎じたんでやんすが……」


 ポット片手に、部屋に入って来るロロン。

ああ、今更だけどここは村の広めな空き家というか集会所?みたいなところ。

気絶したボクをみんなで運んでくれたんだって。


 そして黒オークだけど……あの鎧くんが爆死?したらみんな悲鳴を上げて森に逃げたんだってさ。

引き際が見事というか、上司?が死んだから即逃げるなんて……よっぽどコワイ存在だったんだね。

こっちとしてはありがたいけどさ。


「アリガト……ンギギギッギ!」


 駄目だ、両腕が包帯まみれなので動かない!

どんだけ固定されてんのさ!


「じゃじゃじゃ!ワダスにお任せくなんせ!」


 慌ててロロンが寄ってきて、ポットの中身を水差し的なものに移し替えている。

悪いなあ。


「苦労ヲカケルネエ」


「何を仰います。立派に戦働きしたのす、胸を張ってくだんせ」


 ロロンの優しさが身に沁みるよう……思わずママと呼びたくなるね。


『呼びましたか、虫よ』


 ……呼びました!いつもありがとうヴェルママ!とっても光栄です!!


『ほほほ、かわいらしいこと……此度も頑張りましたね。いつも見ていますよ、励みなさい!』


 ありがとうママー!!

………………いなくなった?


『いつもの遠隔神託ですね。もう大丈夫ですよ』


 神託ってさあ、えらいお坊さんとかがたまにしか受けれない的なサムシングなんじゃないの?

ボクにはスマホアプリの通知くらい着てるけどさ。


『出自や職業は関係ありませんね。神の独断と偏見、そして好みです』


 神様ってすごいけどたまにガバガバだよねえ。


「しぇ、しぇばムーク様……お口を開けてくだんせ~……!!」


 ロロン?なんか工事現場で岩盤砕く重機くらい振動してるけど大丈夫?


「ア、ア~ン……モゴゴ」


 水差しが口に入れられて、中の薬草汁とやらが口いっぱいに……恐ろしく美味しくない!!

なにこれー!?なーにこれぇ~!?

湿布を煮詰めた出汁かなにかですか!?

オボボボボボボ!?!?!?


『ユギンタという薬草を煎じたもののようです。それなりに希少で、なおかつ傷に効きますので我慢しなさい』


 するぅう……オッボェ!?


『はいごっくん、ごっくんですよ~』


 ボクは幼児ですか!?


『年齢的には幼児どころか乳児ですが』


 そうでした……ゴクゴク。

良薬口に苦しとはよく言ったもんだ……死ぬほど美味しくない!



「しぇば、ごゆっくりお休みしやんせ。オーク共も退いたようでがんすし、援軍も到着いたしやんした」


「ア、モウ来タンダ」


 早いねえ。

ボク途中で気絶してたけど、まだ夜にもなってないのにさ。


「特に足の速い走竜ば使ったようでがんす。ガラハリから衛兵の皆さんが来てくれやんした……明日から森の浅い箇所ば索敵するらしいのす」


 そういえば、あのオークは将軍の部下とか言ってたもんね。

将軍とやらが来たら、流石に今のボクじゃあ太刀打ちできないから助かる。

あ、でも黒棍棒を使えばワンチャン……


『例の攻撃で体内の魔力が狂いに狂っています。もう一度同じことをしたら腕だけではすみませんよ?』


 大人しくしてよっと。

今晩は泊めてくれるらしいし。

これ以上は援軍に任せよう。


「おやびん、おやび~ん!」


『戻ったわ!戻ったわ!!』


 おや、アカとピーちゃん。

見ないと思ったら出かけてたのか。


「おやびん、どーじょ!」


 アカは……茶色の泥団子みたいな何かを差し出してきた。

ナニコレ……


『ボッカっていう木の実なのよ!体にとってもよくて美味しいのよ!』


 ほほう。

ってことはわざわざ取りに行ってくれたのか……


「アリガト……イイ子分ダネ、アカ」


「んへへへ~!」


 ドヤ顔で照れながら頬を擦り付けてくるアカがかわいい。

手が治ったら発火するくらい撫でちゃる!


あと、木の実はチョコみたいな風味でとっても美味しかったです。

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ヴェルママは今日も素敵! ところで、湿布を煮詰めたような味って……まさかルートp(怒られろ!)
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