第131話 オーク・オーク・オーク!!
「ええーいっ!!」
ぽぽぽしゅ、と音。
次の瞬間には、光の尾を引いたアカのマジックミサイルが黒オークたちの顔面に炸裂。
前よりも更に精度を増したそれが、両目を正確に破壊。
「――スヴァーハッ!!」
そして、仰け反った黒オークたちの喉元に鋭く尖った石が突き刺さり、抉る。
ロロンの魔法だ。
「ブギイイイイイッ!!」
おっとォ!
ボクに向かって振り下ろされる棍棒の一撃を――正面に衝撃波ァ!!
「ブギ!?!?」
中溜めくらいで撃った衝撃波によって、振り下ろし途中のオークの棍棒は……そのまま跳ね返って顔面に衝突。
「――ヌゥウッ!」
それと同時に、後方へ衝撃波ァ!
怯んでいるオークに肉薄して――肩からタックル!!
「ゲボッ!?」
しかる後起動ォ!『隠形刃腕』ッ!!
ボクのショルダータックルで動きの止まったオークの顔面に――甲高い音を響かせる刃が突き刺さっった!
まるでバターでも切るように、オークの顔面は真っ二つになる。
超振動の威力、こうして見ると大変にグロい!
強いけども!!
「ドリャアッ!!」
即死したオークを蹴り飛ばすと、すぐさま新手が出てきた。
格好つけて飛び出してたけど、もうほんとにキリがない!
縄張り争いに負けて逃げてきたくせに、なんでこんなに士気が高いのさ!
『オークの長は、魔力を乗せた咆哮で配下を高揚させるのですよ』
トモさんペディア助かるなあッ!
「伏せろにいさん!一斉射――今ッ!!」
伏せたボクの頭上を、銛みたいなぶっとい矢が何本も飛んでいく。
「ッゴ!?」「ッギィ!?」「ブギ!?」
草むらから飛び出しかけた3匹が、揃って脳天を打ち砕かれて吹き飛ぶ。
ひぇえ、すごい威力!
「ソコォ!!」
さらに続く新手に、左腕パイル発射!
「ギャッガ!?ブモオオオオオオオオオオオオオッ!!」
なっにぃ!?
逸れた!頭防具のせいで逸れたァ!!
今までのオークと違って、コイツ兜かぶってる!
さっきまでは盾と武器、それから腰蓑が精々だったのに!
コイツ、兜に胸当て、さらに手甲に脚絆?まで!
装備が豪華になってる……!
「ソレガ、ドウシタァ!!」
戦いは数!
速射衝撃波乱れ撃ち!
「ッガ、ガガガガガ!?!?」
ハッハッハ!兜で頭は守れても……股間は守れまい!
卑怯とは言うまいなァ!!
「オウッ――」
地面を踏み切って、斜めジャンプぅ!
滞空した瞬間に補助翼展開!衝撃波アフターバーナー!!
「――リャァアッ!!」
滑空の勢いを乗せて振り上げた黒棍棒が、黒オークが苦し紛れに振り下ろした金属製の棍棒を弾く!
そのまま、胸当てに激突!
金属製のソレを歪ませて、(たぶん)肋骨を砕いた!!
だってボキボキって聞こえたし!
「ゴボッ!?」
「――オオオオッ!!」
めり込んだ黒棍棒に血を吐いて止まる黒オーク。
すかさず右足で!蹴り上げる!股間!!
卑怯とは言うまいねェ!
「ギピッ!?!?!?」
黒棍棒を左手に持ち替え、駄目押しの――右ストレートォ!
湾曲した胸当ての隙間に拳をねじ込んで……パイル!オン!!
回れ!ボクの棘ッ!!
「ガギャギャギャガガヤガヤガ!?!?!?」
湿った嫌な音を立てて、回転する棘が胴体を貫通!
魔力!お代わりッ!!
回転はそのままに、棘がすぐさま赤熱化……一瞬で焦げ臭くなる!
「ッガ――」
黒オークの目から光が消えた。
よし、これでまた1匹!
弛緩した死体のお腹に蹴りをぶち込み、棘から抜く!
わわわ、電磁赤熱化エッグ……胸の傷が炭化?してるや。
『むっくん!新手が来ますよ!向かって11時の方向!草むら!』
――衝撃波を喰らえッ!!
「ギャガッ!?」
お、8割溜め衝撃波でも首が折れた!
あの頃から考えると、ボクも強くなったもんだね!
『油断は!?』
――しません!しませェん!!
・・☆・・
「オラにいちゃん、飲んどけ飲んどけ!」
たぶん液体の入った革袋が、村の方角から放り投げられる。
「アリガトウゴザイマス!」
お礼を言ってキャッチ!すかさず栓を抜いてゴクゴクー!!
美味しい!水だけどなんかハーブみたいな味がする!
「随分やるじゃねえか!いくつか知らねえが、若いのに大したもんだ!……若いよな?」
「アッハイ」
ボクむしんちゅだからね……ゴクゴク。
トモさんトモさん、なんか急に新手が来なくなったけど……打ち止め?
『草原の中腹にまだまだ潜んでいますよ。ピーちゃんに十分な高度を取って偵察をしてもらいなさい』
まだいるのか……
『ピーちゃん!高い所から偵察してくれない?危ないから十分に高い所でね!』
『わかったわ!わかったわ!』
アカと同じくらいの所にいたピーちゃんが、チュチュンとひと鳴きしてから一瞬で上昇。
やっぱり魔力で飛んでるんだ……ああいう重力ガン無視のムーブを見るとよくわかるね。
『ですが、確かに妙ですね……何故一気に来ないのか……』
トモさんが呟く。
ボクには難しい戦術とか作戦とかは無理なので、とにかく出てくる敵をモグラよろしく片っ端から叩くしかない。
シンプルイズベストだ!
『ムークさん!ムークさん!おっきいのが来るわ!』
おっきいの……?
「何カ大キイノガ来ルミタイデス!!」
ピーちゃんの偵察結果を大声で周知。
全身に魔力を巡らせて、備える!
『まっくろで、ゴツゴツして、そして――きゃあっ!?』
ぼ、という音がして上空のピーちゃんから火花が散った。
いや、正確に言えばその周囲の半透明な膜……結界からだ!
『止まり過ぎたわ!槍か何か投げてきたみたい……注意して!ムークさん!!』
再び、空気を切り裂く音。
背の高い草原から、黒くて細長いものが次々と飛び出す。
『馬鹿にしないでちょうだいッ!』
ちょっと怒ったような念話を残しつつ、ピーちゃんの姿がブレる。
重力をまるで無視し、飛来する槍を次々と躱していく。
「でかした小鳥ちゃん!ありったけ叩き込めッ!!」
ピーちゃんに向けて放たれる攻撃。
その起点に向けて、もはや見慣れてきたぶっとい矢が続々と打ち込まれている。
大きいってピーちゃんが言ってたし……この群れのボスがあそこにいるんかな?
よし、ボクも続くぞ……!
「オーム・メラウ・ラウロ・カリヴァラ……!!」
ロロンの詠唱を聞きつつ、魔力集中!
口に放り込んだ魔石を噛みつつ、胸に魔力を……ありったけェ!!
がしゃん、と胸の装甲が割れる。
魔石を噛み砕きつつ、更に魔力を!込める!!
「メーラス・バザーラ・ヤクシャ・オダナン……」
後ろの方から物凄い魔力を感じる……!
ロロン、デカいのを撃つ気だね!僕も負けてられない!
「――スヴァーハッ!!」
巨大な円錐状の魔法が飛んでいく……こっちは充填!なう!!
胸の宝石が蒼く輝き、もう溜めていられないほどの魔力が虚空に渦を巻き始めた。
――ぼ、という音。
「ッガ、ハァア!?!?」
草原から何かがボクの方へ飛んで来た。
一瞬過ぎっ詳しくは見えなかったソレ……黒塗りの槍に向けて咄嗟に黒棍棒を持ち上げる。
武器どうしが激突して……ボクは吹き飛んだ。
黒棍棒くんには傷一つないけど、残念ながらボクの運はさほどよくない。
「おやびーん!?」
アカが悲鳴を上げた。
「……ハッハッハ!腕ノ一本ヤ二本クライナントモナイヨ!」
胸の装甲板を閉じ、アカに見えるように黒棍棒を右手で持ち上げた。
片手で、だ。
ボクの左手は手首から下が吹き飛んででいる。
うぐぐぐ……今になって痛みが出てきた!!
「――ブルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
っぐ、この魔力を練った咆哮……さすがにもう二度と動けなくなるのは御免だ!
体表面に、電磁投射砲に回すはずだった魔力を流してて抵抗!
そうしていると、草原の中から何かが飛び出して……ボクの目と鼻の先に着地しようとしている!
こんにゃろ、させるか魔力全開ッ!
すぐさま黒棍棒を構える!
上空に、確かにピーちゃんが言う程の大きな影が浮かぶ。
速射衝撃波を喰らえッ!……嘘でしょ全部弾かれた!?
そいつはボクの目の前に、どずんと着地した。
この姿は……全身鎧を身にまとった何か!
いよいよ長とやらのお出増しかい!?