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第119話 意外と多い、同郷人!

『ええっと、その街は多分首都だね。【ラグレス】って名前だったと思う……ボクらも、そこへ行くよ』


 トモさんペディアのお陰で、スムーズに話が進んだ。

なんとまあ、ピーちゃんの目的地が首都だとはねえ……


『しゅと?へえ、大きな街だったけどそういう名前だったのね!』


 ラーヤもそうだったけど、ピーちゃんも人間の世界にはちょっと疎そうだね。


『虫の人の国に行くって、前に話してたでしょ?……あの時はそれどころじゃなかったけど、後でソレを思い出したらついて行きたくなったの!』


 ああ、そういえばラーヤといる時にそんなことを言った気がしないでもない。

しかし、思い立ったら即行動か……妖精ってすごいね!


『うん、いいよ。一緒に行こうね』


「アカ、ロロン……イイヨネ?」


 2人にも了解をとっておこう。


「いい!いい!」「うぷ……も、問題、ねがんす……」


 ロロンに聞いたのはちょっとかわいそうだったかも……ごめんね?


『ありがと!ありがと!嬉しいわ!』


 ピーちゃんは寝転がったままチュンチュンと鳴いた。

ここから見ると死にそうな小鳥に見えて、なんかちょっとコワイ。


『あ!おしごとにはお給料がいるのよね!……えいっ!』


「ウワーッ!?!?」


 ピーちゃんの胸のあたりの空間が歪んで、ざらざらと原石っぽいけど綺麗な宝石が出てきた!?

ちょっと!ちょっとちょっと!?

こ、これって……空間ナントカ魔法じゃん!?

ぴ、ピーちゃん……ひょっとして凄い妖精さん!?


『……いえ、羽毛の下でマジッグバッグを使った時のような反応がありましたね……どうやら、体に似たような構造をお持ちのようです』


 ……〇次元ポッケ付きのセキセイインコだって!?

なんだよそれ、属性モリモリじゃん……!


 いや、いやいやいや、それどころじゃない今は!


『多すぎ!多すぎだよ!!そんなにもらえないってば!?』


『あらそう?只人さんたちのことは全然知らないのよ! でも気にしないでいいのよ?この綺麗な石、集めてはいるけど別に使わないもの!』


 ……根本的に、貨幣価値とか相場とかないんだろうか、妖精さんの世界。


『ふむ……ですが見たところそれほど価値のある宝石は含まれていませんね』


 あら、そうなの?


『ええ、ラーヤさんから頂いたモノよりも大分劣ります。そうですね……概算ですが、総額で50万ガル程でしょうかね?』


 多 す ぎ る ! ?


『……あのね、ピーちゃん。ボクはそんなにもらえないよ……いくらキミたちにとって価値があまりなくってもね、それに乗っかって全部貰いますってわけにはいかないよ』


 ラーヤの時は断り切れなかったけど、っていうか気が付いたらバッグにねじ込まれてたけど!

今回はちゃんとしなきゃ!

そりゃあ、ボクだってお金は欲しいけど……これは、明らかに貰い過ぎだ。


『ボクらを信頼して、お仕事の話をしてくれたんだもん……その石1つか2つでいいよ?』


『あら~、気にしなくていいのよ? ムークさんって欲がないのね! 只人さんたちはみいんな欲深だ~!っていう仲間もいるのに!』


 ……あ、やっぱり人を嫌ってる妖精さんもいるっぽいね。

しょうがないか、例のクソ人間みたいに……妖精を珍しいペットくらいにしか考えてない連中もいるし。

人類は愚か……


「……1個カ2個デイイヨネ?ロロン……ロロン!?」


 ロロンが目を開けたまま気絶してる!?

あああ、宝石ザラザラに耐えきれなかったか……!

うん、そのままゆっくりお休み。

後はボクがやっておくから……とりあえず毛布かけとこ。


『あら!ロロンさん疲れてたのね!』


『……ウン、ソウダヨ』


 ロロンの頭をポンポンし、見開いたままの目を閉じさせ……同時に溜め息を吐くボクであった。


「ふみゃ……んみゅ……」


 アカも気が付いたら寝てる……寝つきがいいな、この子も。


『えっと……ピ-ちゃんも寝る?』


『大丈夫よ!アカちゃんはまだ生まれたてだから寝る必要があるけど、わたしたちは気分で寝たり寝なかったりするの!』


 便利な生き物だな……妖精って。


『……アカちゃんもロロンさんも寝ちゃったわね!ねえねえ、ムークさん!』


 ハイハイ、なんでしょ。

もう仕事の話は終わったから、雑談かな。

ボクもまだ眠くないから付き合お――



『――あなたも日本から来たんでしょ!』



 ……なん、だって?

今、今なんて言った!?

なんで、日本を知ってるの!?


『……ええっと、ニ、ポン?なんのことかな?』


 別にバレてもいいけどさ、妖精相手だし。

でも、なんでわかったんだろう……鎌をかけてみるか。



『――隠さなくっても大丈夫!わたしも同じだから!』



 ……え、ええ!?

ええええええええええええ~~~~~~~!?!?!?



・・☆・・



『落ち着いた?』


『うんまあ、だいぶ』


 アカとロロンが寝ているし、時刻はもう夜。

なんとか大声を出さないように我慢したけど……


『あの、ピーちゃん。なんでその……ボクがそうだって思ったの?』


 とりあえず聞く。

体もむしんちゅだし、前の時も前世の話とかしなかったのに……!


『あら!ムークさんわたしのことを見て、小さく【セキセイインコ】って言ったじゃない!あの呼び方をするのって、この世界の人じゃないわよ?』


 ……そ、そこかァ~!!


 完全に!完全に盲点だった!!

たしかにそんなことを言った気がしないでもない!

声に出てたんだ……


『でもね、隠してるみたいだから黙ってたの!ラーヤルーラ様もわかってないと思うわ!』


 ……なんていいインコさんなのだ、この人は。


『それは……ありがとう』


『別の世界なんて……説明が難しいものね!わかるわ!』


 わかってもらえた。

ボクの場合はチョット特殊だけど……それでも、転生とかを説明するのはとっても難しいし、面倒臭い。

なにより口がアレなので、ロロンに説明するのがね……いつか、もっとペラペーラになったら教えるのもいいと思うけどさ。


『ちなみに、わたしは関西地方に住んでいたのよ!』


『へえ……あの、人間だったの?』


 ボクみたいに元人間?かもしれん。


『違うわ!日本でもここでも、わたしはずうっとインコのままよ!』


 あ、そうなの?


『わたしはね、気が付いたら……さっちゃんと一緒にこの世界にいたの! お部屋でさっちゃんと遊んでたのに、不思議ね!』 


『さっちゃん?飼い主さんかな?』


 事故ってわけじゃないのか……転生システムがとんとわかんない。

召喚って感じなのかな?


『そうよ!さっちゃんはとってもかわいくて、賢かったの!』


『ほほう……一緒に来れたのはよかったねえ』


 ボク、1人だけだったしね。


『……ひとり~?』


 トモさんがいたからぜんっぜん寂しくなかったけどね!100人力だったもんね!


『……んふふ』


 めっちゃにやけてる気がする、この女神様。


『ええっと……ひょっとしてさっちゃんさん?と一緒に来たのがトルゴーンだったの?』


『そう!その頃のわたしはまだ妖精じゃなかったから、ぼんやりした記憶なんだけどね!周りにムークさんみたいな人がたくさんいたわ!』


 あらら、そうなん?

じゃあ、どのタイミングで妖精さんに?


『さっちゃんはとっても頑張って……小さな雑貨屋さんを始めたの!わたしも客引きで一生懸命働いたのよ!』


 その頃を思い出したのか、ピーちゃんは懐かしそうに目を閉じた。

……すごいな、さっちゃんさん。

右も左もわからない上に、むしんちゅさんっていう異形まみれの国でお店を立ち上げるなんて。

ピーちゃんが言うように、とっても賢い人だったんだね。


『でもねえ、わたしってただのインコでしょ? だから何年かすると寿命が来ちゃって……さっちゃんの手の中で動けなくなっちゃったの』


『ああ、それは……』


 さっちゃんさん、とっても悲しかったろうな。

唯一、地球から一緒に来た相手が死んじゃったんだもん。


『でもね、気が付いたら……なんか、こうなってたの!』


『そんな簡単になれるんだ、妖精……』


 アカが芋虫から妖精に進化した的な?

いや、でもセキセイインコにそんなポテンシャルはないよね?


『年を経た動物が妖精に昇華する現象は、いくつか確認されていますね……むっくんの進化と同じように、詳しくはわかっていないことですが。恐らく、私でも及びもつかない上位存在の介入のようなものでしょうか』


 ほんまもんの神の奇跡的な感じってこと?

世界は不思議に満ちているなあ……


『それで、さっちゃんが亡くなるまで一緒に暮らして……それが悲しすぎて、わたしはあの街を出たの。もうあれから何年になるかもわかんないわ……でも、やっと心の整理がついたからもう一度行ってみたいのよ!』


『そっかぁ……親友のお墓参りって感じなんだね。でも、何も残ってないかもしれないよ?』


 妖精さんってむっちゃくちゃ長生きみたいだし、時間の感覚も違うよね。

そのお店が残っているかどうか……


『それならそれでいいの!さっちゃんの子供たちが残ってたらいいんだけど……それも、わかんないわ!』


『子供!?さっちゃんさん、こっちで結婚したの!?』


 っていうか人間と虫人さんってこう……その、子供作れるの!?


『結婚ってなに?』


『ああ、えっと……ツガイ?』


 こっから説明しないといけないのか。


『ああ、違うわ!さっちゃんは親を亡くした子供たちをたくさん引き取ったのよ!その頃にはお店もとっても大きくなって、その脇にあった大きな建物に子供がいっぱいいたの!みんなかわいかったわ~!』


 あ、孤児院的な感じか。

うわーびっくりした。


 っていうか、そんな孤児院を経営できるくらい成功したんだ……

さっちゃんさん、凄いな。

どんな人だったんだろ。


『むっくん、さっちゃんさんの名字を聞いてみてください。それでなにかわかるかもしれません』


 あっはーい。


『ねえねえピーちゃん、さっちゃんさんのお名前ってどんなの?苗字とか知りたいな』


『みょーじ? 全部の名前はね……【ミカモトサチコ】よ!』


 ほうほう、珍しい苗字ですな……お名前はやっぱりサチコか。

さっちゃんって言うとだいたいサチコなんじゃないのかな。


『検索完了……これですかね、トルゴーンの主な商家の一つに【ミカーモ】という名があります。長い時間で、トルゴーン流の名前に変遷したのかと……今でも孤児院の経営は続けているようです』


 ……むっちゃ大家になっとるじゃんか!?

すごいなさっちゃんさん!? 

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― 新着の感想 ―
トルゴーンにはピーちゃん関連のあれこれがあるやーつw そしてトモさん可愛い(・∀・)
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