第115話 こんにちは!若干新しいボク!!
『所要時間は8時間弱……今回の進化も無事に終了しましたよ、むっくん』
うん、ありがとうトモさん。
あのさあ、さっきボク寝てる時になんかあった?
『特に変わったことはありませんでしたが……何かありましたか?』
そうなのよ。
ボクの前世かどうか定かではないんだけど……なんかさ、地球っぽい所の夢見たんだよね。
どっかの神社みたいな場所でさあ。
アレってボクの前世なんじゃろかね?
『ふむ……今回は黒棍棒やハンマーの時のような魔力振動数は確認できませんでしたので……むっくんの記憶を反芻したのかもしれませんね』
ボクのアレになった脳に残ってたんかな……むむむ。
もしくは、やっぱり前世に見たホラー映画を悪夢に変換したのかもしれんね~……
――まあいいや!
『よいのですか?』
うん!
だって今考えてもどうしようもないし!
それになにより、今は進化の確認が大事でしょー?
『……それでこそ、私のむっくんです!しょうがありませんね……生きてて偉いのでトモさんポイントを付与します』
どんどん付与のハードル下がってない?
ま、まあいいけど。
さて……確認をお願いしまs
「おやび~ん!」「ムゴゴゴ」
テントの外からアカが帰ってきた。
兜に突撃はやめろください!
「たべて!た~べ~て~!!」「アムムムム」
そして口にねじ込まれる硬いパン!美味しい!!
進化する前に信じられないくらい不味い魔石食べたからより美味しい!!
ばりばり、さくさく。
「じゃじゃじゃ!また姿ば、変わられたでやんす! はぁあ~……ええ男振りでござりやんすぅ!!」
鍋を抱えたロロンもやってきた。
ほほう!どうやら今回も姿が変わったらしいね!
さっそく確認を――
「ごはん!ごはんたべよ、たべよぉ!」
「……食ベル~!」
アカのお願いには逆らえないね!しょうがないね!
かわいい子分だからしょうがないね~!!
・・☆・・
「ホホウ……」
快気祝いとはちょっと違うけど、豪華な朝食を食べて……今ボクは、テントの横にある岩に腰かけている。
ロロンは川に洗濯へ、アカは空に芝刈り……じゃなかった、遊びに行ってる。
今も見える範囲を飛んでいるけど、ちょうど鳥と追いかけっこをして遊んでいるようだ。
アレってピーちゃんじゃないよね?普通の鳥だよね?
まあいい、そして……ボクの目の前には、トモさんが表示してくれたスキルボード。
反射率を上げた鏡の状態だ。
そこに見えるボクは……今までとちょっと変わっている。
まず、なんとなく身長が伸びたみたい。
身長170後半……ってくらいかなあ、前よりも5センチ前後は伸びたね!嬉しい!
兜とか頭の形状は変わっていないし、胸の鎧も同じだ。
主に変わったのは、手足だ。
「ゴツクナッタナァ……」
まず左腕の肘から先が、若干太くなってる。
より頑丈そうに見えるよね!
そして……それ以上に変わったのが、棘!
――今までは1本だった棘が……なんと!3本になった!
側面に2つ、手の甲側に1つ。
攻撃力の高そうな棘が並んて、等間隔に装着されてる!
これは……格好いいし、なにより攻撃力が3倍になった!
赤くはなってないけど、3倍!
早速試してみたいところだけど、それは後!
両足の膝から下は、以前の装甲に追加でパーツが付いたよ~……的な感じ!
なんか細かい線とか入って、できのいいプラモデルみたいになった。
そして、数は変わってないけど棘にも変化が。
前より太くなって、側面に付いてる返しもより凶悪な感じに!
……布とか引っ掛けないように注意しないとね。
テントとか破いたら大変……とか思った瞬間に!腕も足も側面の棘が引っ込んだ!?
びっくりした……あ、また出た。
これは魔力を消費しないみたいだね……地味に便利!
残る右腕は……特に変化はない。
肘から下がゴツくなったのは左腕と一緒だけどね。
「デモ羽ハナイ、ト……」
ぐるっと回ったけど、ゲニーチロさんみたいな羽の収納部分は増えてないね……
ひょっとしたらボク、羽が生えるタイプのむしんちゅじゃないのかもしんない。
……よく見ると背中にも線が増えてるね。
なんだろ、進化して造形も格好よくなったってことかなあ。
「ドッコイセ」
まあとにかく、外見の変更点は以上!
腕が増えたりはしてなかった。
『残念ですね、むっくんの性癖が満たされなくて』
そんなんじゃないやいっ!!
……さあ、嬉し恥ずかしスキル確認の時間だよっ!
テンション上げていきましょ!テンション!!
『はい……それでは、どうぞ』
ブン、とスキルボードから音が出て……鏡状態は解除された。
お久しぶりのスキル表くん、おかえり~!
・個体名『むっくん』
・保有スキル『複合視覚補助』『魔力吸収最適化』『衝撃波(大)・全方位』
『高性能姿勢制御』『隠形刃椀・超振動』『撃発螺旋刺突棘・二段・任意射出』
『連環撃発棘・二段・電磁赤熱化』『耐衝撃・対魔法複合高密度甲殻』『魔素凝縮電磁投射砲』
――ひゃああ!?
む、むっちゃ増えてる!?
増えてるというか……前からのスキルが進化してる!?
こ、これは一刻も早く確かめねば!
トモさん!一緒に確認しましょ!そうしましょ!!
『ふふふ、はい』
ええっと……視覚とか魔力吸収は前と変わんないね。
あれ?衝撃波の項目にあった磁界電磁投射砲が……独立してる!?
『魔素凝縮電磁投射砲』ですって!?ですって!?
むっちゃ強そう!トモさんこれなーに!?
『ふむふむ……以前は触角から放っていたモノの、放つ場所が変わって独立したようです。むっくんの戦闘経験をフィードバックしたのでしょうか……本当に、進化とは興味深い』
撃つ度に触角崩壊してたもんね……じゃあ、どこから撃つの?
『その前に全ての確認を終えましょう』
あっはーい。
ええっと……『高性能多椀・二足制御』が『高性能姿勢制御』になってる。
これも複合したのかな。
『むっくん、足に意識を集中して魔力を通してください』
え、うん。
むんむん――おほぉ!?
足の側面の装甲板が開いた!?
なんかこう……追加パーツがガシャン!って感じで!?
なにこれかっこいい……!脚の側面に小さい翼ができたみたいだ!
ついに、ボクにも翼が!!
『脚や胴体、背中の装甲が展開するようになりましたね。コレは衝撃波での高速移動中に姿勢制御をする補助翼のようなスキルのようですね……残念ながら、自分から羽ばたいて飛ぶような翼ではなくグライダーのようなものですが』
あっふーん……戦闘機のら、ラダー?みたいな感じか。
衝撃波回避、細かい姿勢制御ができなかったからありがたいけどさ……いつかは自由に空を飛んでみたいなあ。
んで、『隠形刃腕』に『超振動』……?
まあ、これはなんとなくわかるかな……展開っと。
しゃき、と肩甲骨の下から展開した隠形刃腕は……ああ!関節が1個増えてて若干長い!
より細かく動かせるようになったのね……体刻まないようにしなきゃ。
そして、展開した刃椀に魔力を流すと……重低音を響かせて、先端の刃部分が残像が見えるくらいの勢いで振動し始めた。
『以前から魔力を流すと強度と切断力が増加しましたが……今回はさらに切断力が上がったようです』
わかりやすくっていいね!
使いこなせるようにしなきゃ……より簡単に体をサックリいかないように!
んでんで、腕と足のパイルに……『螺旋』の文言が追加されてる。
ど、ドリルってことォ!?
なんか、虫ヒーローなのかスーパーロボットなのかわかんなくなってきたね……
『発射時に弾道を安定させ、敵により効率的にダメージを与えるようになったようですね』
地味だけど便利だ!
棘もより凶悪になったし、威力は上がったろうねえ。
これも、後で試さなきゃ。
ええっと……そんで、腕のチェーンソーには『電磁赤熱化』が追加されてる。
これもなんとなくわかるかな……展開っと。
ジャキキ!と突出した棘に、魔力を流す……ヴンヴン回転し始めた。
『もっと魔力を流してください』
はーい……むんむんむ……ムムム!
あっすごい!棘の回転に稲妻が追加されて……ふわぁ!棘が、真っ赤に!
熱気を感じるけど、腕は熱くない……どうなってるんだろ、これ。
ともかく、以前と使い心地は変わらずに威力だけ上がったってことか!
これも地味だけど、確かな進歩だね!
『あの芋虫だったむっくんが立派になって……! 私はとても嬉しいです!』
トモさんが嬉しそう!
トモさんが嬉しいと、ボクも嬉しい!
『――男振りが上がりましたね。なんと素晴らしいことか、虫よ……精進なさい』
ヴェルママぁあ!?
『まだ遠隔神託です……私の個人周波数をどこで知ったのでしょうか。ちょっと寒気がしますね……』
親会社の役員さんだしねぇ。
下部組織の個人情報とか筒抜けなんじゃろねえ。
『孫請け零細女神ですからね……私』
なんかOLみたいですなあ。
さて、これで確認は終わりだから……試運転するかな。
トモさんトモさん、例の『魔素凝縮電磁投射砲』を試しましょ、そうしましょ。
『そうですね、間違いなく現状のむっくんが扱える最高ランクの攻撃手段ですから……私から指示を出すので、その通りに』
りょ、了解です!
『方角は……そうですね、あの大きな岩に向きましょう』
草原の端っこにあるあれのこと?
100メートルくらい離れてるね。
大きさは10メートルはないね、7~8メートルって感じか。
『流れ弾のことがありますので、空に向かって斜めに撃ちましょう』
はーい!
足を肩幅に開き、両足パイルで固定――うっひゃ!?
ドリルのお陰か、無茶苦茶地面に固定された!
『続いて足と上半身に魔力を。補助翼を展開して衝撃に備えます』
よっしゃ、むんむん……展開ッ!
ふくらはぎ、腰、そして肩と背中の装甲板が展開。
これ、絶対格好いいだろうなあ。
ああ、異世界ビデオカメラ自撮りしたい!
『こら、気を逸らしてはいけませんよ』
あっはい!
よし、これで準備は整ったけど……どこから撃つんだろ。
『胸の装甲に魔力を流してください』
胸に?
はーい……むんむん!
「オワァアッ!?」
その瞬間に、ボクの胸の装甲板が真ん中から2つに……割れた!?
こ、これは、まさか……〇レスト〇ァイアー!!