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第113話 進化に向けて!

「ウムムム……」


 がやがやと騒がしい喧騒の中で、腕を組んで考え込む。


「ドレニシタモンカ……?」


 ボクの目の前には、色々な依頼分が貼り付けられた掲示板がある。


「ヨリドリミドリ……!!」


 ここは、冒険者ギルド。

今日の日銭を稼ごうと息巻いている冒険者さんの中で、ボクもまた悩んでいるのであった。


『おやびん、おやびん』


『なんざんしょ』


 ここは冒険者さんでひしめいているので、アカはマントの懐に避難している。


『どこいく?うみ?うみぃ?』


『海はねえ、無茶苦茶遠いからねえ……ぴゃっとは行けないなあ』


 トルゴーンよりも遠いもん。

しかも、雑な世界地図で確認したら……トルゴーンから山を下りないといけない。

つまり、ここから行くとすると山脈を2回横断する必要がある。

ウォーキングついでに行くにはちょっとロックすぎる。


『だからごめんね、アカ。でもいつかきっと見に行こうね』


『あーい!いっしょ!おやびんといっしょ!』


 フフフ、可愛いことを言う子分であるよ。

色んな所に連れて行ってあげたいねえ。


 さて、さてさて依頼だ。

なーんか、適当なのってあるかしら……

ちなみに今はお昼前なので、若干人は少ないらしい。

朝が一番混むって、マーヤが教えてくれたしね。


『下水掃除 期間1日 日当500ガル』


 ……げ、下水には嫌な記憶しかないや。

しかも給料がお安い!


『庭掃除 期間半日 300ガル』


 今回向きの依頼じゃないなあ。

庭掃除の相場はわからないけど、草原狼くん1匹分くらいのお値段だね。

……ボクがひ弱虫なら、街の中でこの手の依頼しかこなせないだろうなあ。


『倉庫品出し 期間1日 日当1000ガル』


 あ、ロドリンド商会って書いてある。

ここにも当然大きい倉庫があるんだね……ドラウドさん元気かな。

日当が高いけど……今回向きではない。


『もう我慢できないので突っ込みますね。むっくんが見ているのは街中の依頼を集めた掲示板ですよ』


 ……へ?


『ロロンさんが一生懸命ジャンプして見ている所、あそこが野外依頼の掲示板です』


 ほんとだ!?

ロロンがぴょんぴょんジャンプして、前にいる冒険者さんたちの肩越しに見てる!?

ボクはとっても恥ずかしい!!

待ってろロロン!今行くぞ~!!


「んぎぎぎ……もうちくっと背が欲しいのす……!!」


 涙ぐましい努力をしているロロン。

その後ろに立つ。

ごめんね無理させて……!


「ロロン!ボクニ任セロ~!」


「じゃじゃじゃぁ!?」


 素早く肩車の体勢に移行。

細かく振動するロロンを、サッと肩に乗せた。

ふふふ、ボクも日々進歩しているのだよ……!


『セクハラ虫はきょうも絶好調ですね?』


 ちがわい!

ロロンはその、ちっちゃい親戚の子供的な感じだと思ってるからボク!

全然問題ないでしょ!?


『それをロロンさんに言ったら私はむっくんの両腕を遠隔で爆破しますからね』


 なにその神罰は!?

え、そんなんできるのトモさん!?

怖すぎるんですけど!?


『今はできませんが、できるようになってみせます……女神の、怒りで!』


 そんなことに情熱を燃やさんといて~!!



・・☆・・



「フムフム……『偵察依頼』トキタカ」


「んだなっす。コレなら討伐目標や数の指定は無がんす」


 ロロンを肩車してフラフラすることしばし。

彼女は顔を真っ赤にしながら、掲示板の上の方の木札を取った。


「これならば、我らの目標にはもってこいでやんす。早速受領して……あ、あの、下ろしてくださっしゃい~!」


「ア、ゴメン」


 ロロンを床に下ろすと、彼女は小走りに受付の方へ。

おお、人ごみをすり抜けるのむっちゃ上手!


『あの場所なら人気もありませんし、いいでしょうね』


 トモさんも太鼓判を押してくれた。

そう、今回依頼を受けたのは……お金を稼ぐためじゃない。



『2日間ほど見ておけば大丈夫だと思います。むっくんの『進化』には』



 トモさんが言うように、今回の主目的は『進化』だ。

そのために、カモフラージュの依頼を受けに来たんだよね。

いや、依頼を受けずに出てもいいんだけど……それは無茶苦茶もったいないじゃん?

お金って……あればあるだけいいんだしさ。


 ゲニーチロさんから貰った魔石は、随分といいものらしい。

なので、トルゴーンに向かうというイベントの前に……いっちょ、強くなっておきたいんだ。


 衛兵隊本部だと人が多いしむしんちゅさんもいっぱいいたし、宿も人の目がある。

変な人はそうそういないとは思うんだけど、やっぱりみられる人間は減る方がいいもんね。

ボク、むしんちゅでも魔物でもないし。

研究対象とかにされたら大変だ。


 長い距離を行くときに何が出てくるかわかんないし……最低でも、カマラさんとロロンを抱えて逃げられるように……準備はしておくに越したことがない。

トモさん曰く、今のボクは『そこそこ強い』らしいけど……せめて『まあまあ強い』くらいの虫になっておかんとねえ。


 あ!そういえばトモさん。

今回の魔石ってむっちゃいいものなんでしょ?

モリモリ貪ったら二段進化とかできないかな!?

一気に強くなれるよ?


『――死にますよ』


 なんて???


『そもそも進化とは、体にとんでもない負担がかかるのです。だから強制的に睡眠させ、緩やかに形態を変化させるのです……以前、痛覚遮断もなしに進化したのを忘れましたか』


 あの頃はまだアカしかいなかったんよね。

思えば遠くへ来たもんだ……


 でも、あの思いは二度としたくないや。


『それを複数回一気とは……進化の最中に動けぬまま餓死しますよ?わかりましたか?』


 はい……肝に銘じます。

進化は1回ずつ、虫覚えた。


『何事も、楽して最強!ということはありえません。異世界は甘くないのです』


 仰る通りでございますぅ……

ゲームや漫画みたいにはいかないねえ。


「戻りやんした!」


「オカエリ~」


 ロロンが帰ってきたから移動しよう。

ここ、まだ混んでるし。

今更だけど無茶苦茶汗臭いし……みなさんお風呂とか入ってます?


「ゴハン行コッカ」「はい!」「ごはん!ごはーん!(小声)」 


 さーて、どこに食べにいこっかな~。



・・☆・・



「……ここら辺りがいいと思うのす。見晴らしばええし、魔物の気配も無えのす」


「おそら!おそら~!」


 草原の空き地にいる。

ガラハリの西門を出て、そのまま2時間くらい?歩いた所だ。

いい天気だからか、アカは早速遊覧飛行に出かけた。


『怖いのいたら戻ってくるんだよ~、そのまま戦っちゃ駄目だよ~』


『あいっ!』


 念話で注意しつつ、ポーチに手を突っ込んで……むん!テント!そして調理用具!!


「ハイドウゾ」


「ありがとうござりやんす~!」


 あれから軽食をとって、そのまま街を出た。

ここでキャンプしつつ、進化の準備に入るんだ。


「一から煮炊きも久しぶりでやんす!腕が鳴りやんすよ~!!」


 ロロンは自前の背嚢から市場で買い込んだ野菜やお肉を取り出し、やる気満々だ。

ボクとしてはなんでもしてくれて最高の環境だったけど、この子は自分で働きたいからねえ。

親分よりもよっぽど親分してないかしら、ロロン。


「水ヲ汲ンデクルネ~」


『魔法具……創水の魔法具……』


 そうでした!

買ったんだった、アレ!!

さっそく試運転だ!


 ええと……クソデカフラスコの側面の入れ物に、適当な魔石をコロン。

すると……おお!なんか魔力が動いてる感じがする!

こうして蓋を開けておくと、大気中の水分を集めて水が溜まるんだよね~!便利!

コレで水くみいらずってわけじゃん!

クオリティオブライフ~!


 ……ん?

全然水溜まってなくない?

まさか……故障!?


『店長さんのお話、聞いていましたか? その魔法具はじわじわ水が溜まるのです……一気にジャポン!とはいきませんよ』


 そういえばそうだった……

じゃ、じゃあ改めて……


「水汲ンデクルネ……」


「ムーク様、どこかお加減でも……?」


「ウウン、元気、超元気……」


 近くに小川があるし、別に苦じゃないけどね。

先走り過ぎてお恥ずかしい……ボクはテンションが上がるとちょいちょい注意力がお亡くなりになるね……

ロロンやトモさんみたいなしっかり者が近くにいてくれてよかったよ……


『まあ!そんなに褒めてもトモさんポイントしか出せませんよ?』


 それで十分だと思うな、ボク。

さて……ご飯を食べたら、いよいよ魔石ボリボリの時間だ。

果たして進化はしっかりできるんだろうか。

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― 新着の感想 ―
いよいよ進化 楽しみです!
とうとう◯◯ダーキック! ◯◯ダーパンチ! リボル◯イン!! もしくは、シャドーな月に進化かな!? 楽しみが過ぎる!
継続充填式だったか…魔導具
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