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第104話 丸く収まった……と、信じたい!


「ムーク様」


「ッヒ!?……アア、イセコサン」


 夕ご飯の後、中庭のベンチで寝転がっていたら……イセコさんが現われた。

文字通り、虚空から。

ちなみに本日の夕ご飯は湿地蜥蜴の焼肉でした……超美味しかった!!

元気になったら狩りまくろう!!


「ナンデショ?」


「……私は、自分を見失っておりました。数々のご無礼、お許しください!」


 そう言うなり、イセコさんはガバっと土下座的な体勢になった!?

な、なんですかいきなり!?


「無礼サレタ記憶ガナインデスケド……」


 お風呂のことはノーコメントです。

無礼というか、恥ずかしかっただけだし。


「……命をお救い頂いたにも関わらず、ムーク様の意思を無視し……このイセコ、とんだ不調法もので御座いました!!」


 あ、ようやく気付いてくれたのね。

うんうん、よかった。


「イヤイヤ、気ニシナイデクダサ……」


「――よって、この腕を捧げ奉ります」


「――ナンデ!?!?」


 ヒィ!?イセコさんの左腕ブレードが展開!?

そのまま右腕を――切断、キャンセル!!

咄嗟にチェーンソーを展開し、右腕を斬り落とそうとするイセコさんを止める。


「む、ムーク様、何故……」


「ムガアアアアアッ!!何故!?何故ト申シタカ!?」


 ギャリギャリ唸るチェーンソーに負けないように、怒鳴る。

このよくわかんない展開を差し止める、魔法の言葉を!!


 すなわち――


「――助ケテ!!ナハコサアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!」



・・☆・・



「――阿呆ですか、イセコ」


 ナハコさんはすぐに飛んできて、ボクらの状況に気付き――イセコさんの首筋に手刀を落として昏倒させた。

漫画とかアニメ以外ではお目にかかれない絶技に感動しているボクを尻目に、あっという間に魔法の鎖を生成してイセコさんを拘束。

溜息をつきつつ、中庭に生えていた大木の枝に……ミノムシよろしく、彼女を吊るした。


「貴方の腕なんて貰っても、ムーク様は喜びません!色々と……色々と!先走りすぎよ!!」


「うう……」


 意識を取り戻したイセコさんは、半泣きで枝にぶら下がっている。


「おやびん、あれ……あそび、あそびぃ?」


「タブンソウ、部分的ニソウ」


『部分的とは……?』


 上空の遊覧飛行から戻って来たアカが、ボクの肩で首をひねっている。

教育に悪いな……あ、でも騎士エルフ?でも見てるか、アカは。


「まったく……貴方は昔から思い込みが激しいんだから!いい!?私、さっき言ったわよね!?ムーク様はそんなこと望んでいないって!!」


「で、でも……」


「でも!じゃぁ!!なァい!!!!」


 ナハコさん……さすが黒子さんのリーダー的立場だけあって、怒ると怖いや。


「ただでさえ例の【種】被害者が辞める辞めると言って大変なのに……私の身にもなってちょうだい!!」


 た、大変そう……ゲニーチロさんも言ってたもんねえ。


「貴方を命懸けで助けたムーク様に!貴方がご迷惑をかけてどうするのっ!!」


「う、ううう……だ、だって……!!」


「だってじゃ、ありませんっ!!」


 ……この2人、なんか仲いいよね。

対外的な態度と違って、友達同士の喧嘩みたいだ。

なんかこう……学生っぽい。

ひょっとして……ボクが考えてるよりも若いのかも。

絶対に……絶対に口には出さないけどね!

女性の!年齢の!話はね!!


『賢明ですね。命拾いしましたよ……地球でもここでも、その話題はタブーですから』


 ……やはり、そうであったか……


「ムーク様」


「アッハイ」


 なんでしょう、ナハコさん。


「ご迷惑をおかけしました……イセコはこのまま反省させます」


 このままァ!?

頭が下になってるんですけど!?


「ああ、ご心配なく。我らは特殊な訓練を受けておりますので……3日は大丈夫です」


「ソ、ソウナンデスカ……」


 ニンジャってすごいな……


『忍者も死にますよ、普通は』


 むしんちゅってすごいな……


「ささ、上ではお風呂が沸いておりますので。ごゆっくりお入りになってください」


「おふろ!おやびん!おふろ~!」


 アカもすっかりお風呂好きになっちゃって……まあね!嫌いなヒトなんていないよね!!

じゃあお言葉に甘える……その前に。

カワイイミノムシと化したイセコさんに近付く。

ちょっと言いたいことがあるんだ。


「イセコサン、ボクハネ……アナタヲ助ケタケド、ソレハ、イツモヨクシテクレタカラナンデスヨ」


「え……?」


 逆さになって涙目のイセコさん、申し訳ないけどちょっとかわいいや。


「昔、エルフサンニ教エテ貰ッタンデス、『情ケハ人ノ為ナラズ』ッテ言葉。ダカラネ、コレ普通ノコトナンデスヨ、ボクニトッテネ」


 なんでもかんでも丸投げしちゃってごめんなさい、エルフさん!

でも便利だからこの先も使うと思う!!

おひいさま像にお祈りしまくるので許してください!!


「ダカラモシ、ボクニ恩義ヲ感ジテクレテルナラ……他ノ困ッテイル人ニ、同ジヨウニシテアゲテ下サイネ」


 巡り巡るうちに、チョット優しい世界が出来上がるかもしれないね。


「ソレジャ、マタ。美味シイスープガ楽シミデス……茸ノガ、特ニ好キデスヨ」


 それだけ言って、お風呂に向かうことにした。

……柄にもなく難しいことを言ったから、ちょ~っと背中がむず痒いや!


「……ムーク、様……」


 お?なんか聞こえ――


「きのこ!きのこ、しゅき!」


 なんだアカか。

ボクも好き~!!毒走り茸!!以外!!


『絶好調ですね、コマし虫』


 失敬な!!ボクはそんなに器用じゃございませーん!!




・・☆・・



「む、むむむむムーク様!今晩はワダスがお背中を流しやんすゥ!!」


「……アカ、今日ハ是非ロロンノ背中ヲ流シテアゲナサイ」


「あい~!」


「じゃじゃじゃァ!?」



・・☆・・



「おやまあ、半死半生だって聞いてたけど元気そうじゃないか」


 明けて、翌日。

いつもより美味しい気がするスープで朝食をキメた後のこと。

なんと、カマラさんが訪ねてきた。


「おばーちゃ!おばーちゃ!」


「アカちゃんも元気そうだねえ」


 え、北街って部外者立ち入り禁止なんじゃ……?


「カマラさん、どうやって北街にいらっしゃったのす?」


 あ、ロロンが聞いてくれた。


「ああ、ゲニーチロ閣下のお陰さね……商売だよ、商売」


 そう言って、カマラさんは懐からタリスマンを取り出した。


「前に買ってもらったんだけどねえ、気に入ってくれたようでさ。他の部下の分も欲しいんだってさ」


 ほほう……あのゲニーチロさんが認めたタリスマンですと。

やっぱり腕がいいんだねえ、カマラさん。


「ムークちゃん、今回も面倒ごとに巻き込まれたねえ……たまげた星の下にうまれたもんさね、アンタ」


「ナ、ナンノコトデショ」


 ……一般レベルには今回の騒動、内緒になってるってバレリアさんが言ってたけど!?

なんかみんな酔っぱらってたのと、北街に通じる道は全部封鎖されてたから目撃者もいないらしいし!


「長生きするとねえ、耳が悪くもなるけど……ある意味良くもなるのさ」


 にや、と笑うカマラさん。

……底が知れないねえ、この人。

裏の情報網とか、闇の情報屋さんとかがいるんでしょうね。


「ま、済んだことは気にしなさんな……ホレ」


「ワワ!?」


 地球のお守りに似たタリスマン飛んできた。


「ムークちゃんには色々世話になったからサービスさね。そいつは体内の魔力循環を正常に戻す効果があるよ」


 なんてタイムリーなタリスマン……!!


「本当は子供向けに使うもんなんだけどね。生まれつき魔力が多い子供がかかる【魔素病】って病気の治療に使うもんさね」


 生後一年未満なので問題はナッシングですよ!!


「おばーちゃ!これ、これあげゆ~!」


 アカがクソデカオレンジを持って突撃した。


「あらまあ、立派なガオンだこと。ありがとうねえアカちゃん、一緒に食べようか」


「たべゆ!たべゆ~!」


 アカはカマラさんの肩に座り、仲良くオレンジ……ガオンを食べ始めた。

スケールも種族も違うけど、祖母と孫みたい……微笑ましいねえ。


「ああ、そうそうムークちゃん……アンタ、護衛の仕事をやってみる気はないかい?」


 ……ムムム?

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― 新着の感想 ―
コマシムシ…。護衛依頼…。老若男女問わず。 成程。更なる高みへですね。分かります。
んお、そろそろ次の街への移動クエストですねー。 おばあちゃんの護衛なのか、誰かを紹介されるのか。
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