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第100話 新顔の女神様と、無事な皆さん。

『起きなさい……起きなさい虫よ』


「ムニャム……」


 んんう……あと48時間ん……


『そんなに寝たら溶けてしまいます。起きるのです虫よ』


 んにゃあ……なんだいトモさんや。

今日はなんか声のジャンルが違うねえ……クール系のイメチェンですかァ?


『むっくん!むっくん!お願いだから起きてください!トモさんポイントあげますから!!』


 お、おお!?

なんかサラウンドになった!?

トモさん分身しました!?


 体を起こす。

むむむ、どこも痛くない!?

包帯と御札まみれだけど、たぶんお腹の傷も完全に塞がってる!?

……誰か治療してくれたんかな。


 ここは……どこじゃろ。

なんか保健室っぽい感じ。

薬品の匂いもするし……あ、アカがいる。

枕元で、枕に全身で抱き着いて寝てる……

目元が腫れてるなぁ、心配して泣いちゃったのかなあ。


「ムーク様ァ……おもさげながんすぅう……」


 ……椅子の上で器用に丸まって寝るロロンもいる。

なんてバランス感覚だ……


 しかし、窓がないから時間がわからないなあ。

トモさーん、今何時……


『起きましたか、おはようございます、虫よ』


 ……誰ェ!?

えっ誰ぇ!?

このちょっと冷たい感じがする綺麗な声は誰ェ!?


『やっと起きましたか……むっくん、こちらは女神メイヴェル様です』


『メイヴェルです。初めまして虫よ』


 起きたら大変な状況になってるんですけお!?

え、ええと……は、はじめまして!むっくんと申します!!


『女神トモから聞いています。良き名をもらいましたね、虫よ』


 ……あの、本名名乗ったのに何故虫固定なんでしょうか。

トモさんはちゃんと呼ぶのに……


『私から説明いたします。こちらのメイヴェル様は虫人の守護を司る神であらせられます、故に全ての虫人に愛を込めて『虫』と呼称されるのです』


 ……なんてピンポイントな女神様。

ええっと……むしんちゅの女神様なのね。


『ええ、そうです。虫よ、此度の騒乱において私の子をしっかりと守りましたね。あの献身と自己犠牲に思わず感銘を受け、こうして女神トモに無理を言って押しかけたのです』


 ボクの脳味噌が駆け込み寺みたいになってる!?

 

 ええっと、メイヴェル様の子供を守ったってことは……ああ、イセコさんのことか。

うん、まあ……自己犠牲っていうか、お世話になっていましたので。


『素晴らしい心がけです。あなたは厳密には私の子というわけではありませんが、此度の働きはそれを覆すものです……私を母と思い、存分に甘えることを許します』


 ……ありがとうございます!

身に余る光栄です!メイヴェル様!!


『そのように硬くならずともよいのです。存分にママでもオフクロでもマミーでもお呼びなさい』


 ……どうしよう。


『……むっくん、言われたとおりにしてください。この念話は秘匿回線ですので、メイヴェル様には聞こえません……というわけで、お願いします!後生ですので!!』


 あ、トモさんからの内緒話だ。

無茶苦茶切羽詰まってる……!


 ……あー……

ありがとう!ヴェルママ!!

光栄です!とってもうれしいな!!


『ヴェル……ママ……?』


 っひ!?

スイマセン不敬でした!

平に!平にご容赦を――!!



『――素晴らしい呼称ですね、虫よ!あなたには命名の才能があると見ました!!』



 頭が割れるゥ!?!?

頭の中で武道館ライブ音声みたいなクソデカ轟音が流れてるゥウ!!


『なんと可愛らしい虫でしょう……今日はよき日です!女神トモ!感謝しますよ!!』


『はい、お喜びいただけて恐悦至極に存じます』


 トモさんの余所行きモードなのかな……すごく下から言ってる感じ!


『虫よ、この上は……む、なんですか?なに、時間?待たせておきなさい……駄目?ううむ……仕方がありませんね』


 脳内状況が混線してて凄く疲れてきた。

メイヴェル様が電話中みたいになってるし。

仕事の呼び出しか何かかしら?


『今日の所はひとまずこれで失礼いたします。それではこの先も励むのです、虫よ』


 は、はいメイヴェ……ヴェルママ!!


『ほほほ!元気でよろしい!幾久しく健やかであれ!!』


 無茶苦茶喜んでる感じを出しつつ、脳内の重圧がスッと消えた。

……トモさん、ヴェルママ帰りました?


『はい、ニコニコでお帰りになられました……ふう、緊張しました……』


 なんか、椅子にでも体を投げ出した感じの溜め息だなあ。

トモさんが緊張するって、同じ女神様でしょ?


『位階がまるで違いますよ!例えるなら私は大企業の孫請けのOLで、彼女は本社の正社員、しかも役職付きです』


 とってもわかりやすい答えをありがとうございます!

そりゃ緊張するね……


『むっくんがイセコさんを身を挺して守ったのがえらくお気に召したようで……いきなりドアをぶち破って入ってこられたので、邪神の襲撃かと思いましたよ……』


 ドアとかあるんだ、トモさんのお部屋っていうかオフィス。


『ありますよ!なかったら私のプライバシーが全裸になってしまうではありませんか!』


 うんまあ……そうだよね。


『まあ、彼女は悪いお方では決してありません。少しむしんちゅ愛が凄いだけの女神様ですよ』


 それは十二分にわかったよ。

しかし畏れ多いねえ……ボク、女神様をママ呼ばわりしちゃったよ……


『スキップしながら扉を破壊して出て行かれましたので、大喜びでしょう』


 ……すごいや。


 ま、まあとりあえず……二度寝してもいい?

なんか体が疲れちゃってて……あの戦いの後のこととかも気になるけどさ、こうしてボクが治療されてるってことは八方丸く収まったんでしょ?


『ええ、ゆくゆくはゲニーチロさんからご説明があるでしょうが、概ね解決しましたよ。少しややこしい事情があるようなので、一言では説明できませんし』


 あー、なんか覚えてる。

最後の方にあのトキーチロって人、意味深な事言ってたし。

でも考えがまとまらないんだ……とりあえず寝るね……ぽやしみなしあ……


『はい、お休みなさい』


 ウニャム……寝るぞい……ぞいぞい……



・・☆・・



「フワァ……」


 うーん、よく寝た。

さっきよりも寝覚めスッキリ虫と化したむっくんです!

さて今日のご飯はなにかな……あ、ああ!?


「ムークはんっ!!」「ムギュン!?」


 いきなり目の前にラクサコさんのドアップ。

そして突如抱きしめられた!?

フワーッ!いいにおいがする!!


「おやびんおぎだ~!おぎだぁ~!!」「ムワッワワ!?」


 そして追加でギャン泣きしてるアカが兜に突撃してきた!

前が見えない!そしてアカもいい匂いがする……リンゴ食べたね!


「ムーク様、ムーク様ァア!!」


 ムムムム!?左腕にモフモフの感触がァ!

これは……たぶんロロン!でも何も見えない!!


「おほ〜、コイツは羨ましいなあムーク」


 見えないけどターロだなァ!?

元気でよかったけど!なんかニヤニヤしてそうでむっさ腹立つ!!


「いっでぇ!?なんだよマーヤ!?」「うっさい、もう片方もへし折ってやろうか」


 あ!マーヤに殴られてるっぽい音がする!

いいぞもっとやれ!!

でも収拾が……収拾がつかないよ~!!



・・☆・・



「よかったわあ、ムークはんは丸一日眠り続けてはったんどす。みんな心配しとったんえ?」


「恐縮デス……」


 しばし後、みんなは落ち着いてようやく正気に戻った。

あ、いや……


「アカ、モウ大丈夫ダカラ……」「やーっ!アカ、ここにいる!ずうっといるぅ!!」


 兜に抱き着いたアカが全然離れないので、ボクの視界は彼女の羽越しにしか見えないのだ。

地味に見えにくい。

まあ、心配させたんだから甘んじて受けようかな。


 しかし丸一日眠ってたのか……どうりでスッキリしてるハズですよ。


『ちなみにむっくんの寿命は8カ月と25日です』


 んんん短い!

くっそう!コレが終わったらため込んだ魔石を全部ボリボリしちゃる!!


「アノ、ラクサコサンガココニイルッテコトハ……鎮魂祭ハ?」


「はいな。無事に完了しましたえ?ビックリしたわあ……部屋から出たら無茶苦茶になっとるし、ムークはんはボロボロやし……」


 そりゃあ、この人としてはそうだろうねえ。


「せやけど、こないして元気になってほんによかったどす。喉は乾いてへんやろか?飲み物を――」


「こちらに」


 ふわわ、空間が歪んで……どちら様?

なんか、髪と肌が緑色の、眼つきがむっちゃ鋭い虫人さんが!


「ムーク様、イセコです」


 イセコさん!?

黒子衣装はどうしたのさ!?

でも、元に戻ったみたいでよかったねえ!


 はへー……カマキリっぽいお顔なのかと思いきや、お目目以外は装甲板多めの美人さんって感じ。

口元もボクと違って柔らかそうでいいねえ。

カマキリタイプのむしんちゅさんってこんな感じなのか~。


「イセコサン!ヨカッタ……!!」


「はい、ムーク様のお陰でこうして……生きながらえることができました」


 ……なんか複雑な顔をしていらっしゃる!?

生き恥を晒してござる!とか考えてるのかなあ。


「どうぞ、お飲み物です」


 差し出されたケマを受け取る……むむむ、この問題は根が深そうだぞ。

どうしよっかなあ……

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― 新着の感想 ―
ヴェルママはヴェルママで、色々苦労抱えてるでしょうし、むっくんが良い癒しになると良いですねぇ(他虫事)
ヴェルままいいキャラしておりますねぇ……!! 好き!!
トモさんめちゃくちゃ下っ端やな! 帰宅後にネットばかりしてる社会人に見えてきましたわww
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