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第85話 巫女行列(フェイク)到着!

『むっくん、むっくん起きなさい。ちょっと面白いことになっていますから』


「ムニャム……ム、ムム……」


 トモさんのモーニングコール助かる……この体になってから寝起きはいいけどね。

しかし面白いこととはなんざんしょ……?

ふわぁ、今日もいい日になるといいな………あぁ?


 目を開けると、黒い目があった。

白目のない綺麗な目……

ボクは、この目を知ってる。


「……オハヨウ、ゴザイマス」


 そう、ラクサコさんだ。


「はい、おはようさん」


「……ナニカ、アリマシタ?」


 何故、この人はボクの顔をじっと見てニコニコしているんだろう。

ええと……寝坊したとかではないよね?

昨日、お風呂で温まった後に護衛控室で寝て……今に至るんだよね?


「ムークはんの寝言が面白うて、横でロロンはんと聞いとりました」


「ロロン!?」


 ほんとだ!横にいる!?

何してんの!?


「む、ムーク様ぁ!おもさげながんす!だども続きば気になって……!」


 恥ずかしそうなロロンが頭を下げてきた。


「ハ、ハァ?」


 続きって、寝言の続き?

どういうこっちゃ?


『本日のむっくんの寝言は……オムライスで構成された謎の島へ探検に行く探検家目線でしたね』


 むしろボクが一番気になるよ!?

なんだその夢は!?どうなってんのボクの脳味噌くん!?


「『おむらいす』っちゅうんは、どないな食べ物どす?ムークはんが何べんも言うてはったさかい気になって……」


「んだなっす!」


 ラクサコさんとロロンが興味津々だ!?

ど、どうしよう……簡単な料理の部類には入ると思うけど、どう説明したもんか。

オムはともかくライスはどういえば……転生してからこっち、お米見たことないんだけど!?


『ふむ、地球のコメに酷似したものはたしか……ああ、マデラインで流通していますね』


 いつだか聞いたトルゴーンの西!人魚さんとかがいる水の国!!


『タイ米に酷似したもののようで、日本のコメのようなものは……あ、ロストラッドの一部で作られています』


 ヤマダさんが作った国!


『初代王が心血を注いで栽培したようですよ。初めて根付いた時には妻全員をかわるがわる抱き上げて泣いて喜んだという伝説が残っています』


 ヤマダさん、嬉しかったんだろうなあ……

奥さん多かったらしいから抱っこするの結構大変そうだけども。

名前からして日本人だし、お米食べたいよねえ……


 とりあえず存在してるんなら大丈夫かな。

あ、ケチャップとかあるのかな。


『製法は色々ありますが、似たようなソースは各国にありますね。宿で出ていたじゃないですか、トマト……ちなみにこの国ではポモッドという名前ですよ』


 そういえばそうだった。

そしてそんな名前だったんだ……トマトだとばかり。


「ヨクワカンナイケド……ドッコイショ」


 寝ころんだままなのもアレなので、起きる。

わわ、静かだと思ったらアカが胸の上で寝てた。

この子、ラクサコさんの部屋で寝たことないんだよね……寝るときはいっつもこっちだ。


「すひゃあ……すひゃあ……」


 よく寝ちゃってまあ……横に寝かせて、しばらくはこのままにしといたげよ。


「エット、オムライッテイウノハス……キノコトカ、マルモノ微塵切リシタモノヲ『米』ッテイウ穀物?ニ混ゼテ炒メテ……最後ニソレヲ薄ク焼イタ卵デ包ム料理ダヨ……ア、デス」


 無茶苦茶適当だけどもね。


「はぇえ、そげな料理が……エルフの料理でやすか?」


 え、ええっと……


「ウーント、タブン『ロストラッド』ノ料理カナ?ポモッドノソースヲカケテ食ベルンダヨ」


「まぁ、ムークはんは物知りやなぁ……ロロンはん、いつか食べてみたいなぁ?」


「んだなっす!」


 あ、ケチャップライスのこと言い忘れてた……ま、まあいいか。


「エート、今日ハ『巫女行列』ノ日デシタネ」


「そうどす。爺の話やと、昼前には到着しはるみたいや」


 寝起きに色々あったけど、とうとう祭も6日目に突入する。

いやあ、昨日まで色々あったなあ。


「もう露店ができへんの、残念やわぁ」


 ……色々というか、露店をしていただけだね。

ラクサコさんが気に入っちゃってさぁ、昨日も朝からキッチリ夕方までお店出してたんだよね。


「カマラさんもこれからは店ばやらねって仰ってたのす。頃合いだと思いまっす」


 『みんなのお陰で散々稼いだから、残りは祭見物でもしてのんびりするよ』って言ってたもんね。

看板妖精と珍しい虫人のお菓子屋さん、そしてランダイのトカゲ料理……かなり話題になってたみたいで、昨日なんか列ができてたもんなあ。

ターロは『冒険者辞めたらこれで食ってくのもアリだな……』って言ってたな。

あそこもかなり売れてたみたいだし。


「せやねえ。せやけど楽しかったわぁ、うち、あんなん初めてやさかい」


 普段は巫女様として忙しいのかなあ。

たしかに、ラクサコさんは毎日楽しそうに店番してたねえ。


「むにゃむ……しゃむい……むぁ、ふああ~~……」


 お、アカが起きたかな。


「オハヨウ、アカ」


「むいむいむい……はぷ、んゆぅう……」「アヒャヒャヒャ!」


 が、キャンセル!

アカは寝ぼけ眼のままボクをよじ登って……首に抱き着いてまた寝始めた。

こしょばい!こしょばい!!


「朝から仲がよろしおすなあ……ほんなら、アカちゃんが起きるまでに朝餉の用意しよか」


「はい、ワダスにお任せ――」


「――廊下に膳をお持ちしております」


「じゃじゃじゃ……」


 シュバっと虚空から出現するおそらくナハコさん。

その言葉を聞いて、ロロンがちょっとしょんぼりした。

なんでもかんでも頑張らなくっていいってばもう……


「ロロンハ頑張リ屋サンダネェ……」


「じゃじゃじゃ!?」


 とりあえず、撫でておくことにした。



・・☆・・



「姫様、配置完了いたしました」


「ごくろうはん」


 朝食を食べてしばし。

急に黒子さんたちがドヤドヤ入って来たかと思うと、ボクよりも大きな鏡を運んできた。

装飾も多くって、なんだか高級品って感じ。


 で、ボクはというと……


「ジャア、ココ」


 ぱちり、と盤面に黒いコマを置く。


「あああ待つニャ!そこは駄目ニャ!ムークはやらしいニャァ!!」


「人聞キガ悪スギル!?」


 対面で頭を抱えて唸るミーヤと、オセロで遊んでいる。

この子、マジであり得ないくらいオセロ弱いよ……最大限手加減しても負けるかどうか微妙なくらい弱い……


「ミーヤ交代、次は私」


「ま、待つニャ、ここから挽回するニャァ!」


「無理だろお前。盤面真っ黒じゃねえかよ」


 ソファに寝転んで何かの干物を齧っていたターロが苦笑してるけど……キミも同レベルに弱いからね?

逆にマーヤは普通に強いので、獣人さんがパズル苦手ってワケじゃないと思うけども。


「コツ!コツを教えるニャ!!」


「……端ヲ取ル、カナ?」


 それ以外にどう言えばいいのだろうか。


「――皆様、こちらへ」


 おや、なんかナハコさんが呼んでる。

ふふふ……この護衛生活の中でなんとなくわかるようになったんだ。

ボクも成長してるってことだねえ。


「イセコ、少しいいか」「はい」


 ……イセコさんだった。

まるで成長していない!ボクが!!

口に出さなくてよかった!よかった!!


 まあとにかく、皆でデッカイ鏡の前に集合した。

うわ、綺麗な鏡。

くっきりハッキリ写ってる……こうしてみるとボクも中々特撮ヒーローっぽくて格好よくなったじゃないか。

この世界、あんまり鏡とか見かけないから新鮮。


「では、よろしゅう」「「御意」」

 

 ラクサコさんが号令をかけると、黒子さんたちが一斉に魔力を練り始めた。

その魔力は、鏡の外枠に向かっていき……うお、鏡がめっさ光った!マブシイ!!


「おやびん、しゅごい、しゅごーい!」


 アカが興奮する声を聞きながら目を開くと……なんと鏡には、街の外の風景が!

ハイビジョンテレビみたいに、くっきりハッキリ映っている!


「【投影】の魔法具かよ……たまげたねえ、とんでもねえ値打ちモンだぜ」


 ターロが冷や汗をかいている……お高そう。

鏡としてもお高そうだし、その上珍しいっぽい魔法具だしなあ。


「城門の上にいる仲間に、対の魔法具を持たせています。つまり、これが現在の様子です」


 ……ビデオカメラみたいな魔法具もあるんだねえ。


 鏡に映る風景には、奥からこちらへ向かって来る一団が見える。

おお、あれってひょっとして!


「巫女行列、ッテヤツデスカ?」


 恐れ多くも横にいラクサコさんに聞いてみる。


「せやせや、いっつもあん中におるし……外からこないして見るんは初めてやわぁ」


 そりゃあそうでしょうよ……メインゲストじゃないですか。


「おやびん、おやびんとおんなじひと、いっぱい!いっぱいいる~!」


「オオオ、ホントダ……」


 興奮するアカが指差す行列。

それは3列で行進していた。

列の中央に、時代劇で見たような輿?だっけ。

豪華なソレがある。

そして両脇には……金色の穂先をした長い槍を持った……縦横に大きい虫人さん達!

彼らはボクやゲニーチロさんと違って、鎧とマントが合体したような服を着ていた。

胸とかお腹は金属板で覆われているけど、それ以外はマントって感じ!

おおお……まさに戦士!って装い。

皆さん、無茶苦茶強そう……


 女性っぽい細い体の人たちは、全員がローブを羽織って杖のようなものを持っている。

ひょっとして虫人さんって、女の人は顔を見せちゃいけないとかいう決まりでもあるのだろうか。

あ、でもラクサコさんは違うね……


「ボクヨリモ格好イイナ……」


 ゲニーチロさんはカブトムシっぽいけど、槍の人たちは……ごっついクワガタって感じだ。

立派な顎というか、牙が生えている。

なんとも、迫力のある顔だなあ。


「ちがうぅ!おやびん、いちばんかっこよ!りっぱ!ぴかぴかぁ!」「ムワワワワ」


 ぷんすかしたアカが頬に突撃してくるのをいなしながら、映像をじっと見続けた。

……影武者だけど、やっと巫女さんが到着したんだね。

これからどんどん人が増えるんだろうなあ。

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