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第72話 さらば人間!もう会いたくないですぞ!!

「ギャッあぁ、あ!?!?」


 金髪は、大怪我なのによく動いたと思う。

だって、一本はなんとか避けたんだもん。


 でも、ボクの放った棘は三本だ。

一本は右胸に、もう一本は首に突き刺さった。


「オオ、オオオオオ!!」


 棘を放った反動で一瞬静止したボクは、すぐさま後方へ衝撃波を放つ。

そして両手で棍棒を握って――魔力を、流した。


「ま、まで、まっで――」


「――オオオウリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」


「まみゃっ」


 空中に蒼い軌跡を刻んで、全体重を乗せた棍棒が金髪の頭頂部にめり込んだ。

そのまま、あんまり表現したくないような音を立てて……首が、胴体に埋まった。

着地したボクの目の前で、金髪はグシャグシャの……なんとも形容しがたい肉の塊になっていた。

明らかに死んでいる。

これで生きてたらお坊さんとかゾンビハンターを呼ばないといけないと思う。


 ……うわぁ、それにしてもグロイ。

まあ、うん……特に後悔はしてないけども。

一応、一応ね。


「……南無阿弥陀ギャア!?」


 手を合わせようとすると、マントを思いっきり引っ張られて倒れた!?

ちょっと!何すんのさ!

一応念仏の一つでもワアアアアアアアアアアアア!?さっきまでいた所に魔法がぶち込まれた!?


「ムーク!何やってるのお馬鹿!敵のど真ん中で!?」


 そうでした!

恐ろしい形相のマーヤに怒られちゃった!!


「ゴ、ゴメンナサ――」「立って!下がるよ!!」


 はいいいっ!!

立ち上がって棍棒を掴み、マーヤに続いて走る!


「逃がすなァ!」「あの虫めが!」「ここで殺さねば我らは破滅だ!殺せーッ!!」


 うわっわ!?

滅茶苦茶追いかけられてる!?

あの金髪、結構なお偉いさんだったのかな!?

でも残念でした!大事な人は出来損ないのハンバーグです!ざまみろー!!


「えぇーいッ!!」


 後方へのアカサンダー助かるゥ!!

必死に追いかけてるっぽい足音が、一気に少なくなった!

なんとまあ、頼れる子分!!


「よくやったァ!」「こっちよ、こっち!!」


 視線の先に、隊列を組んだ兵隊さんたちが!

ボクらに手を振っている!


「我らの上を飛べェ!!」


 わっかり……ましたァ!

アカの位置を確認し、先を走るマーヤの胴体を抱える!!


「に、にゃあぁっ!?」「ゴメンヨー!!」


 そのまま、大ジャンプ&衝撃波&アカの念動力ゥ!!


「「「『刺し貫く槍よ、あれ!!!!』」」」


 その足元を、白い魔力の塊……槍みたいな魔法が通過!!


「しまっ――」


 後ろの方から水気を含んだ、大量の破裂音!!

絶対にグロイ死体が量産されてるゥ!!


「ヨットトトト!?!?」


 兵隊さんを跳び越え、ターロとロロンがいた場所に着地!

いかん!勢いが付きすぎて――パイルオン!できない!再生してないぃいい!?


「ムワーッ!?」「ぎにゃ!?」


 なんとかマーヤをほうり出し、アカを潰さないように横回転で地面を転がる。


「きゃーははは!あははは~!」


 なんか楽しそうだからヨシ!!


「グベン!?」


 そして、適当な岩に激突して止まった。

ううう……視界が回るゥ……


「ムーク様、ムーク様ァ!!」


 ふらつきながら起こした視界に、走ってくるロロンが見えた。

やっぱり、返り血まみれだけど元気そうだ……


「アカ、大丈夫?」


「だいじょぶ!たのしかった、かったぁ!」


 頬を摺り寄せるアカを見ながら、ボクは少しだけ力を抜いた。



「も、もう駄目ぎゃあっ!?」「や、やめてく――」


 どうやら、ボクが金髪と戦ってる間に戦いは終局へ向かっていたらしい。

ボクらは現在、兵隊さんの作った防御陣地の内側にいる。


 そこから見える風景は、ちょっと一方的な蹂躙だった。


「お、向こうもそろそろ決着か?」


 ターロが言うように、兵隊さんたちが敵を機械的に処理していく。

今回の敵は強かったから、ボクらの方に怪我した兵隊さんが何人もいるけど……死者はいないようだ。

そして、その更に向こうには……


「らああっ!!」「オオオオッ!!」


 たった一人で、大柄な黒ずくめと打ち合っているバレリアさんがいた。

その周囲には、円状に死体が転がっている。

……あれ、全部1人でやっつけたの!?ざっと見て30人はいるよ!?


「っはあ!!」


 ばぎん、と音がして。

バレリアさんが打ち合った勢いで飛ばされた。

彼女は、危なげなく着地している。


 ボクらがいて、兵隊さんがいて、そしてバレリアさんって立ち位置。

さらにその向こうには……例の、3人組の1人らしきリーダー?と護衛っぽい連中がいる。

……そういえば、もう1人はいないね?

別行動なのかな。


「……やりおるわ、ケダモノにしてはな!」


 バレリアさんを吹き飛ばした男が笑った。

2メートルを超える長身に、槍というより穂先の付いたハンマーとでもいうようなとんでもない武器を持っている。

結構戦ってたんだろうに、息も乱れていない。


「フムン、貴様も人族にしては中々やる、中々な」


 対するバレリアさんも、疲れた様子はない。


「ははは!気の強い雌犬だ……今から組み敷くのが楽しみよ!!どうだ?今降伏すれば妾にでもしてやるぞ!?」


 な、なんていうセクシャルなハラスメント!!


「申し訳ないが、私はこの自慢の尻に敷かれて喘ぐかわいい子犬にしか興味が無くてな。貴様のような睾丸が脳味噌に付いている……臭い雄は願い下げだ」 


 な、ななななんというセクシャルなハラスメント返し!!


「抜かしおるわ!口だけは一丁前よ!!」


「おや?よく知っているなあ。確かに私の口は色々と評判だよ」


 ……ノーコメント!

セクハラ合戦ならバレリアさんの勝ちだね!!


「だがな、貴様は一つ……勘違いをしている」


「なに?」


 その瞬間、自然体で立っていたバレリアさんが消えた。


「なんっ――」


 ぞぶり、と。

血に塗れた槍の穂先が、男の胸から『生えた』

い、いつの間に……後ろへ!?


「――部下と客人の撤退が完了するまで、待っていたのだ。哀れな雄よ、この程度の手加減にも気付かぬとは、な」


「ぎゃ、ぼ!?」


「来世はかわいい子犬に生まれ変わるといい、さらば」


 槍の穂先がグリンと捻られて……抜かれた。

胸に空いた大穴から大量に出血し、男は前のめりに倒れ込んだ。

つ、つっよ……バレリアさんつっよ!?


「消失がらの、死角の一撃……まさか、音に聞こえた【影穿ち】!?」


 なにやら格好いい技名?を口に出して驚愕しているロロン。


「さて……残りは貴様らだ。特に申し訳ないとは思わんが――死んでもらおう。全隊……突撃ィ!!」

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」


 ボクらの前で防御の体勢だった兵隊さんたちが、雄たけびを上げて突撃を開始した。

残った敵は、こっちよりも少ない!


「ボクラモ――」


「じゃじゃじゃァ!駄目でがんす!傷だらけでがんすゥ!!」


「だめ!だーめぇ!!」


「ハイ」


 アカに目を塞がれ、ロロンには腰に抱き着かれた。

う、動けぬ……的確に止められた。


「これ以上は野暮ってもんだ。大人しくしときな」


「そう、私達は冒険者。兵士じゃない」


 ターロたちにも止められた……はわわわ!?


「何見てるの、えっち。ムークが放り投げたからだよ?」


 マーヤの!マーヤのスカートがビリビリ!!

紐!紐だけがある!!

アカ!ちゃんと目を全部塞いでいてください!!


「ボクハ無実……デハ、ナイ!弁償シマス!」


 とりあえず、全力で目を逸らそうか。


「――っく、ひ、退け!退けェッ!!」


 逸らした先では戦闘が佳境だった。

例の女を守る護衛たちは、一人また一人と討ち取られて……もう5人くらいしか残ってない!?


「ミエラさま、お逃げを!」「ここは我らが!」「再起を待つのです!」


「みんな……すまない!その命、無駄にせん!!」


 攻めてきた分際で何か感動的な別れを演出してるね……納得いかない!!


「フムン」


 が!バレリアさん!

いつのまにか奴らの後ろに!!


「逃がすと、思うかね?」


 さっきと同じように槍の穂先が――何もない空間を、貫いた。


「屈辱だが、ここは――退く!!」


 えぇえ!?な、なんであんな高い所にいるの!?

羽も生えてないのに、いきなり10メートルは上空にいるよ!? 


『あれは風魔法の応用ですね。人格はともかく、魔術師としては中々の練度です……おひいさまがやっていたでしょう?』 


 そういえばそうだった……あ!でもでも逃げられちゃうよ!!

あんなのを逃がしたら碌なことにならないと思う!ボクらのことも知られてるし!

こうなったら電磁投射砲を――!!


「汚らわしき獣ども!首を洗ってまっ――」


「――ハ?」


 空に舞い上がって偉そうな事を言っている女が……その、鼻から上をボッ!って吹き飛ばされて落ちた。

バレリアさんが……いや方向が違う!

彼女は残った護衛の首を一瞬ではねた後、ボクと同じように呆然として……どちゃっと地面に落下した女を見てる!


アレをやったのは、向こうにいつの間にかいた……


「――おっと、いらぬお節介であったか?」


 カッコいいむしんちゅ!ゲニーチロさぁん!!

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