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第70話 できれば二度と、出会いたくなかった!!


「ッグ……オマエ!」


 脇腹の痛みをこらえつつ、地面を蹴って距離を取る。

そこにいたのは黒ずくめの人影だけど……さすがに覚えてるぞ!

いけすかない声と……その手に持った、大剣は!!


「久しいな、虫」


 黒ずくめはそう言いながら、懐から宝石みたいな何かを地面に落とす。

それが何か考える前に、ボクらの周囲に――結界が張られた!?

10メートルくらいのドーム状のやつが!


「最後にもう一度、聞いてやろう」


 ヤツがフードをめくる……やっぱり!あのいけ好かない金髪男!!


「あの妖精を寄越せば、楽に殺してやる。飼い主のお前が言えば従うだろう?」


 にやあ、と。

男はいやらしく頬を歪めた。


 ……どっちにしろ殺すつもりじゃんよ!

こんな結界まで張って隔離してさァ!!


「寝言ハ寝テ言エ」


「はは、癪に障る虫けらだ……では、望みどおりにしてやろう!」


 男の体から、魔力が放出される。

それは、手にした大剣に流れ込み……銀色の刀身を、真っ赤に輝かせた。


「ムーク様ァ!」「おやびん!!」


 結界の外から、アカとロロンが叫んでいる。


「大丈夫!コンナショウモナイ金ピカ雑魚、ボクダケデ十分!ロロン!アカト一緒ニ戦ッテ!!」


『アカ!ロロンと組んで動くんだ!おやびんは最強なので心配ご無用だよッ!!』


 2人に指示を飛ばしつつ、黒棍棒くんを両手で握って魔力を流す!

【全ての慈悲なき者に死を】の文言が、真っ先に青く輝いた。


「ゆくぞォ!虫ィ!!」


 男が大剣を大上段に振りかぶって跳ぶ。

ボクはそれを待ち構えて――下から上へ棍棒をフルスイングした!!


「っぐ!?」「ムゥウ!!」


 大剣と棍棒が衝突し、それぞれの色が混じったような魔力の火花が周囲へ飛び散る。

ぐぐぐ……固い!重い!けど!

棍棒も!負けてないッ!!


 お互いに弾かれ、金髪が後ろに跳ぶ。

よっしゃ!チャンス!!


「――ウオオオッ!!」 


 ダッシュからの……横薙ぎ!!

胴体直撃コースだッ!!


「っふ!」


 ぎゃり、と棍棒が――受け止められて、上方向に逸らされた!?


「呆れるなッ!!」「ッギ!?」


 棍棒を跳ね上げられて、空いた胴。

そこを、剣道の綺麗な所作みたいな感じで――大剣が通過した。

素敵な腹巻のお陰で両断はされなかったけど……胴体が、胴体が半分くらい斬られたァ!

無茶苦茶、痛い!!


『修復開始!むっくん、敵は剣術の心得があるようですよ!』


 ぐぎぎぎ……了ォ解!

とりあえずバックステップ!


「ふん、力と武器はそれなりだが技がない。これが蛮族の限界か」


「思考ガ蛮族ノ屑ヨリカハ、十分マシダロ」


 うおっと!斬撃が飛んできた!!

魔力を刃の形に飛ばしたのか!?


「減らず口を……まあ、俺も貴様のような虫けらに話が通じるとは思わんが、なァ!!」


 金髪が地面を蹴る。

爆発したみたいに煙が上がり、あっという間にボクに肉薄!


「ヌゥアッ!!」


 修復した左手パイル、発射!


「それはもう、見たァ!!」


 棘は、斜めになった大剣で弾かれる!

そのままボクに向け、突きがくる!


「ンギィイ!!」


 それを、棍棒で防御!

パイルは見たって?

でも……これは見てないだろッ!魔力、充填!!

――展開ッ!!『隠形刃腕』ッ!!!!


「んなッ!?!?」


 背中から展開された刃が、マントの隙間を通って上から振り下ろされる。

金髪はそれを腕で防御した!なんか、硬いし変な感じ!鎧かな!?


 でも――時間差をつけて下からすくい上げたもう一本が!本命だ!!


「が、アッ!?!?」


 魔力を注ぎ込んで強化した刃が、金髪の太腿を抉りながら胴体に突き刺さった!

どうだァ!こんな剣術なんか、ないだろっ!!


「お、のれェ!!」


 いっだい!?!?

もうちょっと押し込もうとした刃が、その途中で真ん中を斬り落とされた!?

一体何で――片手にナイフ持ってる!?いつの間に!?


「がああっ!!」「グッフ!?!?」


 混乱した隙にお腹を蹴られて飛ばされたァ!?

傷が!傷が開いた!


「よくも、虫の分際で、このような……このようなァ!!」


 腹の傷を押さえて、金髪が吠えた。


「許さんぞ、虫けら……このアーゼル・ドルクに対して――」


 ――速射衝撃波、5連ッ!!


「ぐぶ!?が、おあ!?っが!?」


 フルヒット!何か言おうとしてたけど構うもんか!どうせ世迷言の親戚でしょ!!くたばれ人間ッ!!

地面を蹴り付け、後方に衝撃波ァ!!


「ぎ、ぎざ――」


 低い姿勢で、右足を前に!更に衝撃波ァ!!


「――っまァ!?!?」


 金髪の鳩尾に、超低空……むっくんキック!!

そして!パイルオン!!

鎧に、二段階で棘が食い込む!!

固いけど、大地竜やエルフの鎧に比べたらどうってことないや!!


「っぎ!?」


「――持ッテケェエエエエエッ!!!」


 もいっちょ、射出ゥ!!

食い込んだ棘は、さらに食い込んで金髪を吹き飛ばす!

そしてボクも、無理な体勢で撃ったせいで右足首を複雑骨折しながら反対側へ吹き飛ぶ!痛い!!

トモさーん!治療よろ!なるはやで!


『既に始めています!いい連携攻撃でしたよむっくん、真っ向から戦うのではなく上手く特性を活かしましたね。キャンペーン中につき、トモさんポイント2,5倍付与です!』


 何その刻み!?

あとキャンペーンってなんですか!?


『治癒完了!立ちなさい!』


 ひどくない!?立つけど!!


「が、あああ!お、のれ!おのれ!おのれおのれおのれェッ!!」


 結界に背中から叩き付けられた金髪が、もう立っている。

お腹にお見舞いした棘は貫通していないけど、半分近くが食い込んでビッシャビシャと大量出血だ!

ボクとは違って向こうは人間!この傷は大ダメージでしょ!!

――駄目押しに喰らえッ!速射衝撃波をッ!!


「っご!?」


 腹に命中した衝撃波は棘を押し込み、さらなる追加出血!

卑怯とは言うまいな!!


「が、あああっ!許さん、ぞォッ!!」


 ……?

アレ、なんかまだ元気っていうか……今、試験管みたいなのを噛み砕いて飲み込まなかった?

ガラスで喉を切りそうで嫌だn――


『むっくん!!』


 トモさんの大声。

そして衝撃。


「――ガアアッ!?」


 む、胸に……アイツの、大剣が突き刺さって、る!?

なんっ……いつ、投げた!?


『――前ッ!!』 


「オオオオオオオオオオッ!!」


 再びの、衝撃。

ボクは――顔面をぶん殴られ、吹き飛んだ。

ついでに刺さった大剣の柄を持たれて、盛大に胸から体液が噴出した。

そのまま、今度はボクが結界に激突。

前のめりに倒れ込んで……なんとか手を突いて、こらえた!

視界の端で、地面にビシャビシャ体液が落ちている。

ぼ、ボクが通常の生命体じゃなくて、よかった……!!


『おやびん、おやびん!!』『ま、前に言ったでしょアカ……野球は9回二死満塁からが本番だって!』


 アカの悲痛な念話に、余裕を(捏造して)持って返す。

おやびんは……無敵なので!


「まさか、【エリクシール】を使わされるとはな、褒めてやるぞ……虫」


 金髪はボクが瀕死だと思ったのか、余裕ぶって立っている。

ふふふ、馬鹿め!現在トモさんが寿命を墓場に送って修復の最中であるわ!!

この角度からなら修復は見えないので、存分に油断してろ!!


「ああ、醜い虫如きに手傷を負わされるとは……屈辱だ」

 

 ホラホラホラ、もっともっと油断してもっと!

サービスでむっちゃ瀕死虫のフリしたげるから!!


「まあ、いい……妖精に獣人、国によい土産ができたわ。あの獣人、反抗的だが躾ければいい奴隷になるだろう」


 ……ほう。


「なんだ、悔しいか?貴様のような醜い虫如きが傲慢だな?身の程を知れ」


 ……ほほう。


「神は我らを美しく作られたのだ、貴様のようなモノは所詮我らの添え物なのだよ。おとなしく傅いておればよいものを、人の真似事で国など作りよって……不遜だ」


 ……ほほほう。


「精々地獄で泣きわめいて暮らすがいい。我が剣の錆となったことを、せめてもの慰めとしてな」


 そこんとこ、どうなんですトモさん?


『戯言ですね、創造主がもしも観測できるのなら……全ての命には等しく愛が注がれているハズです。神とは、そういうものなのですから……それに』


 うん?


『少なくとも私は俗な女神ですから、むっくんの方がそこの人間よりも何倍も、いいえ何百倍も男前に見えますよ』


 ……えへへ。

うん、元気が出たぞ!


「さらばだ、醜きモノよ」


 ゆうゆうと構えちゃってさ!映画かっての!!

奴の振り下ろしを横に転がりながら回避して――速射衝撃波ァ!!


「げばぶ!?」


 顔面に4連射クリーンヒット!!


「ば、ばかな!?」


 金髪がよろめく隙に、立ち上がって――棍棒を構える。


「精々、地獄デ泣キワメイテ暮ラストイイ!!」


 お返しだ!ばーか!!

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